戸山香澄は勇者である   作:悠@ゆー

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英気を養う為、人里離れた旅館にやって来た勇者部一同。だがしかし、その山にはとある言い伝えがあり--


探偵ものに良くあるパターンです。




神樹の記憶〜温泉宿勇者連続昏睡事件〜

 

 

夏の暑さも少し和らいできた頃。

 

美咲「少し過ごし易くなってきたね。戦闘が結構続いてたから、休みが欲しいよ。」

 

蘭「確かに。」

 

何だかんだ言って勇者部は忙しい。御役目が無い時は、学校や地域からの依頼をこなす日々が続いている。

 

有咲「部長の人徳もあるな。お陰で依頼がひっきりなしで舞い込んでくる。」

 

ゆり「私のせい!?」

 

有咲「敵が来ない日に色んな依頼を持ってくるのは誰だ?」

 

あこ「ねぇ、リサ姉。神樹様にお休み頂戴って電波飛ばしてくださいよー。」

 

リサ「うーん。神樹様ってよりは、交渉するなら大赦だろうね。」

 

モカ「えー。あの仮面の人達ってなんか話難い雰囲気だしてますよねー。」

 

小沙綾「ですが、心身を休めないと御役目にも支障が…。」

 

中沙綾「そうだね。ゆり先輩、何とかなりませんか?」

 

勇者達は夏の暑さや日々の御役目の疲れが溜まり始めていたのだ。沙綾の言う通り、このままでは大事な御役目にまで支障をきたしてしまう。

 

ゆり「うーん……どうかなぁ……。」

 

香澄「ハイハイ!いつかみたいに温泉に行って海鮮食べたいでーーーす!」

 

香澄の言葉に夏希とあこが食いつく。

 

夏希・あこ「「海鮮ーーー!?」」

 

友希那「勇者部では、過去にそんなイベントがあったの?」

 

香澄達勇者部は"完全型"バーテックス12体を全て倒し終えた際、大赦が温泉旅行を振舞ってくれたのである。

 

あこ「羨ましいーーー!!」

 

夏希「私も食べ放題したいですーー!!」

 

2人から湧き上がる海鮮コール。

 

ゆり「うぅ……。これはもう収集がつかない…。部長として何とかしないと…。」

 

ゆりはたえを誘って大赦へと赴いた。

 

 

---

 

 

温泉宿--

 

中沙綾「と、言うわけで…私達勇者部は山深い温泉宿に来ています。」

 

香澄「さーや、誰に話してるの?」

 

ゆりとたえの尽力により、勇者部は人里離れた温泉宿へと来たのである。

 

薫「凄いね、ゆり…。」

 

ゆり「流石にブラック勇者部なんて言われたら、大赦も放ってはおけなかったようだよ。」

 

りみ「お姉ちゃん、あれからたえちゃんと何度も大赦に足を運んだんですよ。」

 

蘭「流石は部長。」

 

モカ「何でも言ってみるものだねー。」

 

友希那「全くね…。私の子孫の影響力も衰えて無いようだし。」

 

ゆり「早速この宿の説明なんだけど…。」

 

ゆりが話し始めようとするが、

 

あこ「よーし、夏希!早速山に探検に行ってみよう!」

 

夏希「りょーかいです!!」

 

ゆり「2人とも人の話を聞きなさーーい!!」

 

ゆりのカミナリが2人に炸裂した。

 

燐子「そう言えば…この山には確か伝説がありましたよね……。」

 

中たえ「そうそう、この山には紅葉が沢山あるんだけどね、その紅葉は昔愛し合い、心中したとある恋人達の……。」

 

小たえ「血によって染め上げられたんだって!」

 

ゆり「なっ………へ?」

 

中たえ「今生では結ばれない不幸な2人は、涙ながらに互いの首へ懐剣をあてがって……。」

 

小たえ「一気に切り裂いて……。」

 

ゆり「…………。」

 

あまりの恐怖でゆりの目から光が消える。

 

美咲「どう考えても、怖い話にしか聞こえないよ…。」

 

