戸山香澄は勇者である   作:悠@ゆー

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海水浴のお話前編です。


私は海よりプール派です。砂が足に纏わり付くのが苦手なので。




神樹の記憶〜前途多難の海水浴〜

 

 

勇者部部室--

 

リサ「みんな揃ってる?新しい神託があったから報告するよ。」

 

あこ「リサ姉待ちくたびれたよー。次は何処を解放するの?」

 

モカ「解放というか、今回は防衛戦になりそうだよ。」

 

夏希「防衛かぁー。守るより攻撃の方が得意だなー。」

 

いつも一番槍として、敵陣に突っ込む夏希は肩を落とした。

 

小沙綾「そんな事言わないで、まずは話を聞こうよ。」

 

リサが話す所によると、先日勇者部が解放した地域にどうやら再び敵の侵攻があるらしい。

 

友希那「あの土地を取り戻そうという魂胆ね。」

 

有咲「小賢しいなーったく。何度やっても同じだってのに。」

 

ゆり「それで、今度はあそこを防衛するんだね。作戦はあるの?」

 

モカ「リサさんと相談したんですけど、待ってるより先手を打った方が良いんじゃないかってなりました。」

 

中沙綾「先手?」

 

リサ「うん。敵は今、侵攻の準備中だからそこを私達が襲撃するんだよ。」

 

美咲「油断してる隙を突く…か。名案ですね。」

 

リサ「そこで、今回は海辺に陣を張るのが最適と考えて、野営を視野に入れる作戦だよ。」

 

海辺での野営。その言葉で何人かの部員のテンションが大きく上がった。

 

香澄「海水浴だぁー!!」

 

中沙綾「遊びじゃないんだよ、香澄。でも、海水浴……出来るんですか…?」

 

リサ「戦闘中以外…戦闘後なら泳いでも大丈夫だよ。」

 

高嶋「みんな、水着って持ってる?」

 

薫「勿論だよ。」

 

夏希「学校の水着なら大赦から貰ってます!これでガンガン泳げますね!」

 

燐子「スクール水着……は、恥ずかしいです…。」

 

高嶋「ん?でも、それ以外の水着なんて持ってないよ?」

 

どうやら大半の部員はスクール水着しか持っていないようだ。

 

香澄「じゃあ、みんなで水着を買いに行こうよ!私も新しいの欲しいんだ。」

 

高嶋「それ良い!」

 

美咲「賛成。この時代の水着って、どんな感じか知りたいし。」

 

リサ「じゃあ早速、今日はこれから全員で水着を買いに行くって事で……。」

 

みんなで出かけようとした矢先、行かないという人が1人。

 

紗夜「………私は遠慮しておきます。」

 

紗夜だった。

 

中たえ「何でですか?」

 

紗夜「海に入るつもりは無いですし、戦闘に必要無いですから。」

 

高嶋「海で一緒に遊ばないの?私、紗夜ちゃんと海水浴したいよ。」

 

しかし、高嶋にそう言われてしまうとさすがの紗夜の心も揺れ動いてしまう。

 

紗夜「高嶋さん……。」

 

香澄「私も紗夜さんと遊びたいです!一緒に泳ぎましょう、紗夜さん!」

 

だが、今回の紗夜の決意は固かった。

 

紗夜「……考えておきます。ごめんなさい…。今日はこれで、先に失礼します。」

 

そう言って紗夜は部室を後にしてしまう。

 

高嶋「…ごめんね。紗夜ちゃんが行かないなら、私も今日は買い物止めておくね。じゃあ!」

 

高嶋も紗夜の後を追うように部室を後にするのだった。

 

あこ「どうしたんだろう、紗夜さん。」

 

美咲「泳げないとか?」

 

ゆり「うーーん、そういう問題かなぁ…。」

 

有咲「じゃあ、どんな問題?」

 

ゆり「2人の香澄ちゃんに誘われたのに、紗夜ちゃんがずっと浮かない顔をしてたのが気になってね。」

 

リサ「紗夜は完璧主義な所があるから、自分の欠点を恥じてるのかも。」

 

ゆり「そうなのかなぁ……。まぁ、今日のところは残ったみんなで水着を買いに行こうか。」

 

紗夜の事が気になったものの、取り敢えず残ったみんなで商店街へと行くのだった。

 

 

---

 

 

商店街、水着売り場--

 

美咲「結構広いね…。ここ全部水着なんですか?」

 

リサ「そうだよ。老若男女の水着がここなら全部揃うんだ!」

 

リサの目が輝いている。

 

中たえ「美咲はどんな水着が良いの?」

 

