戸山香澄は勇者である   作:悠@ゆー

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勇者とスパイの物語その2。

情報を集める"ツキカゲ"と勇者部。事態を裏で操っていたのはあの人物だった--





神樹の記憶〜違和感のスパイラル〜

 

 

突如この異世界に飛ばされて来た"ツキカゲ"の6人。6人は勇者部と協力して情報を集める為、街を散策する。

 

 

商店街--

 

小沙綾「何組かに分かれて行動するのは良いとして、何故私達は商店街に?」

 

楓「敵の手がかりが全く無いって言うからよ。諜報活動の基本は、街での聞き込みだからね。」

 

商店街に来ているのは小学生組に命・楓ペア。

 

小たえ「捜査は足でするんだ、ってヤツだね。」

 

夏希「刑事ドラマみたいでカッコいい!あ、でも…街の人が敵の事なんて知ってるんですか?」

 

命「何が重要な情報かは、集めてから判断するの。材料が無いと、料理も出来ないでしょ?」

 

小沙綾「言っている事は分かりますが、知らない人に何を聞けばいいのか、見当もつかないです。」

 

楓「ここはプロの私達に任せておきなさい。アンタ達は小学生で、えっと……。」

 

夏希「あ、私は海野夏希って言います!」

 

小沙綾「山吹沙綾です。」

 

小たえ「花園たえ(小)です。」

 

命「小?そういえば、同じ顔の子がもう1人いたけど、もしかして双子なの?」

 

小たえ「えーと……はい、そんな感じです。」

 

詳しく話してしまうとややこしくなってしまう為、たえはやんわりと流した。

 

命「へー。あなたも似た顔の人がいたよね。お姉さん?」

 

小沙綾「えっ?はぁ……まぁ。」

 

ややこしくなってしまう前に楓が命に声をかけた。

 

楓「師匠、それよりあの店なんてどうでしょう?」

 

楓が指した場所は八百屋さんだった。

 

命「八百屋さんかぁ。うん、ちょっと行ってみっかね。3人は、ちょっとここで待ってて。」

 

2人はそれとなく八百屋の店主の元へと近付いた。

 

 

--

 

 

店主「いらっしゃーい!」

 

命「美味しそうなお野菜ですね!引っ越し前はこんな良いお店近所に無かったから嬉しい!」

 

店主「あら、そうなのかい?サービスしとくよ!可愛らしいお嬢ちゃんだねぇ。そっちは妹さん?」

 

楓「はい!うちのお姉ちゃん、人参嫌いで困ってるんです。美味しい食べ方とかありますか?」

 

店主「あるともさ!おばちゃんが教えたげるから、贔屓にしとくれ。うちは街一番の八百屋だからね!」

 

会話の入り方、話し方、話題の出し方、全てにおいて本当に近所に引っ越してきたばかりかの様に2人は八百屋の店主と話をしていた。

 

楓「凄いね、お姉ちゃん!私達、街1番のお店を見つけちゃったよ。」

 

命「街と言えば、さっきお肉屋さんで聞いたんですけど、最近この辺りで何か変わった事があったとか?」

 

そして2人は会話の流れでそれとなく情報収集を開始する。

 

店主「変わった事?一体何だろうね?ちょいとー、山田の奥さんどう思うー?」

 

店主はいつもここに来ている常連の人に尋ねた。

 

山田「そりゃ、アレじゃないかしら?ほら、昨日ここに来たじゃないの!」

 

店主「あーあー!アレね!"野菜の仕入れ先とこ流通を聞いてくる妙な男達"だろ?」

 

命「えー?そんなの聞いてどうするんでしょう?売り込みの人だったのかしら?」

 

店主「私もそう思ってね、美竹農場以外うちは扱わないよって、言ってやったのさ!」

 

楓「美竹農場?」

 

店主と山田さんが話している隙を縫って、沙綾が命と楓に耳打ちする。

 

小沙綾(私達勇者部の蘭さんの畑の事です。)

 

命・楓「「え?」」

 

取り敢えず必要な情報が手に入り、5人は八百屋を後にした。

 

 

--

 

 

夏希「命さんと楓さん凄いです!あんなに自然に知らない人とお喋り出来ちゃうなんて!」

 

楓「まー、アレくらい日常茶飯事だからね。」

 

命「こんな感じで、あと数軒回ってみよう。」

 

小沙綾・夏希・小たえ「「「はいっ!」」」

 

 

---

 

 

港--

 

友希那「全く手掛かりが無い所からのスタートなのに、何故港を選んだの?」

 

初芽「もし四国外から、組織的に兵器や薬品を大量に運び込む場合、海上ルートしか無いからです。」

 

五恵「内側は他のチームが調べているので、空路と瀬戸大橋が不通なら、後は海という訳です。」

 

そう推測し港にやって来たのは、西暦組と初芽・五恵ペアだ。

 

美咲(何か運び込むって何処から?ここには四国しか無いって教えた方が良いんじゃない?)

