明らかになる赤嶺の計画、それはこの世界の--
勇者とスパイの最後の戦いが始まる--
午前0時、瀬戸大橋--
壊れた瀬戸大橋の麓で赤嶺は大赦神官からの報告を聞いていた。
神官「万事滞りなく、"モールの機構や最も効率的に多くの人間を隔離する"手段を把握しました。」
赤嶺「ご苦労様。これであなた達の悲願も近いうちに達成されると思うよ。」
神官「ありがとう存じます、赤嶺様。"大赦が転覆すれば"いよいよ、名実共に我らの天下ですな!」
赤嶺「そうだね。……ところで1ついい?どうして君は、焦げてるのかな?」
赤嶺が尋ねた神官のポケットが焦げていたのである。
神官「それが、急にポケットが爆発しまして。」
赤嶺「はあ?何それ……。まさか、誰かに気付かれたなんてことは…。」
その時だった--
友希那「そのまさかよ、赤嶺香澄!あなた達の悪巧みは、既に把握してるわ!」
赤嶺「なっ……!?」
神官「あ、あなたは!初代勇者っ、み、湊友希那様!?」
神官達はいきなり眼前に伝説の勇者が現れた事で、一斉に平伏する。
赤嶺「勇者全員勢揃い……か。でも、悪巧みって何の事?これはただのパーティだよ?」
しかし、赤嶺はあくまでしらを切り通している。
香澄「赤嶺ちゃん、ホントの事を言って。私達、みんなでちゃんと調査したんだよ?」
赤嶺「調査…?それこそ嘘じゃないの?あなた達勇者に、そんな事出来る筈無い。」
有咲「何でだ!?」
赤嶺「脳筋だから。」
あこ「グハッ!い、痛い…。今の言葉はあこの心にグサッと突き刺さったよ…。」
そこへ"ツキカゲ"の6人もやって来る。
雪「勇者には出来なくても、私達には出来たわ。」
赤嶺「ん…?誰?新しい勇者が来たなんて聞いて無いんだけどなぁ……。」
モモ「私達は勇者部の助っ人で、街でその人達がしてた事を調べた、"ツキカゲ"です!」
命「商店街では、野菜を始め食品の仕入れ先を聞き回り、流通経路まで調べてたよね?」
五恵「そして、漁師さん達からは、潮の流れや漁獲高を細かく聞き出していた筈です。」
初芽「そして、先程の会話から、大赦転覆や人々の隔離といった言葉も録音済みですよ。」
"ツキカゲ"達はそれぞれ調べ上げた証拠を赤嶺達に突き付けていく。
楓「大人しく罪を認めて降伏したらどうなの。」
赤嶺「罪?"ツキカゲ"さん達、たったそれだけで私達を悪人だと断言しちゃうの?酷いなぁ。」
モモ「え……?それだけって、だって……。」
赤嶺「食品や海の事を調べてたのは、国民のより良い食生活の向上と、健康増進を促す為。モールに人を集めるのは、みんなにそれをレクチャーしてあげる為だったのにねぇ?」
だが、赤嶺も引き下がらない。
中たえ「ふーん。本当かな?」
たえは神官を見ながら言った。
神官「え、ええ、はい、その通りでござ……ヒッ!た、た、たえ様ぁあーーー!?」
現大赦トップのたえを見て再び神官達は平伏する。頭を地面に擦り付ける勢いだ。
蘭「赤嶺の言う事が本当なら、何で私に野菜の事を聞きに来なかったの?」
神官「えっ……?あ、あなたは…かつて諏訪の食糧危機を農業で救われたという勇者…み、美竹様!」
中沙綾「赤嶺側につくという事は、神樹様や勇者と敵対するって考えで良いのかな?」
ゆり「神官ともあろう者が、敵と結託するなんて一体どういうつもりなの!」
神官「ややや山吹様っ!?壁はっゲフンゲフン!うう牛込様っ、つ、潰すのだけは御勘弁を!」
勇者達に言い寄られ、神官達は恐れ慄いていた。
赤嶺「心配無いよ。勇者は人間に攻撃出来ないんだから。そんな事したら………殺しちゃうからね、アハハ。勇者達。悪いけど今日こそは退けないよ。それとも、神官さん達と戦ってみる?」
赤嶺の言葉で勇者達の動きが止まる。
香澄「そ、そんな事……出来る訳無い。普通の人と戦うなんて…私、出来ないよ!」
勇者部のたった1つの弱点、それは対人戦闘である。しかし、今この場だけは違う。出来ない事は得意な人に任せれば良いのだ。
モモ「香澄ちゃん、大丈夫。ここには私達が…"ツキカゲ"がいるんだから!」
雪「さあ、どうする。私達は生身の人間。穏やかに話し合うか、それとも……。」
神官「く…っ。どの道、勇者様に知られては、大赦にはいられぬ。やってしまえーーー!」
形振り構っていられない神官達が襲いかかってくる。
