戸山香澄は勇者である   作:悠@ゆー

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梅雨にも人それぞれの楽しみ方がありますが、私はやはり室内でゴロゴロするのが一番だと思ってます。





神樹の記憶〜雨と笑顔の交響曲〜

 

 

台風を留めていたバーテックスを倒し終えた勇者部一同。強烈な雨風は収まったが、梅雨の季節らしく外は今も雨がしとしとと降り注いでいた。そんな今日この頃、紗夜の部屋にとある人物がやって来るのだった。

 

寄宿舎、紗夜の部屋--

 

紗夜「海野さん?どうしたんですか?」

 

夏希「実は、紗夜さんに折り入ってご相談が。」

 

紗夜「相談?私で役に立てるでしょうか?」

 

夏希「何言ってるんですか!紗夜さんだから相談出来るんです!」

 

紗夜「私……だから?」

 

夏希「はい。今日も外は雨なので、一緒にゲームで遊んでくれませんか?」

 

紗夜「それなら力になれそうですね、どうぞ。」

 

紗夜は夏希を部屋に案内する。

 

夏希「やったー!お邪魔しまーす!」

 

紗夜「山吹さんと花園さんは一緒ではないんですか?」

 

夏希「あの2人は図書館に行ってます。私は本よりゲームの方が暇潰しには良いと思うんですけどねー。」

 

紗夜「同感ですね。では、どのゲームにしましょうか?」

 

紗夜はテレビ台のラックを開ける。中には沢山のゲームソフトがジャンル毎に並べられていて、宛らお店の様だった。夏希が悩んでると、また紗夜の部屋の扉がノックされ部屋に入ってくる人物が2人。

 

高嶋「あっ、夏希ちゃん来てたんだ。いらっしゃーい。」

 

あこ「ゲームしかないけどゆっくりしてってね。」

 

高嶋とあこだった。

 

夏希「ありがとうございます。ってここ紗夜さんの部屋ですけどね。」

 

あこ「最近はずっとここで遊んでばっかりだから、自分の部屋みたいな感じだよ。」

 

高嶋「紗夜ちゃんの部屋って、何か落ち着くからつい長居しちゃうんだよね。」

 

紗夜「2人も雨の日になるとゲームをしにやって来るんです。海野さんもゆっくりして行ってください。」

 

夏希「なーんだ。みんな考えてる事は同じなんですね。」

 

 

--

 

 

紗夜「4人で遊ぶとなると、どれがいいですかね。」

 

紗夜は今この場で最適なゲームを選んでいた。

 

夏希「紗夜さんのオススメでお任せします!」

 

あこ「あこはこういう天気にはスカッとする様なゲームが良いと思います!」

 

あこの意見を基に、紗夜は1つのソフトを手に取った。

 

紗夜「ではこれでどうでしょうか?4人対戦プレイも出来ますし。」

 

夏希「爆弾で相手を吹き飛ばすゲーム?良いですね!」

 

4人は早速このゲームで対戦を開始した。

 

 

--

 

 

紗夜「海野さん、中々勘が良いですね。」

 

夏希「本当ですか?紗夜さんの教えのお陰ですよ!」

 

高嶋「それにしても、あのバーテックスを倒して少しは収まったけど、中々雨止まないね。」

 

あこ「ずっとジメジメしてると、頭からキノコが生えそうだよ。」

 

各々爆弾を置きながら会話を続けている。

 

夏希「あこさんに生えたキノコって食べられますかね?」

 

あこ「夏希ぃ!!」

 

夏希「あははっ!!」

 

紗夜「隙ありですよ。」

 

あこの一瞬の隙を突いて、紗夜があこの周りに爆弾を置き閉じ込めた。

 

あこ「閉じ込められたぁ!?まさか3人であこをハメたんですか?」

 

高嶋「あこちゃん、考えすぎだよー。」

 

あこ「いやいや!夏希が余計な話をした隙に、紗夜さんが攻撃を…。」

 

夏希「あこさんを差し置いて、そんな事する訳……。」

 

紗夜「あるんですよ。チームプレイは複数対戦の基本中の基本です。」

 

あこ「くうぅぅぅ……。」

 

あこのキャラが爆発に巻き込まれ、ゲームオーバーになる。

 

高嶋「あはは、あこちゃんの負けー!」

 

 

--

 

 

その後も対戦は白熱するが、やはり紗夜の方がみんなより1枚上手に勝負は進んで行く。

 

あこ「紗夜さん、ちょっとは手加減してください!」

 

紗夜「宇田川さんは動きが良いから、手加減したら負けてしまいます。それに、手加減されて勝っても嬉しいですか?」

 

