次回、第6章完結となります--
過酷な運命が待つ元の世界に帰るべきか、帰らざるべきか勇者達の議論は続いていたが、
リサ「っ!これは!?みんな敵が動き始めたよ。しかも………造反神!?」
友希那「何ですって!?造反神自らが出てきたというの!?」
敵襲警報は造反神出現の知らせだった--
モカ「今まで神託が無かったのに、どうして急にこんなタイミングで。」
燐子「タイミングが悪すぎます…今来られたら……はっ!?」
赤嶺「……ふふ。」
燐子は赤嶺の笑みを見て全てを察したのである。
燐子「…これもあなたがタイミングを計って…。」
友希那「とにかく行くわよ!!」
勇者達は議論を中断し、樹海へと急ぐのだった--
---
樹海--
香澄「あの、大きいのが造反神……?」
紗夜「何だかUFOっぽくも見えますね。まさか天の神は宇宙人だったとでも…。」
中沙綾「違う。あれはUFOと言うより、まるで巨大な鏡…。」
様々な考察をする中、造反神は攻撃を仕掛けてくる。
有咲「っ!くるぞ!!」
造反神は中心から巨大な火球を放ってくる。それはまるで--
ゆり「これは"獅子型"の火球!?」
りみ「凄い攻撃力…こ、こんなものをまともに浴びたら…。」
そして造反神は続けざまに水球を広範囲に放ってくる。
夏希「うわっ!!"獅子型"だけじゃない。今、"水瓶型"の技まで。」
日菜「それだけじゃない…!"蠍型"の刺突攻撃に"天秤型"の竜巻まで!」
造反神は勇者達が今までに戦ってきたバーテックス全ての技を使ってきたのである。
香澄「わぁぁ!!星屑を沢山吐き出してきた!!」
小たえ「大変だよ迎撃しないと!」
勇者達は取り敢えず目の前の星屑の群れへ攻撃を開始するのだった。
---
イヴ「…星屑は何とかなりましたが、造反神を何とかしない事には…。」
千聖「全員で連携しないと危ないわ!!」
造反神を打ち倒す為には、全員の力を合わせなければ勝つ事が出来ない。
友希那「緊急事態よ!手を貸して!」
高嶋「うん、分かってるよ友希那ちゃん!」
造反神を倒す事、それは元の世界に戻る事と同義--
美咲「それでも、こいつを倒しちゃったら…。終わっちゃうんじゃないの!?」
日菜「もう!みんなの動きがバラバラだよ!これじゃあ勝てない…!」
決断が出来ていない勇者部が造反神に勝てる筈も無かった--
友希那「っく!今のままだと犠牲が出る!!一旦退くわよ!!」
友希那の判断は正しかった。勇者達は已むを得ず撤退を余儀なくされる。
---
勇者部部室--
花音「はぁ、はぁ、はぁ……。に、逃げ切ったよ…。」
モカ「みんな無事で良かったよ…。」
友希那「リサ、私達は逃げてしまったわ。土地はどうなってるの?」
リサ「大丈夫だよ。なんとか奪い返されるまではいかなかった。」
リサの言葉に胸を撫で下ろす勇者達。
リサ「だけど造反神の力が一気に増してる。もし、次また同じ事が起これば…。」
彩「…再び土地は奪われていくよ。」
友希那「そんな…。しかもリサ達が事前に情報を掴めない敵襲なんて…。」
戦況は一気に造反神側に傾いていた。
燐子「何から何まで規格外…。あれが、造反神…!」
千聖「早く意見をまとめないとまずいわ。心がバラバラだと勝てない。」
焦る勇者達に赤嶺は揺さぶりをかける。
赤嶺「でもでも、倒しちゃったらみんな、元の世界に戻るしかなくなるよ?」
千聖「くっ…!」
赤嶺「さぁ、どうするのかな…?」
千聖「造反神の力は凄まじいわ。今度負けたら土地を奪われるだけじゃない。恐らく私達の中から犠牲が出る…。そんな事は絶対にさせない!!」
友希那「リサ達に、かけあってみるのはどうかしら?造反神を鎮めても暫くこの世界にいさせてくれるように。」
あこ「それが1番良いよ。平和にしてから記憶を持ち帰る突破口を探れば良いんだよ。あこだってみんなと離れたくないから。」
