紗夜と日菜の関係も少しづつ明らかに……。
勇者部部室--
千聖達防人組が合流してから数日が経過していた。
友希那「これだけ戦力が揃えば、激戦となっている徳島でも優位に立ち回る事が出来るわね。」
ゆり「相手の抵抗も相当しぶといけど、団結力で圧倒出来る筈だよ。」
日菜「ところで、みんなに質問があるんだけど。"氷河家"の事は知ってる?」
日菜がみんなに質問をするのだが、
香澄「えーとすみません、分からないです日菜さん。私、そういうのあまり詳しくなくて…。」
夏希「私も分からないです。神樹館にもそういう苗字の人は心当たりなかったです。」
知っている人はいない様子だった。
有咲「現時点では正直、"氷河家"と言ってもピンと来ない人が殆どだろ。よっぽど大赦に詳しいならともかく。」
日菜「もー、仕方ないな。そんな"氷河家"の家名を再び高める事が私の夢なんだ。」
夏希「そうなんですね。でも"氷河家"と紗夜さんの"氷川家"って漢字が違うだけで、同じ苗字だけど何か関係はあるんですか?」
高嶋「ホントだね。髪の色も似てるし、先祖が一緒とかありえるかも!?」
紗夜「………。」
日菜「………それは分からないよー、あはははっ。」
紗夜の視線が気に掛かり、日菜は思わず話をはぐらかしてしまった。
あこ「花音は愛媛出身なんだね。あことりんりんもなんだ。よろしくね。」
花音「そうなんだね。ミカンは私大好きだよ。」
燐子「愛媛同盟ですね…。よろしくお願いします、松原さん…。」
日菜「なんだか地方トークで盛り上がってるねー。あっ、そうだ。紗夜ちゃんって高知だったよね?良かったら今度、カツオでも…。」
紗夜「……ええ、そうですが何故あなたが私の故郷の事を知っているのでしょうか?」
日菜「っ!?」
紗夜のその言葉に日菜は動揺してしまう。
日菜「あ、あはは…な、何となくかな。フィーリングってやつだよ。」
紗夜「………。」
紗夜は日菜の顔をまじまじと無言で見つめる。
紗夜「……そうですか。でも、私は生まれ故郷に愛着を持っていないので。」
日菜はなんとか誤魔化せた安堵の息を漏らした。
リサ「さてと、随分話し込んだし今日はここでお開きとしましょうか。」
千聖「そうしましょうか。……ちょっとみんなは後で私の部屋に来てくれるかしら?」
そうして防人組は千聖の部屋へと移動したのだった。
---
寄宿舎、千聖の部屋--
日菜「どうしたの急に?」
イヴ「何かありましたか?」
千聖「思ったのだけれど、私達は同じ部屋で過ごした方が良いと思うの。」
イヴ「千聖さんがそれを望むのなら大丈夫ですけど、どうしてですか?」
千聖「戦闘システムがまとめて最新のものに統一されているという事は。」
日菜「分かった!私たちも勇者と肩を並べて戦えるって事だね。」
花音「守ってもらえれば安全なのに…。」
弱音を吐く花音の口を千聖が手で塞いだ。
千聖「そんな事は言わないの。勇者が防人に劣ってるなんて思われてはいけないわ。」
彩「千聖ちゃん、そこまで気負わなくても大丈夫だよ。」
千聖「ありがとう彩ちゃん。でも私達はここに来ていない防人達の分まで頑張らないと。」
千聖はどうやらこの世界で勇者と並んで戦える事にチャンスを感じているようだ。
千聖「そして何より重要な事は"犠牲を出さない事"。両方をきっちりやらないといけないのよ。」
そして千聖が抱えている信条は"犠牲ゼロ"。誰一人欠ける事無く生きて帰る事を何よりも大切にしているのである。
日菜「もとより氷河の名前を売り込む大チャンス。私はやる気満々だよ!」
千聖「その為に私達はより連携していかないと。だから同じ部屋に住むのよ。」
その言葉を聞いて、花音の表情が明るくなる。
花音「確かに千聖ちゃんに四六時中守られてるのは良い事かもしれないよ!」
その時、樹海化警報のアラームが部屋に鳴り響いた。
花音「ふえぇぇっ!?言ってるそばから来ちゃったよ!樹海化警報だよ千聖ちゃん!!」
日菜「腕が鳴るね。氷河家再興物語は新しい局面を迎えるよ!」
