戸山香澄は勇者である   作:悠@ゆー

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第6章、最終回となります。

第1章からここまで読んでいただき本当にありがとうございました。ここまで書けたのは皆さんのお陰です。




みんなの進む未来

 

 

それぞれの想いを確かめ合った勇者達は、御役目を全うし戻る事を選択する。紆余曲折あったものの、再び1つとなった勇者部を見て、赤嶺香澄は遂に降伏。そして、この世界が何の為にあったのか、その真実を語り出したのであった--

 

 

---

 

 

勇者部部室--

 

有咲「ようやく全貌が明かされるんだな。色々と長かった。」

 

赤嶺「説明苦手だから一気に話しちゃいたいよ。全員揃ってるかな。」

 

友希那「……?外が何かおかしいわ。昼間なのに、やけに月が大きく……。」

 

友希那の言葉で一同は外を見るが、そこに月は昇っていなかった。

 

紗夜「大丈夫ですか、湊さん。」

 

友希那「……ええ。ごめんなさい、話を始めて。」

 

赤嶺「赤嶺家は何かっていうのは前に話したから、今度は造反神の目的について話すよ。実は今回の騒動、造反神からの試練だったんだ。薄々感づいてる人もいたと思うけど。造反神は試練を出す神様としても有名でね。」

 

あこ「どういう事?」

 

中たえ「試練……つまり私達は試されてたんだよ。造反神というか、神樹様から。」

 

燐子「造反神という神は…初めから造反していなかった…という訳ですね。」

 

ゆり「………どうしてこう、人に潰してやるって思わせるのが上手いんだろうね。」

 

つまりこの世界での出来事は全て神樹の自作自演だったという事になる。

 

赤嶺「神樹様の中にこうしてみんなが集められた目的の1つが、演習の為だったんだ。」

 

香澄「演習?」

 

赤嶺「そう。これから現実では天の神と一戦交えて、奪われた土地を取り戻す戦いがある。これはその演習。」

 

中沙綾「そんな作戦があるっていうの?」

 

赤嶺「確か……"国造り"って言うらしいね。」

 

紗夜「陣地の奪い合いが多かったのはそういう事だったんですね。」

 

赤嶺「そしてみんなは見事に試練をクリアした。私の色々な工作も乗り越えて。精神攻撃も。分裂した最後が1番大変だったと思うけど……本当に嫌な仕事だったよ。まぁ、工作が専門の赤嶺家だからね。こういうのも御役目だけれど。」

 

薫「君がこの世界に呼ばれたのも、試練の一部だったという訳だね。」

 

有咲「ん?って事は……。」

 

赤嶺「そういう事。私が造反神に味方する名目を何にしようかなーと思ったけど、私の時代ならではの理由って言っておけばさ。同時代の人はいないから煙にまけるかなって。」

 

有咲「それで試練を与え続けてたって訳か。」

 

赤嶺「後は最後の試練、造反神を倒せば終わり。天の神を模した姿で出てくる筈だよ。」

 

友希那「天の神を模した姿ね……。演習の仕上げにそんなものが出てくるという事は。」

 

有咲「実際の戦闘でも、最後に出てくるのは天の神なのか…。」

 

あの鏡の様な姿、そして全てのバーテックスの攻撃が使える、それが天の神という事になる。

 

千聖「にしても、もどかしいわね。演習したのに私達は記憶を持ち越せないなんて。」

 

イヴ「今回のデータに基づいて神樹様側で作戦を立ててくれるって事でしょうか。」

 

赤嶺「戦況なんて刻一刻と変わるからね。実際の世界で天の神側が思惑通りに動く分からないけど。」

 

有咲「これって演習って言えるのか?」

 

有咲の言う通り、この前造反神を鎮めたところで、鎮めた記憶は消えてしまう。全くもって徒労に終わる事になる。

 

赤嶺「効果薄めに聞こえるよね。そこで!みんなが集められた理由の残りの1個が出てくるんだよ。」

 

彩「それは一体…?」

 

赤嶺「この空間で勇者達が試練と相対してるのを見ているのは造反神や神樹様だけじゃないんだ。私が言った台詞でこれを覚えてる?"中立の神様も存在する"ってやつ。」

 

