今宵開かれる林間学校ババ抜き大会。だが、このババ抜き大会は普通の大会では無かったのである……。
波乱に満ちた林間学校も1日目が終わろうとしていた。
A班の部屋--
中沙綾「香澄っ♫香澄っ♫」
香澄「さーやっ♫さーやっ♫」
B班の沙綾が香澄と手を繋ぎ舞い踊っていた。どうやら就寝する時は両班合同らしい。
有咲「ったく…。就寝は同部屋なら最初からそう言えっての…。」
友希那「本当ね…。そうと知っていれば、山吹さんの暴走も少しは抑えられたでしょう…。」
午前中沙綾に振り回された有咲と友希那は大きなため息をついた。
リサ「いや…これは一応私とモカが上に交渉した結果勝ち取ったものなんだ…。」
リサが言うには、敵襲があった事で不測の事態に備えてという名目で巫女が掛け合った結果、との事らしい。
中沙綾「リサさん!モカ!」
リサ・モカ「「な、何!?」
中沙綾「感謝しますっ!」
掛け合ってくれた巫女2人に、沙綾はそれはそれは見事な土下座を披露する。
蘭「土下座なんて大袈裟だよ。」
あこ「それより、せっかく合流したんだから消灯時間まで何して遊ぶか考えようよ!」
高嶋「うんうん、それが良いよ!」
香澄「何しようかー?」
有咲「ゆりがこの場にいたら絶対恋バナしようって言い出すだろうな。」
美咲「確かに。」
有咲「ったく…いたらいたでうるさいのに、いなきゃ物足りないな…。」
そんな事をボソッと呟く有咲に対し、
中たえ「ご先祖様、今のが有咲のデレです。」
友希那「そうなのね…。あれが例の…。」
有咲「ちょまっ!何言ってんだ!?例のって何だ!」
中たえ「実は今、ご先祖様はツンデレの勉強中なんだよ。」
友希那「中々難しいけれど、市ヶ谷さんを見ていれば解ると聞いたの。しばらく観察させてちょうだい。」
そう言って友希那はまじまじと有咲を見つめ観察し始める。
有咲「わ、私はそんなんじゃねーーーっ!!」
美咲「そんなんだよ?」
リサ「そんなんだね。」
中沙綾「はい、そんなんです。」
有沙「花園たえーーーーーっ!!!」
有咲の怒号が響き渡る。
あこ「………それはさておき、合宿といえば枕投げだけど…。」
高嶋「それは止めておこうよ。せっかく一緒の部屋になったのに、先生を怒らせたらまた離されちゃう。」
中沙綾「はっ!?枕なんか投げないよ!絶対に絶対!誰が何て言おうと一生投げないからね!」
美咲「じゃあさ、私トランプ持ってきたからそれで遊ぶ?」
美咲は懐からトランプを取り出す。
香澄「うん、良いね!ありがとう、美咲ちゃん!」
あこ「一口にトランプって言っても色々あるけど、何やろう?」
中たえ「ポーカー。」
リサ「ルール知らないんだよね…。」
友希那「スピードはどう?」
高嶋「2人しか出来ないよ?」
蘭「だったら、神経衰弱は?」
あこ「あこそれ苦手です…。」
中沙綾「ババ抜きは?」
モカ「11人だと手持ちが少なくなってつまらないんじゃない?」
リサ「だったらチーム戦にしたらどう?」
美咲「良いんじゃないですか?2人一組とか3人一組ならカードも足りるし。」
あこ「チーム対抗、勝ち抜き戦だぁー!」
やるものがババ抜きのチーム戦に決まったところで、たえがある提案を出した。
中たえ「たまには、負け抜きにしませんか?」
友希那「負け…抜き…?」
そしてたえが決めたこのルールによって熾烈なトランプバトルが始まる事となる--
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有咲「負け抜きってどんなルールだ?」
中たえ「最初は5対6で戦って、次は負けた組の人達が2組に分かれて戦うの。」
つまり、最後まで残った人はババ抜きのキング・オブ・ビリという事になる。
中たえ「勝ちより負けない事に命をかけて戦うロマンだよ。」
美咲「命って……。でも、それなら勝った人達はつまらなくない?」
中たえ「それは……やってみてのお楽しみだよ。」
あこ「まぁ、それで良いや!消灯までの時間を有意義に使おう!」
そしてババ抜き、負け抜き戦が始まる--
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友希那「最初のチーム分けは、あこ、市ヶ谷さん、香澄、青葉さん、リサ。もう一方は、戸山さん、山吹さん、奥沢さん、美竹さん、花園さん、私ね…。」
中沙綾「香澄と同じチームだね!」
香澄「あっ!さーや!」
トランプが配られた際に香澄が叫んでしまう。
あこ「むむっ…。今の感じ……向こうにババがあるね!」
モカ「そうだねー。こっちに無いから必然的に向こうにあるよねー。」
友希那「戸山さん、表情を読まれてるわよ。」
香澄「ご、ごめんなさい…。」
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各々は順番にカードを取って、揃った札を捨てていく。
有咲「……ババ抜きとは言え、ポーカーフェイスが出来ない香澄に勝ち目は無いな……うっ!?」
香澄「あっ、ババ取ったー!」
有咲も人の事は言えない。
