戸山香澄は勇者である   作:悠@ゆー

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旅館で起こった謎の勇者昏睡事件。いよいよその謎が明らかになる--


真犯人は一体誰なのか--




神樹の記憶〜温泉宿勇者連続昏睡事件・解決譚〜

 

 

有咲に続いてあこまでが目を覚まさなくなってしまった。これまでの状況を一旦整理する為、残ったみんなはあこを運んで客間へと戻る。

 

 

--

 

 

客間--

 

香澄「まだ目を覚まさないよ、有咲……。」

 

燐子「あこちゃんもです……。」

 

夏希「やっぱり、あの時別れたりしないで、私が一緒にいれば良かったんだ…。」

 

蘭「落ち込んでたって何も解決しない。これからどうすべきかを考えるよ。」

 

友希那「2人がこんな状況なら、休暇は取り止めて帰るのが最適に思えるのだけれど。」

 

中沙綾「私は賛成です。早く大赦の病院に連れて行くべきです。」

 

小たえ「これ以上犠牲者を出さない為にもね。」

 

夏希「おたえ!縁起でもない事言わないで!」

 

休暇は取り止めの方向で話が進みかけていたその時、ゆりの端末に着信が入った。

 

ゆり「着信…?はい…もしもし、……えっ!?それって……ええ、はい…はい…。分かりました。」

 

リサ「何だったの?」

 

着信主はこの旅館のフロントからだった。そして、ゆりは受けた内容を説明する。

 

ゆり「………崖崩れが起きて、麓からの道が塞がれたって……。」

 

高嶋「ええっ!?それじゃあ、私達は……。」

 

ゆり「うん……。復旧作業が終わるまで、ここから帰れない…。」

 

勇者達はこの旅館に閉じ込められてしまったのである。それはまるで外から何者かの力が働いているかの様なタイミングでの事だった。

 

中たえ「被害者が2人…犯人は謎…そして私達は外界から隔絶された旅館に閉じ込められた……。」

 

ゆり「の、呪い!?皆殺しなの!?」

 

中沙綾「冗談言ってる場合じゃないよ、おたえ。」

 

モカ「でも、タイミングはドンピシャだよね。」

 

蘭「いざとなったら変身して走って帰れば良いんじゃない?」

 

友希那「そうね。抱えて走れば問題無いわ。」

 

薫「だけど、意識の無い2人はどうするんだい?この状態で動かして大丈夫なんだろうか。」

 

美咲「確かに…。脳震盪を起こしてたら、最悪命にかかわるかも。」

 

紗夜「ついてないですね……。」

 

香澄「おたえ、教えて。その呪いってどうしたら解けるの?」

 

香澄は呪いの解き方についてたえに尋ねる。

 

ゆり「か、香澄ちゃん…な、何を……。」

 

香澄「もし試せる事があれば、何だってやってみた方が!」

 

たえは腕を組んで考え始める。

 

中たえ「うーーーん………。紅葉はね、とにかく血をいっぱい欲しがってるんだ。だから、この山を染め上げるくらいの血を捧げれば満足してくれるかも。」

 

夏希「そ、それって、私達が献血すれば良いのかな……。」

 

美咲「2人を助ける前に、貧血でこっちが死んじゃうよ。」

 

 

--

 

 

ゆりは恐怖で身体を強張らせながら、りみの腕にしがみついていた。

 

りみ「お、お姉ちゃん、そんなにしがみついたら、腕が取れちゃうよぉ…。」

 

リサ「困った…。医者も警察も呼べないとなると、もう八方塞がりだよ。」

 

中沙綾「そもそも、2人がこうなったら原因も掴めて無いです。」

 

紗夜「……目撃者は?」

 

夏希「へ?」

 

紗夜「ゲームですと、目撃者の証言や証拠を集めて事件の真相に迫って行くんです。」

 