燐子「確かに言ってました…。造反神や天の神に近い格を持つが中立の立場の神様という存在……。」

 

赤嶺「その神……えっと、中立神って呼ぼうか。中立神が天の神側に加勢しないように人の可能性を見せておきたかったんだって。人が天の神と向かい合ってる時に、天の神に加勢する存在が来たら、もうどうしようもないからね。」

 

中たえ「神様数多いんだねー。そこは分からなかったよ。」

 

赤嶺「話してる私すら、ぼんやりしてる所だから。」

 

夏希「で、人間の格好良い所は見ていただいて、中立神はこっちに味方してくれるの?」

 

赤嶺「少なくとも今回の活躍を見て、敵に回る事はなくなったよ。」

 

日菜「ぞっとする話だね…。ただでさえ天の神には手を焼いてるのに。」

 

花音「下手したらそこに加勢が来てたかもしれないなんて…。」

 

千聖「でも防げたのなら良しとしましょう。確かに、これは大きいわ。」

 

友希那「中立神ね……。どこか懐かしい響きがあるような。」

 

その後も赤嶺の話は続いていく。

 

 

--

 

 

彩「赤嶺ちゃん。お茶をどうぞ。」

 

赤嶺「ありがとう……。美味しいよ彩ちゃん。御役目とは言え、色々した私に優しいね。」

 

彩「いやいや。神樹様のご意志なんだし、それにもうみんなと赤嶺ちゃんは友達だよ。」

 

薫「そうだね。これからは仲良くしていこう。」

 

赤嶺「じゃあ、これからはお姉様に甘えます!……でも。心の中に残るなぁ。申し訳ない気持ちが。こう、ガツーンと殴ってくれない?」

 

香澄「えぇ!そんな事出来ないよ。あ、じゃあくすぐりの刑で良いや。こちょこちょ。」

 

赤嶺「あ、あはは、あははははっ、ちょ、ちょっと。」

 

そこに高嶋も参戦する。

 

高嶋「さぁ、私達と香澄トリオを結成するかな?こちょこちょー!」

 

赤嶺「す、する!するってば、あははっ!」

 

中沙綾「……私達もくすぐりに参加しようか、紗夜さん。」

 

紗夜「そうですね、山吹さん。高嶋さんに近しい外見で怪しい動きをしてくれたお礼をしないと。」

 

そして沙綾と紗夜もくすぐりに加わった。

 

赤嶺「ひゃっ!?ちょっ、2人とも!だ、ダメだって、ん、あはははっ……!!」

 

有咲「しっかし、赤嶺の家名が語り継がれてるのになんで造反神サイドに味方してたかと思えば…。」

 

イヴ「芝居だったなんて。私達が御役目を失敗したり放棄したりしたらどうするつもりだったんでしょうか。」

 

赤嶺「はぁ、はぁ…。それは大変な事になったんじゃないの。神様は無慈悲なところもあるから。」

 

千聖「演習で結果を出さなかった者はどうなるか、ね……。まぁ私がいる限りそんな結果にはさせないけど。」

 

その時地震が起こり、部室全体が大きく揺れだした。

 

りみ「こ、この揺れは、まさか!?」

 

リサ「造反神が動き出そうとしてるんだね?」

 

赤嶺「そうだね。でーんと待ち構えていればいいのに。なんていうか落ち着きないんだよね。じゃあ行こうか。私も味方として戦いの場所に案内するよ。」

 

赤嶺の先導のもと、勇者達は再び造反神の元へと出発するのだった--

 

 

---

 

 

高知--

 

赤嶺「着いたよ。ここで迎え撃つのが一番良いんじゃないかな。」

 

紗夜「最終戦は実家の近く…ですか。因果なものですね。まぁ良いでしょう。今はそんな事大して気になりません。」

 

高嶋「紗夜ちゃん格好いい!私も燃えよう!」

 

香澄「さーや、大丈夫?」

 

中沙綾「うん、大丈夫。ありがとう。」

 

モカ「みんななら造反神にも勝てるよ。美咲ちんファイト!」

 

美咲「任せといて。みんなといると誇りが持てる……。勇気が湧いてくる。」

 

