戸山香澄は勇者である   作:悠@ゆー

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勇者とスパイの物語その3。

物語はいよいよ佳境へ、果たして沙綾と紗夜は最後まで冷静にいられるのか--




神樹の記憶~"スパイス"キメて立ち向かえ~

 

 

勇者部部室--

 

調査の結果それぞれが得た情報を一度整理し直す為、部室へ戻ってきた勇者部と"ツキカゲ"一行。だが、モモがショッピングモールで見た"香澄に似た少女"の事で議論が繰り広げられる。

 

雪「双子の片割れがスパイ。そんな説が出てきているわよ。」

 

高嶋「へ?双子って?あ、戸山ちゃんと?でも、スパイっていったい何の事?」

 

モモ「私……見たんだあなたが黒服の人達と合流して指示を出すとこ……。」

 

実際に戸山香澄は雪とモモと一緒に行動していた。なので、雪はもう一人の香澄である高嶋香澄がスパイなのではないかと疑っているのである。

 

紗夜「何を言い出すかと思えば……そんな馬鹿な事、絶対にあり得ません。」

 

高嶋「私、そんな人達は知らないし、ショッピングモールにも行ってないよ?」

 

当然高嶋は否定をする。そこで、

 

雪「……モモ。」

 

雪はモモに指示を出す。"ツキカゲ"には高嶋が嘘をついているかどうか判断できる方法があるからだ。

 

モモ「はい。調べてみます!ちょっと失礼………ペロッ!」

 

高嶋「ひゃうっ!?び、びっくりしたぁ…。」

 

モモは相手を舐めれば嘘をついているかどうか、相手の感情が解るからである。しかし、それに紗夜が黙っている筈も無く--

 

 

紗夜「たっ、高嶋さんを、舐めたっ!?な…なんという事を!!!」

 

燐子「氷川さんの余裕ゲージがゼロに……。非常事態です……!」

 

ゆり「このままじゃ部室が倒壊しちゃう!押さえて!全員で押さえてーーー!!」

 

目が虚ろになり猛り狂う紗夜をゆり達が必死で抑え込む。

 

 

--

 

 

15分後--

 

モモ「し、師匠…嘘の味がしません。私は確かに彼女をこの目で見たのに……発言は真実です。」

 

高嶋は嘘をついていない。となると、残った"香澄に似た少女"は1人しかいない。

 

薫「ここにいる、香澄ちゃん達ではないなら……赤嶺しかいないだろうね。」

 

命「はあ!?まだ同じ顔の人がいるわけ!?一体全体、この世界はどうなってるの!?」

 

"ツキカゲ"達が驚く事も至極当然の事である。

 

リサ「赤嶺が何か企んでいるとしたら…その男達は、何者なんだろう……。」

 

雪「それは、これを見れば判るかもしれない。パソコンはあるかしら?」

 

みんなが悩んでいる中、雪は懐からある物を取り出した。

 

中沙綾「ここにあります。それは…GPSの受信機ですか?」

 

雪はショッピングモールで黒服の男とぶつかった際に、スーツのポケットに発信機を忍ばせておいたのである。

 

初芽「PCに接続して…あ、地図表示は無理ですが、ここからの距離と方角は大丈夫のようです。」

 

中沙綾「だったら、その情報を現代の地図と照合してみますね。……はい、これで…ってええっ!?」

 

彩「そ、そんな……まさか…何かの間違いじゃ……。だってこの場所は…!」

 

GPSが指示していた場所--

 

 

 

 

それは大赦だった。

 

 

--

 

 

香澄「大赦って、神官さん達の中に悪い人が混ざってるって事…?」

 

有咲「そんな事ある訳無いだろ!隠し事は色々してたが、基本は世界平和を願う組織の筈だろ!?」

 

大赦は確かに結界の外の世界の事や満開の代償である散華を隠していた事はあったが、その大本は平和を思っての事だった。

 

五恵「大赦って…勇者部と神樹様の間にある組織の事だよね?信じたい気持ちは解るけど、でも……。」

 

命「どんな組織にも不満を持つ者はいる。裏切り者も。あなたは、どう思う?湊さん。」

 

友希那「………。」

 

友希那が返答に困っている最中、樹海化警報が鳴りだした。

 

紗夜「くっ………ああああああ!この怒り大葉刈に乗せて!」

 

千聖「出撃前に疲労困憊ね…。」

 

 

---

 

 

樹海--

 