美咲「そうだなぁ……。北海道だとウェットスーツみたいなのしか着ないからなぁ…。」

 

夏希「カッコイイ!!じゃあそれ海水浴で来てください!」

 

美咲「いやいや、流石にここだと浮いちゃうよ。」

 

小たえ「浮いちゃうんですか!?それは便利ですね。」

 

中たえ「私が長い事眠ってる間に、世間は進歩したんだね。」

 

たえ同士の会話に周りの人も笑っている。

 

友希那「でも、こんなに数が多いと何を選べば良いのか分からないわね…。」

 

リサ「心配御無用!友希那のは私がちゃんと選んであげるから!」

 

友希那「そ、そう…。」

 

何故だか友希那に悪寒が走る。

 

美咲「でも、私はもともと買うつもりだったけど、みんなは水着あるんだよね?」

 

あこ「チッチッチ……分かってないなぁ。水着はその年の流行が出るんだよ。」

 

夏希「え?」

 

あこ「だから、毎年1着は新しいものを買わないとダメなんだよ!」

 

珍しくあこが饒舌に水着と流行りについて語り出す。

 

燐子「さすがあこちゃん……。」

 

あこ「……って、りんりんが読んでた本に書いてあったんだ!」

 

夏希「ビックリした……。あこさんが変わっちゃったかと思いましたよ…。」

 

蘭「それにしても、湊さんの言う通りですね…。見回すだけでも目がチカチカしてきそう。」

 

小沙綾「最近の流行りは明るい色が多いですからね。夏場の海水浴用だと特に。」

 

みんなは思い思いの水着を探しに行くのだった。

 

 

--

 

 

10分後--

 

あこ「夏希、ついでに水中眼鏡とシュノーケルも買おうよ!」

 

夏希「良いですね!あこさんとお揃いが良いです!」

 

あこ「ついでに銛もあったら買うぞー!それ行けー!!」

 

夏希「おおーーーっ!!銛だけに、着いて行きまーーーす!!」

 

あこと夏希は駆け出した。

 

小沙綾「銛って……。魚を勝手に突いちゃダメな筈じゃ…。」

 

小たえ「売ってないから大丈夫。」

 

友希那「はぁ……。あこったら…。」

 

小たえ「沙綾、私達も夏希達の所に行こうよ。」

 

小沙綾「そうだね。ここは大人用の水着しか無いみたいだし。それじゃあ失礼します。」

 

友希那「ええ。気をつけて。」

 

リサ「友希那。気合いを入れて選ぼうか。」

 

友希那「気合い?たった数日の事だしそこまで力を入れる必要は……。」

 

リサ「何言ってるの!?たった数日だからだよ!」

 

友希那「え、ええ…。」

 

あの西暦の風雲児たる友希那が押されている。

 

友希那「分かったわ…。それじゃあ……これなんかどうかしら?」

 

友希那は選んだ水着をリサに見せる。

 

リサ「生地が………多すぎる。」

 

友希那「っ……!?」

 

こちらの幸先も大変そうなのであった。

 

 

---

 

 

次の日、紗夜の部屋--

 

誰かが紗夜の扉をノックする。

 

紗夜「……誰ですか?」

 

ゆり「ゆりだよ。」

 

ノックの主は勇者部部長、ゆりだった。

 

紗夜「……牛込さん?」

 

ゆりは扉を開けて中に入って来た。

 

ゆり「元気にしてる?」

 

紗夜「……何か用ですか?」

 

ゆり「………何かあったの?香澄ちゃん達と。」

 

紗夜「…急にどうしたんですか?」

 

ゆり「いえね、香澄ちゃん達に誘われたのに乗ってこない紗夜ちゃんが変だったから。……ところで、泳げないの?」

 

紗夜「人並みには泳げます。」

 

ゆり「じゃあ、海水浴が嫌いなの?それとも何か別な理由?」

 

紗夜「……どうしてそんな事を聞くんですか?」

 

ゆり「私は勇者部の部長だから。1人1人の様子に気を配るのは当然でしょ。」

 

紗夜「戦闘はしっかりとやります。それで構わないですよね?海水浴は関係ありません。」

 

ゆり「無くは無いよ。仲間と親睦を深めたり、息抜きする事も大切だよ?」

 

紗夜「……それで?」

 

ゆり「だから、紗夜ちゃんにそれが出来ない理由があるなら、原因を排除する手伝いがしたいんだ。」

 

ゆりは親身になって紗夜に寄り添おうとする。

 

紗夜「……リーダーだからですか?……お節介な人ですね。」

 

ゆり「でしょ。よく言われる。」

 

そんなゆりに根負けした紗夜は、ゆりに打ち明けるのだった。

 

