戸山香澄は勇者である   作:悠@ゆー

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勇者とスパイの物語その5。

全てが終わり、ツキカゲが帰るまで残り1日。美咲はツキカゲと出会った事で心境の変化があったようです。




神樹の記憶〜今、この瞬間を全力で〜

 

 

赤嶺の企みを阻止した勇者部とツキカゲは6人が元の時代へと帰るまでの1日を思い思いに過ごしていた。

 

 

花咲川中学、体育館--

 

雪「めーーーーん!!」

 

雪が鍛錬しているのを勇者部武闘派の3人が見学に来ていた。

 

有咲「樹海での動きを見て薄々は気付いてたけど、やっぱり中々やるな……。」

 

友希那「そうね。大した腕よ。」

 

千聖「この時代に生まれていたら、間違いなく勇者候補になっていたわね。」

 

リサ「勇者部の腕自慢達を唸らせるなんて、半蔵門さんの強さは本物なんだね。」

 

モモ「えへへ、師匠の事を褒められると何だか私まで嬉しくなっちゃうよ。」

 

リサとモモが話していると、そこへ鍛錬を一通り終えた雪が戻ってくる。

 

雪「あなた達3人にお願いがあるの。私と手合わせしてもらえないかしら?」

 

友希那「光栄ね。是非やりましょう。」

 

有咲「こっちから頼みたいと思ってたところだ。私から行かせてくれ!」

 

千聖「待って、それじゃあ、後から戦う人が有利になるわ。半蔵門さんは1人だから、疲労してしまうもの。」

 

3人が順番で揉めていると、

 

雪「なら、3人同時でも構わないわ。」

 

友希那「良いわね。勇者同士共闘は無し。最後まで立っていた人の勝ちよ。」

 

有咲「上等。変則戦は望むところだ。駆け引きや戦術の勉強にもなるしな。」

 

千聖「それじゃあ、早速始めましょうか!」

 

千聖の合図で4人が一斉に木刀で切り掛かった。

 

モモ「うわあ!何だか凄い試合が始まっちゃった!師匠ぉーーーー頑張ってくださーーーーい!!」

 

リサ「友希那ぁーーファイトだよーー!!」

 

 

--

 

 

有咲「はぁーーーっ!そこだぁ!!」

 

有咲は木刀を横に薙ぐが、

 

雪「甘い!」

 

雪はそれを木刀で受け流し、蹴りを入れる。

 

有咲「な……っ!?速い!それに…ぐっ……強い!」

 

千聖「わざと隙を作ってたのね…。でも、これならどうかしら!やぁーーっ!」

 

千聖が有咲の間を縫って突きを入れる。

 

雪「まだまだ!はぁっ!」

 

雪も突きを繰り出し、切っ先同士で拮抗する。

 

 

--

 

 

モモ「みんなまだ中学生なのに、あの師匠に少しも負けてないだなんて、ビックリ。」

 

リサ「いやいや、勇者相手に互角に渡り合える人がいる事が私は信じられないよ。」

 

モモ「スパイスをキメれば、更に強くなるよ。」

 

リサ「スパイスは、そんなに効果的なものなの?」

 

 

--

 

 

15分が経過したが、勇者3人で挑んでも雪に決定打を当てる事が出来ずにいた。

 

友希那「くっ、強い……。流石は高校生ね。これが対人戦で鍛え上げた剣なのね!」

 

雪「あなた達の、純粋なまでの真っ直ぐな剣筋。受け止める程に心が晴れていく……フフ。」

 

優れた武人は剣を合わせれば相手の心が判る。今この場で戦っている4人全員が同じ事を考えていた。

 

4人(((勝ちたいっ!)))