美咲「でも、山吹さんの話とか聞いてるとさ。散華の事で、上から真実をはぐらかされてるよね。神樹が100%信用出来ない。交渉するなら造反神というナイフが健全な状態の方が良いような。」
彩「神樹様は信用出来るよ。全ての恵みを下さってるんだから。」
日菜「美咲ちゃん。少しは譲歩したらどうかな?」
気持ちがバラバラになっていく--
紗夜「…………。」
高嶋「さ、紗夜ちゃん、どうしたの?」
紗夜「心が痛いんです…。現実には戻りたくないけど、こんな光景を見ているのは嫌です…。」
殺伐とした雰囲気の中、燐子が声を上げる。
燐子「みなさん…良いでしょうか…!いえ、許可が貰えなくても話します…。」
あこ「りんりん…。」
燐子「まず、現在の状況は赤嶺香澄さんの思う壺だと覚えておいてください…。」
赤嶺「頭良い人多いし、それぐらいは分かってると思うよ?でも私の言う事は真実だし--。」
燐子「すみません…少し黙っていてもらえますか!!」
燐子が力強く赤嶺に言い放った。
燐子「赤嶺さんは降伏したと言ってこちらに入り込み…私達の分裂を煽ってきました…。」
中たえ「でも、赤嶺が言う通りな所もあるよ。どっちみち話さなくちゃいけない事だから。」
美咲「この状況はなるべくしてなったと言えるよ。」
モカ「ずっと心配していた事だった。戸山さん達が信頼を築いてくれたお陰で落ち着いて話は出来るけど。」
燐子「話を続けます…。今のままでは造反神が暴れてしまい、土地を取られて御役目失敗…。結局ここの世界にいられなくなってしまいます…。それはみなさん誰も望んで無い筈です…。」
有咲「そうだな。それは私だって嫌だ。」
燐子「だから問題解決に向けてみなさんでとことん話し合うべきなんです…。」
夏希「その事について私から発言があります!!」
小沙綾「夏希……?」
この夏希の発言が勇者部達の運命を変える事となる--
夏希「私を心配してくれる沙綾さんやたえさんの心遣いは本当に嬉しいです。でも私は運命を跳ね除けてみせる!!!死ぬだって!?私を舐めるんじゃないぞ!!」
中沙綾「そんな気持ちも、戻れば覚えてないんだよ夏希…。」
夏希「なら私の力を見せてやる!運命を切り開く勇者のパワーを!!」
小たえ「え!?夏希、それってつまり、私達と……?」
夏希「試合だ試合!!で、みんなを安心させてやる。私がメガ強いってね!!」
戻る派対残る派の戦い--
夏希は今の自分の強さを見せつける事で、残る派を納得させようと提案してきたのである。
千聖「腕っ節で会話するというのは、分かりやすくて良いわね。ね、花音。」
花音「ふえぇぇぇっ!!確かに千聖ちゃんが好きそうな事だけど、こっちを見ながら言わないでぇ!」
香澄「本当に良いかもしれない!とにかく色々と話し合うべきだよ。」
高嶋「その話し合いの1つとして、試合してみるのもありだと思う。」
薫「想いを拳に乗せる…儚い。賛成だよ。」
美咲「確かに悠長に話し合っている隙に任務失敗でこの土地を放り出されるなんてオチは御免だし。試合形式の対話も、已む無しか。……これは負けられないよ!」
勇者達は1つの解決策として闘い合う事を選択。河原へと移動するのだった。
---
河原--
蘭「こういう形で香澄達と拳を合わせるなんて思ってなかったよ。」
日菜「意見が分かれたら勝負っていうのは分かりやすくて良いよね。」
千聖「そうね。花音は特に念入りにつつくとしましょうか。」
イヴ「ハハッ。白鷺ってば松原と意見分かれたの結構ショックだったんだろ。」
薫「こちらには巫女の援護もある。負ける訳にはいかないよ。」
彩「………。」
千聖「彩ちゃん。不安だと思うけど私を信じて。今は空中分解してるけど、着地してみせる。」
千聖は彩を抱きしめる。
彩「千聖ちゃん………分かったよ、ありがとう。」
リサ「美咲達が来るよ、友希那。」
反対側から美咲達残る派の勇者が来る。
友希那「行くわよ。これも会話の1つ。そして手を抜くのも失礼よ。全力で行くわ。」