千聖「行ってくるわね、彩ちゃん。」
彩「責任感の強い千聖ちゃん。私は大好きだよ。でも忘れないでね。防人も勇者も、平和を……日常を守る志は同じ仲間なんだから。」
千聖「彩ちゃん…。」
防人達は部室へと急ぐ。
---
時同じくして--
紗夜の部屋で過ごしていた高嶋達の端末からもアラームが鳴り響いた。
高嶋「あ、樹海化来ちゃったね紗夜ちゃん。これからだったのに。」
紗夜「仕方ありません、行きましょう。防人の皆さんとも呼吸を合わせて戦わなければ。」
高嶋「そうだね、紗夜ちゃん。」
紗夜「気を使ってくれてありがとうございます。高嶋さん、私は大丈夫ですから。」
2人も部室へと急いだ。
---
勇者部部室--
あこ「あっ、香澄に紗夜さん。早かったね。」
高嶋「これからゲームをしようとしてたのに困ったよ。」
千聖「ここでは防人の集団連携が使えない。戦い方を変えていきましょう。心の準備は良い?」
イヴ「大丈夫です、この状況下での戦い方はイメージ出来てます。」
日菜「同じく。戦い方が変わっても私達は最強だよ!」
花音「心の準備はあんまり出来てないけど、はいって言っとくよ。」
千聖「花音はいつもの事だからいいとして、さぁ行きましょう!」
彩「みんな、どうか無事に帰ってきてね。」
彩が見送る中、勇者と防人達は樹海へと消えていく。
---
樹海--
花音「ふえぇぇっ…戦闘が主な任務なんていつにも増して緊張するよぉ。」
花音の緊張具合に他のみんなが心配しだした。
りみ「す、凄くガチガチに見えるんですけど大丈夫ですか花音さん?」
花音「りみちゃん優しいね!大丈夫じゃないから気にかけてね!」
年下だろうと花音は全力ですり寄ってくる。
花音「ふえぇぇぇーーー!!」
疑似バーテックスは花音に襲い掛かるも、花音は叫びながら躱していく。
高嶋「わっ、花音ちゃん今凄い動きしたよ!ぬるんって!ねえ美咲ちゃん。」
美咲「確かに。これは普通に戦力だよ。」
続いて続々と敵が押し寄せてくる。どうやら徳島があと少しで勇者達に取り戻される事を危惧してるようだ。
花音「あんな凄い数無理だよ、千聖ちゃん!!」
千聖「戦衣の性能が引き上げられているなら恐れる事は無いわ、行くわよ!」
--
千聖は事前にリサに言われてた事を思い出す。
千聖(確か、念じれば出てくるのよね…。)
千聖「来なさい、"尊氏"!」
千聖が叫ぶと千聖の隣に有咲の精霊である"義輝"に似た鎧を着た精霊が出てきた。
千聖「力を貸しなさい!!」
千聖は"尊氏"を憑依させ、疑似バーテックスの大群に突っ込んでいった。
花音「千聖ちゃん!?」
千聖は傷一つ負う事無くバーテックスを蹴散らしていく。
"尊氏”の能力は武器の性能を上げる事。銃剣の剣は鋭さを増し、触れた敵を豆腐の様に切り裂いていく。そして銃の弾丸も貫通力を増し、一発の弾で何体ものバーテックスを殲滅していく事が出来る。
千聖「戦衣と精霊の力で思った以上の力が出る。これならいけるわ!!」
有咲「だりゃあぁぁぁぁっ!!」
有咲も千聖に負けじとバーテックスを殲滅していっている。
千聖「有咲ちゃん、一気に敵を撃破していくわね!私だって負けてられないわ!!」
千聖の闘争心に火が点く--
かと思いきや、
千聖「……いえ違うわ、優先されるべきはみんなで生還する事、そして勇者と同等の戦果。分かっていたのに、有咲ちゃんを見ているとペースが乱れてしまう。」
冷静さを取り戻した千聖は他の防人達を確認する。
千聖「日菜ちゃん、イヴちゃん、花音、大丈夫!?」
日菜「もちろんだよ千聖ちゃん。順調に敵を減らしていってるよ。」
イヴ「同じく頑張ってます。」
花音「はぁはぁはぁ。な、なんとかやってるよ千聖ちゃん…。」
千聖が安堵したのも束の間、樹海の奥から"超大型"が襲ってくる。
千聖「来なさい!今の私ならこれくらい!!」
そこに有咲が合流する。
有咲「千聖!私と一緒に倒すよ!!」
千聖「……ええ。」
2人の目にも止まらぬ連続攻撃が"超大型"に炸裂する。