薫「ああ、来て良かったよ。」

 

夏希「ここまで来たら言葉はいらない。行くよ沙綾、おたえ!」

 

小たえ「……うん。夏希!沙綾!」

 

小沙綾「うん。御役目を果たそう。おたえ!夏希!」

 

有咲「まったく、大した小学生もいたもんだな。さすがだよ。私達も負けてらんないぞ。」

 

燐子「りみちゃん……これで最後だと思うと少し寂しいけど…頑張りましょう…。」

 

りみ「はい、燐子さん。私、結構強くなったと思うんだ。だから、やります。」

 

彩「どうかみんなが無事に戻ってこれますように……。」

 

イヴ「ありがとうございます、彩さん。」

 

中たえ「他にも神様が見てるというなら見てもらおう、私達を。人を信じてもらいたいから。」

 

日菜「神様が見てるならどんどんアピールしなくちゃね。」

 

千聖「相変わらずブレないわね、日菜ちゃん。でもその姿勢は良いとも思ってるわ。やるわよ、花音。」

 

花音「怖い……。怖いけど、頑張るよ千聖ちゃん!」

 

ゆり「号令はあなたよ風雲児。いつもの宜しく!気合い入るからね。」

 

蘭「そうですね、湊さん。熱いやつ頼みます!!」

 

全員の視線が友希那へと集まる。友希那は深呼吸し、叫ぶ。

 

友希那「最後の戦いよ!!勇者達、私に続いて!!!!」

 

 

一同「「「おーーーー!!!!!」」」

 

初代勇者の名の下に、今、22人の勇者と防人達が造反神へと戦いを挑む--

 

 

---

 

 

樹海--

 

彼方から造反神がやって来る--

 

 

そして造反神を守る黄道十二星座のバーテックスが3体と無数の擬似バーテックス--

 

 

香澄「"射手型"に"蠍型"…。」

 

小沙綾「そして"獅子型"…。」

 

友希那「3体を突破しないと造反神には辿り着けない……ようね。」

 

香澄「行こう、みんな!これで最後だよ!!」

 

勇者部は一斉に走り出す--

 

 

--

 

 

美咲「まずは……うざったいお前からだよ!!」

 

美咲は"射手型"目掛けて槍を投げるが、"射手型"は下の口から針を無数に飛ばし、投槍の威力を殺す。

 

美咲「くっ!なら接近戦だよ!!」

 

遠距離がダメと悟った美咲は、"射手型"の懐目掛けて走り出す。すかさず"射手型"は再び針を無数に飛ばして来るが、

 

美咲「勇者……舐めるなぁーー!!」

 

美咲は投槍を回転させ盾を作り、針を弾いて距離を詰めていく。

 

美咲「っ!?まずいな…あれは防げないよ…。」

 

上の口から巨大な針を飛ばそうと、"射手型"は美咲に狙いを定める--

 

 

が、

 

花音「美咲ちゃん!そのまま進み続けて!」

 

美咲「か、花音さん!?」

 

花音「わ、私が美咲ちゃんを守るから…!」

 

美咲「……分かりました。頼りにしてます!」

 

花音「守って"波山"!」

 

炎の鳥が現れ、花音の護盾に憑依する。"波山"は自身ではなく、武器に憑依する精霊であり、武器に炎の力を宿す。

 

花音「怖い……怖いけど、美咲ちゃんを守る!それが私の役目!」

 

"射手型"が巨大な針を放つ--

 

 

それと同時に花音の護盾から炎が溢れ出し、巨大な防壁を展開する。

 

美咲「凄い……。巨大な針を防ぎきってる。」

 

花音「今だよ、美咲ちゃん!!」

 

美咲「オッケーです!解氷花槍舞!!」

 

蘭「倒した!?」

 

千聖「いや、まだよ!」

 

美咲の技は"射手型"に届いたが、倒すのにはまだ少し力が足りなかった。

 

美咲「薫さん!!美竹さん!!」

 

美咲の叫び声に、2人も渾身の一撃を放つ。

 

薫「はぁぁぁぁっ!!」

 

蘭「これで……眠れっ!!」

 

2人の攻撃がトドメとなり、"射手型"は光となって消えていく--

 

 

--

 

 