だが、そこへ赤嶺が余計なひと手間を加えてきたのである。
赤嶺「それじゃあ盛り上がるように疑似バーテックスも放ってあげるよ。」
赤嶺が指を鳴らすとあたりから疑似バーテックスが出現する。
あこ「懲りないなぁー。混乱させようって作戦はりんりんが指摘したのに。」
イヴ「向こうはバーテックスを利用する気だな。まとめてこっちに来るぜ。」
夏希「上等だ!!私の心意気を見せるには不利なほど良いってね!」
そして勇者と勇者、そしてバーテックスを加えた三つ巴の戦いが始まる--
---
夏希サイド--
夏希「沙綾さん、たえさん……。」
夏希は中学生の沙綾とたえの前に立っていた。
中沙綾「夏希…。」
中たえ「本当に戦うの…?」
小学生の沙綾とたえは少し離れた所で疑似バーテックスと闘いながらその光景を見ていた。
夏希「勿論!!私の力を2人に見せてやる。手加減は無しだ!!」
夏希が2人に向かって突っ込んでくる。
中たえ「夏希!!」
攻撃してくる夏希をたえが槍で防御する。
中たえ「本当にどうしても戦うんだね?」
夏希「2人が安心出来ないのなら、私の実力で押し通す!!」
沙綾がスナイパーライフルで夏希の斧を狙うが、夏希はそれに気付き、咄嗟に距離を取った。
中沙綾「元の世界に帰れば、ここでの思い出はなくなっちゃう!!もう…………思い出せなくなるのは嫌だよ!!!」
記憶を無くす事は沙綾は既に体験していた。それは沙綾にとってトラウマとも呼べるものである。
夏希「例え頭が覚えてなくたって……心が覚えてる!!」
再び夏希は沙綾に向かって攻撃を仕掛けるが、再度たえが止めに入る。
夏希「確かに私だって2人と離れたくはない!だけど、2人には笑ってこれから生きて行って欲しい!!未来はどうなるか分からない。私は最後まで抗ってみせるよ!!来い"鈴鹿御前"!!」
夏希は"鈴鹿御前"を憑依させ。能力で増えた斧を沙綾に向けて飛ばす。
中沙綾「はっ!?」
沙綾のスナイパーライフルが斧で弾かれてしまう。
夏希「どうよ!」
中沙綾「頭で覚えてなくても、心が覚えてる……か。」
沙綾はその一言が胸に突き刺さる。それも体験をしていたからだ。散華によって小学生の記憶を無くしていたが、たえの事は何故だか時折思い出す事があったからである。
赤嶺「さすがに戻る組は気迫が凄いね。覚悟完了してるっていうか。」
夏希「2人も私を信じて!!笑って現実に送り出せってね!運命変えてみせるから!」
小沙綾「夏希なら…それが出来るかもって思える……。」
有咲「気持ちはしっかり伝わった。でも負けてばっかりってのも性に合わないからな。」
香澄「私はみんなが好き。ただそれだけを拳に乗せて。」
高嶋「ありったけの気持ちを届ける!」
赤嶺「こっちも気迫は負けてないか。よーし疑似バーテックスで盛り上げちゃおう!」
赤嶺は更に疑似バーテックスを呼び寄せた。
中たえ「……私達が駄々をこねてるみたいだね、沙綾。」
中沙綾「………それでも、それでも私は夏希を失いたくないから。」
戦いの中で様々な想いが交差していく。
花音「な、なんだかみんな燃えてる。それなら私だって…。」
紗夜「……心は固まりました。ですが、折角の場ですから。湊さんに体当たりしてみようかしら。」
友希那「あら?紗夜が私を見ている?……もう一度ぶつかろうっていうのね。ならば行くわよ紗夜!!」
互いの想いと想いのぶつかり合いはそろそろ終わりの時を迎えようとしていた--
---
あこ「はぁ………はぁ……。な、中々やるね、みんな…。」
日菜「さ、さすがに2回の激突で体が動かないよ……。」
想いのぶつかり合いでは勝負が付かず、両陣営ともに満身創痍の状態だった。
ゆり「まだまだ………体は動かなくても、口を動かすだけなら出来る…。とことんまで話そう。」
日菜「上等だよ………。」
--
花音「夏希ちゃんは偉すぎるよ。自分の身が危ないのにどうしてそんなに覚悟を固められるの?」
