ここでの話が本編終盤に生きてきます。
8月の中頃、勇者部部室--
ゆり「さてと、今月はリサちゃんの誕生日だね。」
彩「わぁ、おめでとう!」
来たる8月25日は今井リサの誕生日である。
ゆり「欲しいものは……なんて、リサちゃんには今更聞く必要も無いよね。」
友希那「………。」
友希那は息を飲んだ。
リサ「新しいカメラが欲しいな。」
中沙綾・紗夜「「えっ……!」」
リサの予想外の答えに勇者部のみんなは驚いた。
中たえ「友希那さんじゃなくて?」
リサ「うん、そうだよ。」
美咲「でも、何か物が欲しいって言った人は何気に初めてですね。」
香澄「そうだね!そう考えるとなんか新鮮!」
リサ「いつも、何もいらないとか何でも嬉しいって言って、騒ぎになるからさ…。ちゃんと欲しい物を言えば、穏やかに過ごせるんじゃないかってね。」
夏希「確かに、誕生日と言えば大混乱ってとこありますしね。」
あこ「でもリサ姉。リサ姉はもうカメラ何台も持ってますよね?」
あこの言う通り、リサの部屋には沢山のカメラがある。
りみ「それなのに…友希那さんより新しいカメラが良いんですか?」
リサ「そうだよ!」
満面の笑みでリサは答える。
薫「リサが持ってないカメラとなると…。」
小沙綾「高速撮影が可能なカメラとかですか?」
モカ「意外と、目が大きくなったり肌が綺麗に写るタイプだとか?」
リサ「どんなカメラでも構わないよ。」
高嶋「じゃあ、今回のプレゼントはどんなカメラにするか相談だね!」
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ゆり「それじゃあ、プレゼントはみんなでお金を出し合ってカメラで決まりだね。」
有咲「後はいつもみたいなパーティもな。」
リサ「ありがとね。当日はそのカメラで写真じゃんじゃん撮るよ。」
あこ「誕生日パーティ兼撮影会だね!」
美咲「だったら楽しい写真が撮れるように、色んなアイテムも揃えませんか?」
それぞれが撮影アイテムのアイデアを出して会議は弾んでいった。
高嶋「みんなでパーティグッズのお店に行ってみない?きっと今出た小物とか色々あるよ!」
燐子「カメラのお店で店員さんに相談もしたいですし……良いと思います。」
中たえ「…………………。」
話がまとまっていく中、たえだけが何か複雑そうな顔をしている。
中沙綾「おたえ、どうかした?」
中たえ「え?ううん、何でも無いよ。」
中沙綾「そう?」
中たえ「…………。」
たえは笑顔のリサを見ながら考えるのだった。
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寄宿舎、リサの部屋--
誰かがリサの部屋をノックする。
リサ「誰ー?」
中たえ「花園たえです。中の方の。」
訪ねてきたのはたえだった。
リサ「空いてるからどうぞー。」
中たえ「お邪魔します。」
リサ「どうしたの、突然?」
中たえ「ちょっと聞きたい事があって。リサさん、本当にカメラが欲しいんですか?」
リサ「え?欲しいけど…どうして?」
中たえ「私がいつもイベントを計画してるのは、ある理由があるんですけど…。」
リサ「勿論知ってるよ。」
中たえ「え?」
リサ「多分だけど、物だと………元の世界に持って帰れないかもしれないって事でしょ?みんなが帰る時の事を考えて、物より思い出を……って考えてくれてたんだよね?」
リサは全部判っていたのである。ここで得た物は持って帰れないかもしれない。たえはその事を考えてわざわざイベントを企画し、せめて思い出を残そうとしてきたのだ。
中たえ「そこまで解ってるのなら、どうして……。」
しかし、リサが今やっている事はそれと全く逆の事。たえはそれが分からなくてこうして尋ねに来たのだ
リサ「フフ…。」
中たえ「リサさん?」
リサ「たえと話がしたかったからかな。出来れば、ゆっくり……2人きりで。」
中たえ「………?」
リサは物が欲しいとわざわざ言えば、たえが勘付いて自分の元へとやって来る。ここまで考えていたのである。
中たえ「わぁ…。リサさん天才だ。」
リサ「まあね。」
中たえ「解らないです、リサさん。一体、何を考えてるんですか?」
リサ「たえに聞きたい事があるんだ。どうしても……この御役目が終わる前に。」
中たえ「……何ですか?」
リサは重い口を開く。
リサ「教えて………。湊家、そして他の西暦の勇者達の家系について、詳しく。」
中たえ「………っ!」
突然の事にたえも驚いてしまう。
リサ「人前では言えない事もあるだろうから、こうして機会を作らせてもらったんだ。」
中たえ「………歴史から消されてる部分もあります。私が知らない事だって、たくさん…。」
リサ「そうだろうね……。」
中たえ「それに、私が真実を言うとは限らないですよ?それでも良いんですか?」
だが、リサは笑って答える。
リサ「大丈夫。たえは嘘つかないよ。」
中たえ「…………リサさんには敵いません。分かりました。じゃあ、場所を変えましょう。」
リサ「場所?」
中たえ「ここだと、急に誰かがやって来るかもしれないから。図書館に行きましょう。」
図書館なら鍵のかかる個室の勉強部屋があり、防音の為誰にも聞かれる事は無い。それくらいたえが話す事は大赦のトップシークレットなのである。
リサ「分かった。ごめんね、大変なお願いしちゃって。」
中たえ「それくらいの覚悟があって私にお願いしてるって、知ってますから…。」