モモ「滾らせる!」
"ツキカゲ"はスパイスをキメ、立ち向かう--
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戦闘経験が全く無い神官と戦闘のプロである"ツキカゲ"。戦いは一瞬で決着がついた。
赤嶺「っ!せっかく懐柔した神官達が一瞬で倒されちゃったよ…情けないな。」
雪「私達は陰謀を暴く専門組織。そちらが攻撃して来なければ、戦う気は無かったわ。」
赤嶺「成る程…。じゃあ、気が合うかもだ。私は、諜報に特化した家系の生まれなんだよ。昔は人間の質が悪くて、脳筋勇者だけでは正義の味方もやっていけなかったみたいでね。」
有咲「ぐぬぬ……何度も何度も脳筋脳筋…失礼にも程があるだろ!」
日菜「そうだそうだ!有咲ちゃんに謝れ!」
赤嶺「アハハ!何言ってるの?氷河家こそ筋金入りの脳筋家系じゃない。」
日菜「グハッ!た、確かにご先祖様は武勇に事欠なかった人だったけど……。」
赤嶺「その武勇の陰で赤嶺は、常に敵を裏から探り罠を仕掛け、汚れ仕事を請け負ってきた……。」
美咲「んで、その赤嶺家の末裔が今回は、どんな計画を企てたの?」
赤嶺「人聞きが悪いね。私は"この世界の事を全ての人に教えてあげようと思ってただけ"なのに。」
遂に赤嶺の口から計画の真実が語られる。
燐子「教える…?一体何をですか……?」
赤嶺「神樹と大赦が意のままに動かす、歪な世界の理を。そして、それを正義の名の下に護っているのが……感情次第で揺れ動き、世界を破滅にさえ追い込みかねない、弱い弱い勇者達だって事を。」
勇者達「「「…………っ!?」」」
蘭「何言ってんの?勇者が弱い訳ないでしょ。」
赤嶺「余裕があれば正義の味方、余裕が無いと暴君。そんな不安定な存在に、運命任せたく無いでしょ?」
いつの時代もそうだった--
ある時は、味方を殺そうとし--
ある時は、大赦に反旗を翻す者もいた--
またある時は、感情を爆発させ壁を壊す者もいた--
ゆり「だから不安を抱かせない様、今では勇者の存在は伏せられ、戦闘は樹海でって色々配慮してるんだよ……。」
赤嶺「私は、全ての人へ平等に選択肢をあげたいんだ。君にもね………海野夏希ちゃん。」
赤嶺は悲しげな目で夏希を見つめる。
夏希「え、私…?」
中沙綾「そんな話、隔離した数百人にしたところで、世界は変わったりなんかしない!」
勇者達はそう思っていた。しかし、"ツキカゲ"達は違った。
初芽「いえ…隔離や食料の規制は洗脳の初歩です。恐らく彼女が畑や海のルートを調べたのも、その為かと。」
命「隔離して食を断ち、懇々と同じ話をすれば、やがて人は容易くそれを信じ、正しいと思い込む。」
雪「そして洗脳された最初の数百人が外界に放たれれば、瞬く間に人から人へ、情報は正しいものとして伝わる。」
噂話は口伝えで広がりやすい。都市伝説などはそうやって広がってきたのだから。情報は鼠算式に増えていく。それこそが赤嶺の計画。
赤嶺「その通り……。多くの人が、大事な事をずっと隠されていたと知り、今の世界に疑問を持てば…大赦は糾弾され、神樹も勇者も弱体化して造反神が勝利する筈………だったのになぁ。」
薫「それで………どうなるんだい?単純に天の神と君が取って代わるだけじゃないのかい………赤嶺香澄。」
赤嶺「人間の選択次第だよ。何も知らされないのって可哀想だもんね………花園たえ(中)さん……フフフ。」
中たえ「…………っ!」
たえには今回の赤嶺の行動、身に覚えがあったのだ。奇しくも、それはたえがやった事と全く同じ事をこの場所で--
かつてたえが香澄と沙綾の2人だけを呼び出し、散華の事を伝えた時と全く同じ展開--
楓「わ、解らない……。部外者の私達ではこの話……どっちが正しいのか、判断が…。
五恵「確かに、選択肢がある事さえ知らされないのは不条理だけど……暴露が正義に直結するかは…。」
赤嶺「"ツキカゲ"さん達、私と組まない?本当に人々の幸せを考え、平和へ導くのは天の神なんだよ?」
揺れる"ツキカゲ"達に赤嶺が手を差し伸べる。
雪「あなたの言い分は聞いた。でも、差し出されたその手を取る前に…………モモ。」
赤嶺の言葉が真実かどうか、判断出来る方法が"ツキカゲ"にはあるのだ。