夏希「自分の身だからじゃないですかね?沙綾やたえが危ないって聞けば私も反対しそうで。」
あこ「これ……正解無いよね。美咲の意見は勿論分かるし。他のみんなも、それぞれがお互いの事を考えたり。残してきた人の事を考えてる。そのどれもが正しいよね?」
紗夜「初めからそうです。だからこそ納得いくまで色々な方法で話し合っているんです。」
千聖「元に戻ると記憶が消えるのが大きな問題ね。何とか解決したいけど。」
燐子「忘れられないほどの事をしてみる……とか。すみません…自分でも何を言ってるのか…。」
リサ「私は信じてるよ。この世界の記憶を元の世界に持って帰れなくても…心に刻まれた想いは消えないってね。」
リサの言葉は夏希が戦いの中で言った言葉と同じだった。
高嶋「そうだね。私も消えないと思うな。メッチャクチャ強く思ってるから。」
中沙綾「香澄と同じ事を言うんだね、高嶋さんは。」
美咲「理論を超えた想いか…。でも、みんなの熱さも伝わって、今は何となく分かるかも。こんな濃いみんなの事をサッパリと簡単に忘れる事なんて出来ないんじゃないかって。」
香澄「美咲ちゃん……。」
美咲「…それに、かっこいいみんなを見てたら、わがまま言ってる自分が恥ずかしくなってきたよ。」
香澄「……恥ずかしくない。全然恥ずかしくなんかないよ、美咲ちゃん。」
美咲「ありがと。…さっきあこが言ってた事もさ、私結構響いてるんだよね。ここはとても素敵で楽しいけど、神樹が作った夢の世界みたいなもの。そこでずっと暮らしていくのも、なんだか巣立たない雛みたいで、ちょっとね。……そんな訳で、出来るだけ長くいたいけど、帰る時が来たら潔く帰るって意見に変更します。」
みんなの熱い気持ちを受け取った美咲は自分の意見を変えたのだった。
紗夜「この世界はとても楽しいけれど、みんなと争ってまでいるものでは無いわね。私も奥沢さんと近しい意見という事で。出来るだけ長くいたいけど帰る時は帰ります。」
千聖「花音、もういいわね?」
花音「……分かったよ。」
美咲に続いて他の残る派のみんなも変える意見に賛同する。
夏希「で、どうして沙綾とおたえはくっついてるんだ?」
小沙綾「夏希が私より頑固だとは思わなかった。意見を変える事はないでしょ。」
小たえ「ならもう、つきっきり作戦だよ。」
夏希「……あははっ、2人もありがとう。」
夏希は2人の頭を撫でた。
中沙綾「夏希…。」
夏希「沙綾さんとたえさんもほら、よしよし。」
中たえ「夏希……。」
蘭「暗くならなくても良いよ。運命なんて変えてみせるから。だけどもし、万が一負けても………何かは残してみせるよ。そうすれば私じゃなくても誰かがバトンを繋いでゴールを切ってくれるでしょ。」
有咲「………みんなの気持ちも分かった。そして造反神は強い。」
ゆり「団結して戦いましょう。りみ、香澄ちゃん、それで良い?」
りみ「うん、お姉ちゃん。」
香澄「はい。………美咲ちゃん。」
美咲「私はもう大丈夫だよ。本当にありがとう、味方してくれて。」
香澄「………うん。」
勇者達の意見はまとまった。みんなは赤嶺へと詰め寄る。
ゆり「造反神が暴れる前に意見がまとまったわよ。残念だったね、赤嶺香澄。」
有咲「私達はまた団結して、戦う!」
赤嶺「そっか。うん。………うん。」
赤嶺はどこか晴れやかな顔をして全員に話しだす。
赤嶺「……お見事。良いものを見せてもらったよ。今、心から降伏する--。」
赤嶺「--私もあなた達に味方するよ!」
赤嶺は勇者達に降伏を宣言したのだった。
リサ「って事は、やっと本心を話してくれるんだね。何か事情がある事は察してたけど。」
薫「途中、憎まれ口を叩いている時は辛そうだったからね…。」
赤嶺「うん、謝っても許されないけどそれでも謝る。ごめんね。……ここまですっごく長かった。今、全てを話すよ--。」
赤嶺香澄の口から今、この世界の真実が語られる--