 

蘭(ダメだよ。助っ人って言っても、一般人なんだよ?過酷な未来を突き付けるのは…気の毒すぎる。)

 

こちらもこちらで四国外の情報を教えてしまうとややこしくなってしまう為、敢えてそこは伏せて捜査に乗り出していた。

 

薫「……………儚い。」

 

五恵「儚い?えと…瀬田さん?何してるの?」

 

薫「あぁ、海の声を聞いているんだ。」

 

薫につられ五恵も目を閉じて耳を澄ましてみる。

 

五恵「………わぁ、本当だ。目を閉じると、波の音や海鳥の声が良く聞こえてくるね。」

 

薫「あぁ、他にも、イカの囁き、サザエの欠伸…石鯛の騒めき……そしてワカメの微笑もね。」

 

五恵「ワ、ワカメの……え?」

 

そんな中、初芽が港に停泊している漁船を発見する。

 

初芽「五恵ちゃん。あちらに漁船が停泊しています。情報収集をお願いしても良いですか?」

 

五恵「はい、師匠。行ってまいります。」

 

友希那「情報収集?それは、どうやって?」

 

初芽「口で説明するのは難しいのですが、敢えて言うなら、色仕掛けでしょうか。」

 

友希那・蘭・美咲「「「色仕掛け!?」」」

 

これには友希那達も驚く。

 

美咲「石川さんって、かなり内気そうなのにそんな事が出来るんですか?」

 

 

--

 

 

漁師「よし、今日も大量大量!」

 

屈強な漁師の元へ五恵が可憐な雰囲気で近付いて話しかける。

 

五恵「お魚いっぱい取れました?」

 

漁師「お?おお!!取れたぞ!見るかい?おっちゃん自慢の魚!」

 

五恵「わぁ〜。立派なお魚!鍛えているだけありますね。」

 

漁師「え?でへへへ。そ、そうかい?」

 

この漁師は最早完全に五恵の術中にハマってしまっている。

 

五恵「そんなに逞しかったら、きっと怖い人が来ても、守ってくれますよね?」

 

漁師「怖い人ってあんた、誰かに追われてるの?あ!もしかして、黒服の奴らかい?」

 

五恵「黒服……。はい、その人達です。一体、何なんでしょう……私、怖くて。」

 

漁師「最近ここらの漁師に、"漁獲高や潮の流れを細かく聞いて回ってる"連中だよ。怪しいと思ってたが、野郎……ナンパ目的とは!とっちめてやる!」

 

五恵「おじさま素敵!でも…その人達はどうしてお魚の事まで聞いてるのかしら?」

 

漁師「知らないけど、"貢ぎ物"がどうとか言ってたな…。ま、美人の姉ちゃんが相手なら、無理ないな!」

 

五恵「やだ、おじさまったら!」

 

 

--

 

 

友希那は五恵の色仕掛け作戦を遠くで見ながら、驚愕していた。

 

友希那「な、何なの……?何の疑いも警戒も無く相手がペラペラと……。」

 

美咲「単に美人だからだよね、アレ。普通に話しかけただけで、何処が色仕掛けなの?」

 

初芽「ウフフ。視線や仕草を効果的に使って、そうなるように仕向けてるんですよ。」

 

話している合間に五恵が情報収集から戻って来る。

 

五恵「戻りました。あ、これ…1匹頂いてしまいまして……。」

 

薫「これは……とても見事なタコだね。」

 

蘭「流石高校生…。一味も二味も違うんですね。」

 

五恵「ありがとうございます。でも、有益な情報だったかどうか、今のではまだ…。」

 

初芽「でも、"貢ぎ物"というキーワードは気になりますね。先程伺った、神樹信仰の儀式に使う物では?」

 

友希那「そんな話は聞いた事も無いけれど、私達も西暦から来た身、戻って確認する必要があるわ。」

 