美咲「ねぇ、湊さん。神世紀組は驚いていましたけど、私は…大赦に造反者がいても、全然不思議に思わないです。」

 

友希那「…えぇ。神官だけならまだしも、あの赤嶺が関わっているなら、尚更ね。」

 

燐子「だとしたら…"ツキカゲ"の皆さんが召喚されたのも頷けます…。人が自分の病巣を自分では取り除けないのと同じ様に…神樹様も大赦内部の闇には手を出せないのかもしれません…。」

 

中たえ「それに、無垢な勇者や巫女じゃ闇その物に気付く事も、対処する事も出来なさそうだし。」

 

勇者達も、大赦内部の闇の事に薄々と感づいている者が何人かいた。

 

千聖「勇者部に負け越している赤嶺は、遂に大赦を内部から切り崩す作戦に出たのかしら…。」

 

ゆり「よくもそんな面倒な真似をするね…。潰すしかないかな?」

 

りみ「お、お姉ちゃん。大赦じゃなくて、大赦にいる一部のいけない考えを持った人達をでしょ!?」

 

雪「それで、これからどう動くつもりなの。大赦とかいう所に奇襲でもしかける?」

 

有咲「そ、それはダメだ。万が一、勇者システムを破壊されたりしたら、手も足も出なくなるし…。」

 

初芽「そうなんですか?でしたら、寧ろ敵の目的はシステムの破壊そのものという事なのでは……?」

 

中たえ「それは非現実的です。勇者システムは大赦の中で最も強固で精密な防衛網の中にあって、大勢の巫女が周囲を固めてるから、一歩近付くだけでも感知されて、速攻で排除されちゃうよ。」

 

中沙綾「それに、もし敵に破壊が可能なら、とっくに私達を無力化している筈です。」

 

初芽はそう考えるが、たえと沙綾がそれを否定する。

 

モモ「そっか~。なるほどね~。」

 

香澄「モモさんがいる!っていうか……"ツキカゲ"さん達、全員樹海で動けてる!」

 

命「ん?それって、何か変な事?最初もここにいたんだけど……。」

 

小沙綾「別の世界から呼んだ人達だから、神樹様がそういう風にしているんじゃないですか?」

 

五恵「よく解らないけれど……それであの…ここでは何をすれば……。」

 

その時勇者と"ツキカゲ"の面々に星屑や"新型"、"飛行型"の群れがやって来る。

 

モモ「またあの怪物!どどどどどうしよう!?どうしたら!?」

 

楓「私達の武器は、全く通用しないし、戦うにはいくら何でも大きすぎるわ!」

 

ゆり「勿論、戦闘は私達に任せて下さい。あこちゃんとたえちゃん2人、薫で"ツキカゲ"の護衛をお願いね!」

 

ゆりは"ツキカゲ"の6人を下がらせ、前衛へ出るのだが、

 

雪「牛込部長。申し出はありがたいけど、私達もそこまで無力では無いわ。」

 

命「敵わない敵と対峙する時でも、"ツキカゲ"には"ツキカゲ"の戦い方がちゃんとあるからさ。」

 

6人は迫ってくるバーテックスの前に立った。

 

友希那「でも、あなた方は生身の人間。敵は恐ろしい異形の化け物。無茶よ!」

 

雪「それは把握済み。でも……私達には"これ"がある。」

 

6人は懐からあるものを取り出した。

 

雪「みんな、"スパイス"をキメていくわよ!」

 

モモ・五恵・楓「「「はいっ!!」」」

 

雪の合図で6人は一斉にあるもの--

 

 

 

"スパイス"を噛んだ。

 

夏希「何か噛んだ途端に雰囲気が!もしかして、魔法の秘密アイテム!?」

 

モモ「私達、変身はしないけど、スパイスで身体能力を高める事が出来るんだよ。」

 

五恵「そう。スパイスをひと噛みすると、身も心もピリッと滾ってくるの。」

 

雪「ツキカゲ一同、巨大生物の討伐戦にて勇者のサポートに徹せよ。ミッションスタート!!」

 

ツキカゲ5人「「「了解っ!」」」

 

樹海で勇者部と"ツキカゲ"による共同戦線が始まった--

 

 

--

 

 

蘭「はぁあああっ!!」

 

紗夜「闇に消え失せなさい!やぁあああっ!!」

 

バーテックスは順調にその数を減らしていく。

 

モモ「うぇぇ……何だか私、気分が…。」

 