 

 

--

 

 

モモ「え……笑ってる。あんなに楽しそうな師匠を見るのは初めてかも。」

 

リサ「勇者の力はみんなを笑顔にするんだよ!」

 

モモ「素敵だね!私達ツキカゲも、そんな存在になれたら良いなあ。」

 

 

--

 

 

雪「隙ありっ!!」

 

友希那「くっ……!」

 

雪の攻撃を友希那はガードするが、受け止めきれずに吹き飛ばされてしまう。

 

リサ「友希那!負けたら"あの写真"をみんなに見せちゃうよ?」

 

突如リサが友希那に発破をかけた。

 

友希那「"あの写真"………。まさかっ!?はぁぁぁぁっ!!」

 

見られたくないという恥じる気持ちが友希那に力を与える。

 

雪「まさか、この土壇場からまだそんな力が残ってたなんて……。」

 

リサ「ふふっ。これが友希那にとってのスパイスなんだよ。」

 

リサは笑いながら話す。

 

千聖「お、恐ろしい……。」

 

有咲「あんな辛すぎるスパイス……絶対嫌だ。」

 

 

---

 

 

蘭の畑--

 

楓「わぁあ………広い畑。自給自足なんて羨ましい。これだけ野菜があれば、食費が浮きまくりだわ。」

 

命と楓は蘭の畑へ収穫の手伝いに来ていた。

 

蘭「好きなだけ持って行ってください。畑が守れたのも、皆さんのお陰ですから。」

 

楓「良いの!?じゃあ、胡瓜とトマトと茄子と…あ、大根と人参とジャガイモも!」

 

命「やだなぁ……そんなにがっつかないでよ、フー。師匠のメイが恥ずかしいでしょ。」

 

楓「誰のせいですか!そもそも師匠が無駄遣いをするから、家計が火の車なんでしょう!?」

 

美咲「家計って……2人は一緒の家に住んでるんですか?」

 

モカ「大人だ…。」

 

美咲達が楓にちょっかいをかける。

 

楓「ど、どどど同棲!?ただの同居よ!大人をからかわないで頂戴。」

 

小沙綾「それじゃあ、自炊をしてるんですね?毎日だと、献立を考えるのは大変じゃないですか?」

 

楓「大変も大変。お金が無いくせに味にもうるさいのよ、うちの師匠ってば。」

 

愚痴をこぼす楓に沙綾はある提案をする。

 

小沙綾「なら、こっちで新しい料理を覚えていったらどうですか?」

 

蘭「それ良いね。新しいレシピと野菜をお土産にどうぞ。」

 

楓「それ、すっごくありがたい!是非お願い!じゃあ収穫した野菜、洗っちゃいましょ。」

 

上機嫌に戻った楓は沙綾達と洗い場へ向かった。

 

 

--

 

 

一方で美咲は1人畑に残っていた。

 

美咲「良いのかな…。教えてあげても、レシピや野菜が持ち帰れるか分からないのに…。」

 

美咲がふとこぼしてしまう。そこへ、

 

命「ん?もしかして、この記憶って消える可能性あり?」

 

突然命が美咲の後ろに立って話しかけてきた。

 

美咲「うわっ!い、いつの間に後ろに!?ご、ごめんなさい、今のは単に独り言で、その…!」

 

命「はー、この世界ってホント解らない事だらけ。でも、それならそれで問題無いよ。」

 

美咲「え……何でそんなサラっと。憤りとか無いんですか?」

 

記憶が消えてしまう可能性がある事を驚かない命に美咲は疑問を持った。

 

命「まぁ、元の世界ではいつも気を張り詰めてるから。フーが今この瞬間、楽しめてるなら大丈夫。だから、メイは良いけど、あの子には内緒ね。今日だけでも、羽を伸ばさせてあげたいし。」

 

美咲「はぁ。何か達観してますね。高校生だからですか?それとも、性格的なものなんですか?」

 

命「"師匠だから"だよ。弟子が健やかに育つ為なら、何だって出来るんだよ。師匠ってやつは。」

 

美咲「そんなもんですか?」

 

命「んー、そんなもんだよ。弟子の笑顔が師匠の報酬!なんちてー!」

 

命にとって記憶なんてものは些細な事で、今この瞬間が大切なのである。

 

美咲「ハハ、りょーかいです。でも、出来たらメイさんも今日だけは楽しんで欲しいです。」

 

命「その心は?」

 

美咲「だって、多分フーさんって、あなたと一緒に何かする事が1番嬉しい人だと思いますから。」

 

命「ほ〜。何だ何だ?キミこそ、達観つーか何かを悟っちゃってるキャラっぽいね。」

 

美咲「まぁ、そうですかね。色々あって、生き延びてきましたから。」

 

