戸山香澄は勇者である   作:悠@ゆー

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時期はずれていますが、イブの誕生日編です。


5章に出てきた南京錠をかける場所が撤去されるのは悲しいですね。安全を考えたら仕方のない事です。




神樹の記憶〜生まれて初めての経験〜

 

 

勇者部部室--

 

ゆり「さて、6月になりました。今月が誕生日の人はいるかな?」

 

彩「イヴちゃんの誕生日が6月です。」

 

6/27日はイヴの誕生日である。

 

イヴ「彩さん…どうしてそれを?」

 

千聖「仲間なんだから当然でしょ?」

 

日菜「それでイヴちゃん、何か欲しいプレゼントはある?」

 

花音「なんでもリクエストして良いんだよ。1年に1度の記念日なんだから。」

 

イヴ「そう言われましても…誕生日って、どうすれば良いんでしょうか……。よく分かりません。」

 

花音「普通で良いんだよ。」

 

イヴ「普通……ですか。」

 

イヴはうーんと唸り考えこんでしまう。

 

友希那「どうしたの、若宮さん。遠慮は無用よ。みんな祝うのは好きなのだから。」

 

イヴ「すみません…分からないんです。お祝いされた事無いんです……。」

 

イヴは生まれてこのかた、誕生日というものを経験した事が無い。家庭環境からそういうものをやってこなかったのだ。

 

紗夜「若宮さん……。」

 

紗夜はイヴから自分と同じ境遇だという事を察知する。

 

 

---

 

 

次の日、勇者部部室--

 

蘭「あれ、イヴは何処行ったの?」

 

モカ「さっきまでいたのに。」

 

夏希「イヴさんなら、何か小声で呟きながら屋上の方へ行きましたよ。」

 

小沙綾「"リクエスト…リクエスト…"と言ってましたが、何かありましたか?」

 

彩「もしかして、リクエストを聞いた事が重荷になってるのかな?」

 

千聖「もしそうなら、私達で考えてあげた方が良さそうね。」

 

みんながイヴの為に考えているところに、紗夜がやって来て話し出す。

 

紗夜「あの…。若宮さんの誕生日のお祝いに、私も何かしたいのですが…。」

 

千聖「紗夜ちゃん……手伝ってくれる?」

 

紗夜「ええ。若宮さんにとっては最初の誕生日祝いですから。盛大に祝ってあげたいんです。」

 

日菜「この世界に来て最初の誕生日…そうだね!」

 

紗夜「そうですね。でもそれだけでは無いんです。若宮さん、今まで一度もお祝いされた事が無いと言ってました。」

 

高嶋「それってつまりは、人生最初のお誕生会って事だよね!」

 

友希那「それは確かに一大事ね。」

 

"人生最初のお誕生日"。そんなキーワードを元に、みんなは誕生日の内容を組み立てていく。

 

千聖「そういう事なら、奇をてらったサプライズより、オーソドックスなパーティが良い気がするわ。」

 

高嶋「それじゃあ、イヴちゃんの初めてのお誕生日祝いはすっごくすっごい誕生日パーティにしよう!」

 

紗夜「全面的に賛成です。」

 

 

---

 

 

屋上--

 

イヴ「誕生日パーティ…ですか?」

 

防人組は決まった事をイヴに伝えに来ていた。

 

千聖「ええ。要望を聞かれても困ると言っていたから、それならすっごくすっごいパーティをしましょうってね。」

 

花音「すっごくすっごいが何なのかは私達も良く分かってないんだけどね。」

 

日菜「豪華に盛り上げちゃうよ!」

 

千聖「そういう訳だから安心して。もう無理にリクエストを聞こうなんてしないわ。」

 

彩「それじゃあ、私たちは準備してくるね。」

 

防人組が帰ろうとした時、イヴがみんなを止める。

 

イヴ「待ってください…。1つだけ……お願いしても良いでしょうか…?」

 

千聖「大歓迎よ!何でも遠慮無く言ってみて。」

 

イヴ「もう1人の私の誕生日も……一緒に祝いたいんです。」

 

 

