戸山香澄は勇者である   作:悠@ゆー

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時期は過ぎてしまいましたが、この物語の準主役とも言える沙綾の誕生日ストーリーです。




神樹の記憶~祝福の水飛沫~

 

 

勇者部部室--

 

5月、間もなく夏が近付いてくるこの季節にそれは唐突にやって来るのだった。

 

ゆり「ハイ!今月、誕生日がある人はいるかな~?」

 

香澄「はーい!さーやです!!」

 

小たえ「偶然。私の親友の沙綾の誕生日もだよ。」

 

有咲「そりゃそうだろ…。」

 

美咲「それじゃあさっそくプレゼントでも考えます?山吹さんと言えば…やっぱパン?」

 

リサ「パンと言えば調理器とか…かな?」

 

香澄「うーん、でもさーやはパン作り本当に好きだから、売ってる調理器は殆ど持ってます。」

 

夏希「確かにそうですね。」

 

ゆり「2人とも本当に好きなんだね…。」

 

勇者部では毎月の始めあたりに、こうして誕生日の人たちの為に何か企画やプレゼントを考えているのである。勿論本人には内緒で。今月5月は沙綾の誕生日の月、勇者部は只今送るプレゼントを考えている真っ最中だった。

 

夏希「それなら銃とかどうですか?沙綾さんは自分の銃をいつも大切に使ってますから。」

 

有咲「銃かぁ……エアガンとかか?」

 

あこ「いつも本物の銃を使ってるのに喜ぶかなぁ?」

 

美咲「本物って言っても精霊だけど……まぁ言いたい事は分かる。」

 

薫「撃てる場所も余り無いだろうね。」

 

燐子「バーテックス相手にも使えませんからね…エアガンで遊べる機会はあまり無さそうです…。」

 

ゆり「んーーー……。」

 

ゆりはみんなの意見を聞きながら良い案は無いかと唸る。

 

ゆり「場所………機会………それだ!!」

 

ゆりは何か閃いたようである。

 

ゆり「使う場所と機会が無いなら、それもセットでプレゼントしちゃえば良いんだよ!」

 

美咲「あ、聞いた事あります。迷彩服とか着てエアガンで撃ち合いするやつですよね?」

 

リサ「なるほどね。そういう事が出来る場所なら大赦が持ってるかも。ちょっと聞いてみるね。」

 

ゆり「エアガンと装備も用意出来ないか聞いてみるね。」

 

香澄「おー!なんだか面白そうな誕生日プレゼントになりそう!」

 

大まかな事は決まった為、今日は解散となった。

 

 

--

 

 

次の日、勇者部部室--

 

リサ「早速大赦から返事が来たよ。」

 

ゆり「よっこらしょっと。こっちも色々と届いたよ。」

 

大きな段ボールを抱えたゆりが部室に入ってくる。

 

香澄「おおー!これがエアガンですか?」

 

ゆり「大赦が言うには、例え遊びでもエアガンは怪我する恐れがあるからNGだって。だからこれは水鉄砲だよ。」

 

美咲「最近の水鉄砲は良く出来てるんですね。」

 

有咲「拳銃型にライフル型、マシンガン型に…ちょまっ!!迫撃砲まであるぞ!?」

 

りみ「迫撃砲って?」

 

有咲「大砲みたいなものだな、確か。」

 

水鉄砲ですら本物の銃と見まごう程精巧に作り込まれている。

 

りみ「わぁー!水の塊を発射するとかかな?」

 

友希那「あら?」

 

友希那が段ボールから何かを見つけた。

 

友希那「ゴム製のナイフまであるのね……。でも、水鉄砲に必要かしら?」

 

リサ「雰囲気って大事でしょ。場所も丁度良い所を大赦が用意してくれたよ。本格的に遊べるってさ。」

 

ゆり「水鉄砲も形だけじゃなくて性能も凄いんだよ。射程は10メートル超え、水タンクも交換可能!」

 

あこ「凄い!それで連射が出来るからマシンガンとかもあるんだね。」

 

夏希「何だか私達まで楽しくなってきました。」

 

薫「遊びでもとことん本気でやる……あぁ、儚い。」

 

ゆり「後は2人を呼んで、みんなで2チームに分かれてゲームしようか。」

 

香澄「楽しみだなぁ!さーや達喜んでくれるかな。」

 

小たえ「絶対喜ぶよ。」

 

中たえ「喜び過ぎて、大変な事にならないと良いけど。」

 

紗夜「私も出ないと行けないんですね……不安です。」

 

高嶋「紗夜ちゃん!一緒のチームになったら頑張ろうね!」

 

