戸山香澄は勇者である   作:悠@ゆー

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勇者とスパイの物語その6最後です。

出会いがあればいつかは別れもやって来ます。

この体験を糧に、勇者達は何を思うのか--




神樹の記憶~時代を越えた友情~

 

 

ツキカゲ6人がそれぞれの時間を過ごしている一方で沙綾やゆりはパーティの準備をする為に料理を作っていた。

 

 

家庭科室--

 

中沙綾「~~♪」

 

ゆり「どれどれ……。うん、我ながら良い味付け…って、有咲ちゃんはどうしてここにいるの?」

 

有咲「余所様にうどんばっか作んないよう見張ってんだ。」

 

りみ「そんな事言って有咲ちゃん、最近あんまりお姉ちゃんと話せてなくて、寂しかったとか?」

 

有咲「ちょまっ……!な、何言ってんだ!?そ、それよりが持ってるその小瓶は何だ?」

 

有咲はりみが持っていた小瓶を指さした。

 

りみ「これは、買い物に行った時に棚にあったスパイスを全部購入したんだ。」

 

彩「ツキカゲさんは、スパイスでパワーアップする人達だから、きっと喜ぶと思ったんです。」

 

中沙綾「でもこれ……私達にはどう使ったら良いのか見当もつかないよ…。」

 

料理が得意な沙綾とゆりでも、スパイスを使いこなせず持て余していた。

 

ゆり「ところで彩ちゃん?ここは大丈夫だからみんなと遊んできても良いんだよ?」

 

彩「私じゃどこも案内出来ないし楽しいお喋りも……。聞く方なら得意なんだけど……。おもてなしをする方だと、何をしたらみんなが喜んでくれるのか考えつかないんです。」

 

有咲「真面目だなぁ……。」

 

彩「それに私、早くゆりさんや沙綾ちゃんみたいにテキパキ料理が出来るようになりたいんだ!」

 

ゆり「それはまたどうして?」

 

彩は元の世界での事を思い返しながら話し続ける。

 

彩「勇者部に来て解ったんだ。ゴールドタワーでの食事は栄養管理されてて、味も良かったんだけど…こっちに来て折々にみんなが振舞ってくれる料理は、何だかとてもキラキラしてるんだ!」

 

りみ「でもそれって、誕生日とかイベントの特別な席で食べるご飯だからじゃなくて?」

 

彩「ううん、そうじゃなくてね、なんか…なんか……あぁ、上手く説明出来ない……。」

 

頭で考えている事を上手く口に出す事が出来ずにまごまごしてしまう。

 

ゆり「大丈夫。一緒に練習すれば、彩ちゃんだってすぐに美味しい物を作れるようになるよ!」

 

彩「私でも……そうかな?」

 

りみ「そうだよ!一緒に頑張ろう♪」

 

そう言ってりみはゆりの料理を手伝おうとするのだが、

 

中沙綾「あああありみりん!?謎の粉を鍋に入れないで!せめて味見をしてから少しずつ!少しずつだよ!!」

 

りみの料理が上達する道は遠く険しい。

 

 

--

 

 

料理が半分ほど完成したところに、蘭たちが畑から戻ってきた。

 

蘭「よいしょっと…。野菜の差し入れだよ。」

 

モカ「蘭ー、差し入れじゃなくて料理のお願いでしょ?」

 

家庭科室に運び込まれたのは大量の野菜。

 

有咲「これ全部か!?お、多いな。もう材料は買ったって、聞いてなかったのか?」

 

美咲「いや~、それがさぁ……。」

 

楓「心配ないわ!余ったら全部持ち帰るから。私と師匠の明日からの食料として!」

 

命「いや、だから……そういう事をドヤ顔で言わないでってば…。」

 

小沙綾「ですけど、見たところもう沢山の料理が大方出来上がりみたいですね…。」

 

中沙綾「どうして?」

 

小沙綾「実は……。」

 