燐子「………探しましょう…。どんな手がかりでも…それがあこちゃんの助けになるなら…!」

 

友希那「燐子の言う通りね。今はやれる事をやりましょう。」

 

リサ「これだけは守って。今後何か行動をする時は、必ず2人以上で行動して。」

 

ゆり「そ、それは大事!絶対…絶対……私を1人にしないでぇ……!」

 

中たえ「じゃあ、私は例の伝説を詳しく調べてみるよ。」

 

中沙綾「なら私も一緒に。たえちゃんも一緒に行こうか。」

 

香澄「私も行くよ!ここでジッーっとしてたってどーにもならないもん!」

 

美咲「何が出来るか分からないけど、私も手伝うよ。」

 

蘭「私も。看病はモカに任せとけば大丈夫だから。」

 

香澄、中沙綾、中たえ、小たえ、美咲、蘭の6人はこの山の呪いについて調べ、残りのみんなは2人が倒れていた場所をもう一度詳しく調べる事になり、それぞれが移動を始めた。

 

りみ「行くよ。…お姉ちゃん、歩ける?」

 

ゆり「あ、あぁ……出来れば動きたくない…。」

 

 

---

 

 

資料館--

 

6人は旅館近くの資料館へと来ていた。幸いここへ来る為の道は無事だったようである。

 

香澄「おたえ、どの本を調べれば良いかな?」

 

中「えっと…。これと、これ……後はこれで大丈夫かな。」

 

たえが選んだ本はどれもページが少なく臼い本が3冊程。

 

美咲「え?たったこれだけ?」

 

中たえ「元々この伝説は西暦時代の話だから、残ってる資料が少ないんだ。」

 

蘭「でも、これなら直ぐに調べ終えるよ。」

 

6人は資料を読み進んでいく。

 

 

--

 

 

小たえ「……男は小作人の倅で、女は庄屋の娘だったみたいだね。」

 

美咲「身分違いの恋って事?ありがちだなー。」

 

中たえ「……庄屋は、娘に手を出した男を人柱として葬る計画を立てた…だって。」

 

蘭「何…それ…。」

 

中沙綾「……で、それを知った娘は、男を牢から逃がし駆け落ちを企てたけど、追っ手が迫り…。」

 

香澄「心中するしかなかったんだね……可哀想………。」

 

しかし、そこには呪いに関しての話や血にまつわる話も載っていなかった。

 

美咲「書いてないね…。」

 

中たえ「それは口承の伝説だからね。そういうのは書物には詳しく書かれないんだよ。」

 

小たえ「多分、直後に流行病とかで人が大勢死んで、呪いだって噂になったんだと思います。」

 

蘭「なるほど……。」

 

すると蘭はその2人を祀っている祠の場所が書かれている箇所を見つける。

 

蘭「この場所、すぐそこみたい。」

 

香澄「行ってみよう!お祈りすれば、呪うのをやめてくれるかもしれない!」

 

美咲「藁にも縋るってこういうことになんだろうね。行くだけ行きますか。」

 

6人は祠の場所へと移動する。

 

 

---

 

 

祠--

 

6人は祠へと辿り着くが、周りは何故かバーテックスの気配で覆われていた。

 

中沙綾「バーテックスの反応が凄い…。」

 

蘭「まるで、この祠を取り囲んでるみたい。」

 

美咲「どうする…?数も多いみたいだし、これはみんなと合流しないと危ないんじゃない?」

 

香澄「そうだね…。一度旅館に戻ってから、全員でまた来よう。」

 

そう思い引き返そうとするが、バーテックスがこちらに気付き、臨戦態勢に入り出した。

 

蘭「気付かれたみたい!」

 

香澄「敵はやる気満々だね。私たちだけでやっつけちゃおう!」

 

 

--

 

 

山道--

 

6人が応戦していく中で、不利だと踏んだのか、途中でバーテックスは撤退していった。

 

美咲「あー、酷い目にあったよ…。」

 