あこ「こんのぉ!!!」

 

有咲「あこっ、無理すんな!!」

 

あこ「大丈夫!まだいけるよっ!」

 

千聖「尻尾の根元を狙うわよ、有咲ちゃん!」

 

有咲と千聖は"蠍型"と戦っていた。刺突攻撃をあこが必死で防いでいる状況である。

 

千聖「私の"尊氏"で切り裂く!有咲ちゃんは援護を。」

 

有咲「……りょーかい。かましてけ!」

 

千聖「っ!?………ええ!」

 

有咲と千聖は昔は勇者候補生のライバル同士であり、千聖は有咲に負けてしまった。だが、今有咲は千聖の指示で動いている。有咲もそっちの方が勝てると思ったのだろう。

 

千聖「あこちゃん、もう少し粘ってね。」

 

あこ「う、うんっ!」

 

千聖は"尊氏"を憑依させ、"蠍型"の尻尾の根元へと近付いて行く。狙いは現実の世界でも千聖が"蠍型"に対してやった方法と同じである。

 

千聖(あの時は叩き斬るのに時間がかかったけど、ここなら私達の武器の性能は勇者と同等、そして精霊もある……。)

 

千聖「苦労は……無いわっ!!」

 

"尊氏"の力で威力が上がった銃剣で尻尾の根元を一撃で切り落とす千聖。

 

千聖「トドメは譲るわ、有咲ちゃん……。」

 

有咲「ああ、譲られるぜ!二双斬・瞬速刃!!」

 

有咲の剣戟が華麗に舞い、"蠍型"は切り裂かれ、光となる--

 

 

千聖(……やっぱり有咲ちゃんは凄いわね…。)

 

有咲「あこ、千聖、お疲れ。」

 

あこ「どんなもんだい!」

 

千聖「当然よ。」

 

 

--

 

 

残された"獅子型"に立ち向かっているのは--

 

夏希「負けるかぁぁぁぁっ!!」

 

紗夜「海野さん!あまり突出し過ぎないで!」

 

中たえ「大丈夫。私が夏希を必ず守るから!」

 

高嶋「行っくよぉーーー勇者パンチッ!!」

 

夏希、紗夜、高嶋、中たえが奮闘していた。

 

紗夜「私の"七人御先"が囮になります。その隙にみなさんは有りっ丈の力で攻撃してください。」

 

そう言って紗夜は"獅子型"に先行していく。

 

高嶋「紗夜ちゃん……。」

 

"獅子型"は巨大な火球を紗夜目掛けて放つ。

 

紗夜「いくらやられても、私は何度でも蘇るわ!」

 

中たえ「夏希、紗夜さんの負担を減らそう。」

 

夏希「分かった!高嶋さん、トドメは任せました!」

 

2人も隙を作り出す為に"獅子型"の気を引いていく。

 

高嶋「分かったよ………。すぐに終わらせる!来い"酒呑童子"!!」

 

高嶋は再び"酒呑童子"をその身に宿す。

 

高嶋「おぉぉぉぉぉぉっ!!!!」

 

高嶋は渾身の一撃を"獅子型"にお見舞いする。大きな地鳴りが響き、"獅子型"が後ろに吹き飛ばされる。

 

中たえ「今の"獅子型"は前に沙綾達から聞いた"融合型"じゃない。勝つのに難しくない筈だよ。」

 

"獅子型"は堪らず高嶋に火球を放つが、たえが槍を盾に変え、火球を吹き飛ばした。

 

中たえ「今だよ!3人とも!!」

 

夏希「今の私達を止められる奴はいないんだよ!!七彩双斬斧!!」

 

紗夜「ええ、私達は未来に進むんです!紅凶冥府!!」

 

高嶋「くらえぇぇぇぇっ!!!突貫勇者パーーーーンチ!!!!」

 

3人の必殺技が"獅子型"に命中--

 

 

最後の"獅子型"も光となって消え去った。だが、次の瞬間--

 

 

 

香澄「きゃあぁぁぁぁっ!!!」

 

造反神に向かっていた香澄達が吹き飛ばされてきたのだった。

 

中たえ「香澄!?」

 