紗夜「ええ!全力で戦いましょう!!」

 

美咲「あれ?不安って言ってませんでした?」

 

必要な準備は整い、沙綾達の為の誕生日企画が幕を開ける。

 

 

--

 

 

5/19日、大赦が用意した塹壕フィールド--

 

2人の沙綾は目隠しをされ香澄と夏希に誘導されていく。

 

香澄「さーや……。」

 

夏希「沙綾…。」

 

全員「「「お誕生日おめでとう!!」」」

 

中沙綾「こ、ここは……。」

 

小沙綾「一体……?」

 

中たえ「沙綾達の誕生日プレゼントとして、1日貸し切り水鉄砲サバゲ―大会を用意したよ。」

 

美咲「サバゲ―って言っちゃうんだ。」

 

小沙綾「すごい……。」

 

中沙綾「私達の為に…みんな、ありがとう。」

 

2人の沙綾は目を輝かせて喜んでいる。

 

ゆり「喜ぶのはまだ早いよ?ここで思いっ切り楽しんでもらうまでがプレゼントだからね!」

 

中沙綾「はい、ゆり先輩。思いっ切り楽しませてもらいます!」

 

中たえ「沙綾、ほどほどにね。」

 

中沙綾「ん?分かった。」

 

ゆり「じゃあ、早速チーム分けしようか。」

 

香澄「あ!せっかくだから私はさーやの敵になる!」

 

中沙綾「え、香澄……?」

 

香澄「今回の主役はさーや達だもん!敵側でこの戦いを盛り上げるよ。」

 

中沙綾「……そっか。残念だけど、香澄のその思い、受けて立つよ。」

 

夏希「私も敵の方が楽しそうな気がするな。弟と遊ぶ時は、いっつも怪獣役とかやってたし。」

 

ゆり「えーっと、それじゃあ、沙綾ちゃん達は同じチームとして…。」

 

ゆりの采配により、チーム分けがされた。

 

ゆり「沙綾ちゃん率いるチームは……高嶋ちゃん、紗夜ちゃん、りみ、友希那ちゃん、リサちゃん、たえちゃん、それに私。」

 

香澄「私のチームは……夏希ちゃん、美咲ちゃん、燐子さん、あこちゃん、薫さん、蘭ちゃん、モカちゃん、おたえ、有咲だね!」

 

沙綾チーム9人、香澄チーム10人による対決がいよいよ始まろうとしていた。

 

 

--

 

 

沙綾チームサイド--

 

中沙綾「凄い…こんなに装備が充実してるなんて……。」

 

小たえ「ライフルにマシンガン、どれにしようかな?」

 

リサ「たえは小さいから拳銃の方が良くない?」

 

りみ「私も良く分からないから、一緒に拳銃にしよう、たえちゃん。」

 

小たえ「はーい。」

 

2人は拳銃型の水鉄砲を手に取る。

 

友希那「開始まで後僅か、どう攻める?」

 

高嶋「取り敢えず突撃かな!」

 

小沙綾「いえ……ここは迫撃砲を使いましょう。」

 

中沙綾「うん。それが良いね。」

 

どうやら2人の沙綾が考えている作戦は同じなようだ。

 

紗夜「一体どうするんですか?」

 

中沙綾「それはですね………。」

 

 

--

 

 

一方の香澄チームサイド--

 

美咲「今になってテンション上がってきたかも。」

 

有咲「さあ、沙綾達はどう攻めて来る…?」

 

香澄「やっぱり突撃じゃないかな?」

 

香澄と高嶋の考えている事は一緒だった。

 

夏希「いやー、私もその意見には賛成ですけど、向こうには参謀の沙綾達がいるからなぁ。」

 

蘭「いよいよ始まるね。」

 

モカ「ちょっと怖くなってきたなー。」

 

蘭「モカに限ってそんな訳ないでしょ。」

 

モカ「ひどいなー。」

 

そしていよいよ戦闘開始の時間となる。

 

 

--

 

 

戦闘開始直後の事だった--

 

薫「……おや?空から何か…。」

 

薫が空を見上げるとそこには水の塊が--

 

有咲「………!?来たぞ!敵弾だ!」

 

その水の塊は迫撃砲から打ちあがったものだった。

 

燐子「こ…これはまさか…。」

 

有咲「迫撃砲かよ……!」

 

だが、間一髪水の塊は誰もいない所へ着弾した。

 

 

--

 

 

沙綾チームサイド--

 

中沙綾「…試し打ち、着弾だね。もう少し右かな。次行くよ--」

 

小沙綾「準備完了です。」

 

中沙綾「………発射ぁ!!」

 