その言葉があこの勝負魂に火をつける。

 

あこ「はっ!それはダメです!このゲームはあこが修行して出直してきます。」

 

紗夜「では違うゲームをしましょうか。どれにしますか?」

 

高嶋「4人で遊べるゲームかぁ。」

 

夏希「あ、電車で回って物件買い占めるやつとかどうですか?」

 

あこ「それあこ弱いから却下。何かこうドーンとバーンと遊べて、スカッとするやつないですか?」

 

紗夜「それなら今のが一番ぴったりだと思いますが…そうですね…。」

 

紗夜は再びソフトを漁る。

 

高嶋「うーん、ゲームも楽しいけど、たまにはお日様も見たくなるね。」

 

あこ「だよねー。このまま部屋に閉じこもってたら、本当にキノコが生えてきそうだよ。」

 

あこは体力が有り余っている所為か今にも暴れそうな様相だった。そんな中で夏希がとある提案をする。

 

夏希「なら、てるてる坊主でも作りませんか?みんなでいっぱい作って吊るしたら、晴れてくるかもしれないですよ!」

 

あこ「それ良い!」

 

高嶋「じゃあ私部屋から布とペン持ってくるね!」

 

 

--

 

 

てるてる坊主を作る準備が整った頃、雨足は更に強くなってきていた。

 

あこ「良いね!どんどん降ってくれれば作り甲斐があるよ。」

 

紗夜「宇田川さん、さっきまで散々雨嫌がっていたのに…。」

 

あこ「だって、あこ達のてるてる坊主で雨が止んだら嬉しいでしょ?」

 

夏希「そうですね!じゃあ早速作りましょう!」

 

あこ「おー!」

 

4人は作成に取り掛かる。

 

 

--

 

 

10分後--

 

高嶋「あははっ、あこちゃんのてるてる坊主、頭が大っきいー!」

 

あこ「そう言う香澄だって、頭の形が全然丸くないよー!」

 

高嶋「うん、やってみると意外と難しいねー。」

 

2人は夏希に目線をやる。夏希の手からはちょうど良い頭の大きさで、形も丸い見事なてるてる坊主が次々と生み出されていく。

 

あこ「夏希は意外と手先が器用だよね。」

 

夏希「弟とちょくちょく作ってましたから。でも、私より紗夜さんの方が…。」

 

あこ「凄い!それって香澄ですよね!?」

 

紗夜はてるてる坊主をただ作るだけでは無く、顔に香澄の似顔絵を描いていたのだった。

 

夏希「こんなにリアルな顔のてるてる坊主、初めて見ました!」

 

高嶋「ホントだぁー!紗夜ちゃんすごーい!!」

 

紗夜「…せっかくなら、ちゃんと作った方が晴れる気がしますから。」

 

夏希「確かに高嶋さんの笑顔はお日様を呼びそうですもんね。」

 

あこ「それを言うならあこだって!紗夜さん、あこと夏希の似顔絵も描いてください!あ、あと紗夜さんのも!」

 

紗夜「しょうがないですね。」

 

そう言うと、紗夜はすぐさまあこと夏希の似顔絵をてるてる坊主に描いていった。

 

夏希「おおっ!これ、私ですか!可愛い!」

 

あこ「あこのは髪型まで再現してる!」

 

高嶋「どれもそっくりだよ。さすがは紗夜ちゃん!」

 

あこ「吊るしたらご利益ありそうだよ。」

 

高嶋「うん!お日様だけじゃ無くて、他にも良いもの沢山呼んでくれそう。」

 

夏希「紗夜さん!今度はほかのみんなのてるてる坊主も作ってください!」

 

あこ「それ面白そう!」

 

夏希「私も作るの手伝います!」

 

紗夜「時間がある時にですね。」

 

その日の紗夜の笑顔は太陽よりも暖かく、明るい笑顔をしていた。

 

 

---

 

 

それから2週間が経ち、空はすっかり夏の日差しを取り戻し、眩しい日差しが照りつけてきた頃--

 

蘭「先に帰ります!」

 

ゆり「えっ、蘭ちゃん?今日はみんなでミーティングを……。」

 

蘭「ごめんなさい!一刻を争う事態なんです!」

 

蘭は急いで部室を飛び出して行ってしまった。

 

ゆり「行っちゃった……。」

 

モカ「それが今ちょっと大変なんですよね。」

 

ゆり「大変?バーテックスもいなくなって台風も治ったのに?」

 

モカ「それが問題なんです。台風が居なくなってから2週間、何回雨が降ったか覚えてますか?」

 