沙綾は畑での出来事をゆり達に話した。

 

 

--

 

 

中沙綾「成る程ね…。楓さんに、新しい献立を教える為にここへ……。」

 

ゆり「でも、一から一緒に手取り足取りで作り直すのは流石に無理だね…。」

 

楓「なら、レシピだけ教えてくれれば良いわ。私、調理技術も完全無欠の完璧だから。」

 

ゆり「流石ですね。私たちの完成型とは違うなぁ。」

 

ゆりはそう言いながら有咲をニヤリと見つめる。

 

有咲「だーーーーー!うるせぇーーーー!!」

 

 

--

 

 

香澄「じゃじゃーん!戸山香澄率いるお花畑組帰還したよー♪」

 

みんなに料理を任せっぱなしなのは気が引けると手伝いに少し早めに戻って来たのだった。

 

五恵「あ、メイちゃんに楓ちゃん。2人もお手伝いに?」

 

命「あー、うちは良く出来た弟子がどうしてもって聞かないもんでさー。」

 

夏希「及ばずながら私も助太刀します!ゆりさん、沙綾さん、何でも言ってください!」

 

あこ「あこも手伝うよ!」

 

中沙綾「そうだなぁ…。後もう2~3種類なら品数を増やしても大丈夫でしょうか?」

 

ゆり「そうだね。じゃあ、そういう事で……薫。私が言いたい事、解るよね?」

 

ゆりは薫にアイコンタクトをし、

 

薫「……了解した。」

 

薫はとてつもない速さであこを小脇に抱え込み家庭科室から飛び出したのだ。

 

あこ「ちょーーーっとぉーーーー!?何でぇーーー!」

 

ゆり「はぁ。そして、香澄ちゃんと高嶋ちゃん、紗夜ちゃんは、りみをお願い。人数が多いと私の目が届かなくて危険だから。」

 

紗夜「そ、それは、重要な御役目ですね……心得ました。」

 

香澄「りみりん、りみりん!私たちは向こうで部室の飾りつけをしに行こう。」

 

りみ「分かった。行ってくるね、お姉ちゃん。」

 

ゆり「うん、ここは私達に任せて、準備お願いね!」

 

りみ「うん、頑張ってくる!」

 

香澄達に連れられ、りみは家庭科室を後にした。

 

彩「どうして人数を減らしちゃったの?ここは部室よりも広いのに……。」

 

美咲「人というのは時に、悪魔になってでも成果を優先するべき事があるんです…。」

 

彩「?悪魔……?」

 

 

--

 

 

りみ達が出て行ってからすぐ、体育館に残っていたモモ達が帰ってくる。

 

モモ「ただいまでーす!」

 

ゆり「全員戻って来ちゃった!早く追加メニューを考えないと!」

 

その時、

 

雪「ん?何を作るか迷っているの?だったら私達ツキカゲに、1品作らせてもらいましょう。」

 

初芽「それは良い考えですね!是非手伝わせてください。」

 

ゆり「じゃあ、お願いしちゃおうかな。」

 

 

--

 

 

雪「モモと楓は野菜のカット。みじん切りと、一口大に分けてね。」

 

モモ・楓「「了解です!」」

 

命は棚に揃っているスパイスの小瓶を見つける。

 

命「ほー。スパイスが足りないかなと思ったけど何だか色々揃ってて助かる!」

 

彩「あ、それは、りみちゃんがツキカゲさんの為に買ったものなんです。」

 

五恵「へえ、そうなんだ?りみちゃんってとってもよく気が利く、素敵な子だね。」

 

ゆり「あ、やっぱりそう思います?可愛くて、優しくて、賢い、自慢の妹なんです!」

 

その傍らで初芽が何やら工具を机に並べ始める。

 

中沙綾「あ、青葉さん、工具なんか持ち込んで一体何を……!?」

 

初芽「ちょっと、圧力鍋の変圧を。改造すれば通常の数倍速く、煮込みの時間を短縮できるんです。」

 