相手チームに初っ端から容赦なく打ち込む沙綾の表情は嬉々としていた。

 

 

--

 

 

香澄チームサイド--

 

美咲「うっわ、何かいっぱい飛んできたよ!」

 

有咲「散開だ、散開!!」

 

有咲の合図で香澄チームはバラバラになる。

 

蘭「ふぅ、何とかみんな助かった…?」

 

蘭が周りを見回すと、そこには--

 

 

有咲「うっ………。」

 

びしょ濡れになった有咲が横たわっていた。

 

蘭「っ!?有咲!!」

 

蘭が有咲を抱き起す。

 

有咲「ま、まさかいきなり迫撃砲なんて…恐れ入った……ぜ…ガクッ。」

 

有咲は力尽きる。

 

 

"香澄チーム9人・沙綾チーム9人"

 

 

 

あこ「あ……ああ、有咲ぁーーーーーー!!」

 

蘭「有咲がやられるなんて…。」

 

中たえ「ほどほどにって言ったのにー。」

 

美咲「これは、戸山さんの言う通り、さっさと突撃しないとすぐ全滅だよ。」

 

香澄「よし、行こうみんな!」

 

全員が突撃しようとした時、蘭はモカがいない事に気付いた。

 

蘭「モカがいない!?モカ!」

 

燐子「美竹さん……青葉さんは、もう…。」

 

蘭「そんな………。」

 

蘭はガクリと膝から崩れ落ちる。

 

 

"香澄チーム8人・沙綾チーム9人"

 

 

蘭「モカ……。」

 

その時だった。

 

あこ「立つんだよ!!」

 

あこが蘭を叱責する。

 

蘭「あこ……。」

 

あこ「ここでまごついてたら、あこ達もやられちゃうよ!そうなったら、先に逝っちゃった有咲達に申し訳立たないよ!!」

 

有咲「いや…死んではないんだけど…。」

 

あこ「どうするの蘭ちゃん!行くか!このままびしょ濡れになるか!!」

 

蘭「うう……。」

 

美咲「まぁ、派手に突撃してあげようよ。」

 

香澄「行こう、蘭ちゃん!」

 

香澄と美咲も蘭の背中を押す。

 

蘭「……分かった。モカと有咲の弔い合戦だよ!」

 

有咲「いや、だから死んでな--」

 

蘭は瞳の輝きを取り戻し、ライフルにゴムのナイフを括り付けて銃剣に改造し始める。

 

あこ「あこも一応真似しておこう。」

 

蘭「それじゃあみんな突撃、行くよ!!」

 

8人「「「おおーーーーー!!」」」

 

あこ「行くよりんりん!突撃!!」

 

燐子「う、うん…あこちゃん…!」

 

 

--

 

 

沙綾チームサイド--

 

中沙綾「…予想通りみんな突撃してきたね。迫撃砲は中止して、機関銃で行くよ!」

 

ゆり「りょーかい!!」

 

中沙綾「良く引き付けてから狙ってください。」

 

紗夜「……ちなみにこのゲームは、どうすれば勝ちなんですか?」

 

りみ「先に相手の拠点を攻め落としたチームの勝ちらしいです。」

 

ゆり「つまりこのままだとこっちの負けって事!沙綾ちゃん、まだ撃たないの!?」

 

沙綾は迫り来る香澄チームの距離を目算で測り、最適な距離に来た瞬間に指示をする。

 

中沙綾「今です!!」

 

ゆり「いっけぇ!!!!」

 

ゆり達はマシンガンをとにかく撃ちまくる。

 

 

--

 

 

夏希「うひゃあ!?」

 

マシンガンから放たれた水の弾が夏希の腹部に命中する。

 

あこ「夏希!!」

 

あこが夏希に駆け寄った。

 

夏希「ははっ……銃って、呆気ないんですね…。あこさん……後は…頼み、まし、た………ガクッ。」

 

あこ「夏希ぃーーーーーーー!!!!」

 

 

"香澄チーム7人・沙綾チーム9人"

 

 

夏希が凶弾に倒れ、尚沙綾チームの猛攻は止まらない。

 

燐子「きゃあっ!!」

 

燐子は敵の猛攻で身動きが取れないでいた。

 

あこ「りんりん!?待ってて、すぐに助け--」

 

次の瞬間、燐子までも沙綾チームの凶弾に倒れてしまう。

 

燐子「私はいいから……あこちゃん、前に…進んで………ガクッ。」

 

あこ「りんりんーーーーーーーっ!!!」

 

 

"香澄チーム6人・沙綾チーム9人"

 

 

--

 

 