そこに、

 

夏希「あれ?おたえ?こんな所で何やってるの?」

 

2人が倒れていた場所を調べていたみんなが合流したのである。

 

香澄「みんな!どうしてここに?」

 

薫「有咲ちゃんが倒れていた所がこの辺りなんだ。」

 

 

 

有咲が倒れていた場所--

 

 

 

そこは祠の目と鼻の先だった。

 

小沙綾「資料館では何か見つかりましたか?」

 

蘭「これといっては何も…。」

 

燐子「こちらは、市ヶ谷さんの足跡と…木に打ち込みをした痕をみつけました…。」

 

美咲「白金さんもいたんですね。てっきりあこちゃんの方へ行ってたかと思ってました。」

 

燐子はあこの方を調べるとなると冷静でいられなくなると思い、自ら有咲の調査を志願していたのである。

 

りみ「それにしても、香澄ちゃん達は何かあったの?何だか疲れてるみたいだけど…。」

 

香澄は祠で起こった事を説明した。

 

りみ「ええ!?…あれ?でも、樹海化……してなかったよ?」

 

香澄達はその時の記憶を辿るが、確かにあの時の戦いでは周りは樹海化していなかった。

 

蘭「言われてみれば…。星屑ばっかりだったから?」

 

その時、

 

ゆり「それだぁーーーー!!」

 

ゆりが叫んだ。

 

夏希「うわあぁ!!どうしたんですか急に!?」

 

ゆり「全ての謎は解けた!犯人はバーテックスだよ!」

 

山中に沈黙が訪れる。

 

ゆり「有咲ちゃんはバーテックスにやられたんだよ!決まり!これで一件落着だよ!!」

 

りみ「お姉ちゃんは呪いじゃなきゃ何でも良いんでしょ!」

 

薫「有咲ちゃんがバーテックスにやられるとは考え難いよ。」

 

ゆり「やられるよ!やられるやられる!後ろからこう、ガーンって!!」

 

恐怖のせいか、ゆりの考えが子供並みになってしまっている。そして、ゆりが出した大声のせいで再びバーテックスが襲いかかってくる。

 

ゆり「バーテックスのせいなら怖くない!まとめて倒してやる!!」

 

りみ「……お姉ちゃんの鬱憤をぶつけられるバーテックスが少しだけ可哀想に思えてきたよ…。」

 

 

---

 

 

旅館、客間--

 

バーテックスを退け、旅館へと戻ってきた香澄達。

 

モカ「あっ、お帰りー。どうだった?」

 

蘭「はぁ……。」

 

リサ「何だかみんな疲れてるね。」

 

美咲「あの、リサさん。この山って未解放地域なんですか?」

 

リサ「解放地域だよ。だけど、さっきみたいな奇襲に対しては樹海化するけどね。」

 

美咲「そうですよね…。大赦がわざと未解放地域の宿を指定する筈無いですよね…。」

 

蘭「でも、だったらどうして祠の周りにバーテックスがいたんですか?」

 

リサ「ええ?私は何も感知してないよ。」

 

モカ「祠って?」

 

中沙綾「伝説に出てくる恋人達を祀った祠があるんだけど、そこを調べてたら敵に遭遇したんだよ。」

 

リサ「それで、祠は壊されちゃったの?」

 

中たえ「壊されてないよ。……あれ?何かおかしい。」

 

ここでたえがある事に気付く。

 

香澄「何がおかしいの?」

 

中たえ「だって、バーテックスは祠とかそういう物をとにかく壊したがるものだから。」

 

バーテックスは人が作った物や神社など神聖な物を壊す傾向があるのだ。それなのに、あの時のバーテックスは祠を壊すのでは無く、取り囲んでいたのである。

 

蘭「そう言えば…。諏訪でも諏訪大社は優先的に狙われてたし。」

 

モカ「それってバーテックスが逆に祠を守ってるみたい。」

 