ゆり「バーテックス倒してから2日くらいかな?」

 

モカ「そうです、たった2日だけなんです。それからはかんかん照りが続いてるんです。」

 

今の季節、梅雨の時期の為畑には水が必要なのだが、ここ最近のかんかん照り続きですっかり畑はカラカラになってしまっているのである。その為蘭は広大な畑に毎日水撒きをしに急いでいたのだった。

 

有咲「降っても、降らなくても大変なんだな、畑って。」

 

りみ「大変なのは畑だけじゃないよ?」

 

有咲「え?」

 

りみ「美咲ちゃん、湿度が下がって元気になると思ったら、やっぱり暑いのも無理ーって。」

 

ゆり「はぁ……。色々と手がかかるねぇ。」

 

高嶋「蘭ちゃん、毎日朝早く畑に行って、帰りも夜遅いんだよね…。」

 

ゆり「確かにあの畑広いもんね。」

 

りみ「蘭ちゃん、体壊したりしないか心配だな。」

 

すると、

 

高嶋「よし!私蘭ちゃんを手伝ってくる!」

 

紗夜「高嶋さんが行くなら私も行きます。」

 

ゆり「行くのは良いけど、熱中症や脱水症状には気をつけてね。」

 

高嶋「はい!それじゃあ行ってきます!」

 

2人は蘭の畑へと向かった。

 

 

---

 

 

蘭の畑--

 

蘭は黙々と畑へ水撒きを行なっている。

 

高嶋「蘭ちゃーん!!」

 

蘭「香澄に紗夜さん。どうしたんですか?」

 

紗夜「手伝いに来ました。」

 

蘭「本当ですか!?それは助かります。」

 

高嶋「私と紗夜ちゃんは何やれば良いかな?」

 

蘭「今の時期は茄子の水やりが大変なんだ。あっちの端から撒くの手伝ってくれる?」

 

2人は蘭の指示で茄子の畑の水やりを開始する。

 

高嶋「改めて見ると、大きな畑だね。」

 

紗夜「これだけ大きな畑で野菜を作って、出来た野菜はどうするんですか?」

 

蘭「市場に卸してます。その為かツテも色々と出来て、小学生の農業体験に畑を貸したりもしてるんです。」

 

紗夜「それにしても日差しが強いですね…。畑より先に私達が干上がってしまいます。」

 

その時、ちょうど良いタイミングでモカにあこ、燐子がやって来た。

 

あこ「ご苦労様です。水筒持って来たので水分取ってくださいね。」

 

高嶋「わーい、冷たい飲み物!一番嬉しい差し入れだね、紗夜ちゃん!」

 

3人はキンキンに冷えた麦茶をカラカラの喉に流し込む。

 

紗夜「はぁ…、乾いた畑の気持ちがよく分かります。」

 

蘭「やっぱり人も土も水を飲まなきゃ生きていけないからね。」

 

紗夜「しかし、台風が去ったら日照りになるなんて、自然は本当に思い通りにはならないのですね。」

 

蘭「トータルの降水量は、台風の時と、今の日照りで大体同じな気がしますけど…。」

 

あこ「だったら、毎日ちょっとずつバランスよく降ってくれれば良いのにー。」

 

蘭「そう上手くいかないところが、自然の醍醐味だけどね。」

 

紗夜「それを面白いと思えるなんて、さすが美竹さんですね。」

 

蘭「天気って不思議でね、梅雨が長い年とか、夏が猛暑の年とか色々あるけど、年間を通した降水量は100年前から大きく変わってないんだ。」

 

高嶋「そーなの!?」

 

蘭「平均気温は年々上がってるけどね。」

 

高嶋「でもそれって私達の、西暦の時代での話だよね?神世紀ではどうなんだろう?」

 

燐子「天候が…神樹やバーテックスの影響を受ける事は証明されてますからね…。」

 

あこ「じゃあ、この日照りもバーテックスの所為なの?どうなの、モカちん!」

 

モカ「こっちから話しかけるのは無理なんだよなー。そういう神託も来てないし。」

 

だが、その時だった--

 

 

 

 

モカ「あっ…今神託が来たよ。」

 

あこ「ええっ!?」

 

モカ「やっぱり今度は雨を止めてるんだって。」

 

こうもタイミング良く神託が来ると、神樹はこちらの話を聞いているんではないかと錯覚さえしてしまう。

 

あこ「やっぱりまたバーテックスの仕業だったんだね。」

 

蘭「今回ばかりは許せない…。」

 

蘭はすぐさま駆け出してしまう。

 