初芽「え?あなた方も西暦の!?という事は、やはり未来の技術でタイムスリップを……興味深いですね。」

 

美咲「じゃあ、一度戻りましょうか。」

 

友希那達は一度部室へ戻る事にするのだった。

 

 

---

 

 

ショッピングモール--

 

モモ「ほぇー。未来とは言っても、こういう所は私達の時代とあまり変わらないんだなぁ。」

 

雪とモモペア、そして神世紀組はショッピングモールへとやって来ていた。

 

中沙綾「雪さんの指示で、ここに来ましたが何が目的なんですか?」

 

雪「人が多く集まる場所には、それだけ多くの情報も集まる。モモ、まずはどうすべきか分かっている?」

 

モモ「え、はい……えっと…。」

 

雪「目標物が定まっていない場合、その場で最も違和感を感じる物を探す事。」

 

香澄「成る程ー。違和感、違和感……。いつも通りだと思うけどなぁ。」

 

中たえ「あ、あそこに違和感発見。」

 

たえが指した方向には何人かの黒服の男達が作業をしていた。

 

モモ「あの人達、さっきから"何度もここを往復してお店に入るでも無く、メモ取ってばかり"……。」

 

雪「家族連れやカップルで賑わうモールに黒尽くめサングラスの男達……。よし、私が行く…。」

 

男達の動向を探る為、雪が調査に出る。

 

 

--

 

 

雪はわざと黒服の男にぶつかった。

 

雪「きゃっ!ご、ごめんなさい!いたた……。」

 

黒服「…………。」

 

しかし、黒服からの反応は無い。

 

雪「あ、あの……すみません。お怪我はありませんでした?あ……っ。」

 

だが、そこで反応したのは近くにいたおばあさんやお姉さんだった。

 

おばあさん「あなた、大丈夫?転んじゃったの!?怪我してない?」

 

お姉さん「今、医務室に連れて行ってあげるね。立てる?ほら、私に捕まって。」

 

雪「ありがとうございます。大丈夫です。………………。」

 

街の人の優しさが仇になってしまった瞬間、雪は瞬時に次の作戦に切り替え、モモに合図を送る。

 

 

--

 

 

モモ「あ……っ、師匠が合図を。私、ちょっと行ってくるね!」

 

香澄「えっ!?モモさん、何処へ!」

 

香澄がモモを目で追うも、モモは瞬く間に人混みの中へと消えて行ってしまう。

 

雪「…男達をつけて行ったのよ。」

 

入れ違いで雪が戻って来た。

 

雪「確かに彼らは怪しかったから、その価値はあると踏んだの。」

 

中たえ「黒尽くめにサングラスは大体怪しい人だもんね。」

 

たえはそう言うが、雪の着眼点は違っていた。

 

雪「そうじゃなくて、あなた達の言葉を信じれば、この地域の人々は皆親切心に溢れる善人。なのに、あの男は倒れた私を心配もせず、謝罪に頷きさえしなかった。これは大きな違和感よ。」

 

香澄「確かに!周りの人はすぐに雪さんを助けに近寄って行きました!」

 

中沙綾「凄い洞察力ですね…。」

 

雪「後は、モモが何を持ち帰ってくるかね……。」

 

 

--

 

 

一方、黒服を追うモモはショッピングモールから少し離れた場所で、何者かに報告している会話を盗み聞きしていた。

 

黒服「首尾は上々です……。別働隊からの報告も併せ、これで必要な情報は集まったかと………。」

 

モモ「誰かに報告している…。一体誰に……っ!」

 

モモは黒服が報告している人物を見て驚いてしまう。

 

?「ご苦労様……。君達は一旦帰って待機しててね。後で連絡するから、疑われないように…。」

 

黒服「は。仰せのままに……。行くぞ、お前達。」

 

モモ「く…っ、行き先が二手に分かれた!だったらここは…。」

 

モモは黒服と話していた少女を追うが、その少女は突風を巻き上げ忽然と消えてしまう。

 

モモ「えっ、消えた!?そんな、どうやって……!?うう…だったら男達を……って、もういない!」

 

呆気に取られている間に、モモは2人ともロストしてしまう。

 

モモ「はぁ〜、追跡失敗。でも、どういう事……?男達と話していたのは確かに…でも……。」

 

 

黒服と話していた人物--

 

 

それは確かに香澄と瓜二つの姿をしていたのである。

 

 

 

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