ゆり「血…血が…、染め……。葉っぱが赤いの…血…血ぃぃぃ!?」

 

りみ「お姉ちゃん!考えちゃダメだよ!?」

 

小たえ「それ以来、血の味をしめた木々は毎年人の血を求めて……。」

 

ゆり「いやぁぁぁぁぁ!!うーーーーん…。」

 

遂にゆりは恐怖に耐えきれず、気絶してしまう。

 

有咲「倒れた。じゃあ、私は折角だから山で走り込みしてくるな。後は宜しく。」

 

香澄「いってらっしゃーーい!気をつけてね。」

 

 

--

 

 

数分後--

 

ゆり「うー……苦労して大赦に話をつけたのに、どうして怖い話を聞かなきゃいけないの…。」

 

友希那「子孫がごめんなさい…。」

 

紗夜「所詮作り話じゃないですか。」

 

ゆり「面目無い…。」

 

中沙綾「それで、ゆり先輩。さっき言いかけていた宿の説明ですけど…。」

 

ゆり「ああ、そうだったね。この旅館は温泉宿としても有名でね……。」

 

次の瞬間、樹海化警報が鳴り出した。

 

リサ「戦闘配置について!」

 

ゆり「バーテックスまで、何で空気読まないの!?」

 

小沙綾「油断してましたね…。こんな知らない土地で大丈夫でしょうか…。」

 

リサ「……この感じ、どうやらこの宿を狙っての襲撃って予感がするよ。」

 

美咲「成る程。わざわざ私達勇者を狙っての襲撃って訳ですか。」

 

薫「場所は関係ないよ。何処だろうと戦うまでさ。」

 

友希那「行きましょう、みんな!」

 

出撃するすんでの所で夏希とあこが戻ってくる。

 

あこ「間に合った!出撃するならあこも行くよー!」

 

夏希「私も行きまーす!」

 

全員が揃ったと思いきや、香澄は有咲がいない事に気が付いた。

 

香澄「有咲は?ゆり先輩!有咲が戻ってないです!」

 

ゆり「有咲ちゃんの事だから、きっと先に行ってる筈だよ。」

 

中沙綾「だったら早く合流しましょう!」

 

香澄「よーし、戸山香澄行きまーす!!」

 

 

---

 

 

樹海--

 

あこ「どんなもんだ!呆気なかったね!」

 

小たえ「何だか簡単でしたね。」

 

紗夜「こちらの対応が予想外に早くて焦ったのでしょうか…。」

 

敵の数も星屑と僅かな"新型"のみで、倒すのにそれ程時間はかからなかった。

 

 

だが、何かがおかしかった--

 

 

薫「香澄ちゃん、どうしたんだい?さっきから何かを探しているようだが…。」

 

樹海に来てから探していた有咲がどれだけ探しても見当たらないのである。

 

香澄「薫さん…。有咲が見当たらないんです…。」

 

中沙綾「前線にはいなかった?」

 

香澄「うん…。あこちゃんと夏希ちゃんと3人で前線に出てたんだけど、そこには……。」

 

蘭「変だね…。いつもなら人を掻き分けてでも前線に出るのに。」

 

モカ「間に合わなかったから、決まりが悪くて何処かに隠れてる…とか?」

 

美咲「トレーニングのやり過ぎで、何処かで寝ちゃってるとか?」

 

小沙綾「まさか…。おたえなら有り得ますけど…。」

 

小たえ「照れるよ、沙綾。」

 

りみ「褒められてないよ、おたえちゃん!?」

 

ゆり「一体何処に行ったんだろう…?」

 

あこ「きっとお腹が減ったら戻って来ますよ!」

 

ゆり「そうなら良いんだけど…。」

 

リサ「みんなで手分けして探しに行こうか。」

 

香澄「それが良いですね!ありがとうございます、リサさん。」

 

ゆり「苦労かけてごめんね。何人かずつで探しに行こう。」

 

みんなは手分けをして有咲を探しに山へと向かうのだった。

 

 

---

 

 

山道--

 

燐子「市ヶ谷さーん、何処ですかー…!」

 