高嶋「あっ、待って、蘭ちゃん!……もう見えなくなっちゃった。」

 

モカ「蘭は畑の事となると周りが見えなくなるから。」

 

あこ「でも、毎日暑いままじゃたまらないよ!行こう!」

 

 

---

 

 

樹海--

 

高嶋「蘭ちゃーん、待ってー!」

 

紗夜「はぁ、はぁ…。美竹さん、畑の為となると物凄い行動力ですね…。」

 

あこ「あこ達が追いつく頃には、バーテックス全滅させてるかも。」

 

あこ達が駆けつけた先には、既にゆり達がいた。

 

ゆり「みんな、やっと来たね。」

 

燐子「ゆりさん…皆さんもお揃いで…。」

 

あこ「あれ?なんでみんなそんなに汗かいてるの?」

 

あこの言う通り、先に樹海に来ていたみんなは何故かすごい量の汗をかいていたのだった。

 

夏希「はぁ、はぁ…あこさん達は暑くないんですか?」

 

紗夜「言われてみると、確かに熱気が凄いですね…。」

 

友希那「無理は禁物よ。暑さが苦手な人は後方へ下がって。」

 

夏希「けど……。」

 

ゆり「大丈夫だよ。今日は最前線に頼もしい人もいるし。」

 

そう言って、ゆりは最前線を指差す。

 

蘭「これは農作物を守る為の戦争だよ。」

 

蘭はこの暑さの中で平然と星屑と戦っていた。

 

美咲「また大袈裟な。」

 

薫「だが、日照りが続いて水不足が起これば、農作物以外でも困ってしまうね。」

 

蘭「みんなは手を出さないで。ここは私の精霊で一気に決めるから!」

 

蘭はそう言うと、"覚"を自身に憑依させた。

 

あこ「"覚"だっ!みんな離れて!」

 

1対多の戦いで真価を発揮する"覚"。この精霊は味方をも巻き込みかねないのである。

 

ゆり「ここは燃えてる蘭ちゃんに任せよう。いざという時の為にいつでも手助け出来るよう待機しといて!」

 

 

--

 

 

蘭は今猛烈に燃えていた。

 

蘭「はっ!!そこーーっ!!」

 

鞭を的確に振るって星屑を次々と薙ぎ倒していく。

 

美咲「さすが1人で戦ってただけはあるよね。」

 

薫「そうだね。最小限の動きで最大の攻撃をしているよ。」

 

星屑を倒し終え、残りはこの元凶となるバーテックスのみとなった。

 

 

--

 

 

友希那「残すはあと1体ね。」

 

蘭「どんな敵が来てもいつも通り倒すだけだよ!」

 

しかし、樹海の気温は更に上昇していた。

 

ゆり「暑さが異常ね……。」

 

友希那「はぁはぁ、そうね…。気温が更に上がったようね。」

 

有咲「はぁはぁ…戦闘時に余計な体力を…。この熱どっから来てんだよ。」

 

そして現れた"大型"バーテックス。そのバーテックスからは湯気が出ており、蜃気楼を作り出していた。

 

蘭「バーテックス自体がこの熱さを発してた訳ね。」

 

ゆり「日照りっていうか、あのバーテックスのせいで熱くなってたんだね…。」

 

蘭「許さない…。あんたが……あんたが私の畑を……。絶対に許さない!!」

 

蘭の怒りのボルテージが振り切れようとしていた。蘭は突撃するが、バーテックスの放つ熱波が熱すぎて近付けない。

 

美咲「うわー、やだやだ私絶対無理。アレ近付きたくない。」

 

有咲「しっかりしろー!」

 

美咲「今日ばっかりは、勘弁して。私は寒い日担当勇者って事で…。」

 

有咲「しょーがねー。援護は頼むな。」

 

美咲「さっすが市ヶ谷さん、カッコいいー!惚れちゃいそー!」

 

有咲「テンション低い声援やめろー!」

 

 

--

 

 

蘭「どうやって近付く、これ?」

 

友希那「遠距離から狙い撃つしかないかしら?」

 

中沙綾「ダメです…敵の蜃気楼でスコープが使えないです……。」

 

その時、燐子が前に立つ。

 

友希那「燐子?」

 

燐子「私が……。私の"雪女郎"の力で、僅かな間だけ樹海の温度を下げます……。」

 

あこ「りんりん出来るの!?」

 

燐子「一か八かです……。温度が下がらないかもしれないですし…私の体力が持つか分かりません…。でも、やるしかないんです…!」

 

友希那「……分かったわ、燐子。あなたに託す。」

 