造反神は擬似バーテックスを巻き込みながら、見境なく爆弾や火球、針を撒き散らし、樹海が火の海と化す。造反神の圧倒的な攻撃力に勇者達は地に伏せてしまう。

 

友希那「ぐっ……強すぎる…。」

 

千聖「見境が……無さ過ぎる。」

 

ゆり「こ、このままじゃ………。」

 

 

 

誰もが造反神の力に屈してしまいそうになる中--

 

 

 

ただ1人、諦めず立ち上がる勇者がいた。

 

 

 

 

香澄「はぁ、はぁ、はぁ………。ま、まだ…だよ……。」

 

りみ「香……澄ちゃん…。」

 

香澄「みんな!こんな所で諦めちゃダメだよ!!私は……私達は………勇者なんだから!!!」

 

一同「「「っ!?」」」

 

 

 

勇者だから--

 

 

 

 

その一言が勇者達に立ち上がる気力を与える。

 

友希那「そうよね……。私達は勇者よ。例え何があってもこの世界を守り抜かなきゃいけないのよ!!」

 

千聖「私は勇者じゃない……勇者になれなかった…。でも、今はそんなの関係ない!ここでみんなと戦う限り、今この瞬間は私も勇者よ!!」

 

蘭「そうだよ……。こんな所で寝てる訳にはいかないよ……。私の夢の為にも…みんなの希望の為にも……勇者がここで諦める訳にはいかない!!」

 

ゆり「みんな、立って!!勇者部五箇条!!」

 

一同「「「成せば大抵何とかなる!!」」」

 

 

その時--

 

 

全員の体が一斉に光輝いた--

 

 

薫「これは……。」

 

日菜「私達の精霊が……。」

 

光が収まり、勇者達全員の精霊が香澄の体に憑依する--

 

 

有咲「香澄の体が……。」

 

中たえ「これは……"満開"?」

 

中沙綾「違う……これは"満開"じゃない…。」

 

香澄「感じる……みんなの思いが、みんなの力が…。"満開"を超えた"満開"……名付けるなら、そう……"大満開"。」

 

 

 

香澄の勇者装束が変化し、背中に桜の花びらが現れ、目がオッドアイへと変化する--

 

 

造反神はすかさず香澄に攻撃を仕掛けるが、攻撃が当たる瞬間、精霊が現れてその攻撃を防いだ。

 

燐子「これは……。」

 

りみ「精霊バリア……。」

 

造反神の攻撃が香澄に届く事は無い。勇者部全員の精霊が香澄を守っているからである。

 

中沙綾「行って、香澄!!!決めちゃえぇぇぇぇっ!!!」

 

香澄は拳を握り、力を込める--

 

 

 

香澄(神樹様、ありがとうございました。私達の為にこんな試練を用意してくれて…。でも、もう大丈夫です。私は……私達は……何が起こっても、どんな未来が待っていても、それを乗り越えられる力を持っているから………。)

 

香澄「私は……戸山香澄は………勇者だから!!」

 

香澄は造反神に向かって飛んでいく。その間も造反神は香澄に攻撃してくるが、全く効いていなかった。

 

香澄「はぁぁぁぁぁっーー!!」

 

ゆり「決めて、香澄ちゃん!」

 

有咲「行け、香澄!!」

 

りみ「香澄ちゃん……!」

 

中たえ「託したよ、香澄…!」

 

中沙綾「かっ飛ばせぇぇ!香澄!!」

 

香澄「うん!!!」

 

 

香澄は拳を造反神に突き出す--

 

 

香澄「勇者ぁぁぁぁパーーーーーンチ!!」

 

 

香澄の渾身の勇者パンチが、造反神を貫いた--

 

 

--

 

 

小沙綾「造反神……復活…ありません。」

 

あこ「はぁ、はぁ……。へへ、や、やったよ……。」

 

千聖「全員、無事ね……ふぅ。」

 

有咲「……終わったな。ったく、とんでもねー敵だったぁ…。」

 

中たえ「試練だって言うなら……。私達の力、分かってくれたかな。」

 

香澄「分かってくれたよ……。ありったけの気持ちを乗せたから…。」

 

みんなが勝利を噛み締める中、樹海化が解け始める。遂に、終わりの時が来たのだ--

 

