戸山香澄は勇者である   作:悠@ゆー

164 / 326
防人と勇者の戦い方の違いが千聖を悩ませる事となる。

そんな中で千聖が見つけたあるものとは--





神樹の記憶~指揮のカタチ~

 

 

樹海--

 

日菜「待て、バーテックス!!この氷河日菜が成敗しちゃうよ!」

 

日菜は1人で幼生バーテックスの群れへと立ち向かっていく。

 

千聖「待って日菜ちゃん!1人で前に出過ぎず下がって連帯を組んでいかないと……!」

 

その横で--

 

 

イヴ「待ちやがれ日菜!!そいつは俺の獲物だぁあああーーー!」

 

イヴが突貫していた。

 

千聖「焦らないでイヴちゃん!孤立しないよう突っ込まないで周りをよく見て!」

 

更にその奥では--

 

 

香澄「戸山香澄、行っきまーーーす!」

 

香澄が勇者パンチを仕掛けようとしていた。

 

千聖「ダメ、香澄ちゃん!!」

 

香澄「えっ!?」

 

千聖の声に気付き、済んでのところで香澄は留まった。

 

千聖「敵に近付き過ぎては危険よ!もっと適度な距離を保って!」

 

香澄「適度な距離って!?」

 

千聖「後3メートルは引いて、"爆発型"を警戒しながら隙を待つのよ!」

 

千聖がそう指示すると、

 

香澄「3メートル?3メートル…?これくらい…かな?あれ?もっと??」

 

香澄の動きが鈍る。その時、

 

中沙綾「香澄、危ない!!」

 

"飛行型"が香澄目掛けて突っ込んできたのである。

 

千聖「えっ!?」

 

だが沙綾がカバーに入り、"飛行型"を撃ち落とした。

 

香澄「わぁっ!?さーやありがとう!お陰で助かったよ!」

 

千聖「ご、ごめんなさい香澄ちゃん。あっ!あこちゃん!爆発に備えて武器の投擲は少し待っ……!」

 

あこ「えっ!?何!?うわ、うわぁーー!」

 

燐子「あこちゃん、危ない…!」

 

あこのフォローに燐子が入って事なきを得る。

 

千聖「なっ……!」

 

あこ「助かったよ、りんりーん!えっと…で、何でしたっけ?ちさ先輩!」

 

千聖「あ…え、と……ごめんなさい。何でも…無いわ。」

 

動揺している千聖の姿を、隣で花音が見ていた。

 

花音「千聖ちゃん……?」

 

千聖「何でも無いわ。花音、後衛の前で盾を構えて待機していて。」

 

花音「あっ…分かった。」

 

花音は千聖の指示に従い、後衛へと下がる。

 

千聖「………っ!」

 

ゆり「……………。」

 

そんな千聖の姿を、ゆりが眺めていた。

 

 

--

 

 

千聖「……………。」

 

しばらく観察していたゆりが千聖に声をかける。

 

ゆり「千聖ちゃん、どうしたの?大丈夫?」

 

千聖「あ……はい。」

 

千聖は大丈夫な様子を取り繕う。

 

ゆり「うん、なら良いんだけど。」

 

千聖は奥で指示を出していた友希那を見る。

 

友希那「紗夜と美竹さんは右!花園さんたちは左!牛込さんは前方に回り込んで!」

 

りみ「分かりました!」

 

中たえ・小たえ「「オッケーです!」」

 

千聖は友希那の指示に疑問を投げかける。

 

千聖「友希那ちゃん!それでは真ん中がガラ空きになって危険よ!」

 

友希那「……?」

 

千聖「第一、戦闘力の高くないりみちゃんだけを前に出すなんて無謀過ぎるわ!」

 

そこに友希那の指示で右で戦っていた蘭から知らせが届く。

 

蘭「湊さん!中央を"爆発型"が通過します!」

 

千聖「危ないっ!戻って迎撃しないと!イヴちゃん、日菜ちゃ……。」

 

千聖が慌てて指示を出そうとした、その時--

 