五恵「う、うん…確かに不気味過ぎてちょっと気持ち悪いよね……。」

 

迫り来る不気味な怪物を顔色一つ変えずに殲滅していく勇者達を見てモモと五恵はちょっと気が滅入ってしまう。

 

楓「ビビってないで、出来る事をする!ほら、怪物!こっちよ!」

 

一方で楓は臆せずに自分が出来る事を精一杯こなしていった。

 

イヴ「おっ、手裏剣で敵の気が散ってるぞ!やるじゃねーか、チビ助!」

 

楓「誰がチビよ!アンタ、いくら何でも変身前と人格変わり過ぎ!」

 

あこ「今だよ、りみ!死神の行っちゃえーーー!」

 

りみ「うん!死神ワイヤーーーってその呼び方はやめてぇ!」

 

りみのワイヤーが星屑を細切れにしていく。

 

モモ「あんなにか弱そうなのに、りみちゃんの二つ名は死神なんだ……私も頑張らなきゃ。ええーーいっ!」

 

りみの雄姿を見てモモは自分を鼓舞し、煙幕を投げつける。

 

友希那「煙幕で敵の動きが止まった!一気に叩くわよ!」

 

銀・高嶋・日菜「「「はいっ!!」」」

 

"ツキカゲ"のサポートもあり、バーテックスを難なく倒し終えるのだった。

 

 

--

 

 

ゆり「サポート、感謝します。お陰でいつもより早く決着がつきました。」

 

雪「いいえ。あなた達の見事な闘いぶり、こちらも良い勉強になったわ。それから、高嶋さん……。」

 

高嶋「はい?」

 

雪「勘違いとはいえ、さっきはいきなり疑ってごめんなさい。失礼をお詫びするわ。」

 

雪は高嶋を疑ってしまった事に謝罪した。

 

高嶋「え、そんな全然!気にしてませんから。」

 

一方で--

 

 

紗夜「うぅぅぅうう………よくも高嶋さんを…な、舐めて……。」

 

モモ「あああああの……ほ、ほんとに…いきなり舐めたりしてスミマセンです二度としません。」

 

そこへ、

 

中沙綾「その言葉……嘘偽りなく本当ですね………。」

 

モモ「ひゃいっ!ほほほほホントホント………多分。」

 

中沙綾・紗夜「「たぁ~ぶぅ~んん~~~?」」

 

虚ろな目で言い寄る2人に対し、モモはただただ頭を下げる事しか出来なかった。

 

雪「"ツキカゲ"の間ではモモの特技はもう、いつもの事だったから。みんなが受け入れていた。モモが舐め慣れてしまったのね。気を付けないと。」

 

花音「な、舐め慣れるって……。」

 

そんな最中、突如GPSから何者かの声が聞こえる。

 

初芽「お静かに。GPSに組み込んであった盗聴器から、今何かの声が聞こえてきました…。」

 

千聖「ポケットに忍ばせた例の機械ですね?では、音は大赦から…。」

 

 

--

 

 

?「あの方から指令だ。瀬戸大橋に0時集合。必ず口頭で全員に伝えるように……。」

 

?「は。しかし、何故わざわざ口頭で?」

 

?「勇者端末さえハッキングされる御時世だぞ。用心するに越した事は無い。」

 

?「成る程、心得ました……それで」

 

突如雑音が盗聴器から響き、声が聞こえなくなってしまう。

 

 

--

 

 

美咲「何今の音!?」

 

初芽「どうやら盗聴器が爆発したようです……ね。だ、大丈夫ですよ、小さな機械ですから!」

 

命「けど、勇者端末って、みんなの持ってるそれ?ハッキングされちゃうなんて大変だね。」

 

ゆり・りみ・有咲「「「ええ、まぁ……。」」」

 

3人は返事をしながら沙綾を見た。

 

中沙綾「あはは……。て、敵の集合場所と時間が判明した事だし、これで不穏分子を一網打尽に出来るね!」

 

小たえ「夜中の12時なんて大変だ。今から寝ておかないと………zzzzzz。」

 

初芽「何で爆発したんでしょう……やはり軽量化し過ぎで熱暴走を引き起こして………。」

 

モモ「師匠、私達はどうするんですか?」

 

雪「この人達と動きましょう。気は抜かないようにしてね。」

 

集合場所と時間を掴んだ勇者部と"ツキカゲ"一行。いよいよ敵の、赤嶺の目的が明らかになろうとしていた--

 

 

 

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