 

---

 

 

高知--

 

勇者部の勝利の凱旋に、巫女達が駆け寄ってくる。

 

リサ「みんな!お疲れ様。やってくれたね!!」

 

モカ「全土地を奪還出来たって!御役目、完了だよ。」

 

薫「………という事は、お別れだね……。」

 

だがすぐに転送は始まらなかった。神樹が少しでも長く一緒にいたいという願いを、細やかながら叶えてくれたのだろう。

 

美咲「ご褒美って事か……。あまり神様を疑うものじゃないね。」

 

リサ「だけど、あまり長くはいられないみたい。」

 

美咲「別れの挨拶が言えるだけでも嬉しいよ。」

 

ゆり「帰ろう、部室へ。」

 

勇者部は最後の時を部室で過ごす為、移動を始めたのだった。

 

 

---

 

 

勇者部部室--

 

彩「お掃除終わったよ。寮も部室もピカピカだね。」

 

勇者達はせめてもの恩返しとして、今まで使ってきた部室や寮の掃除をしていた。

 

赤嶺「みんな真面目だよねぇ。掃除していくなんて。」

 

リサ「神託の時間ぴったりに終わったね。……もうすぐこの世界の解放が始まると思うよ。」

 

あこ「結局記憶を持ち帰る術は無かったね。もう気合いしかないよ!」

 

残された時間を使っても、記憶を持って帰る方法は見つからず、祝勝会を上げるだけが精一杯になってしまった。だが、全員に後悔は無かった。記憶が残らなくても、心にはこれまでの想い出が刻まれている--

 

 

そう思えるから--

 

 

りみ「あの、最後に円陣を組みませんか?狭いですけど、そこは気合いで。」

 

高嶋「おお、りみちゃんナイス!やりたいやりたい!」

 

全員が手を繋ぎ輪を作る。

 

中たえ「何してるの?入って入って。」

 

たえは赤嶺の手を引っ張って円陣に参加させる。

 

赤嶺「良いの?9割方敵だったけど。」

 

日菜「ほら盟友。氷河家の隣が空いてるよ。」

 

日菜が赤嶺の手を取った。

 

赤嶺「うん…ありがとう。」

 

イヴ「確かに狭いですけど、何とかなりますね。円陣出来ましたけど、何て言うんですか?」

 

彩「それこそ、さっき赤嶺ちゃんが言った"ありがとう"で良いんじゃないかな。」

 

紗夜「そうですね。感謝しないといけない事が多いですから。」

 

中たえ「じゃあ、せーの!」

 

一同「「「---ありがとうございました!!!」」」

 

 

--

 

 

小沙綾「………これで、具体的にはどうなるんだろう。いきなりパッと戻るのかな?」

 

 

そして遂にその時が訪れる--

 

 

 

 

 

蘭「っ!?私の体がだんだん花びらになっていく……!」

 

モカ「私もだ……転送が始まったんだね。」

 

どうやら転送は個別で始まるようだった。まず始めに諏訪組の蘭とモカの転送が始まる。

 

友希那「っ!美竹さん。」

 

蘭「……諏訪組、先に行くね。」

 

モカ「みんな、本当に色々ありがとね。」

 

美咲「美竹さんの力になってあげて、青葉さん。こっちこそ色々とありがとう。」

 

モカ「美咲ちん、平和になったら遊びに来てね。」

 

美咲「うん。北海道と長野だもん。近いもんだよね。私の所にも来なよ。」

 

友希那「美竹さん!!!」

 

蘭「湊さん。ここが夢の世界だろうと何だろうと。あなたに会えて本当に良かった。」

 

友希那「……ええ、私もよ美竹さん。だけど別れじゃない。会いに行くわ。」

 

蘭「……はい!」

 

友希那「だから、私は、泣か…ない。泣いたり……しないわ…。」

 

涙を堪えながら友希那は蘭と最後の抱擁を交わす。

 

蘭「行こうか、モカ。」

 

モカ「行くよ。蘭と、何処までも。結構目が離せない所もあるからね。」

 

蘭「……ありがと、モカ。」

 

2人は笑顔で手を繋ぎながら元の世界に戻って行った--

 

 

--

 