美咲から乾いた笑いが出る。

 

命「……………そっか。」

 

美咲から何かを悟った命は美咲に近付き、

 

命「そういうの、表に出さない事さ、罪悪感抱く必要無いから。」

 

美咲「え…?」

 

命「キミはキミだよ、美咲クン。きっと仲間もそう思ってる筈さ。」

 

そう言って、美咲の背中を軽く叩いた。

 

美咲「……………やっぱ大人です、高校生は。」

 

命「ハハハ!だしょ?さて…!うちらも野菜洗うの手伝わないと、そろそろ叱られそーだ。」

 

美咲「ですね。じゃあ、行きましょうか。」

 

命「勇者部出動ってね!ハハハハ!」

 

3人の元へ向かう美咲の顔は、どこか晴れやかとした雰囲気だった。

 

 

---

 

 

フラワーテーマパーク--

 

お花畑に来たのなんて凄く久しぶりで嬉しい!」

 

初芽「ここまで沢山の花が揃った場所は、私達の世界でもそうありません。」

 

高嶋「そんなに喜んでもらえるなんて、こちらそこ、すっごく嬉しいです!」

 

初芽と五恵が来ている場所は、以前香澄の誕生日の際に訪れた公園である。

 

五恵「私、お花とか動物とか大好きなんだ!」

 

初芽「そうでしたね。」

 

夏希「あれ?どうして私まで花畑に来てるんだっけ?」

 

薫「ゆりと沙綾ちゃんがパーティの料理を作ってるからだよ。」

 

あこ「そうだよ、夏希。忘れたの!?つまみ食いするからって、家庭科室を追い出されちゃったんだから。」

 

紗夜「それはあなただけですよ、宇田川さん。」

 

あこ「えええええ!?」

 

いつものたわいの無い会話が弾む。

 

五恵「みんな仲良しだね。よく一緒に遊んだりしてるの?」

 

高嶋「ハイ!遊ぶ時も戦う時も、ずっと一緒です!ね?紗夜ちゃん!」

 

紗夜「そうですね、高嶋さん。」

 

初芽「それで、あの様なコンビネーションが取れるのですね。」

 

香澄「でも戦う相手が人だと、バーテックスよりパワーは無いだろうけど、心が大変そうです…。」

 

あこ「確かにね。人対人じゃ気が休まりそうにも無いよ。」

 

初芽「戦う時は勿論大変ですが、普段の生活は皆様方とほとんど変わりませんよ。最低限の警戒はしますが。」

 

薫「もし気を張り詰めているようなら、ペットを飼うといい。」

 

五恵「ペットかぁ。一緒に戦うシノビならいるよ。」

 

香澄「へえー?それって精霊みたいなものですか?五恵さん、初芽さん、この子は見えますか?」

 

そう言って香澄は牛鬼を出した。

 

五恵「わっ!何これ!可愛い!撫でても良い?よしよしよし!」

 

初芽「こ、これは!?興味深いですね…。」

 

どうやら樹海に入れるのと同じ様に、ツキカゲには精霊の姿が視認出来るらしい。

 

あこ「やっぱり樹海で動けるから精霊も見えるのかな?それなら……えいっ!」

 

あこの掛け声と共に、五恵の周りに火車や水虎、七人御先等沢山の精霊が現れる。

 

初芽「何だか分からないですが、可愛いですね!」

 

紗夜「見かけは変わってますが、確かにペットの様なものですね。」

 

五恵「みんな、ありがとう。和ませようとしてくれて。お友達が沢山出来て、凄く嬉しい。今日の事、忘れないね。約束。」

 

五恵がそう言うと、

 

香澄・高嶋「「じゃあ、みんなで指切りしましょう!」」

 

あこ「あこ達、全員時を超えた友達ですね!」

 

初芽「そうですね!勇者部の皆様方と、私達ツキカゲ。」

 

五恵「それに精霊さん達も、最高の友達だよ。」

 

それぞれがそれぞれの場所で思い思いの時間を過ごしている。

 

 

"今"という時間を思いっ切り--

 

 

勇者部とツキカゲ、少しづつ別れの時が近付いていた--

 

 

 

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