例えそこにどんな運命が待っていようとも。
赤嶺「……もう一度言うよ。造反神を倒して帰るか、倒さないでここにいるか……どうする?」
赤嶺香澄によって選択を迫られる勇者部一同。今、勇者達に最後の決断の時が来ようとしていた--
---
勇者部部室--
赤嶺「--何だか気不味い空気になってるけど、事実確認が優先じゃないかな?私が色々と話した情報がデマかどうか……それぞれ裏が取れる人はいるでしょう?諏訪がどうなったのか。そこの夏希ちゃんがどうなったのか。」
赤嶺は沙綾の方を見る。
中たえ「…こんな形で伝えたくなかったけど、沙綾と決めてたんだ。隠すより言おうって……。」
中沙綾「……夏希は御役目の最中で、世界を救い……命を落とした。だからここにはいない。」
---
たえと沙綾が負傷してしまい、夏希はたった1人で3体ものバーテックスから世界を救い、そしてその命を散らした--
夏希「化け物には分からないだろ、この力!!」
夏希「これが…これこそが、人間様の!」
夏希「気合と!!」
夏希「根性と!!」
夏希「魂ってやつよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!!」
---
夏希「…………!」
小沙綾「そ、そんな……。」
小たえ「夏……希……。」
小学生の沙綾とたえはその悲しすぎる事実に言葉が出てこなかった。
中沙綾「だから私としても、どうにかする方法はないか、おたえ達と話してた。小学生の私達に記憶を持ち帰らせる事が出来れば、歴史を変えられるから。」
中たえ「……でも、そんな方法はまだ見つからない。」
ゆり「さ、沙綾ちゃん……。そんな事を本人に……。」
だが、夏希は2人の意に反して落ち着いて答える。
夏希「大丈夫です、ゆりさん。何となくそうかなって……。心の何処かで思ってました。」
中沙綾「え……?」
夏希「だって、沙綾……山吹さんは、時々一緒に寝るけど、抱きしめ方が凄いって言うか。それに、私を助けてくれた時、私を見ている目が涙ぐんでる時もあったし。」
中沙綾「………そこまで態度に出てたなんてね。」
夏希「まぁでも、お前は既に死んでいるとかだったらどうしようかと思ったけど…現時点でまだ生きてるなら、本番で何とかして歴史変えてみせますよ。」
夏希は笑顔で中学生の2人に言うのだった。
小沙綾「と言うか絶対そんな目に合わせない!ね、おたえ!」
小たえ「うん!これからは常時張り付いてるよ!」
夏希「う、嬉しいけどくっつきすぎだって!」
そして蘭の態度も落ち着いていた。
蘭「諏訪の方も、察しはしていたよ。だから何も心配しないで大丈夫。」
モカ「蘭……。蘭がいなかったら、怖くて叫んでたかも。だって私達の頑張りは……。」
友希那「諏訪とは通信が取れなくなっただけで、あなた達がどうなったかの記録は無いわ。ただ1つ言えるのは、四国が決戦に備えられたのは美竹さん達のお陰なのよ。」
丸亀城での決戦が迫る中で、美竹蘭がいる諏訪が敵を引き付けてくれた為に四国は準備を進めていく事が出来たのである。
蘭「粘ってた意味はあったんですね。なら何より。」
蘭もまた笑って答えるのだった。
ゆり「……どうして2人ともそんな笑って言えるの?」
モカ「それは、蘭が蘭だから……。」
赤嶺「南西の諸島も、北方の大地からも。壁の外が火の海になり生命反応が途絶える。」
薫「…赤嶺。何処か無理して話してないかい?」
赤嶺「け、敬愛している、お姉様に関する話をしているから。」
薫「いや、その前からそんな感じがしているよ。」