 

香澄「本当に仲良しの2人だったね。」

 

ゆり「っ!?薫…あなたも……。」

 

次に転送が始まったのは薫だった。

 

薫「別れの時が来たようだね……。君達と共に戦えて、本当に良かったよ。」

 

燐子「薫さん…。」

 

りみ「どうか、お元気で……。」

 

薫「ああ。」

 

赤嶺「お姉様。沖縄から私のご先祖を逃がしてくれたご恩は決して忘れません。お姉様がいたから、今の私があるんです。……会えて本当に良かった。」

 

薫「そうか………。誰かを笑顔にする事が出来たなら、私も頑張ってきた甲斐があったよ。大変な御役目だろうが頑張ってくれ。」

 

赤嶺「……はい。」

 

薫も元の世界へと帰っていく--

 

 

--

 

 

リサ「次は私達の番だね。」

 

次に転送が始まったのは西暦組だった。

 

小たえ「御先祖様…。」

 

友希那「あなた達の様な素晴らしい子孫がいるのなら、頑張り甲斐があるものよ。」

 

香澄「元気でね、高嶋ちゃん。」

 

高嶋「うん、戸山ちゃん。じゃあ最後に赤嶺ちゃんも良い?」

 

赤嶺「…本当にやるんだね。」

 

今ここに3人の香澄達が勢揃いする。

 

香澄「私達、トリプル香澄!」

 

高嶋「私があなたで、あなたが君で、君は私で!」

 

赤嶺「ウィアー!!………くぅ、恥ずかしい。」

 

リサ「ははっ、元気が良いなぁ。それじゃあみんな、お世話になったね。」

 

中沙綾「1番最初から、ここまで本当にお疲れ様です。」

 

紗夜「私は、あなた達に対してあまり先輩が出来ていませんでしたね…。それでも、私は、あなた達がいて、救われて……。」

 

夏希「何言ってるんですか!最高の先輩でしたよ!!」

 

小沙綾「色々とありがとうございました、紗夜さん。もっとお話ししたかったですけど…。」

 

紗夜「……ありがとう。」

 

高嶋「行こっか、紗夜ちゃん。」

 

紗夜「はい、高嶋さん。…私が戻れるのは、あなたが一緒にいるからです。」

 

高嶋「紗夜ちゃん……。」

 

燐子「さようなら、りみちゃん…。お姉さんと仲良くね…。」

 

りみ「うん!………うん、燐子さん!」

 

友希那「さようなら、未来の勇者達!!」

 

あこ「楽しかったよーーーっ!!夏希ーーーーっ!!!」

 

夏希「はい!あこさーーーーん!!!」

 

西暦組も元の世界へ戻っていった--

 

 

--

 

 

赤嶺「で、次は私か………。そうだみんなにこれを話しておかないと、香澄の秘密。」

 

香澄「良いよ、別に。あ、でもそれがみんなの助けになるなら。」

 

赤嶺「ふふっ、助けにはならないかな。前に先輩に言ったように……"因子"で正解だよ。」

 

ゆり「えっと…つまり香澄ちゃんも香澄因子を持つ香澄ちゃんの1人って事?」

 

りみ「お姉ちゃん、分かって言ってる?」

 

赤嶺「そう!まさにそれだよ。あの時の言葉そのままにとってね。香澄の因子を持つ人は、即ち"天の逆手"を持つって事だから。勇者と巫女の素養を併せ持つ、そこの山吹さんと同じく大変なポジションだよ。」

 

日菜「赤嶺ちゃん。私の先祖に宜しくね!」

 

赤嶺「うん。じゃあね、みんな。」

 

こうしてみんなを最後まで試し続けてきた赤嶺も元の世界に帰っていった--

 

 

--

 

 

有咲「ったく、本当に最後まで説明下手だな。」

 

香澄「つまり私は、戸山香澄って事だよね?」

 

中沙綾「そうだね。香澄は香澄だよ。」

 

千聖「……どうやら次は私達の様ね。」

 

次に転送が始まったのは防人組。

 

花音「ほっ、痛いのかと思ったら痛くないよ。」

 

ゆり「現実の世界で会いましょう。私達は同じ時代を生きてるんだから。」

 