リサ「うん…。」
中たえ「だけど、リサさん……1つ約束してください。何を聞いても、絶対に秘密にするって。それが例え、友希那さんにでも。」
リサはゆっくり頷く。
中たえ「この先、みんなが元の世界に帰って、私と会えなくなっても……ずっと。出来ますか?」
リサ「約束するよ。全部、私1人の胸に納めとくから。」
中たえ「………それが何を意味するかも、全部解ってるんですね。……やっぱり、凄いです。」
2人は図書館に移動する。
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図書館--
そしてたえは自分が知っている西暦での出来事をリサに話した。
中たえ「--------。--------。」
リサ「…………………。」
その間、リサは一言も話さず、ただたえの言葉をしっかり、一言一句逃さず聞いていた。
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約30分後--
中たえ「…………私が知っているのは、このくらいです。これ以上は、花園家にも伝わっていないし、追いかけるのは無理だと思います。」
リサ「そっか……。」
中たえ「きっと……この世界から戻ると、みんな色んな事があると思うんです…。だからこそ、ここでは………思い切り…思いっ切り楽しい思い出を作っていきたいんです。」
リサ「たえ……。」
中たえ「だって………思い出は、ピンチの時に力になるから。ここにいる誰もが、そばにいないとしても…その思い出が、きっと勇者を助けるから!」
リサ「その通りだね…。カメラとかは持って行けないだろうけど、その分大切な思い出を、私は………。心のレンズに写してくつもりだよ。」
中たえ「……無理しないでください、リサさん。もう、リサさんなら解ってますよね?」
リサ「……………多分ね。」
もう1つの可能性もリサはちゃんと理解していた。"記憶"を持ち帰れるのかどうか。
中たえ「だったら………私のしてる事が自己満足で自己矛盾だって、そう言いたくないんですか?私がさっきから、自分に言い聞かせてるみたいに喋ってるなって、少しも感じないんですか?」
リサ「………私の考えが解らないって、さっきたえは言ってたよね?」
中たえ「……はい。」
リサはたえを抱きしめながら言う。
リサ「心配ないよ。思い出は物みたいに………記憶みたいに、消えたりしないから……絶対。」
中たえ「確信…あるんですか?」
リサ「頭では忘れるかもしれない。でも、みんなの心に刻まれた想いまでは、絶対に消える事はないから。それくらい、勇者の心は強いんだから!知らなかった?」
中たえ「………さすがはリサさんですね。グスッ……鼻が出てきちゃいました……。」
リサ「ほらほら、涙拭いて。こっちおいで。」
リサはたえに膝枕をする。
中たえ「……何だろう。とっても暖かい気持ち……凄く落ち着きます。」
リサ(友希那は…………私が守るから。だから、安心して……。)
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8月25日、勇者部部室--
小たえ「パンパカパーン!」
夏希「パンパンパンパンパカパーン!」
友希那「リサ、誕生日おめでとう。」
クラッカーを鳴らし、みんながリサをお祝いする
リサ「みんな、ありがとね。」
高嶋「いつもありがとう、リサちゃん!」
彩「リサちゃんは、私の目標でお手本で先生だよ!」
モカ「これからも、おねしゃーす!」
リサ「あはは。そんな風に言われると、何だか私だけ凄く歳取ったみたい。」
蘭「ここにいる限り、ずっと若いままですよ。」
ゆり「その通り!そして、これがプレゼントだよ!」
ゆりがプレゼントをリサに渡す。
香澄「みんなで相談して買ったんですよ!えーっと……。」
中沙綾「超最新、特定対象追尾型カメラです!少し、改造しておきました。」
有咲「写したい人を登録しておくと、放置しておいても勝手にピントを合わせて自動で……。」
りみ「定期的だったり、大きな動きの度にシャッターを切る凄いカメラです!」
紗夜「ある意味怖いですが……今井さんにはちょうどいいでしょう。」
リサ「最高に嬉しいよ!じゃあ早速……友希那。」
友希那「覚悟はしているわ……。煮るなり焼くなり好きにしてちょうだい。」
リサは友希那にウサギの耳や天使の羽、蝶ネクタイなどをつけ始める。
友希那「な、何なのかしら………。」
中たえ「あと、オッちゃんも持ってね。」
リサ「うん!良いよ!最高だよ!ファンシーだよ、友希那!!」
リサは高速でカメラのシャッターを切っていく。
あこ「1秒間に60回切れるシャッターに防水防塵付きで、外でもバッチリだよ!」
燐子「暗視機能もあるので…寝顔もバッチリです…。」
小沙綾「録音機能も付いてますので、寝言なども記録出来ます。」
夏希「友希那さんの寝言ってどんな感じなんだろう?」
リサ「それはもう、めっちゃ可愛らしいものなんだから!」
有咲「何で知ってるんだ……。」
美咲「こっちに着替え用のワンピースやタキシードとかもありますよ。」
中たえ「全部つけていっぱい写真撮りましょう!」
友希那(何なのかしら……何なのかしら……!)
最早友希那に抵抗する気は失せている。
中たえ「アハハハ!」
リサ「さあ、みんなも入って入って!はいっ、チーズ!」
今日という日を全力で楽しんでいく、たえとリサなのであった--