ここで燐子がある仮説を立てる。

 

燐子「……もしかして…これまでとは逆のパターン…なんじゃないでしょうか…?」

 

薫「…逆とは?」

 

燐子「以前…未解放地域の中に、少しだけ解放地域が存在していた事がありましたよね…?」

 

中たえ「じゃあ、つまりあの祠は解放地域の中の未解放地域って事だ!」

 

中沙綾「なるほど…。あの祠を拠点としてるバーテックスが僅かにいるって事だね。」

 

これでバーテックスの謎は解けたが、2人が倒れた謎がまだ何一つ解けていない。

 

友希那「取り敢えず、安全に捜査する為にも、まずはその祠を解放しましょう。」

 

モカを看病の為残し、香澄達は再び祠へと移動した。

 

 

---

 

 

祠--

 

香澄「ここが、この祠です。」

 

美咲「大きな音とか声を出さないでください。バーテックスが寄って来ますから。」

 

小沙綾「本当にここだけ未解放のようです。それに、何匹も外へはみ出してます。」

 

リサ「そんな…。小さいとはいえ未解放地域の存在に気がつかなかったなんて…。私のせいでみんなを危険な目に遭わせちゃってごめん…。」

 

夏希「大袈裟ですよ。誰も怪我なんかしてな……あっ。」

 

リサ「有咲とあこはバーテックスにやられたかもしれないんだよね……。」

 

2人が倒れたのは自分のせいだとリサは自責の念を感じていた。

 

中沙綾「結界をすり抜ける敵もいますし、リサさんのせいじゃありません…。」

 

香澄「そうです!それに、まだ2人は敵にやられたと決まった訳じゃないです!」

 

他の人はリサを慰めるのだが、

 

友希那「いいえ、今回は明らかにリサのミスよ。」

 

友希那はリサを叱責する。

 

リサ「うん……。」

 

高嶋「友希那ちゃん、酷いよ!リサちゃんだって、わざとじゃないのに!」

 

友希那「黙って。巫女の判断ミスがあれば、勇者は命を落とす危険だってあるわ。その責任は、実際に戦っている私達よりもずっと重いものなのよ。」

 

友希那はリサの事を思って叱っている。巫女とは勇者にとってそれだけ大切な者だから。

 

燐子「ですが…。こんな時に、今井さんを責めなくても…。」

 

友希那「けど、リサのミスは私のミスよ。あなたが罰を受けるのなら、私が代わりにそれを受けるわ。」

 

リサ「友希那……私…私……っ…。」

 

リサは友希那に抱きつき涙を流す。

 

友希那「泣くのは後よ。みんな…。祠での戦い、私に任せてちょうだい。」

 

友希那はみんなを下がらせ、1人で前に出て飛び出して行った。

 

たえ達「「御先祖様カッコいい!!」」

リサ「友希那……。待ってるからね…。」

 

 

--

 

 

20分後--

 

息を切らした友希那が戻って来た。

 

友希那「はぁ…はぁ……。一掃完了…よ。」

 

ふらつく友希那の元へすかさずリサがやって来る。

 

リサ「友希那!ごめんね、私のせいで…。」

 

友希那「心配しないで。少し疲れただけよ…。」

 

その時、モカから着信が入る。

 

モカ「もしもーし、モカでーす。ついさっき2人が目を覚ましたよ。」

 

香澄「えっ!ホント!?」

 

モカ「意識ははっきりしてて、今のところ後遺症も見られないよ。」

 

モカの知らせを聞いた燐子は安堵の涙を流していた。

 

燐子「良かった……。本当に良かったです……。」

 

みんなは大急ぎで旅館へと戻るのだった。

 

 

---

 

 

旅館、客間--

 

りみ「本当に心配したよ、有咲ちゃん!」

 

有咲「悪かったな、心配かけて。」

 