友希那「聞こえたら返事して頂戴!」

 

友希那達は大声で呼びかけながら山道を歩いていたが、突然前を歩いていたリサが立ち止まる。

 

友希那「っ!急に立ち止まってどうし……リサ?」

 

リサ「あ………ぁぁ………ぁ……。」

 

リサから目のハイライトが消えていた。

 

燐子「ど、どうしたんですか…?今井さんがそこまで動揺するなんて……。」

 

美咲「何かありました?」

 

リサ「そ、そこに……。」

 

 

 

 

リサが指さした方向には--

 

 

 

 

美咲「そこ?え……、ああーーーっ!?い、い、市ヶ谷さん!?」

 

燐子「し、死んでる………!?」

 

有咲が倒れていたのである。

 

 

---

 

 

温泉宿--

 

友希那達は動かず、目を開けない有咲を宿へと運んで帰ってきた。

 

香澄「うわあああーーーん!!有咲ーー!起きてよ!目を開けてーー!!」

 

香澄は有咲を揺すって泣き叫ぶが、

 

リサ「香澄、揺すっちゃダメだよ!頭を打っているかもしれないよ!」

 

香澄「そんな……有咲、どうして…。何があったんですか!?」

 

友希那「それが…私達にも分からないのよ。」

 

美咲「見つけた時には、もう……。」

 

燐子「遅かったって言いますか…。」

 

香澄「うわあああーーーん!!!」

 

香澄が大声で泣き叫んでいても有咲は目を覚まさない。演技では無く本当に何の反応も無いのである。

 

中沙綾「呼吸はしてるし、外傷は無いみたいだけど…。」

 

ゆり「ま、まさか…この山の……の、の、呪い………!?」

 

紗夜「バカな事言わないでください。そんな訳無いじゃないですか…。」

 

薫「何かに襲われたのだろうか…。」

 

ゆり「"何か"って何!?"誰か"じゃなくて"何か"って何ぃーーーー!?」

 

りみ「お姉ちゃん、落ち着いて…。」

 

小沙綾「救急車を呼びましょうか。それとも大赦に連絡を…。」

 

しかし、これはほんの序章に過ぎなかったのである。

 

夏希「あ、あの…あのさ、沙綾、おたえ。あこさんを見なかった?」

 

全員が集まったと思ってた部屋にあこがいなかったのである。

 

小たえ「え?見てないよ?」

 

小沙綾「夏希、一緒じゃなかったの!?」

 

夏希「途中までは一緒だったんだけど、有咲さんを探してた時に別れたんだよ…。」

 

蘭「何でそんな事したの?」

 

夏希「実は、食後のデザートをかけて勝負をしてたんです…。どっちが有咲さんを探し出せるかって…。」

 

紗夜「それで、まだ探してるって訳ですか…。」

 

モカ「だったら今度はあこちんを探しに行かないと。」

 

その時、夏希の頭に一抹の不安がよぎる。

 

夏希「ど、どうしよう……。ひょっとして、あこさんも有咲さんみたいに……。」

 

燐子「あこちゃん……!」

 

みんながあこを探しに行こうとしたその瞬間、再び端末からアラームが鳴り出した。

 

友希那「くっ、こんな時に…!」

 

リサ「みんなは行って!ここは私とモカが!」

 

香澄「でも……。」

 

香澄は出撃を躊躇ってしまう。そこへ、

 

薫「行こう…。きっと有咲ちゃんならそうする筈だよ。」

 

香澄「………そう…ですね。有咲、私頑張ってくるね!」

 

 

---

 

 

樹海--

 

香澄「このーーーっ!バーテックスめーーーー!!有咲を眠らせてあげてよーー!!」

 

美咲「それじゃあ、受け取り方によっちゃ酷い事言ってるみたいだよ……。」

 

りみ「い、一生懸命なだけだから…。」

 

燐子は樹海を見渡してみるが、そこにあこの姿は無かった。

 

燐子「っ!?きゃっ!!」

 

あこを探すのに気を取られ、星屑の突進が燐子に命中してしまう。

 