中沙綾「爆発……したりは。」

 

そう言われ、沙綾は盗聴器の件を思い出す。

 

初芽「それは賭けですね!」

 

初芽はキリっとした表情で自身気に言い放った。

 

ゆり「賭け!?いやいやいや!そんな危ない事をしてまで、何を作るつもりなんですか!?」

 

命「アハッ。刺激的な体験、させてあげる♪」

 

初芽「スパイスを効かせましょう♪」

 

五恵「ピリッとするよ♪」

 

楓「私のは、一味も二味も違う!」

 

モモ・雪「「滾らせてキメる!」」

 

彩「あ……、わぁぁああああああ!!」

 

 

家庭科室が光に包まれた--

 

 

--

 

 

勇者部部室--

 

あこ「離して薫ぅーーー!………クン…んん?この匂いはっ!!」

 

隣の部室に美味しそうな匂いが漂ってくる。

 

りみ「これをここにくっつけて……と。……クンクン…あ、これってもしかして!」

 

香澄・高嶋「「カレーの匂いだ♪」」

 

ツキカゲ達が作ったのはスパイスをふんだんに利かせたカレーだったのだ。

 

モモ「みんな、お待たせ!ツキカゲ特製スパイシーカレーライスでーす!」

 

お腹を空かせた勇者達がカレーを口へと運ぶ。

 

小たえ「うわあーーーっ、美味しそう!いただきまーす!」

 

千聖「モグモグ……とっても辛いのに…凄く美味しい……!」

 

蘭「野菜の味がしっかり出てて…モグモグ……悪くないね。」

 

小沙綾「あまり辛いのは得意じゃないのに……美味しくて、手が止まらないよ!」

 

イヴ「モグモグ……美味しいです……。」

 

イブ「辛れぇ!けど、ウメエエーー!」

 

彩「わぁ!ツキカゲのみんなもキラキラした料理が作れるんですね!」

 

五恵「キラキラ?」

 

彩「カレーを食べたみんなが、元気いっぱいのキラキラ笑顔になって、凄いです!」

 

彩の言う通り、カレーを食べているみんな笑顔が溢れている。

 

命「それが、スパイスの力だよ。」

 

初芽「それだけではありません。私達が勇者達への思いを込めて作ったからでしょう。」

 

彩「みんなへの思い?」

 

雪「全てをさらけ出す事は出来なくても、同じ気持ちを持って戦う同士達……。これからも互いに、大切なものを守り戦っていこうという気持ちを込めたつもりよ。」

 

 

誰かが誰かを思う暖かい気持ち--

 

 

料理にとってそれが何よりも大切な事であり、最高の隠し味になる事を彩は学んだのだった。

 

ゆり「さあ、他にも沢山用意してありますから、皆さんもどんどん召し上がってください!」

 

モモ「うわーーーっ!すっごい、豪華なお料理!いっただっきまーす!!」

 

ツキカゲへのお別れパーティは最高の料理と最高の笑顔で締めくくられる事になった。そして、その日の深夜0時。遂に別れの時がやって来る。

 

 

---

 

 

瀬戸大橋--

 

あこ「……もう2~3日いられないのかな?もっと遊びたかったよ…。」

 

千聖「無理を言っては駄目よ。皆さんにも大切な御役目があるんだから。」

 

帰る間際、それぞれが最後の挨拶を済ましていく。

 

友希那「色々助けてもらって感謝するわ。手合わせもとても為になったもの。」

 

雪「湊さん。私こそ、ありがとう。当初は色々と勘ぐって、申し訳なかったわ。」

 

初芽「雪ちゃんは、タイムスリップを信じないままでしたが、それでも心を開けたんですね。」

 

雪「………例え、これがどんなトリックだったとしても、この子達の性根に淀みは無いからよ。」

 

 

--

 

 

楓「お野菜いっぱい、ありがとね。大切に食べるって約束する。」

 