美咲「冗談じゃないって。私はこの世界で楽しくやっていきたいよ。そう、戻らなければ良い。それで全てが解決する。簡単な話だよ。」
美咲の決意は固かった。
美咲「みんな、色々と情報が揃ってきたところで本音を言い合わない?戻るべきか、戻らざるべきか。」
そして決断の時は間もなく訪れる。
美咲「さぁ、それぞれが本音を言う時間だよ。1人1人の意見を聞いて、戻らない派が多数なら、戻らないでおこうよ。」
リサ「1つだけ良い?その意見の判断材料になる情報がある。」
美咲「この際だから全部話して。」
リサ「ここは神樹様の空間な訳で、維持するのにも神樹様のエネルギーを使うんだ。まぁ自身の世界だから、外で結界を張るほどの労力じゃないんだけど。とにかく"無限に、永遠にいる事は出来ない"。それだけは伝えておくよ。」
例えここに残る選択をしても、ずっといる事は出来ない。いつかは元の世界に帰らなければならないのである。
香澄「いずれちゃんとした話し合いをしたいと思ってたけど、何だか急になっちゃったね。」
美咲「こっちとしても戸山さん達と揉めたい訳じゃないから、そこは謝るよ。戸山さんや美竹さん達は本当に優しくしてくれたから。お陰で、こういう状況でも心は幾分穏やかだよ。」
そして最初に美咲が話し出す。
美咲「造反神を倒すのには反対!みんなでいられるだけここにいよう。ギリギリの所で造反神鎮めて幕引きとか、そういうのが良い。」
あこ「普通にそれで良いと思うんだけど。現実に戻れば時の流れは召喚地点に戻るなら、いられるだけいてもバチは当たらないんじゃない?」
あこが言うのも最もである。
中たえ「リスクも考えよう。その上でとことん話そう。」
イヴ「まず造反神を野放しにしておくと、どんな逆転劇をされるか分かりません。」
ゆり「確かにね。私達もギリギリの所から盛り返した訳だし。」
日菜「鎮められる時に鎮めておかないと危険な可能性があるって事だね。」
燐子「それこそが…赤嶺さんの狙いだと思います…。つまり完全には降伏していない…。」
あこ「なるほどー。頭良い。」
赤嶺「私は事実を言ってるだけだから。」
彩「後は神樹様のエネルギー問題だね。さっきリサちゃんも言ってたけど。」
リサ「この空間維持にも力を使ってるって事だね。」
彩「ここで私達が長く居過ぎると神樹様の地力が落ちちゃう。」
美咲「なるほど。その話を聞いた上でも、私は限界までここにいたい。」
ここに居続けるリスクも出揃った。各々は再び本音を話すのだった。
蘭「それじゃあ、話題に出てた私が話すよ。」
蘭の選択は--
蘭「私は戻るを選ぶ。」
モカ「…そうだね。蘭なら絶対にそう言うと思った。」
蘭「…もちろん、長くここにいたいけど。神樹に悪い影響が出たり、造反神に逆転の目を与えそうになる前には決着を付けるべきだよ。諏訪のみんなが待ってるし。現世の運命は変えてみせるよ!」
そう話す蘭の目には微塵の恐怖も無かった。
美咲「……美竹さんは強いね。真なる勇者だよ。良い人過ぎるよ……。」
蘭「そうでも無いよ。これからわがままを言うから。」
美咲「え?」
蘭「モカ。」
モカ「何?蘭。」
蘭「諏訪に戻ったら危ない。こんな事を聞いておいて尚、私はモカと一緒にいたい。」
モカ「っ!」
蘭「モカに一緒について来て欲しい。そうすれば私は、全力以上の力で戦えるから…。危ないって分かってるのに…私はモカと一緒にいたい。」
そう言って蘭はモカの手をとった。
モカ「………私、オーバーな話かもしれないけど、まだ平和な時に日常の中で時々思ってたんだ。なんで私は生まれて来たんだろうって……自分に自信も無かったし。」