紗夜「………身体に傷があるんです。服を着ていれば見えないですが、水着だと…。だから海水浴は……。」

 

その傷は紗夜がまだ勇者に選ばれる前、故郷である高知の村でのイジメによって付けられた苦痛の象徴。今の紗夜の性格を作り上げたと言っても過言では無いものだった。

 

ゆり「……そっか。じゃあ、海で遊ぶのが嫌じゃないんだね?」

 

紗夜「勿論です。私だって、出来る事なら…高嶋さん達と海で遊んでみたい……けど。」

 

ゆりはそんな紗夜の頭を撫でて言う。

 

ゆり「そんな顔しない!今は色んなデザインの水着があるし、他にやりようはいくらでもあるんだよ。」

 

紗夜「えっ……?」

 

ゆり「私に任せて!…だから、明日一緒に水着を選びに行こう?」

 

紗夜「牛込さん……。分かりました。…あなたの様なリーダーがいて勇者部は幸せですね……。」

 

ゆり「何言ってるの!今は紗夜ちゃんも勇者部の1人でしょ?」

 

紗夜「………ありがとうございます。」

 

また1つ、紗夜の心のわだかまりが解けた瞬間だった。

 

 

---

 

 

次の日、水着売り場--

 

紗夜とゆり、そして高嶋と香澄と沙綾は水着売り場へと来ていた。

 

ゆり「ごめんね、香澄ちゃんに沙綾ちゃん。付き合わせちゃって。」

 

香澄「そんな事無いですよ!買い物大好きですし。」

 

中沙綾「それに、ゆり先輩が紗夜さんの事を気にかけているのも分かりますから。」

 

高嶋「あっ、これ可愛いよ、紗夜ちゃん!こっちも良い!早く試着試着!!」

 

高嶋の勢いに押され、紗夜は早速水着を試着する。

 

 

--

 

 

数分後、紗夜はパレオの水着を着てカーテンを開けた。

 

高嶋「紗夜ちゃん本当に綺麗だよ!!うっとりしちゃう!」

 

紗夜「ちょ、ちょっと待ってください、高嶋さん。そんなに見られると恥ずかしいです…。」

 

ゆり「ふふっ。何だかんだ言って紗夜ちゃんも楽しそう。」

 

高嶋「ねえねえ、戸山ちゃん。これとこれ、どっちが良いかな?」

 

香澄「うわー、どっちも可愛い!私も欲しくなっちゃうよぉー!」

 

中沙綾「いっそ高嶋さんとお揃いにしたら?」

 

紗夜「それは名案です、山吹さん。」

 

ゆり「それは周りが混乱しちゃうからやめてね…。」

 

そんなやりとりをして、紗夜から笑みが零れる。

 

ゆり「紗夜ちゃんは良いもの見つかった?」

 

紗夜「はい。…この水着なら大丈夫そうです。」

 

紗夜は最初に試着したライトブルーのパレオに決めたのだった。

 

高嶋「やったね、紗夜ちゃん!初めての海水浴だよ。楽しもうね!」

 

紗夜「そうですね。……こんなに心が躍る事があるなんて。勇者になってから始めてかもしれませんね……。」

 

ゆり「うん、いい笑顔だよ。紗夜ちゃん。」

 

紗夜「皆さんといると、何だか……凄く心地が良いですね。」

 

ゆり「……なら良かった。さ、水着も買った事だし、そろそろ帰ろうか。」

 

 

---

 

 

帰り道--

 

香澄「海に行ったら、またあのゲームしようよ。さーやの大好きな物を海から取ってくるやつ。」

 

高嶋「そんなゲームがあるの?だったら私は、紗夜ちゃんの好きな物!」

 

紗夜「なら私が…高嶋さんの好きな物を取ってきてあげます。」

 

高嶋「本当?凄い!私の好きな物って何!?」

 

紗夜「えっ…と、それは……。」

 

そんな時だった。

 

中沙綾「きゃっ!何、今の!?」

 

一陣の風を纏った"何か"が沙綾達の前を通り過ぎていった。

 

紗夜「っ!?ありません!買ったばかりの水着が……!」

 

そしてあろう事かその"何か"は通り過ぎざまに紗夜の買ったばかりの水着を引ったくってしまったのである。

 

香澄「あーーーーっ!!あそこ!すっごく早い敵が逃げていく!!」

 

香澄が指差す方向には水着袋を抱え走り去っていくバーテックスの姿。

 

ゆり「バーテックスが……バーテックスが……水着泥棒!?」

 

期待に胸躍らせる海水浴に立ち込めた暗雲。一体どうなってしまうのだろうか?

 

 

 

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