香澄「それで、結局倒れた原因は何だったの?」

 

有咲「え……。さ、さぁ…何だったかな……。」

 

何故か有咲の声色が上ずって、目線を逸らした。

 

中沙綾「記憶に障害が!?なら早く脳検査を手配しないと!」

 

沙綾がそう言うと、

 

有咲「ちょままっ!!ち、違う!記憶に問題は無いから!」

 

必死で抵抗していた。

 

夏希「あこさんも、頭大丈夫ですか!?」

 

あこ「言い方言い方!大丈夫に決まってるよ!」

 

燐子「あこちゃんは分かってるの…?気絶した原因…。」

 

そしてあこは事の顛末を説明するのだった。

 

 

--

 

 

あこ「夏希と別れてから、どうしようもなくお腹が鳴ってね……。厨房へ行ったの。」

 

夏希「あ、やっぱり!」

 

あこ「んでね、板前さんの目を盗んで、お刺身とか煮物とかをつまみ食いしてたら……。」

 

燐子「してたら……?」

 

あこ「一気に食べ過ぎて流石に喉に詰まりそうになったんだよ。」

 

美咲「それはもうつまみ食いの域を超えてるよ。」

 

夏希「良いなぁ…。美味しかったですか?」

 

あこ「それはもう本当に美味しかったよ!これなら夜ご飯も期待出来るよ!」

 

紗夜「開いた口が塞がりません……。」

 

燐子「喉に詰まりかけて、どうしたの…?」

 

あこ「水でも飲もうとしたんだけど、そこに仲居さんが次々に来ちゃって…。それで水道の所まで行けなくて、他に何か飲むものを探してたら…。」

 

燐子「探したら……?」

 

あこ「調理棚の所に、ジュースの瓶が置いてあったのを見つけて、それを咄嗟に飲んだんだ。そのジュースがとっても美味しくて、夢中で飲んでたら、また見つかりかけて、そのまま走り出しちゃったんだ……。思えばあれが失敗だったよ。」

 

燐子「逃げて、見つからなかったのに失敗なの…?」

 

あこ「逃げる時に、口いっぱいにジュースを含んだまま厨房を出ちゃってね、ダッシュしてたら、勿体無い事に口から少し溢れちゃって……。咄嗟に下向いて、服の汚れを確認したら……次の瞬間、頭にドンッて衝撃がきて、そのまま地面に倒れちゃったって事。」

 

燐子「頭に衝撃って…。じゃあ…やっぱり、それって……。」

 

あこ「お陰で、口いっぱいに入ってたジュースは全部出ちゃうし、散々だったよ!」

 

燐子「ジュースじゃなくて、誰にやられたの…!?」

 

あこ「ん?……えっと、多分バーテックスかな。」

 

高嶋「バーテックス!?何で分かるの?」

 

あこ「だって、何か変な音したから。バーテックス出てくる時のいつもの音。」

 

燐子「だったら、あの血は!?バーテックスに反撃したの…!?」

 

あこ「そんな暇無かったよ!いきなり後ろからだもん。卑怯だよ!」

 

リサ「あこ……。念の為聞くけど、飲んだのは何のジュース?」

 

あこ「ザクロジュースだよ!」

 

小沙綾「え…ザクロ……。」

 

中沙綾「なるほど…納得。」

 

この瞬間、全ての点が線へと繋がった。

 

燐子「じ、じゃあ…あの血は…。あの真っ赤でベットリとした血は……。」

 

紗夜「ザクロの赤と、糖分のベタつきでしょうね。」

 

友希那「ザクロは血の味……と言うものだけれど、まさか血液と間違えるなんてね…。」

 

燐子「……………。」

 

燐子はあこが無事だった安堵からか、はたまたあこを情けなく思ってしまったからなのか、その場にへたり込み放心状態になってしまう。

 

あこ「りんりん!りんりーーーん!!!」

 

 

--

 

 