---

 

 

勇者部部室--

 

有咲「2人のイヴのお祝いねぇ。確かラーメンが好きって言ってたな。」

 

紗夜「一番の好物を送るのは定番ですからね。」

 

香澄「それじゃあイヴちゃんの誕生日プレゼントは、すっごくすっごい徳島ラーメンだね。」

 

中沙綾「ラーメンと言えば美咲だね。力を貸してくれる?」

 

美咲「うん、任してって言いたいところなんだけどさ…。私、徳島ラーメンがどういうものかは知ってるけど、作り方までは知らないんだよねぇ。」

 

そんな事もあろうかと、彩はガサゴソと徳島ラーメンの作り方レシピを出してきた。

 

高嶋「さっすが彩ちゃん!」

 

千聖「どれどれ…。まず、豚骨と鶏ガラをベースにしたスープを作り、濃口醤油ベースの真っ黒なタレを……。」

 

花音「あれ?私が調べたレシピだと、クリーミーな白いスープの作り方が書いてあったよ。」

 

日菜「私が調べたレシピには黄色いスープのだったよ。」

 

更にみんなが調べると、どうやら徳島ラーメンには3種類のスープがある事が分かった。

 

美咲「うーん、イヴはどれが好きなんだろう?」

 

あこ「どれも美味しそう!ねえ、全部作ってみるのはどうかな?」

 

あこは今にもよだれが溢れそうなほどだった。

 

美咲「それ面白そう!せっかくの誕生日のお祝いだし、こうなったら全部作ってみよう。」

 

紗夜「奥沢さん、かなり大変な作業になりそうだけど大丈夫ですか?」

 

美咲「うん、なんか燃えてきたかも。」

 

彩「美咲ちゃん、頼もしい!」

 

友希那「もう1人の若宮さんへはどうしましょうか?」

 

燐子「体は一緒でも…人格が別なら好みは違うかもしれませんね…。」

 

あこ「本人に聞いてみるって訳にもいかないもんね。」

 

そんな中、樹海化警報が鳴り響く。

 

あこ「はっ、答えてくれるの?バーテックス。」

 

友希那「あこ、ふざけてる場合じゃないわ。行くわよ!」

 

 

---

 

 

樹海--

 

あこ「そりゃあぁぁぁっ!!やいこら、バーテックス!答えてみろ!イヴはラーメン好きなのかぁ!?」

 

あこは星屑を旋刃盤でめっためたにしていく。

 

燐子「あこちゃん……バーテックスはそんなの知らないよ…。若宮さんに直接聞いてみた方が良いよ…。」

 

燐子はあこを宥める。

 

イヴ「えっ……何ですか…?」

 

あこ「えっとね、イヴの好物はラーメンなのは分かったんだけど、もう1人のイヴは………って危ない!」

 

あこは攻撃に当たりそうになったイヴを慌てて引き寄せた。

 

燐子「若宮さん……!」

 

その時、イヴの人格が変わる。

 

イヴ「宇田川!戦闘中に無駄口叩いてんじゃねーよ!俺の好物だぁ!?んなモン、決まってんだろ?」

 

そう言いながら、イヴは星屑に斬りかかる。

 

イヴ「徳島ラーメンだよ!!他に何があるっつーんだよ!?」

 

紗夜「何て良いタイミング…。」

 

 

---

 

 

勇者部部室--

 

美咲「はぁー、今回の戦闘も疲れたねぇ。ラーメン研究は休憩してからにするよ。」

 

イヴ「はぁ!?何甘っちょろい事言ってんだよ?やるならとっとと始めちまいな!」

 

珍しく戦闘が終わってもイヴの人格は変わっていなかった。

 

紗夜「ちょうど良かったです。あなたの意見も聞きたいと思ってましたから。」

 

高嶋「うん!出てきてくれて嬉しいよ。」

 

イヴ「んだよ、調子狂うなぁ。で、何だよ、意見って。」

 

友希那「2人の誕生日祝いを計画してるのだけれど、何か要望は無いかしら?」

 