香澄「うわぁー。凄い連続攻撃!有咲も千聖さんも強ーい!!」
有咲「ふぅ、やっぱりあんたと一緒だとめちゃくちゃ心強いな。勇者部も大幅に戦力増強だ!」
千聖「有咲ちゃんも腕をより磨いてるわね。ここまで敵を圧倒出来るとは思ってなかったわ。」
ゆり「本当に千聖ちゃんは強いねー。びっくりしちゃうくらいだよ。」
有咲「さぁ、どんどん来い!勇者部の太刀で迎撃してやるよ!!」
高嶋「千聖ちゃん、私も力を貸すよ。一緒にやろう!」
千聖「…………。」
有咲に加え、まだ出会って間もない勇者達が千聖の為に一生懸命力を貸してくれる--
そして、千聖は出撃前の彩の言葉を思い出す--
---
彩「防人も勇者も、平和を…日常を守る志は同じ仲間なんだから。」
---
千聖(確かに彩ちゃんの言う通りね…。)
千聖「ええ、一緒にやりましょう、高嶋さん!そして、有咲ちゃん!」
--
一方では--
日菜「まだまだ敵が来るんだね。良いよ、氷河家の礎になっちゃえ!」
いつもの癖で前に出すぎる日菜に燐子が注意する。
燐子「あっ、氷河さん…!あまり前に出すぎては危ないです…。」
紗夜「全く…熱くなると突出する人が数人いて困りますね。」
そんな日菜の隣に紗夜がやって来る。
紗夜「氷河さん。あなたの腕前は良く分かりました。でも前に出すぎです、自重してください。」
日菜「紗夜ちゃん…分かったよ。それと…。」
日菜がその先を言う前に紗夜が話し出す。
紗夜「良いんです、大体想像がつきますから。……あとカツオは嫌いじゃないです。」
日菜「………なら今度一緒に食べに行こうよ。私たちは同学年ていう共通点もあるしね。」
紗夜「それも良いですね。でもまずはこいつらを片付けましょうか。」
日菜「うん!一緒に倒そう!!」
中たえ「見て見て、チームワークが完成したよ、香澄。」
香澄「そうだね。みんなが仲良くなると嬉しいよ。」
勇者と防人のチームワークでどんどんと善戦していく。
友希那「敵の数がどんどん減っているわ。このまま力を合わせて徳島を奪い返すわよ!!」
--
全ての敵を殲滅し、樹海に静けさが戻る。
千聖「日菜ちゃん、帰るわよ。」
日菜「あっ、先に行ってて。」
千聖に先に戻るよう促し、日菜は紗夜に話しかける。
日菜「紗夜ちゃん、ちょっとだけ良いかな。」
日菜の表情から大事な話だと悟った友希那たちは気を使い2人だけにして先に帰るのだった。
紗夜「何かしら。」
日菜「………私達の事だよ。」
紗夜「最初の行動で薄々気付いていたわ。私とあなた、何か繋がりがあるのでしょう?」
日菜「………それはまだ分からないんだ。でも私の家に氷川紗夜、あなたの勇者御記が何故かあったんだ。何でなのか分からないけど、何か繋がりがあるのは確かだと思う。」
紗夜「そう……。」
以外にも紗夜は日菜と違いあっさりとした様子で言葉を返していた。
日菜「紗夜ちゃんは気にならないの…?未来の自分が書いた勇者御記を。」
紗夜「もちろん気にはなりますよ。でも、その事を考えるのはこの世界の平和を取り戻してからだとみんなで決めましたから。」
日菜は目の前の紗夜の言葉に呆気に取られていた。勇者御記から読み取れる紗夜と目の前にいる紗夜とでは印象がまるで違うからだ。
日菜(あの勇者御記に書かれていた恨み辛みの内容を今私の目の前にいる紗夜ちゃんが書いたとは到底思えないよ…。)
紗夜「どうしました?さっきからボーっとしてますが…。」
日菜「………ううん。何でもないよ。」
日菜は笑って返した。
日菜「でもこれだけは言える。今の紗夜ちゃんだったらきっと未来だって変えられるはずだって。」
紗夜「?ふふ…変な事を言いますね。」
日菜「あはははっ!!じゃあ戻ろっか。みんなを待たせると悪いしね。」
紗夜「そうですね。」
2人は部室へと戻っていった--
--
2人が去った樹海に赤嶺が現れる。
赤嶺「氷川と氷河……まさかそんな繋がりがあったなんてね。つぐちんが言ってた事は本当だったんだ--"氷河家"の先祖が"氷川家"だったって事。」