私は秋が一番好きです。
6月、季節は梅雨に差しかかろうとしている今日この頃、うだつが上がらない人物がいた。
美咲「はぁー、だるい。何もやる気が起きない。」
奥沢美咲である。
友希那「いつにも増してやる気が無いわね。勇者として問題があるんじゃない?」
美咲「だって、何処行ってもジメジメしてて辛いんですよ。何ですかこれ?」
中沙綾「何って、梅雨だよ。」
リサ「あー。確か北海道には梅雨は無いって聞いた事あるよ。」
友希那「そうなのね。それは知らなかったわ。」
美咲「そうです、北海道の6月は空気もカラカラで寒くも暑くも無い、最高に気持ちの良い季節!満開のラベンダー畑と、青々と茂った牧場の緑を眺めながら、外で食べるジンギスカン!」
美咲はこの時期の北海道の魅力をこれでもかと熱弁する。
友希那「こんなに元気な奥沢さんは久々に見るわ。」
美咲「雪の中でじっと冬を耐えてきた道産子たちが、短い夏に期待しながら元気になっていく最高の季節!………だったんだけどなぁ…。本当、何なんですか梅雨って!ダラダラ何の為に、こんなに毎日降ってるんですか!」
中沙綾「梅雨にも大事な役目があるんだよ。」
美咲「役割?人をダラダラジメジメさせる以外に何か役立ってるの?」
今の美咲は梅雨に対してヘイトしか持っていなかった。
リサ「まぁまぁ、美咲落ち着いて。梅雨が潤してくれないと、夏になってから水不足で大変になるんだよ。」
特にここ四国では毎年深刻な水不足になる事が多く、梅雨は有難いものとなっている。
美咲「んー、頭では分かってても、やっぱりピンと来ないんですよね。」
友希那「要するに、梅雨に雨が降らないと、うどんを茹でる水が足りなくて困るという訳よ。」
美咲「……何でもうどんに持っていくんですね。」
中沙綾「うどんにしろ、食べ物は水が無いと作れなくなるよ。」
美咲「はー、分かった。雨が大事だって事は分かったけどさぁ……。」
観念したように美咲は大きなため息を溢す。
美咲「どうせぐずついた天気なら、台風が来た方がまだマシだよ。」
友希那「考えが極端ね……。」
美咲「このジメジメを吹き飛ばしてくれるなら大歓迎だよ。」
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次の日--
ゆり「……まさかこんな季節に台風が来るなんてね…。」
外は物凄い雨風で窓ガラスをガタガタと鳴らしている。
りみ「四国全体を覆うくらいの大型台風だって。怪我人が出ないと良いけど……。」
中沙綾「美咲があんな事言うから…。」
美咲「えっ、私のせい!?」
友希那「その可能性もあるわね。」
美咲「流石に無いよ!!」
リサ「美咲のせいじゃ無いよ。」
そこにリサがやって来る。
リサ「今神託があったんだけど……。」
有咲「神託って事は、この天気はバーテックス絡みか。」
美咲「バーテックスって台風も生み出せるの?」
モカ「厳密に言うと、台風は自然発生なんだけど……。」
リサ「その台風を、造反神が留めてるんだよね。」
その時、突然部室が真っ暗になる。
有咲「うわっ!?停電かよ!」
ゆり「懐中電灯どこだったかな…?」
ゆりは手探りで探すが、
美咲・ゆり「「痛っ!」」
2人がぶつかった直後、明かりが復旧する。
りみ「お姉ちゃん、美咲ちゃん?どうしたの?」
ゆり「頭ぶつけちゃった…。また停電するかもしれないから、懐中電灯くらいは見つけておかないと…。」
と、ゆりが言ってるそばから再び停電する。
美咲「痛っ!!あーもう、梅雨も嫌だけど、台風も嫌だ!!」
美咲のヘイトは溜まっていくばかりだった。
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中沙綾「バーテックスの仕業って言われると、この風の音もなんだか落ち着かないですね。」
友希那「だけど、今回のバーテックスは台風を留めているだけで、襲来という訳では無いのよね?」
リサ「そうだね。もしかしたらこのまま自然に収まる可能性もあるよ。」
美咲「そうなんですか。なら通り過ぎるまで何もしないで待ってれば良いって事?」
モカ「それも1つの手だねー。」
いくら強烈な台風と言えども自然現象の一種。いつかは自然に消えてしまう。
紗夜「それなら、各自自宅待機でも良いんじゃないですか?」
あこ「そんな事言って、紗夜さんはゲームしたいだけじゃないですか?」
紗夜「そ、そんな事はありません!確かに台風の日はNFOが盛り上がりますが…。」
燐子「紗夜さん、それで最近は出てこなくなったんですね……。」
蘭「でも、嵐がすぐに収まらなかったら畑が滅茶苦茶になる…!」
すると有咲が外の様子に驚く。
有咲「マジか!?商店街の看板が飛んでるぞ!」
友希那「さっきより風が強くなってるようね。」
窓を打ち付ける雨音も激しさを増していた。
蘭「こうしちゃいられない…畑と用水路の様子を見て来る!」
夏希「ストップです蘭さん!!明らかな死亡フラグ立てないでください!」
夏希が蘭を全力で阻止した。
蘭「だけど……。」
友希那「バーテックスの所業を見過ごす訳には行かなくなってきたわね。」
その時タイミングを見計らったかの様に樹海化警報のアラームが鳴る。
紗夜「ドンピシャですね…。」
あこ「よし!バーテックスを倒して、台風を遠くに吹き飛ばすぞ!」
勇者達は樹海へと急ぐのだった。