モモ「赤嶺香澄さん、ちょっとだけ失礼します!ペロ………ッ。」
モモは赤嶺の首筋を舐める。
赤嶺「ひゃあっ!?な、な……ん、何で舐めたの!?」
モモ「この味………顔は同じでも、香澄ちゃん達とは全然違う……。あなたからはいっぱい嘘の味がする!」
赤嶺「え…?」
モモ「私達"ツキカゲ"はあなたの誘いには、絶対乗りません!」
"ツキカゲ"は赤嶺の手を払い除けた。
雪「良くやったわ、モモ。これより"ツキカゲ"は全面的に味方として、勇者をバックアップする。」
赤嶺「じゃあ、しょうがないね……。勇者達と一緒にバーテックスに倒されちゃえば良いよ。」
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香澄・高嶋「「勇者パーーーンチ!!」」
赤嶺「っ!?」
2人の香澄の勇者パンチが赤嶺に炸裂し、樹海化が解ける。
友希那「あなたの負けよ、赤嶺香澄。」
赤嶺「くっ………。残念だよ…頭脳派の人達なら解ってもらえるかと思ったのに…。あなた達も、色んな事を隠されてるって解らないの…"ツキカゲ"さん?」
命「そりゃそうでしょ。メイ達は余所者なんだから。」
雪「真実は時に刃ともなる危険な物。闇雲に曝して良い物だとは、思わないわ。」
初芽「赤嶺さんのやり方では、いたずらに世間を不安に陥れ、恐慌を招くだけだと思います。」
モモ「それでも、話し合えば平和の為に最善の道を探せるかもしれないのに……。」
楓「あんたは洗脳とか、化け物をけしかけたりとか、手段が物騒で信用に値しないのよね。」
五恵「あの……もっと穏やかに協力し合う事は出来ないのでしょうか?」
知らない方が幸せなのか、知った方が幸せなのか--
そして、知ったところでそれが幸せに繋がるのか、知った事で後悔するのか--
人が100人いれば、受け取り方は100通り。簡単な問題では無い。
赤嶺「ハハ………それこそ、余所者さんには関係無いよ!とんだ邪魔が入っちゃったものだね。勇者達、決着はまたお預けだよ……バイバイ。」
そう言い残し、赤嶺は風と共に消えてしまう。
香澄「どんな嘘をついていたんだろう。赤嶺ちゃん……。」
モモ「私には判らなかったけど、でも……。」
香澄「でも?」
モモ「…ううん、初対面の人がだったし、細かい事までは読み取れないんだ。ごめんね。」
香澄「あ、いえ!"ツキカゲ"さんが味方になってくれて本当に助かりました。ありがとうございます!」
ゆり「私達だけだと神官に手出し出来なくて最悪な結果を招いてたかもしれませんでした。」
友希那「調査だけでなく、戦闘も助けてもらった事感謝してるわ。」
雪「良いのよ。専門外に弱いのはこちらも同じ。あんな怪物と戦えるのは尊敬に値するわ。」
命「ホントそう。戦術や体術の勉強になっちゃった。帰ったらきっと、任務の役に立てられるよ。」
楓「気になってたんですけど、私達ってちゃんと帰れるんでしょうね!?大丈夫よね!?」
"ツキカゲ"達の役目も終わり、後は帰るだけとなるが、
小沙綾「えっと、それは……どうでしょう?」
モモ「えっ!?まさか、誰も知らないとか!?困るよ、明日レンタルDVDの返却日なのに!」
困る一同だったが、その時巫女達から連絡が入る。
リサ「部室で待機中のリサだよ。たった今下りた神託を伝えるね。」
モカ「"ツキカゲ"の皆さんを帰還させるまでの時間は後丸1日。24時間後に転送が始まるよ。」
彩「だから、明日のこの時間に瀬戸大橋に集合してもらえれば、大丈夫だよ。」
五恵「明日になったら、送ってくれるんだ……?良く解らないけど、ちょっと安心。」
あこ「だったら、明日は1日中たっぷり一緒に遊べるね!」
夏希「ですね!お別れパーティも出来ます!」
千聖「お世話になった事ですし、みんなで精一杯のおもてなしをしてあげましょう。」
中沙綾「それ、良いですね!皆さんはどうですか?」
雪「ええ、ありがとう。少しやりたい事もあるし、御言葉に甘えさせてもらうわ。」
香澄・高嶋「「やったぁーー!!」」
モモ「師匠?やりたい事って何ですか?」
雪「ふふ……ちょっとね。」
"ツキカゲ"の協力もあり、赤嶺の作戦を無事に阻止出来た勇者部。"ツキカゲ"が元の世界へ戻るまでの1日、勇者とスパイは最後のひと時を楽しむ事となる--