彩「うん、その時は宜しくね!」

 

イヴ「色々と世話になったぜ、あんがとな!」

 

イヴ「さようならです。」

 

有咲「元気でね、千聖。」

 

千聖「あなたもね、有咲ちゃん。」

 

防人組も元の世界へと帰っていった--

 

 

--

 

 

美咲「…おっと、遂に私の転送が始まったみたいだね。戸山香澄、山吹沙綾、市ヶ谷有咲……。」

 

次に転送が始まったのは美咲である。美咲は勇者部達の名前を呟いていた。

 

香澄「美咲ちゃん、どうしたの?」

 

美咲「ふふっ、忘れないようにみんなの名前を刻み込んでるんだ。牛込ゆり、牛込りみ、花園たえ……。」

 

香澄「美咲ちゃん!!」

 

有咲「美咲っ!!」

 

香澄と有咲は涙を流しながら美咲へと抱きついた。

 

美咲「あらら、そんなに抱きついてくれて嬉しいね--」

 

 

 

美咲「--もう、寒く無いよ……。」

 

美咲も元の世界に戻っていくーー

 

 

人の心の寒さに嫌気がさし、元の世界に戻る事を拒否していた美咲だったが、最後に感じたのは人の心の暖かさだったのだ。

 

 

--

 

 

香澄「美咲ちゃん、最後まで…笑ってた…。」

 

有咲「……あいつも、勇者だから。」

 

小沙綾「っ!私達も転送が……。」

 

そして遂に小学生組の転送が始まる。

 

小たえ「もう1人の私、色々とありがとう。」

 

中たえ「うん、素敵な時間だったよ。」

 

夏希「ようし、戻ったら気合い入れるぞ!」

 

中沙綾「夏希っ!!!」

 

夏希に沙綾とたえが駆け寄った。

 

夏希「沙綾、おたえ。湿っぽいのは無しだよ!ズッ友同士、いつもの挨拶で締めるからね!」

 

中たえ「うん!………またね、夏希!!」

 

中沙綾「ま…また…ね……夏希。」

 

夏希「…そこで堅くなっちゃうのがお前らしいなぁ、沙綾。笑って笑って、ね。」

 

中沙綾「………うん…またね、夏希!!」

 

 

 

夏希「またね。」

 

 

夏希達は笑顔で帰っていった--

 

 

これからも、夏希の事を2人は決して忘れないだろう。ここでの想いも、きっと心が覚えているのだから。

 

 

--

 

 

そして、最後に残されたのは花咲川中学勇者部6人。

 

有咲「……凄い人達ばっかだったな。」

 

りみ「まさに勇者って人達ばかりだったね。私、凄く強くなれたと思うよ。」

 

ゆり「……私達も戻る時が来たね。どうにもこれから色々と大変そうだけど。」

 

中たえ「乗り越えようよ、みんなで!」

 

中沙綾「そうだね。だからこれは戻るって言うよりは……進もう、未来へ。」

 

香澄「……うん。」

 

ゆり「じゃあ、最後だから元気良く行こう!!また声を合わせて、せーの!!」

 

花咲川中学勇者部「「「勇者部、出動!!」」」

 

 

---

 

 

全員がいなくなった部室--

 

 

そこの黒板に1枚の写真が--

 

 

そこ写っていたのは、赤嶺香澄を含めた勇者部25人の笑顔の集合写真だった--

 

 

彼女達はこれから先、どんな未来が待っていようとも、決して諦めずそれを乗り越えていくだろう。

 

 

 

彼女達は勇者なのだから――

 

 

 




これにて

〈第6章 花結いの章〉

は完結となります。

第1章から合わせて全133話、最初から読んでくださった皆様、途中から読んでくださった皆様には感謝しかありません。

色々と拙い文章だったと思いますが、ここまで来れたのは皆様が読んでくださったからです。

最後に、ここまで本当にありがとうございました。

ですが、物語はもう少しだけ続きます。

〈第7章 石紡ぎの章〉

そして、

〈最終章 きらめきの章〉

に続いて行きます。第7章は番外編です。

お楽しみください。

のんびりいこうと思っております。

それでは最後までお付き合いいただき誠にありがとうございました。

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