勇者部部室--
小沙綾「はぁ……。」
沙綾は落ち込んでいた。珍しく御役目を失敗してしまったのだ。香澄たちがフォローしてくれて事なきを得たが、沙綾にとっては先輩に苦労かけてしまったと落ち込んでいるのである。
有咲「珍しく落ち込んでるな…。足を引っ張ったのが相当堪えたんだな。」
夏希「沙綾は向こうでは優等生で通ってますから…。そりゃキツイでしょ。」
中沙綾「その…沙綾ちゃん。元気出して。大丈夫?パン食べる?」
小沙綾「はい……頂きます…もぐもぐ。」
パンを受け取って口へ運ぶも、何処か上の空である。
ゆり「これは重症だね〜。」
有咲「自分で自分を慰める光景って二度と見れないな……。」
中たえ「沙綾は小学生の頃からメンタルお豆腐並みだから。」
たえは沙綾には遠慮ない言葉をぶつける。
香澄「どうにかして沙綾ちゃんを元気づけてあげないと!」
小たえ「お願いします、香澄先輩。」
香澄「うん!沙綾ちゃんに元気になってもらうのは、未来のさーやの為にもなるからね!」
中沙綾「香澄…ありがとう。私も手伝うよ。」
りみ「私も手伝うよ。」
ゆり「もちろん私も手伝うからね。」
有咲「しゃーねー。私も手伝うか。」
ゆり「したらば、"沙綾ちゃんを元気づけよう大作戦"を始めるよ!」
一同「「「おーー!!!」」」
小沙綾「……思いっきり聞こえてるけど、今更言えないよね…。」
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ゆり「さて、久しぶりの勇者部活動、"沙綾ちゃんを元気づけよう大作戦"なんだけど。」
香澄「何をどうすれば良いんでしょう?」
ゆり「……そこだよねー………。」
活動はいきなり手詰まりになってしまう。
中沙綾「ここは思い切って本人に聞いてみましょう。沙綾ちゃん、どうすれば元気出るかな?」
小沙綾「えっ!?あ、あの…私、もう大丈夫ですよ!」
まさかの展開に沙綾も驚いてしまう。
りみ「沙綾ちゃん、自分自身だからってぶっちゃけ過ぎだよ…。」
有咲「どーすんだ?本人はもう大丈夫って言ってるけど?」
香澄「確か、前にイネスの代わりになるものを探しに行ってたよね?もう一度探してみたらどうかな?」
以前、沙綾とたえは夏希の為にイネスを探しに街を散策した事があった。だが、そのせいで危うくバーテックスにやられてしまいそうになってしまった。
りみ「でも、まだ行ける場所は限られてるよね…。」
リサ「土地を解放するには手順が必要だから、無理に奪って解放しても、すぐに取り戻されちゃうよ。」
香澄「そうなんですね……。」
リサ「無理な解放は、持っても1日ぐらいかな。」
香澄「1日かぁ………あ、それなら!」
香澄は何かを閃いたようだ。
香澄「さーや、ちょっと良い?ゴニョゴニョ……。」
香澄は沙綾に耳打ちをする。
有咲「香澄、私達にも教えろー!」
りみ「3人にはまだ内緒だよ。」
小学生組を残し、勇者部は香澄の考えを共有したのだった。
有咲「……成る程な。香澄にしては上出来じゃん。」
---
樹海--
有咲「おっ、来たぞ。勇者に釣られて現れた星屑が。」
ゆり「でもこれ、ちょっと多いかも。」
香澄「ここで強引にでも勝っちゃえば、沙綾ちゃん達にオススメの場所が一時的に解放されるよ!」
どうやら香澄達は、強引にでも地域を解放させて、そこに小学生組を招待するつもりのようだ。
小沙綾「そ、そんな…。私達の為にそんな危険を冒さなくても……。」
ゆり「沙綾ちゃん達だから、危険を冒す価値があるんだよ。」
中沙綾「大丈夫。リサさんの許可は得てるからさ。」
夏希「そうなんですね…。」
小たえ「皆さんカッコいいです。」
ゆり「じゃあ、みんな準備は良い?」
一同「「「おーー!!!」」」
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香澄「勇者……キーーーック!!」
りみ「えいっ!えーーーいっ!」
香澄達は順調に星屑の数を減らしていく。
香澄「ふぅ………もうかなりの数を倒したと思うけど…。」
中沙綾「でも、まだ星屑しか現れてない……。バーテックスを倒さないとここは解放されないよ。」
ゆり「大丈夫だよ。ねぇ有咲ちゃん、アレ言ってよ、アレ。」
有咲「うっ……アレ言うのかよ…。」