イヴ「誕生日祝い?分かんねーよ、んなモン!した事もされた事もないんだからよ!」

 

紗夜「あなた達の生まれて初めての誕生日祝いなので何とか喜んでもらいたいんです。何かないですか?」

 

イヴ「俺はあいつが喜べば何だって良いぜ。」

 

美咲「それって、具体的に何すれば良いの?」

 

イヴ「あいつは仲間とこうやってワイワイやってるだけでも嬉しい筈だ。まぁ、強いて言うならそこに徳島ラーメンと白飯でもあれば、最高に喜ぶだろうな。とにかく、お前達があいつを囲んで賑やかにやってくれれば俺は満足だ。」

 

紗夜「お互いに相手の事ばかりなのね…。」

 

もう1人のイヴは伝えたい事だけを伝えて元のイヴへと戻る。

 

イヴ「あれ……。元の世界に戻ってますね…。」

 

彩「イヴちゃん、お帰り!それじゃあパーティの準備を始めようか。」

 

 

---

 

 

公園--

 

イヴは今、公園で夏希達と思いっきり遊んでいた。

 

夏希「イヴさーん、そこは思い切ってジャンプです!」

 

小沙綾「しっかり手すりに捕まってれば安全ですよ!」

 

小たえ「勇気を出して飛んでみよう。」

 

イヴ「……皆さん準備をしているのに、私達だけ、遊んでて良いんでしょうか?」

 

夏希「はい!これは隊長命令ですから。準備が終わるまで私達と遊んでいてください。」

 

イヴ「隊長?」

 

小たえ「紗夜さんの事です。すっごく張り切ってましたから。」

 

 

---

 

 

同時刻、家庭科室--

 

紗夜「はぁ、はぁ…。このくらいで良いでしょうか?」

 

美咲の指導のもと、紗夜は今徳島ラーメンを作る為に一生懸命になっている。

 

美咲「まだまだです!ラーメンの湯切りを甘くみてもらっちゃダメです!もっと腰を入れてください!」

 

紗夜「はい……。こう、でしょうか?ふんっ、ふん……。」

 

高嶋「わー、紗夜ちゃん凄い!その調子だよ。頑張れ頑張れ紗夜ちゃーん!」

 

美咲「中々筋が良いですよ。湯切りの練習は合格です。次はラーメンの命、スープです!」

 

紗夜「お願いします!」

 

 

---

 

 

勇者部部室--

 

準備が終わり、イヴの誕生日会が幕を開ける。

 

高嶋「イヴちゃん、もう1人のイヴちゃん!誕生日おめでとう!!」

 

イヴ「凄いです…!徳島の料理が沢山!」

 

彩「蘭ちゃんやモカちゃん達に協力してもらって、みんなで作ったんだよ。」

 

蘭「徳島産の苗から育てた野菜を使ってるんだ。」

 

早速イヴは徳島料理を口に運ぶ。

 

イヴ「もぐもぐ……。美味しいです…凄く美味しいです!」

 

千聖「それは良かったわ。」

 

イヴ「もぐもぐ…。もぐもぐ…。もぐもぐ……。」

 

花音「イヴちゃん、まだメインがあるんだよ。」

 

イヴ「メインですか?」

 

日菜「花音ちゃん、それ言っちゃったらサプライズでラーメンが出る事がバレちゃ……。あっ……。」

 

千聖「日菜ちゃん……あなたがバラしちゃってどうするの?」

 

友希那「せっかく紗夜が驚かせようとしていたのに。」

 

イヴ「紗夜さんがですか……!?」

 

花音「全部バレちゃった……。」

 

紗夜「良いんです。勘のいい若宮さんなら匂いで気付いてたと思いますから。」

 

イヴ「実は……少しだけ。」

 

紗夜はイヴの前に徳島ラーメンを差し出した。

 

紗夜「徳島ラーメン、奥沢さんに習って作ってみたんです。口に合うかどうかは分かりませんが…。」

 

イヴ「是非いただきます!はむっ…はむっ……。美味しいです!」

 

イヴは夢中でラーメンをすすっていく。

 