友希那は燐子の肩に手を置いた。

 

あこ「りんりん頑張って!!」

 

燐子「ありがとう…あこちゃん。頑張るよ…。」

 

燐子は"雪女郎"を憑依させ、全力で樹海の広範囲に吹雪を吹かせた。相手の狙いに気付いたのか、"大型"も負けじと熱波を放ち温度を上昇させる。

 

燐子「うっ……はぁ、はぁ、はぁ……。み、皆さん……今です……!!」

 

燐子は吹雪の勢いを更に上げ、樹海の気温が適温となる。

 

友希那「今よ!!燐子の力を無駄にしないで!」

 

友希那の合図で、勇者たちは一斉に"大型"へと攻撃を開始し、"大型"バーテックスを殲滅する。この間僅か1分の出来事だった--

 

 

--

 

 

燐子「はぁ、はぁ、はぁ…………。」

 

燐子は憑依を解き、樹海にヘタリ込む。

 

あこ「りんりん凄かったよ!お疲れ様!」

 

燐子「はぁ、はぁ…あこちゃん…。良かった……役に立って…。」

 

友希那「お疲れ、燐子。戻ったらゆっくり休んでちょうだい。」

 

蘭「燐子さん、ありがとうございました。あなたのお陰で畑を守れました。」

 

燐子「役に立って…何よりです……。」

 

勇者達は燐子を休ませる為に急いで樹海を後にするのだった。

 

 

---

 

 

街中--

 

バーテックスの脅威が去った為か、外は恵みの雨が降り注いでいた。勇者達は何故か部室ではなく何処かの街中に転送されてしまう。

 

蘭「やっと降ってくれたね。」

 

友希那「こんなに雨を待ちわびたのは初めてかもしれないわね。」

 

有咲「バーテックスも倒して一件落着と言いたい所だけど…何処だここ?」

 

りみ「学校からも寄宿舎からも、随分遠い所に戻ってきちゃったね。」

 

美咲「雨降るタイミング悪すぎだよ。」

 

中沙綾「梅雨の時期だから本来の天気に戻ったんでしょ。」

 

美咲「はぁー。帰る頃にはずぶ濡れかぁ。億劫だよ。」

 

ゆり「文句は無し無し。ここから1番近い所は商店街だね。傘買って早く帰ろう。」

 

香澄「お気に入りの傘が見つかれば、梅雨も良い気分で過ごせるよ、美咲ちゃん。」

 

美咲「それもそうか。」

 

 

--

 

 

商店街--

 

美咲「確かにお洒落な傘が沢山あるよ。」

 

夏希「美咲さんの気分が上がって良かったです。」

 

美咲が楽しそうに傘を選ぶ中、反対に紗夜は難しそうな顔をしていた。

 

美咲「ん?どうしたんですか、紗夜さん。」

 

紗夜「好きな傘って言われても、中々ピンとくるものが無くて…。」

 

そんな紗夜に高嶋が近付き、

 

高嶋「紗夜ちゃん、見て見て!この傘、色違いで可愛いよねー。どっちが好き?」

 

二本の色違いの傘を紗夜に見せながら尋ねてきた。

 

紗夜「……そうですね…私はこっちの方が好みです。」

 

そう言って青色の傘を指差した。

 

高嶋「じゃあこっちは紗夜ちゃんのね。もう1本は私のにする!」

 

高嶋は残ったピンクの傘を手に取った。

 

紗夜「えっ…お揃いですか……?」

 

高嶋「うん!紗夜ちゃんとお揃いの傘なんて、雨の日が楽しくなっちゃうなー。」

 

紗夜「ふふっ。そうですね。」

 

高嶋の笑顔に、紗夜もつい笑顔が溢れてしまう。

 

高嶋「あっ、紗夜ちゃん笑った。この世界に来てから、紗夜ちゃんの笑顔が増えて私嬉しいよ。」

 

紗夜「そう……ですね。確かに笑う回数が増えたと思います。バーテックスと戦う以外に価値が無いと思っていましたが、この世界に来て…私を頼りにしてくれる人がいて……。少しは変われたと思います。」

 

高嶋「そうだね!……紗夜ちゃん。」

 

紗夜「どうしましたか、高嶋さん?」

 

高嶋「これからも宜しくね!」

 

紗夜「………もちろんです。こちらこそ宜しくお願いします。」

 

みんなはそれぞれの傘を買い、2人はお揃いの傘をさして雨の中を歩いて行く。2人の笑い声は、降り注ぐ雨音に負けず、街中に響き渡っていた。

 

 

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