りみ「お願い、有咲ちゃん。」
有咲「ったく……一回だけだぞ。」
夏希「?一体何が始まるんですか?」
香澄「アレはね、フラグってやつだよ。」
夏希「ふ、フラグってあの……!?」
有咲は大きく深呼吸してあのセリフを叫ぶ。
有咲「クワッ!や、やったか!?」
叫んだ途端、樹海の奥から"防御特化型"バーテックスが姿を現した。
夏希「出てきたぁ!凄い!」
小沙綾「有咲さん…凄い能力を持ってるんですね…。」
小たえ「今度私もやってみよう。」
有咲「はぁ……はぁ……。ざっとこんなもんだ!」
りみ「お疲れ様、有咲ちゃん。」
香澄「じゃあ、頑張ってやっつけちゃおう!」
みんなが突撃する直前、沙綾が何かに気がつく。
中沙綾「待って、香澄。何だか大きさが微妙な気がする。」
沙綾の一言でみんなが"防御特化型"を見ると、沙綾の言う通り、大きさが微妙に小さかったのだ。
中沙綾「多分、要のバーテックスは別にいると思う。」
有咲「マジか!?」
渾身のフラグを折られてしまった有咲は肩を落とした。
りみ「大丈夫だよ、有咲ちゃん。このバーテックスを倒せば、きっと出てくるよ。」
香澄「りみりんの言う通りだよ!まずはこのバーテックスを倒そう!」
小たえ「あっ、じゃあ倒したら次のフラグは私が言います。」
ゆり「うんうん。みんなの緊張をほぐす。さすがリーダーだね。」
みんなは"防御特化型"に攻撃を開始するのだった。
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香澄「出てきたぁーー!"大型"バーテックス!」
中たえ「まだ"やったか!?"って言ってないのにー。」
りみ「アレを倒せば、香澄ちゃんオススメの場所が解放されるんだね。」
香澄「そうだよ、りみりん!頑張ろう!」
夏希「そういえば、一体どんな場所が解放されるんだろう?」
ゆり「それは倒してからのお楽しみだよ。」
有咲「ったくー、教えたって良いだろ…モガッ!」
話そうとした有咲の口を、すかさずりみが手で押さえる。
りみ「ダメだよ、有咲ちゃん。内緒にしようって決めたんだから。」
夏希「気になるなぁ。気になりすぎて攻撃の手元が狂ったらどうするんですかー。」
香澄「みんなで力を合わせればすぐ分かるよ。きっと、気に入ってもらえる筈だから。」
小沙綾「香澄さん達が私達の為に戦ってくれる…。だから、私達も全力で行きます。」
香澄「その意気だよ、沙綾ちゃん!」
中沙綾「でも、あまり肩に力を入れずに、ね?」
小沙綾「……!はい!」
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"大型"を倒し終え、目当ての土地を解放し終えた香澄達。早速その場所に行くのだが、小学生組には何故か浴衣に着替えさせ、敢えて目隠しをしてもらい移動してきたのだった。
夏希「な、何も見えない……。」
小沙綾「い、一体何なんですか…。」
小たえ「………。」
夏希「あっ、おたえなんか暗いのを良い事に寝ちゃってるっぽいし!」
ゆり「ね、寝るのは予想外だったけど、心配しないでね。こうしてないとネタバレになっちゃうから。」
香澄「私達が手を引いて連れてくから大丈夫だよ。」
小沙綾「浴衣にもなって…一体何処ですか?」
りみ「ごめんね、沙綾ちゃん。もうちょっとの辛抱だから。」
そして香澄達はお目当ての場所へと辿り着く。
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りみ「……わぁ!凄い!凄いよ香澄ちゃん!」
香澄「えへへ、でしょー!」
目隠ししている小学生組には、景色を見て歓喜の声を上げている香澄達の声しか聞こえない。
小沙綾「え?……え?」
夏希「めっちゃ気になる!」
小たえ「………あれ?目が覚めたのに真っ暗だ。」
リサ「あはは…。それじゃあ、目隠し取るねー。」
目隠しを外した3人が見たものとは--
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小沙綾「わぁ……。」
夏希「凄い……。」
小たえ「ホタルだぁ!」
暗がりの中、淡い光を放ちながら飛んでいるホタル。香澄達が取り戻した所は沢山のホタルが生息している場所だったのだ。