イヴ「本当に凄く美味しいです!もう1人の私もきっと喜んでいます。」

 

紗夜「それは良かったです。」

 

紗夜は胸を撫で下ろした。

 

美咲「頑張った甲斐がありましたね。」

 

そこへカメラを持ったリサがやって来る。

 

リサ「イヴ。誕生日に記念写真のプレゼントだよ。誰かと一緒に写りたい希望とかあるかな?」

 

イヴは少し考え、ある人を指名した。

 

イヴ「では…紗夜さんと一緒に写りたいです。」

 

紗夜「わ、私ですか!?」

 

高嶋「そうだね!紗夜ちゃんが今一番頑張ってくれたもんね。」

 

高嶋は紗夜の背中を押してイヴの隣へ移動させた。

 

リサ「じゃあ撮るよー。……ハイ、チーズ!」

 

ポラロイドカメラの為すぐに写真が現像されるのだが、そこで奇跡が起こる。

 

紗夜「これは……!?」

 

イヴ「凄いです…!」

 

リサ「こんな事ってあるんだねぇ。」

 

出てきた写真には紗夜とイヴ--

 

 

 

そしてもう1人のイヴの3人が一緒に写っていたのである。

 

高嶋「えー!イヴちゃんともう1人のイヴちゃんが一緒に写ってるよ!」

 

千聖「これはどうなってるの!?」

 

彩「多分…神樹様からの細やかなプレゼントなんじゃないかな。」

 

リサ「うんうん、私もそう思うよ。」

 

リサは写真をイヴに手渡した。

 

イヴ「ありがとうございます…!もう1人の私をこうして見るのは初めてです。……会えないけれど、いつも一緒にいてくれてありがとうございます。」

 

高嶋「やったね、紗夜ちゃん!すっごくすっごいお誕生日会、大成功だよ!」

 

紗夜「そうですね。若宮さん、改めてお誕生日おめでとうございます。」

 

イヴにとって生まれて初めての誕生日、最高の宝物を手に入れたイヴの笑顔は、弾けるような明るさを放っていた。

 

 

---

 

 

屋上--

 

誕生日会が終わり、紗夜は高嶋と2人で屋上から夕日を眺めていた。

 

高嶋「誕生日会成功して良かったね!」

 

紗夜「そうですね。」

 

そこへイヴがやって来る。どうやら紗夜を探しているようだった。

 

イヴ「紗夜さん……今日は本当にありがとうございました。」

 

紗夜「とんでもないです。顔を上げてください、若宮さん。」

 

イヴ「1つお聞きしたい事があったんです。」

 

紗夜「どうしましたか?」

 

イヴ「どうして、私の誕生日会に協力していただけたのですか?」

 

イヴがそう思うのも最もな事である。イヴと紗夜がもちろんこの世界に来てから知り合っているのだが、普段はあまり一緒に会話をする程でもないからだ。

 

紗夜「それは………。あなたと通じるものを持ってると思ったからです。」

 

イヴ「通じるもの…ですか?」

 

紗夜「そうです。共通点とでも言いますか…。」

 

高嶋「共通点かぁ……分からないなぁ。」

 

高嶋にもそれは分からないものだった。

 

紗夜「そうですね…。これは私だからこそ分かる事ですから。分かったって良い事はありません。」

 

その一言で高嶋は何かを察知したようだ。

 

高嶋「…………そっか。だったら、私はここにいない方が良いね。」

 

高嶋は紗夜とイヴに手を振って、屋上を後にする。

 

紗夜「ごめんなさい…高嶋さん。」

 

屋上には紗夜とイヴの2人だけ。紗夜は話し出す。

 

紗夜「若宮さん…。あなたからは陰の気を感じるんです。あなたの二重人格の原因……。」

 

紗夜が話を続けようとした瞬間、

 

イヴ「その事に触れるな。」

 

もう1人のイヴが現れ、話を遮った。

 

イヴ「それはもう1人の俺にとって話したくねえ内容だ。」

 

だが紗夜は引かなかった。

 