蘭「それだけあれば、他のチームの人達にも食べさせられますね。」

 

命「うん。きっと、みんな喜ぶよ。帰っても、カレーにするつもりなんだ!」

 

 

--

 

 

五恵「私達の時代にも、何処かにみんなの様な勇者がいるんだよね……凄く心強いよ。」

 

薫「私達も、ここでの御役目を終えれば、元の時代に帰る…。」

 

美咲「もし、何処かで会ったら、お互いに"あーー!?"………なんてね。アハハ……。」

 

そんな暗い顔をしている美咲の元に、命がやって来る。

 

命「美咲クン……頑張んなね。無理しすぎず、それでも……ね。」

 

そう言って、美咲を抱きしめた。

 

美咲「……はい。」

 

 

--

 

 

香澄「皆さん、元気でね……。」

 

モモ「名残惜しいよ…香澄ちゃん。あの、さぁ……。最後のお別れに……もうひと舐めだけ良い?」

 

香澄「勿論良いですよ!」

中沙綾「ダメです!!」

 

りみ「さ、沙綾ちゃん…。香澄ちゃんは良いって言ってるし…。」

 

ゆり「最後だし、軽くペロっといくだけだから!ね!」

 

中沙綾「いやぁあああああーーーーーーっ!!!」

 

正気を失ったあまり、沙綾は勇者へと変身してしまう。

 

燐子「山吹さんが変身を…!本気です…!エマージェンシーです……!」

 

なりふり構わず沙綾は銃を乱射し始める。

 

有咲「ぎゃああああーーーっ!!全員変身して沙綾を抑えるぞーーーっ!!」

 

中たえ「リサさんはカメラの用意です。」

 

 

--

 

 

モモ「え、えへへ……何だか大騒ぎになっちゃったけど、それじゃあ香澄ちゃん……遠慮なく。」

 

香澄「アハハッ、なんかドキドキしちゃう♪」

 

舐める間際、モモが香澄に伝える。

 

モモ「香澄ちゃん……あのね。赤嶺さん……………とっても…………"寂しい味"がしたよ。」

 

香澄「え…………?」

 

リサ「はい、チーズ♪」

 

モモが香澄をひと舐めした瞬間、リサが写真を撮る。そして、辺りが光に包まれ--

 

 

--

 

 

瀬戸大橋--

 

何故だか真夜中に勇者部全員が瀬戸大橋へ集まっていた。

 

夏希「あれ?ここって……瀬戸大橋?樹海にいたのに、何でこんな所に?」

 

モカ「あれれ?転送に失敗しちゃったのかな?」

 

リサ「そんな訳……あれ?変だなぁ。何でいつの間に香澄の写真を……?」

 

リサが持っていたのは香澄"だけ"が写った写真だった。

 

彩「香澄ちゃんだけが写ってるけど何だか、ほっぺが赤くなってるよ?」

 

有咲「さ、沙綾!?何で眉間にシワ寄せてんだ!?」

 

中沙綾「解らないけど……何だか胸がモヤモヤする。ハッ、まさか香澄が怪我でも!?」

 

香澄「ううん?怪我なんてしてないよ?でも……何だか………とっても赤嶺ちゃんに逢いたい気分なんだ。」

 

 

出会った記憶は消えてしまった--

 

 

高嶋「戸山ちゃん……?」

 

香澄「どうしてかな……私、赤嶺ちゃんが何処かで泣いてる気がするよ……。」

 

 

でも、心は確かに覚えている--

 

 

高嶋「そう……。だったら…拭いてあげようよ。赤嶺ちゃんの涙、私達で……。」

 

香澄「うん。きっと、いつか………。」

 

 

--

 

 

?「香澄ちゃん……あのね。赤嶺さん……………とっても…………"寂しい味"がしたよ。」

 

 

--

 

 

その気持ちを胸に、香澄は赤嶺との戦いへと臨んでいくのだった--

 

 

 

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