一方有咲は--

 

香澄「じゃあ、有咲も何か食べてて襲われたの…かな?」

 

中沙綾「ああ……。」

 

有咲「おい、沙綾!そんな目で見るなぁ!」

 

そうして堪忍した有咲も事の顛末を語り出す。

 

有咲「……ランニングを終えた私は、立ち止まって手頃な木に打ち込みを始めたんだけど…いつの間にか辺りにバーテックスがいる事に気付いたんだ。」

 

香澄「あの祠の近くだよね。」

 

有咲「それで、マズイと思ってスマホを取り出したんだけど、手に汗をかいていたから中々取り出せなかったって訳。それで焦ってイライラしてたのと、やっとかけた電話にゆりが出なかったせいで……ついあの場で叫んだんだ…。」

 

香澄「え、なんて?」

 

有咲「何で出ないんだよ、バカヤローーーーー!!!って。」

 

ゆりがスマホを確認すると、確かに有咲から着信が入っていた。

 

りみ「お姉ちゃん、怖い話に震えてたから、スマホのバイブに気づかなかったのかも…。」

 

中沙綾「悲鳴も上げてましたもんね…。」

 

美咲「でも、叫んだのはマズかったね。あの敵は音に敏感みたいだったから。」

 

有咲「そう。それで、一斉に襲いかかられて……。」

 

香澄「ボコボコにされちゃったんだね!でも安心して、ちゃんと仇はとったから!」

 

有咲「ボコボコにされるか!そんな簡単に私がやられると思うか!?」

 

香澄「違うの?じゃあ、何があったの?」

 

有咲「そ、それは……。」

 

ここにきて、再び有咲が黙ってしまう。

 

有咲「……迫り来るバーテックスから、一旦は逃げる為に全力で走った私は、どうやったら奴らの不意をつけるか考えて、ある技を出す事にした。」

 

夏希「どんな技ですか!?」

 

有咲「前にある壁を思いっきり蹴って、その勢いで後ろの敵を蹴るやつ。」

 

高嶋「三角飛びだね!カンフー映画でよく見るやつだよ。」

 

有咲「そう。それを食らわせれば、敵も面食らって逃げると思った訳。」

 

香澄「さっすが、有咲!私じゃ絶対に考えつかないよ!」

 

有咲「ま、まあな…。」

 

友希那「それで、食らわせたの?」

 

有咲「う……。いや………。」

 

香澄「失敗したの!?」

 

有咲「失敗って言うか……。ずっと濡れてた地面を走ってたせいで、靴が濡れてて……。木を蹴った拍子に、そのままズルッと滑って…………それで、その……地面に……。」

 

りみ「それで頭打ったんだね……。」

 

有咲の謎も全て解明される。

 

中沙綾「その後に2人とも麻痺効果があるバーテックスの攻撃を受けたんだろうね。」

 

リサ「生身だと回復するのが遅いから、それで起きるのに時間がかかったんだろうね。2人とも、今後は気をつけてね!」

 

有咲・あこ「「はい……。」」

 

 

--

 

 

ゆり「なーんだ、それじゃあ結局呪いなんか無かったんだね!」

 

りみ「お姉ちゃんが有咲ちゃんの電話に出てればこんな事にはならなかったんだよ?」

 

有咲「そ、そうだそうだ!」

 

友希那「案外、変身前だったのは不幸中の幸いだったのね。変身していたら確実にトドメを刺されてただろうから。」

 

中たえ「気絶してたのも良かったのかも。死んだと思われてたんじゃないかな?」

 

小たえ「これで事件も解決した事だし、やっと休暇を楽しめますね。」

 

友希那「リサ、私達も露天風呂に行きましょうか。この疲れをとりましょう。」

 

リサ「はいはい。背中流すよ。」

 

こうして無事に謎は解け、勇者部は残りの時間で休暇を全力で楽しむのであった。

 

 

 


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