友希那「燐子っ!はぁっ!!」

 

咄嗟に友希那が燐子のカバーに入った。

 

友希那「燐子、気持ちは分かるけど、今は戦いに集中しなさい!」

 

燐子「す、すみません、友希那さん…。ですが…。」

 

夏希「燐子さん、大丈夫です。あこさんは絶対に無事でいますって!さっきはあんな事言っちゃいましたけど、あこさんは強い人ですから!」

 

燐子「そう…ですね…。あこちゃんは絶対大丈夫…!」

 

燐子はそう自分に言い聞かせて戦いに集中する。

 

燐子「少しでも早く敵を倒して…あこちゃんを探しに行かないと…!」

 

夏希「その意気です、燐子さん!」

 

燐子「待ってて、あこちゃん…。」

 

燐子は戦いを早く終わらせる為に、前衛へと走り出した。

 

紗夜「白金さん…。」

 

薫「気持ちは分かるよ。」

 

紗夜「え?」

 

薫「誰だって…大切な仲間の事を思えば、必死に頑張ってしまうものさ…。」

 

紗夜「………そうですね。」

 

高嶋「数が減ってきた!一掃しよう、紗夜ちゃん!」

 

紗夜「ええ、高嶋さん。任せてください!」

 

2人も燐子の後に続いて前衛へと急ぐ。敵の数は着実に減っていた。

 

りみ「後もう少しです!」

 

ゆり「このまま全員で畳み掛けるよ!」

 

香澄「はい!おりゃあああっ!!!」

 

 

--

 

 

数分後--

 

燐子「はぁ…はぁ……。これで…全部です…。」

 

慣れない前衛で頑張った為か、燐子は肩で息をしている。

 

友希那「さすがね、燐子。良い戦い振りだったわ。」

 

高嶋「すっごく強かったよ、燐子ちゃん!」

 

燐子「早く…探しに行きましょう…!あこちゃんを…!」

 

燐子は疲れた体に鞭打って歩き出す。

 

ゆり「分かった!夏希ちゃん、あこちゃんと別れたのは何処らへんか覚えてる?」

 

夏希「えっと………ごめんなさい、よく…覚えてないんです…。あ、でも!」

 

美咲「でも?」

 

夏希「あこさん、ずっとお腹が空いたって言いながら探してました…。」

 

燐子「……だったら、旅館の厨房へ行ってみましょう…!」

 

友希那「そんな単純な……。でも、あこなら有り得そうね…。」

 

高嶋「また何かあるといけないから、全員で行こう!」

 

香澄達は手分けをせずに、全員で厨房へと向かうのだった。

 

 

---

 

 

厨房裏口--

 

蘭「あそこが厨房の裏口だね。」

 

 

 

全員で裏口へとやって来るが--

 

 

 

ゆり「あ…あぁ…ぁ…ぁ……。」

 

りみ「お姉ちゃん?」

 

美咲「さっきのリサさんと同じ対応……まさか!?」

 

ゆり「きゃあぁぁぁぁぁぁっ!!あこちゃんが……あこちゃんが死んでるーーっ!!」

 

ゆりが見たものは、有咲と同じ様に目を瞑って横たわり、動かないあこの姿だった。

 

夏希「あ、あこさん!?嘘だ!あこさんが!あこさんが……!!」

 

燐子「あこちゃん!しっかりして、あこちゃん…!!」

 

燐子があこを抱きかかえて呼びかけるも、先の有咲と同様で応答は無い。

 

友希那「燐子!息はしてるの!?怪我は!?」

 

友希那に言われ、燐子はあこを観察する。すると、

 

燐子「え…?何…これ…?あこちゃん、なんか濡れ…て…。」

 

よく見ると、あこの口から赤い液体が少し垂れていた。

 

高嶋「そ、それって……血!?」

 

小沙綾「あこさん、何処かに傷を!?」

 

燐子「………これって…本当に呪い……?そ、そんな……!いやぁああああああーーーーーっ!!!」

 

燐子の叫びが人里離れた山奥でこだまするのだった--

 

 

 

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