紗夜「勘違いしないでください。別にあなたの傷を抉ったりはしないです。でも…未成年の心の不安定さは、家庭環境に問題がある場合が多いですから。」

 

イヴ「だから、触れるなって言ってるだろうが…。」

 

紗夜「威嚇する必要はありません………私も同類ですから。少なくともあなたの敵ではありません。」

 

イヴ「………。」

 

紗夜のその一言を聞いて、同じものを感じ取ったのか、もう1人のイヴは元のイヴの中に引っ込んだ。

 

イヴ「同類……ですか?」

 

紗夜「ええ。最も、私の場合悪かったのは家庭環境だけではありませんが…。」

 

勇者に選ばれる前、紗夜は村全体から疎まれ、学校では虐められ身体に傷を作る日々を送っていた。

 

紗夜「あなたも同じような境遇だったのではないか……そう思ったんです。」

 

イヴ「そうだったんですね……。どうしてそれを私に話してくれたんですか?紗夜さんにとっても触れられたくない過去な筈なのに。」

 

紗夜「そうですね…。でも、あなたみたいな人が1人では無いという事を知っていて欲しかったんです。ここにいる人達は本当に歪みの無い人ばかりです。だけど、私みたいにあなたと同類もいます。」

 

イヴ「勇者は、みなさん真っ直ぐな人ばかりかと思っていました…。」

 

紗夜「ええ。本当にみなさん眩しいくらいに真っ直ぐです。そういう意味では私はイレギュラーです。だから私は今日、あなたの誕生日のお手伝いをしたんです。これからは何か他の人に相談出来ない事があれば、私に言ってもらっても構いません。」

 

そう言って紗夜は帰ろうとするが、

 

イヴ「待ってください。……私は、学校では虐めとかは受けていませんでしたが、両親が凄く不安定な人でした。父も母も、ずっと私を殴ったり、他にも痛い事を沢山してきました……。」

 

紗夜「……。」

 

紗夜は黙ってイヴの話を聞いている。

 

イヴ「だからもう1人の私が生まれたんです……。私を守ってくれるもう1人の存在。もう1人の私は、私が危険な目に合わないようにいつも守ってくれました……。父と母は結局心中してしまいましたけれど。」

 

紗夜「そう、でしたか……辛かったですね。きっと若宮さんは、もう1人の若宮さんがいたから、生きてこられたんですね。」

 

イヴ「はい。でも最近は、千聖さん達もいますし、紗夜さんとも仲良くしていきたいと思っています。」

 

紗夜「私も、若宮さんとは仲良くしていきたいと思っています。」

 

イヴ「…………はい!今日は本当にありがとうございました。私は今日という日を絶対に忘れません。」

 

 

---

 

 

廊下--

 

イヴと別れ廊下を歩いている紗夜。そこへ、

 

高嶋「あっ、紗夜ちゃん。イヴちゃんとのお話終わったの?」

 

紗夜「高嶋さん……待っててくれたんですか?」

 

高嶋「うん。ねぇ、紗夜ちゃん。今日は一緒に帰ろ。手、繋いで。」

 

そう言って、高嶋は紗夜に手を差し伸べる。

 

紗夜「ど、どうしたんですか、急に。」

 

高嶋「ふふっ。さっきはイヴちゃんに紗夜ちゃんを取られちゃったから、ちょっと嫉妬してるの。」

 

紗夜「と…取られてなんかいません。でも、そうですね。一緒に帰りましょう。」

 

紗夜はその手を取った。

 

高嶋「うん。」

 

 

--

 

 

同じ頃--

 

千聖「あら、イヴちゃんどうしたの?」

 

イヴは千聖の部屋に来ていた。

 

千聖「イヴちゃんが私の部屋に来るなんて珍しいわね。」

 

イヴ「千聖さん……ハグをしましょう。」

 

千聖「え?突然どうしたの?」

 

イヴは有無を言わさず千聖に抱きついた。

 

イヴ「今は……少しだけこうさせてください。」

 

千聖「イヴちゃん……しょうがないわね。」

 

千聖はイヴのハグを何も言わずにただ一心に受けていたのだった。

 

 

 

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