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樹海--
樹海で暴れていたバーテックスのうち1体を退けた勇者達。
ゆり「やっと1体倒したけど、まだ台風はいなくならなさそう。」
美咲「台風がいなくならないなら、それはそれで良くなってきたかも。」
有咲「さっきまで超嫌がってたのに…。」
美咲「だって台風が来てから、梅雨のジメジメが少し落ち着いた気がしない?」
有咲「…言われてみれば…確かに。」
美咲「出かけるのは大変だけど、室内にいる分には梅雨より台風の方が過ごしやすいって分かったし。」
中沙綾「梅雨だって気分良く過ごす方法はあるんだよ。」
美咲「本当?あ、さては私の士気を上げる為にそんな事を…無理だよー。絶対にそんなの無理。」
りみ「またグダグダモードに…。美咲ちゃん、今は戦闘中だよ。」
美咲「もう何なら梅雨が明けるまで樹海の中で暮らしたいぐらいだよ。」
美咲は梅雨が無い場所で育ってきたので、梅雨での過ごし方を知らないのである。だから今美咲はグダグダモードになっているのだ。
りみ「雨で出かけられない分、家の中でやりたい事を色々とする良い時間になるんだよ。」
あこ「見れなかったアニメを見たりとか。」
燐子「読みたかった小説を読むのにも適してます……。」
みんなは必死に室内での過ごし方の提案をする。
美咲「成る程、開き直ってインドアを楽しむ事も悪くないですね。」
燐子「そう言えば…沖縄は四国より先に梅雨入りするんですよね…。」
薫「ああ、そうだよ。」
燐子「薫さんは…梅雨の時にはどんな過ごし方をしてるんですか…?」
薫「もちろん、海に潜っているよ。」
あこ・燐子「「ええっ!?」」
薫の爆弾発言に2人は驚く。
薫「晴れでも雨でも、海に入ってしまえば変わらないからね。」
美咲「絶対に真似はしないけど、一番のジメジメ対策だね…。」
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美咲「はぁー。やっぱりやる気が出ない。」
戦いの最中でも美咲のテンションは未だに上がる事はなかった。
夏希「美咲さん、あと少しですよ!終わったら私の漫画貸してあげますから、元気出してください。」
美咲「んー、ありがとう。でも、インドア生活にもいい加減飽きてきたんだよね。」
夏希「でも、雨の中出かけるのも嫌なんですよね。」
美咲「そこが問題なんだよね。」
あこ「そんな事ならレインコート着れば一発で解決だよ。」
美咲「カッパなんて子供が着るものでしょ。」
あこ「カッパじゃなくてレインコート!もっとちゃんとしたやつだよ!」
燐子「梅雨のある地域では…お洒落なレインコートも売ってるんですよ…。」
燐子の言葉に美咲が食いついた。
あこ「あこもお気に入りのレインコート着るのが楽しみで、雨が待ち遠しいくらいだよ!」
美咲「成る程ね……お気に入りのレインコートかぁ…。今まで余り興味無かったけど、雨具って他にも色々あるのかな?」
燐子「レインブーツにも色々な種類があって…可愛いので奥沢さんも気にいると思います…。」
美咲の目が先ほどとは見違えるように生き生きと輝いている。
あこ「じゃあ、ちゃちゃっと倒して買い物に行こうよ!」
美咲「久しぶりに力が湧いてきたよ!それじゃあ、行きますか!」
中沙綾「良かった、元気になってくれて。でも雨具も良いけど、私も提案があるんだ。」
美咲「何?」
中沙綾「夏には夏の過ごし方っていうものがあるって事。」
美咲「なんか分からないけど、それなら尚更早く倒さないとね。」
中沙綾「うん。行くよ!!」
勇者達は残ったバーテックス、"水瓶型"を倒し、部室へと戻っていった。
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勇者部部室--
中たえ「バーテックスも無事に倒したし、始めようか。」
中沙綾「じゃあこれから納涼を始めるよ。」
美咲「ん?のーりょー?何、それ?」
突然の事で困惑する美咲に沙綾は浴衣を渡した。
美咲「これは、浴衣?」
中沙綾「納涼と言えば浴衣が醍醐味だよ。風通しが良いから洋服より涼しいんだ。」
中たえ「着付けは私と沙綾に任せて。」
そう言って、3人は隣の準備室に移動し美咲に浴衣の着付けを行うのだった。
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20分後--
中沙綾「はい、完成。」
美咲「あ、ありがとう…。」
中たえ「じゃあ早速出かけようー!」
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外は台風は過ぎ去ったが、まだしとしと雨が降っている。美咲たちは浴衣姿で番傘をさしながら、近くの神社へと来ていた。美咲の紫色の浴衣と番傘に、同じく紫色の紫陽花が彩りを添えていた。
美咲「時代劇とかでしか番傘って見た事無かったけど、内側のデザインも洗練されてるね。」
中沙綾「美咲、浴衣も番傘も似合ってる。」
美咲「梅雨には梅雨の過ごし方がある…か。中々風情があって良いかも。こんな過ごし方もたまには悪くないかな。」
中沙綾「でしょ。」
北海道では味わえない楽しさを美咲は目を閉じて番傘に当たる雨音を聞きながら噛み締めていたのだった。