戸山香澄は勇者である   作:悠@ゆー

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ハロウィン編その2です。

美竹農園で起こった昔話の様なお話。中学生の沙綾とたえが夏希に対して思う事とは--





神樹の記憶〜大きなカボチャ〜

 

 

巨大なカボチャを収穫した翌日、夏希は再び蘭の畑へと来ていた。

 

 

美竹農園--

 

蘭「……よいしょっと…。」

 

蘭が作業している周りにはまだいくつかバーテックスの影響で巨大になったカボチャが実っていた。

 

夏希「こんにちは、蘭さん。」

 

中たえ「どうもー。」

 

中沙綾「大変そうですね。」

 

蘭「どうしたの?3人で出かけてた?」

 

夏希「そうです!でも、目的地はここなんです!」

 

蘭「ここ?またカボチャが必要になった?」

 

蘭は実っているカボチャに目を向ける。

 

夏希「そう、カボチャです!この前はお世話になったので、手伝いに来ました。」

 

蘭「あ、ありがとう…。でも珍しい組み合わせだね。」

 

夏希「そうなんですよ。おっきい沙綾とたえが行くって聞かないんです!」

 

中たえ「私達は夏希の保護者的な立場だからね。」

 

中沙綾「昨日はうちの夏希がお世話になりました…。」

 

たえは胸を張り、沙綾は頭を下げて謝っていた。

 

蘭「私の畑が役に立って良かったよ。」

 

中たえ「でも大丈夫?他のカボチャも大きくなっちゃったし……。」

 

蘭「それが幸い他の野菜は大丈夫だったんだ。カボチャも一部が大きくなっただけで、他は問題無いよ。」

 

中沙綾「良かった…。」

 

夏希「あのカボチャ本当に良かったですよ!立派なジャック・オー・ランタンが出来ました!」

 

蘭「そう言って貰えればカボチャも無駄にならなくて良かったよ。」

 

夏希「今日は何やってるんですか?畑耕したり収穫したり、何でも手伝いますよ!」

 

蘭「実は今大きくなったカボチャを収穫してるんだ。場所がとられちゃって、畑が耕さなくて…。このカボチャがまた重くて大変なんだよ。」

 

中沙綾「じゃあみんなで手伝おうか。」

 

沙綾の提案で、3人は残った大きなカボチャの収穫を手伝う事にするのだった。

 

 

--

 

 

中たえ「わっ、本当に重たいね…。」

 

たえがカボチャを持ち上げるも、上げるのに一苦労な大きさだ。中身がパンパンに詰まっているのが分かる。

 

中沙綾「改めて持ってみると、凄いね……。」

 

夏希「これで食べられたら、凄く良いのになぁ…。」

 

蘭「重たいから腰に気をつけて。」

 

夏希「それは大袈裟ですって…。」

 

夏希が冗談気に笑っているが、

 

蘭「いや、畑の仕事は腰の痛みとの戦いだよ。ちょっと気を抜くと……。」

 

次の瞬間、

 

 

中たえ「あっ!こ、腰が……。」

 

たえの腰が悲鳴をあげる。

 

中沙綾「おたえ⁉︎大丈夫?」

 

蘭「どんなに若くても、来る時は来るよ。」

 

中たえ「たーすーけーてー……。うーごーけーなーいー………。」

 

たえはその場にへたり込んでしまった。

 

中沙綾「慣れない事を張り切ってやるから……。」

 

夏希「カボチャ、私が持つから。ほら、座れる?ゆっくりゆっくり。」

 

沙綾の助けを借りてたえは姿勢を変える。

 

中たえ「何とか座れたぁ…。」

 

夏希「これ、ぎっくり腰かな?」

 

蘭「そこまでじゃないけど、少し安静にしてた方が良いね。」

 

中沙綾「カボチャ運びは2人でやるから、おたえは休んでて。」

 

中たえ「ごめんね…。」

 

蘭「もっと早く言っとけば良かったね。」

 

夏希「確かに、変な持ち方したら腰にきちゃうかも。」

 

中沙綾「つい重心を前にしちゃいがちだよね。」

 

蘭「気をつけて運んで行こう。」

 

3人は作業を続けていった。

 

 

--

 

 

作業が半分近く終わった頃--

 

蘭「それにしても本当に沙綾とたえは夏希の保護者みたいな立場だよね。」

 

中たえ「何やっても言われても可愛く見えるからね。」

 

夏希「そこが小さい沙綾とたえとは違うところなんですよね。どうしてかな?」

 

蘭「大きくなった夏希も、小さい頃の沙綾とたえを見たらそうなるんじゃない?」

 

夏希「なるほど…。そういうものですかね?」

 

中たえ「……………。」

 

中沙綾「……………。」

 

2人の会話を沙綾とたえは黙って聞いていた。

 

 

--

 

 

3/4程片付いた頃--

 

蘭「ふぅ………。休憩しようか。」

 

夏希「かなり畑がスッキリしてきましたね!」

 