夏希「これが、香澄さんの見せたかった場所なんですね…。」
香澄「うん!ここは勇者部でよくゴミ拾いをする川原なんだけど、前に来た時にホタルが飛んでるの見かけたから。」
小沙綾「ありがとうございます、香澄さん、みなさん。とっても綺麗です……。」
香澄「どういたしまして。元気出たかな?」
小沙綾「……はい!」
夏希「おーい、沙綾!こっちにもっといっぱいホタルがいるよ!」
小たえ「沙綾、早く早くー!」
2人が沙綾の手を掴んで、駆け出した。
中沙綾「……ありがとね、香澄。私を元気づけてくれて。」
香澄「当然だよ!さーやの困った顔見たくないもん。」
中沙綾「香澄……。」
ゆり「さあ!湿っぽい話は今日は無し!今日はこの景色を楽しもう!」
香澄「そうですね!」
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蛍狩りからしばらく経った勇者部部室--
小たえ「楽しかったね、蛍狩り。」
小沙綾「うん、心が洗われるほど綺麗だった。」
夏希「でも"蛍狩り"って言うくらいだから、1匹くらい捕まえたかったなぁ。」
小沙綾「…それじゃあ情緒が無くなっちゃうよ。」
夏希「情緒?」
小沙綾「文字通りに狩るんじゃなくて、ホタルを眺めて楽しむのを蛍狩りって言うんだよ。」
小たえ「それに、ホタルは光って飛び始めると、1週間くらいしか生きられないんだって。」
夏希「そっかぁ……じゃあこの前見たホタルはもう…。」
小沙綾「そんな儚さも、あの光がより輝いて見える理由なのかもね。」
夏希「短い時間を力一杯生きてるんだなぁ。凄いなぁ、ホタルって。」
小たえ「あんなに小さいのに、明るく綺麗に光るもんね。」
夏希「でもさぁ、何でホタルってすぐ死んじゃうんだろうね?」
中沙綾「…………。」
小学生組のやり取りを、少し離れた所で香澄達は見ていた。
香澄「ん?さーや?」
中沙綾「本当に……どうしてすぐ死んじゃうんだろうね…。」
中たえ「沙綾……。」
有咲「そりゃ、あんなに小さい体で、一生懸命光って飛んでるんだから当たり前だろ?」
ゆり「有咲ちゃん、空気読んで!」
ゆりが小声で注意する。
有咲「っ!?だ、だってそうだろ!後悔も何も無いように、ホタルは全力だったからだろ!」
中沙綾「有咲……。」
有咲「可愛そうなんて思ってたら、それこそホタルに失礼だ!あの全力っぷりを、私達も見習わないとな。」
有咲の言葉は、何故だか沙綾を鼓舞してるようにも聞こえるのだった。
中沙綾「ありがとね、有咲。お陰で元気が出てきたよ。」
有咲「あ……あっそう!なら良かった。」
中沙綾「そうだよね……全力で命を燃やす…。その結果だったのなら、きっと…。」
夏希「な、なんか沙綾さんがまた私の顔をジッと見つめてるんだけど……。」
小沙綾「たえさんも、何だか慈愛の表情だね…。」
中沙綾「夏希、ちょっと良いかな?」
夏希「な、何ですか?」
真剣な眼差しを向ける沙綾に、夏希は畏まってしまう。
中沙綾「その、夏希に折り入ってお願いがあるんだけど…。」
夏希「え?沙綾さんが私に?」
中沙綾「うん。蛍狩りの時にあわよくばって思ったんだけど、言いそびれちゃって。」
夏希「あ、あわよくば?いやまぁ、私に出来る事だったら何だって大丈夫ですよ。」
中沙綾「あの……じゃあ……撫でて欲しいんだ。」
夏希「……は?」
中沙綾「あ、頭を……撫でて欲しいんだ。」
そう言って沙綾は首を前へと垂らした。
有咲「ちょ!ちょちょちょまっ………!」
りみ「有咲ちゃんがあまりの事に言葉を忘れてるよ!?」
中沙綾「さっき有咲が言ってたでしょ。後悔無いよう、全力でって。だから……。」
夏希「えっと……。そんな事で良ければ。」
夏希は沙綾の頭を優しく撫でた。
中沙綾「……!ううっ………。」
沙綾の目から涙が溢れる。
夏希「!……ははっ、沙綾は大人になっても泣き虫なんだなぁ。」
中沙綾「ううっ……ぐすっ………。」
中たえ「夏希、私も撫でて!」
たえも夏希に撫でて欲しくて近寄って来た。
夏希「なんだなんだ、2人して。よしよし。」
夏希は2人の頭を撫でる。
有咲「海野夏希……恐ろしいな…。」
小学生の沙綾とたえは、中学生の自分達が夏希に撫でられている姿を見て、唖然としてるしか無かったのだった。