蘭「モカ…。」
モカ「でも今、分かった気がする。私が生まれて来たのは、きっと蘭に会う為だって。置いて行かれるより全然良いよ。その言葉、本当に嬉しい。」
蘭「……ありがとう。」
モカ「私は蘭と行くよ!何処までも。」
蘭「……危ないのにね。でも私も嬉しい。ね、わがままでしょ。」
美咲「……ううん。ますます好きになりました。美竹さんも青葉さんも。だからこそ!!私は戻りたくない!!他の人はどう?」
夏希「じゃあ次は同じく話題に出てた私の番だね。」
次に話し出したのは夏希だった。
夏希「私はこっち!戻る!!」
夏希も戻るを選択する。
中たえ「…そうだよね。夏希ならそう言うよね……。」
夏希「私は戻っても友達がいるからこういう事が言えるだけ。弟達や家族がね。」
蘭「そうだね。私だってモカがいるからなんとか強くなれてる。」
薫「ここに長く居続けた分、何かしらアクシデントが起こるのなら……私も、戻るよ。」
薫も戻るを選んだ。
美咲「薫さんも、友達が待ってるの?」
薫「みんなだよ。沖縄のみんなが待ってる。」
美咲「薫さんも勇者過ぎるよ……。私はあなた達程強くない。」
小沙綾「ちょっと待って、夏希!私は美咲さん側だよ!ここに残る!」
小たえ「同じくそうだよ!あんな話を聞いて、夏希をただ戻す事なんて出来ないよ!」
2人は残るを選んだ。
小沙綾「そうだよ!せめて対策が見つかるまではこっちにいないと、夏希!」
夏希「対策が見つかるなら私だって残りたい。例えば期限を決めて、この日までは記憶を残す手段を全力で探すとかは、寧ろ是非やりたいよ。でも、いよいよ見つからず造反神を放置して御役目失敗になる危険が出たら……。私はキチンとやる事やって帰りたい。」
友希那「私も同じ考えよ。だけど、こうも死を告げられてこの意見を出せるなんてね。」
夏希「ちょっと驚いたよ。真面目な沙綾が神樹様の意志の逆を選ぶなんてさ。」
小沙綾「だって……だって夏希!あなたがもしいなくなるなんて考えたら……。そんなの絶対ダメだよ!帰るなんて言えない!」
夏希「沙綾……。」
赤嶺「………。」
赤嶺はただ無言でみんなを見つめている。次に意見を出したのは西暦組だった。
友希那「私は戻る派よ。たださっき海野さんが言っていたように最大限、努力をしてからよ。でも、これは戻る派全員に言える事かしら。すぐに帰りたい人はいないでしょう。」
リサ「私も戻るを選ぶよ。神樹様から色々と神託を受けてる立場だしね。」
紗夜「私は帰ると言われたら、残るを選びます。現実世界に戻れば、再び多くの人が私を勇者だと認めてくれるかもしれません。……でも良いんです。ここには、みんながいるんですから。」
高嶋「高嶋香澄も残る派で!……全員が帰る選択肢に納得するまでは帰りたくないよ。」
あこ「あこは帰るのは有りだと思う。」
燐子「私も…怖いけど、あこちゃんと同じです……。」
紗夜「過酷な運命が待ってると明言されてるんですよ?」
あこ「やっぱりそこはほら。あこは、勇者だから。それにここは最高の空間だけど、神樹様が作った空間でしょ?ずっと居続けるのはどうかと思うんだ。前に言った通りあこたちは神樹様の思った上を行かないと!」
美咲「……。」
次に防人組が口を開く。
千聖「私達の立場も明確にしておくわ。戻る方を選ぶ。」
日菜「当然だよ。家名をあげてナンボ。私も戻るよ。」
イヴ「じゃあ私も戻ります。」
友希那「若宮さん。さっきからさらっと決めているようだけど…。」