美咲「んんん!?これって……どっちにしろババのある側は丸分かりで、ゲームになるの…?」
中たえ「物語はね…二回戦から始まるんだよ…。」
たえは不敵な笑みを浮かべるのだった。
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それから10分後、一回戦の決着がつく。
蘭「結局、一回戦はこっちが勝ったから、負けたあこ達のチームが2組に分かれるんだよね?」
あこ「うぅ……。グーとぉ〜パーっ!あこ、有咲、香澄対モカちん、リサ姉の巫女連合の戦いだね!」
若干あこの声が震えている。
リサ「モカ……これは負けられないよ。」
モカ「あいあいさー。」
有咲「高嶋……の方は顔に出ないんだな。」
高嶋「頑張るよ!」
友希那「それでは、始め!」
緊張の二回戦が始まる。
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あこ達は早速たえが一回戦で言っていた事が何だったのかを理解する。
美咲「……ふふっ。」
香澄「あっ……!」
中沙綾「なるほどねぇ〜。」
あこ「ちょっと待って!み、みんな!後ろに回って見ないでよぉー!!」
蘭「心配無いよ。ちゃんと平等に3人ずつで見てるから。」
有咲「平等って……私の後ろに香澄がいる!?しかも、その顔は何だぁ!!」
有咲の手札を見ていた香澄の目はどこか虚空を見つめていた。
香澄「エッ?カオニハデテナイデショ?」
有咲「目に出てるーーーっ!!」
リサ「な、何だろう……このババ抜きは…。」
友希那「他人の動向によって窮地を招く……。恐ろしいゲームね…。」
負け残る者は勝者への見世物となる、これがこのゲームの恐ろしいところだった--
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そして悪魔の様な二回戦が終わり、勝負は最終戦に突入する。
中たえ「こうして迎えた決敗戦の出場者は、あこ、有咲、香澄だよ。」
有咲「決敗戦って何だ!?」
あこ「むぐぐぐ……おかしい…。ババ抜きなら勝てると思ってたのに!?」
高嶋「私も、得意な筈だったんだけどなぁ。」
有咲「言いにくいんだけど…さ、戸山の方の香澄。」
香澄「はーい!なになに?」
有咲「こっち来んなっ!」
あこ「こっち来ないで!」
香澄「ふぇーーん!ごめーん!!」
2人の言葉にショックを受けた香澄は沙綾の胸に飛び込んだ。
中沙綾「よしよし、慰めてあげるから。」
香澄「わーーん!!さーやぁ!!」
中沙綾「よしよし……。有咲、あこ!酷い事言わないのありがとう!」
高嶋「ゲームが得意な紗夜ちゃんの親友として私が最弱王になるのは、回避しなくちゃ…。」
そして決敗戦が始まった。
あこ「言ったねー?紗夜さんがババ抜き如きの勝敗を気にすると思うー?よし、あこはこのカードを取るよ!」
美咲「あこは煽っていくスタイル?お、セーフだよ。」
あこ「口に出さないで!?」
有咲「フッフッフ……。今のでババがあこに無いのは明白…。」
高嶋「あれ?でも、私も持ってないよ?」
蘭「図らずともババの在り方が明白になっちゃったね。」
有咲「ちょまっ……ブラフなのに!ったく…じゃあ私があこから引く番だな。」
有咲があこから1枚取り、札を捨てる。有咲の手札は残り1枚。
高嶋「うぅ……。有咲ちゃん残り1枚?で、私が有咲ちゃんから引くと…。」
有咲「おっしゃあーーっ!1抜けだぁ!」
有咲が抜けてあこと高嶋の一騎打ちとなる。
あこ「ゴクリ………。って事は…香澄がババを持ってるんだね…。」
その後ババは高嶋から動く事は無く、高嶋の持ち札が2枚、あこが1枚となる。
あこ「………どのカードかなぁ…。……これ…かなぁ……?」
あこは自分から見て右の札に手をかける。
友希那・リサ・モカ「「「………。」」」
あこ「おおっ?だったら……こっち……かなぁ……?」
ギャラリーの様子を伺い、今度は左の札に手をかけた。
美咲・中たえ・香澄「「「……ふっ。」」」
あこ「みんな、分かりやすいよ!!もらったぁ!!!」
ギャラリーから笑みがこぼれたのを見逃さなかったあこは、すかさず左の札を取った。が、
あこ「えーーーーーっ!!何でババなのーーーー!!??みんなの表情分からないよぉ!!」
そして、逆にあこが狼狽えているところを高嶋は見逃さなかった。
高嶋「そして私が最後のカードを取るっ!!」
高嶋はあこがカードをシャッフルする前に引いたのである。
中たえ「はい!今夜ここに、あこのババ抜き世界最弱が決定したよ!」
香澄・高嶋「「おめでとう!!」」
あこ「そ…そんなバカなぁーーーっ!!か、帰ったら紗夜さんに特訓してもらうんだからぁーーーっ!」
大盛り上がりでババ抜きが終了したところで美咲はある事に気がつく。
美咲「でも、これって……例え勝ち抜き戦だとしても、ギャラリーは同じ役割してたよね……?」
中たえ「それは言わないお約束♫勝者の喜びより、敗者の雄叫びだよ♫」
美咲「あ……あはははっ………。」
美咲は笑顔で腹黒い事を話すたえに、乾いた笑顔で笑い、少し身震いするのだった。