蘭「そうだね。お陰で何とかまた畑を耕さそうだよ。」

 

中沙綾「おたえ、腰は大丈夫?」

 

中たえ「先に休ませてもらったから、かなり楽になったよ。」

 

たえの腰の具合もだいぶ良くなり、立って歩けるまでに回復していた。

 

夏希「よいしょ……っと…。」

 

中沙綾「ふぅ………。」

 

蘭「はぁ……。」

 

3人は畑に腰を下ろす。

 

夏希「はぁ…座ると疲れがドッと来るよ。」

 

中沙綾「疲れた時は甘い物!」

 

沙綾は夏希に菓子パンを渡す。

 

夏希「口がパサパサになりそう……。」

 

中沙綾「ちゃんと手を洗ってからね。」

 

夏希「はいはい。あ、蘭さん、水道とかは近くにありますか?」

 

蘭「ちょっと離れた所にあるから案内するよ。」

 

2人は水道へと歩いて行った。

 

 

--

 

 

中たえ「………夏希、元気いっぱいだね。」

 

中沙綾「そうだね。"あの頃"と全然変わってないよ。」

 

中たえ「さっき蘭が言ってた、大きくなった夏希だったら、小さい頃の私達にどう接したかな?」

 

中沙綾「それは興味あるね。」

 

2人は夏希の話に花を咲かせていた。

 

中たえ「大きくなった夏希……カッコいいだろうなぁ……。」

 

中沙綾「弟を大事にしてたから……きっと面倒見も良いだろうね。」

 

中たえ「見たかったなぁ………大きくなった夏希。」

 

中沙綾「私も………。一緒に、同じ時間を生きたかった……。」

 

あんな"悲劇"が起こらなければ有り得たかもしれない未来の夏希の事を--

 

 

夏希「お待たせー!!よーし、パンいっぱい食べるぞー!」

 

そこへ手洗いから2人が戻ってくる。

 

蘭「食べ過ぎると今度はお腹が痛くなるよ。」

 

夏希が笑顔で手を振りながら2人に近付いてくる。

 

中たえ「………今は、もうちょっとだけあの頃の夏希と一緒にいようか。」

 

中沙綾「そうだね……。いつまでなのかは分からないけど、可能な限り……ずっと、続く限りは一緒にね。」

 

 

--

 

 

蘭「さあ、そろそろ作業を再開しようか。」

 

夏希「あと少しでカボチャも片付くね!」

 

中沙綾「残ったのは……。」

 

残った大きなカボチャは残り1つ。しかし、そのカボチャは今までより一際大きく、半分以上が地面に埋まっていたのである。

 

蘭「これは……確実に腰にくるね…。」

 

中沙綾「おたえは絶対に引っ張っちゃダメだからね。」

 

中たえ「分かってるよ。」

 

夏希「たえさんがぎっくり腰になりかけたって小さい2人に言ったらどうなるかなぁ。」

 

中たえ「ぜ、絶対に言わないで夏希ー!」

 

夏希「アハハ!分かってるって!」

 

蘭「じゃあ3人で掘り起こそうか。」

 

蘭が作業に移ろうとするが、

 

夏希「いやいや蘭さん。ここは私1人に任せてもらえませんか?」

 

蘭「え?」

 

夏希「元々は私がカボチャのお礼したかったのをみんなに手伝ってもらっちゃいましたから。最後の一個くらいは私がやります!」

 

そう言って夏希は胸を叩いた。

 

蘭「……分かった。腰だけには十分気をつけてよ。」

 

中たえ「腰は大事。」

 

夏希「了解!」

 

夏希は巨大カボチャの前に相対する。

 

中沙綾「……何だか小学生と中学生の会話に聞こえないよ………。」

 

夏希「ふんぬー!!」

 

夏希は力の限り引っ張るが、カボチャはビクともしない。

 

蘭「引っこ抜くのは無理だよ。埋まってる部分を掘ってからじゃないと。」

 

だが、蘭の忠告を無視して夏希は引っ張り続ける。

 

夏希「なんの!丸ごと引き抜いてみせる!うんとこしょ、どっこいしょ!」

 

中沙綾「けれどもカボチャは抜けません。」

 

中たえ「頑張れ夏希!負けるな夏希!」

 

夏希「う、うおおお………!どりゃあああ!!」

 

力の限りを尽くし引っ張る夏希。遂にカボチャを引っこ抜き、反動で転んでしまう。すると、

 

蘭「ぬ、抜けた……。って、ええ⁉︎抜いた所から水が⁉︎」

 

カボチャが埋まっていた下から水が間欠泉の様に吹き出したのである。

 

夏希「えー⁉︎何で⁉︎」

 

 

--

 

 

中沙綾「……水が吹き出た場所は井戸に出来ると言って、蘭は大層喜びましたとさ。」

 

中たえ「……トラブル体質な夏希様々でしたとさ。」

 

中沙綾・たえ「「めでたし、めでたし。」」

 

 

 

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