 

ゆり「沙綾ちゃん、今だよ!!」

 

中沙綾「全弾、一斉発射!!!」

 

ゆりの指示で沙綾が"爆発型"へと一斉攻撃を開始した。沙綾の攻撃で"爆発型"は一斉に爆発し、その爆発の余波で"大型"が後ろへと下がる。

 

千聖「そんな事が……。」

 

千聖は自分の予測を超えた事が目の前で起こるさまに動揺を隠せない。

 

りみ「捕まえるよ!えーーーいっ!!」

 

その隙にりみが"大型"をワイヤーで絡めとり、

 

中たえ・小たえ・紗夜「やぁーーーっ!!」

 

3人が"大型"に一撃を入れる。

 

美咲「前衛、行っちゃって!援護するよ!」

 

間髪入れず、有咲と夏希も攻撃を仕掛ける。

 

有咲・夏希「はぁーーーーっ!!」

 

香澄・高嶋「勇者、パーーーンチ!!」

 

トドメは香澄達の勇者パンチ。

 

香澄・有咲「「殲・滅……!」」

 

千聖「なっ……い、今のは一体……?指揮官は友希那ちゃんと、ゆりさんじゃ!?」

 

友希那「何処か問題があったかしら?」

 

千聖「指揮官以外がバラバラに指示を出していたのは、どういう事なの!?」

 

ゆり「まぁ、何というか…その辺は臨機応変って感じだね。」

 

ゆりは当たり前の事のように千聖に説明する。

 

千聖「そ、そんな場当たり的な指示じゃ命が幾つあっても足りないわ!」

 

千聖がムキになって苦言を呈するのも当たり前の事だった。現実世界の防人というシステムは勇者程の防御力も無ければ、武器の威力も無い。今の様な戦い方では防人はバーテックスにすぐ嬲り殺されてしまう。犠牲ゼロを志す千聖にとって、今の戦い方は到底納得の出来る戦い方では無かった。

 

千聖「私は、全体を把握する指揮官の指示で安全を確保して戦うべきだと思います!」

 

ゆり「せ、正論だね……。」

 

友希那「確かに言っている事は良く分かるわ。だけど、実際にそれをやるのは難しいわよ。」

 

千聖「でも、さっきの様な戦い方じゃ危険極まりないわ!」

 

その時、花音が千聖に意見を言い出した。

 

花音「千聖ちゃん……。危険かどうかって話なら……危なくなかったよ。」

 

千聖「えっ?」

 

花音「私、後衛で沙綾ちゃんの指示に従って動いてたんだけど、怪我もしなかったんだ。」

 

千聖「花音……。」

 

花音「ご、ごめんね。千聖ちゃんの指示が全部聞き取れなかったから……だから沙綾ちゃんに。」

 

花音の言葉で千聖が気付く。

 

千聖「指示が聞こえない?そうか……確かに今の様に乱戦だと声が通りにくい…。」

 

中沙綾「みんな!第2波が来るよ!」

 

話の途中で沙綾が敵影を知らせる。バーテックスが広範囲に広がって接近してくる。

 

あこ「友希那さん!敵が広範囲に!」

 

友希那「前衛は一気に駆け上がるわよ!私に続いて!!」

 

燐子「後衛は一斉援護射撃を開始します…!」

 

千聖も指示を出す。

 

千聖「……っ!紗夜ちゃん、少し引いて攻撃を避けてその後、待ち構えてサイドから…。」

 

紗夜「えっ、何ですか?」

 

高嶋「紗夜ちゃん、ズバーーーッだよ!」

 

千聖「ズ、ズバー?」

 

紗夜「解りました。はぁああーーー!」

 

高嶋の指示で紗夜は動き出す。

 

千聖「っ!?"大型"が怯んだ……この隙に!か、香澄ちゃん!攻撃を躱しながら…。」

 

香澄「えっ!?攻撃?何処から?」

 

有咲「香澄!バーーーンと行け!」

 

千聖「バ、バーン…?」

 