友希那の言葉で、イヴがもう1人のイヴに変わる。
イヴ「自分が無いと思われるだろうが、何があっても白鷺について行くのが意志だ。」
モカ「その気持ち分かるよ。」
イヴ「そして、千聖さんについて行くのは私の意志でもあります。」
彩「私は、神樹様の導きに従うよ。」
花音「ふえぇぇぇっ……。私は嫌だよ、現実怖いから帰りたくないよ……。お、怒らないでぇ千聖ちゃん…。」
千聖「それが花音の意志なら尊重するわ。ええ、怒ってなんかいないわよ。」
千聖はそう言いながら花音に冷たい視線を送る。
花音「絶対怒ってるヤツだよそれぇ……。」
蘭「良いリーダーだね、白鷺さん。私なんて、問答無用で引きずり込んだし。」
花音「む、寧ろそうして欲しいな…。千聖ちゃんが、何があっても守るって言ってくれれば……ちらっ。」
千聖「しーん。」
花音「千聖ちゃんが厳しいよぉ。」
小沙綾「後はゆりさん達ですね。」
美咲「花咲川中学のみんなはどう?」
残すは花咲川中学勇者部の6人のみ。この選択で全てが決まる--
ゆり「--答えはもう出てるよ……。私は残る!さっきからそうしようと思ってたから。」
蘭「ゆりさん、それはまたどうして?」
ゆり「答えはあなた達だよ蘭ちゃん。夏希ちゃんだってそう。燐子ちゃん達だって、薫も!普通逆でしょ?死ぬなんて言われてる人達が戻る事を選んでるなんて。」
美咲「本当にね……。普通それ聞いたら絶対に戻りたくない。なのに……勇者故にさぁ。良い人達だからさぁ。」
ゆり「何だか納得いかない。」
りみ「私もお姉ちゃんと同じ意見だよ。」
中沙綾「私も残るを選ぶ。また会えた夏希と別れたくない!」
中たえ「そうだね。私も…。だからここに残りたいよ。」
夏希「そこまで言ってくれるのは嬉しいものがあるけど。」
有咲「香澄、どうした?顔色悪いぞ。」
香澄は何か考え事をしているようだった。
香澄「…死ぬって事について考えてたんだ。……そしたら怖くなって。みんなを帰したくないって思う。あ、ごめん。何だか混乱して変な事言ってるかも。」
不安が押し寄せてくる香澄を有咲はそっと抱きしめる。
有咲「……良いんだ。そうだな、みんなで生きたい。…って事で、私も残るを選ぶ!」
美咲「市ヶ谷さん達…ありがとう。」
全員の意見が出揃った。帰る派は、蘭・モカ・夏希・薫・友希那・リサ・あこ・燐子・千聖・イブ・日菜・彩の12人--
残る派は、美咲・小沙綾・小たえ・紗夜・高嶋・花音・ゆり・りみ・中沙綾・中たえ・有咲・香澄の12人--
12対12……票は真っ二つに分かれた。
千聖「何とかこの状況を解決しないと。でないと高知の残りを取り返しに行けないわね。」
美咲「うん。あなた達だけで取り返しに行こうなんて思わないでよ。取り返したらここから帰らなくちゃいけないんだから。そうなるのは嫌だから……最悪邪魔しなきゃいけなくなる。」
小沙綾「それは…少し喧嘩腰過ぎるような。」
美咲「逆に喧嘩しないように言ってるんだよ。」
友希那「だけど、脅しにも聞こえるわ。穏やかじゃないわよ。」
美咲「穏やかじゃありませんよ。生き死にの問題なんですから。……命を守る為なら見苦しくもなります。それが悪い事だとは思いません。」
中沙綾「美咲………。」
リサ「っ!?こ、これは!」
意見がまとまらない中、樹海化警報がけたたましく鳴り響く。
リサ「そんな………ま、まさか!?」
友希那「リサ?」
リサはいつにも増して動揺している様だった。
赤嶺「--ああ……遂に動いたね。」
赤嶺「造反神サマ自らの出陣だよ。」
終わりの時が迫る--