沙綾チームサイド--

 

ゆり「うわぁ…敵さん達、凄い形相で突撃してくるよ。」

 

だが沙綾は決して攻撃の手を緩める事は無かった。

 

中沙綾「私達も突撃して向かい撃ちましょう。沙綾ちゃん、号令お願い。」

 

小沙綾「分かりました!みなさん、着剣してください!」

 

友希那「着剣ね。中々面白くなってきたわ。」

 

リサ「友希那、身を乗り出し過ぎたら危ないよ。」

 

小沙綾「突撃開始!!」

 

沙綾の掛け声で、沙綾チームも突撃を開始する。

 

高嶋「突撃ぃーーー!!」

 

紗夜「ま、待ってください高嶋さん!私も……。」

 

友希那「行くわよリサ!私に続いて!」

 

リサ「りょーかい。どこまでも行くよ。」

 

 

--

 

 

戦いは終盤に差し掛かり、戦闘は白兵戦の様相を呈している。

 

ゆり「ふ……やられちゃった…。りみ…私の分まで……戦って……ガクッ。」

 

りみ「お姉ちゃん……?いや、いやだよ…いやぁああああ!!!」

 

 

ゆりが凶弾に倒れ--

 

 

友希那「リサ……もう、この辺りで大丈夫よ。」

 

リサ「友希那!?ここで自刃されても介錯は出来ないよ!?」

 

 

友希那が倒れ--

 

 

薫「ふっ……どんなに弾を受けても、海の加護を受けた私は、不死身だよ。」

 

ゆり「コラコラ、ゾンビプレイは禁止だよ!」

 

薫「……やはり海水ではなく真水ではダメだという事だね……儚い…ガクッ。」

 

薫も倒れてしまう。

 

 

"香澄チーム5人・沙綾チーム7人"

 

 

そして--

 

 

中沙綾「ダメっ…!香澄を撃つなんて…!」

 

沙綾は香澄の胸に銃を突き付けている。香澄の銃は彼方に飛ばされ、丸腰の状態だ。

 

香澄「…さーや。撃って。さーやに撃たれるなら……良いよ。」

 

中沙綾「……っ!ダメ…私には、出来ないよ……。」

 

沙綾は震えながら構えていた銃を下ろす。

 

香澄「さーや………。」

 

その時だった。

 

中沙綾「きゃっ!!!」

 

沙綾に水がかかる。

 

モカ「へへへーやったね。」

 

なんと木陰から突如現れたモカが沙綾を撃ったのだった。

 

 

"香澄チーム6人・沙綾チーム6人"

 

 

香澄「モカちゃん!?無事だったんだ!」

 

蘭「モカ……モカ!!」

 

モカ「ぐるっと大きく迂回してきたんだ。」

 

蘭「凄いよモカ、大手柄。」

 

だが、蘭とモカが油断していた隙を突き--

 

蘭・モカ「「あっ!」」

 

りみ「はぁ…はぁ……お姉ちゃんの、仇だよ!」

 

りみが2人を撃ち抜いたのだった。

 

 

"香澄チーム4人・沙綾チーム6人"

 

 

そして戦いは終わりを迎える--

 

 

--

 

 

ゆり「えっと……今どうなってるの?」

 

ゆりが周りを見回す。

 

中たえ「わーい!」

 

小たえ「やっほーい!!」

 

たえ達は互いに水の掛け合いをしている。

 

ゆり「あそこでびしょ濡れになりながら遊んでる2人は放っておいて……あれ?りみだけ!?」

 

りみ「そうみたい……。」

 

ゆり「という訳で、生き残ったのはりみだけって事だから、拠点を奪取するまでも無く沙綾チームの勝ち!!」

 

激しい戦いに勝ったのは沙綾チームだった。

 

中沙綾「ふぅ……勝ったんだね、私達。」

 

小沙綾「そうみたいです…。」

 

ゆり「それじゃあ最後に……今日の主役に向けて、一斉放水開始!!!!」

 

突然のゆりの合図でみんなが2人の沙綾に一斉に水鉄砲を発射する。

 

中沙綾「え………?きゃあ!?」

 

小沙綾「冷たいっ!?」

 

香澄「改めてお誕生日おめでとう、さーや!」

 

夏希「おめでとう、沙綾!!」

 

こうして5月の晴れ渡る空の下、沙綾たちの誕生日企画は幕を閉じる。

 

中沙綾「ありがとう!!冷たいっ!最高のプレゼントだよ!!」

 

小沙綾「そうですね!!ひゃあっ!!夏希、やり過ぎ!!」

 

一同「「「あはははっ!!!!」」」

 

 

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