今度は香澄が有咲の指示で動き出した。

 

香澄「おりゃあああーーー!」

 

香澄のパンチが"大型"に決まり、"大型"は消滅する。

 

千聖「ズバー……?バーン……?」

 

千聖はみんなの指示の仕方に困惑するばかりだった。

 

ゆり「千聖ちゃん?どうしたの、ポカンとして。」

 

千聖「そ、そんなの……そんなの指示とは言えないわ!」

 

 

--

 

 

千聖「ズバーとかバーンは擬音であって、指示や司令とは言えません!」

 

ゆり「でも、分かりやすいよ?」

 

紗夜「それに、攻撃を避けるという指示は無意味です。」

 

千聖「え?」

 

美咲「まあねー。攻撃が来たら言われなくても自然に避けちゃいますし。」

 

千聖「た、確かに……。成る程、私の指示は無駄が多かったのかもしれない…。」

 

イヴ「なんつーか、白鷺の指示は長げぇ。」

 

千聖「長い?」

 

日菜「確かに。千聖ちゃんの指示を全部聞いている間に敵の動きが変化しちゃうよ?」

 

千聖「………。」

 

千聖は今までの戦いを思い返していた。防人は戦う事より、生き延びる事、逃げる事が第一だった。ここでの戦い方とは真逆なのである。

 

千聖「私には、攻めの指示が身についていない…。」

 

日菜「防人とはチーム性の違いだね。こっちは個人技を活かした指示が大切みたいだし。」

 

全を活かす防人と、個を活かす勇者との戦い方の違いを千聖は身をもって知ったのだった。

 

千聖「個人の攻撃形態を把握して、それに合った攻めの指示を出すべきだったのね…。」

 

薫「だけど、安全は大切だよ。」

 

有咲「そりゃそうだ。それに、別に千聖の指示が悪い訳じゃないんだ。」

 

千聖「有咲ちゃん……どういう意味?」

 

有咲「勇者部にはバカが多いから、小難しい事言ったって無駄って事だ。」

 

ゆり「あはは…。」

 

中たえ「基本は間違ってないよ。みんなが無事っていうのは重要だから。」

 

夏希「そうですよ!"いのちだいじに"が大切です!」

 

小たえ「うんうん。後は、私達を信じてください。」

 

千聖「信じる……。」

 

イヴ「そうだぞ。俺は白鷺を信じてるぜ!」

 

花音「私もだよ!」

 

 

"信じる"--

 

 

その言葉が千聖の胸に残る。

 

千聖「信じて……任せる事も大事なのね。指揮官っていうのは。」

 

友希那「そう気負わずとも良いのよ。肩の力を抜く事が大切よ。」

 

千聖「分かったわ。ありがとう、友希那ちゃん。次からは私も簡潔で臨機応変に…。」

 

その時、

 

あこ「うわわわ!まだ生きてるのがいたよ!」

 

バーテックスの生き残りが動き出した。すぐさま千聖が指示を出す。

 

千聖「させないわ!有咲ちゃん、香澄ちゃん!………ズゴーーンで!」

 

香澄・有咲「おりゃあああーーー!!」

 

千聖の指示で2人が攻撃を仕掛け、生き残りも全滅した。

 

千聖「ふぅ…。危なかったわ。」

 

ゆり「う、うん。瞬時の判断、良かったよ。的確な指示を……ありが……ふふっ。」

 

ゆりが笑いを堪えながら千聖を褒める。

 

千聖「どうしました?」

 

ゆり「いや……ズゴーーンて…ふふっ。」

 

千聖「す、すみません……。」

 

千聖の顔が赤くなる。

 

有咲「細かいな!良いだろ、ズゴーーンでもシュバビーンでも。」

 

千聖「シュバビーン?」

 

イヴ「へっ……お前ら、なんだかんだ言って仲良しなんだな。」

 

千聖・有咲「く…っ。。……プッ、アハハハ!!」

 

2人の笑い声が樹海に響き渡るのだった。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。