戸山香澄は勇者である   作:悠@ゆー

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ハロウィンのお話その3です。

主役はりみりん。異世界に来てお姉ちゃんになったりみが沙綾に伝えた事とは--




神樹の記憶〜1人よりみんなで〜

 

 

美竹農園から巨大なカボチャをゲットし、見事なジャック・オー・ランタンを作り上げた夏希達。ハッピーハロウィン大作戦は次のステージへと進んでいく。

 

 

勇者部部室--

 

小たえ「ランタンも出来たし、次は仮装だね。どんなのがいいかなー?」

 

夏希「コスプレをして、年長組の皆さんからお菓子をたんまりもらうのだ!」

 

小沙綾「そもそも何で仮装が必要なの?」

 

夏希「何でって…。仮装して驚かせて、イタズラされたくなかったらお菓子を寄越せ〜ってだけだよ。」

 

小沙綾「仮装は驚かせる為……。どうしてお菓子を貰うのに驚かせるのかな?」

 

りみ「それは……そういう慣習になっちゃったからとしか…。」

 

小たえ「楽しめれば良いんだよ。」

 

小沙綾「そういうものなのかな…。」

 

夏希「そういうものなの!」

 

疑問が尽きない沙綾を宥め、大作戦はフェーズ2へと移行する。

 

夏希「コスプレは当日までにそれぞれが考えておく事!どんな衣装かは当日まで内緒ね!」

 

りみ「えっ⁉︎みんなで衣装を考えた方が良くないかな?」

 

夏希「良いんです、りみさん。みんなの個性溢れる衣装を見て驚きたいんです。」

 

こうしてそれぞれは解散し、フェーズ2は終了となった。

 

 

---

 

 

次の日、勇者部部室--

 

沙綾に呼ばれてりみが部室へとやって来た。

 

りみ「話って何かな?私だけ呼ばれたみたいだけど……。」

 

小沙綾「はい、りみさんを呼んだのは他でも無く……。」

 

沙綾はいつに無くモジモジと体を動かし、顔を赤らめた。

 

りみ「………ハッ!部室に2人っきり……まさか恋の相談⁉︎」

 

小沙綾「……ん?確かに鯉を使った料理とか面白そうですね。」

 

りみ「………ん?」

 

小沙綾「鯉料理かぁ………。鯉こくとかですかね?」

 

りみ「え?……あっ、うん!良いんじゃないかな!鯉こく!」

 

りみ(どんな料理なのかなぁ……。)

 

絶妙に話が噛み合わない中、沙綾が本題を切り出す。

 

小沙綾「それで、りみさんに来ていただいたのは、ハロウィンの事で相談したくて……。」

 

りみ「え?どうしたの?」

 

小沙綾「一晩考えてみたんですけど、どんな仮装をしたら良いか分からなくて……。勇者部として色んな事をこなしてきたりみさんなら何か分かるんじゃないかと思ったんです。」

 

りみ「な、成る程ね……。」

 

小沙綾「やっぱり無難に魔女とかの方が良いんですかね?」

 

りみ「別に外国にこだわる必要は無いと思うよ。日本のお化けとかでも全然良いし。」

 

小沙綾「成る程!じゃあ長い髪で顔を隠して呻き声を上げながらテレビから出てくる女性とかでも良いんですね!」

 

りみ「そっ⁉︎それは……確かに興味あるけど…色々大変じゃないかな…。」

 

小沙綾「でも…相手を恐怖のドン底に叩き落とすならそれくらいじゃないと効果無いんじゃ……。」

 

りみ「そこまでする必要無いよ!驚かすだけで良いんだよ!」

 

りみは少し食い気味で否定し、沙綾に細かく説明していく。

 

 

--

 

 

小沙綾「そうなんですね……。取り敢えず、相手を驚かせる衣装が良いんですよね?」

 

りみ「そ、そうだね。沙綾ちゃんが満足してくれるなら。」

 

小沙綾「それではダメです。相手を驚かせないとお菓子が貰えませんから。」

 

りみ「トリック・オア・トリートって言えば、香澄ちゃん達ならきっとお菓子をくれると思うよ。」

 

ここで沙綾は1つの答えに至る。

 

小沙綾「そうだ!バーテックスです!」

 

りみ「沙綾ちゃん、もしかしてバーテックスのコスプレを⁉︎」

 

小沙綾「そのもしかしてです!より再現する為にバーテックスと戦ってきますね!」

 

そう言うと沙綾は嬉々として樹海へ行こうとする。

 

りみ「待って待って!1人じゃ危なすぎるよ!私も一緒に行くから、せめてリサさんに一言断ってから行こう?」

 

小沙綾「そ、そうですね……すみません。」

 

2人はリサの元へと向かった。

 

 

--

 

 

教室--

 

リサを見つけたりみは早速これまでの経緯を説明する。

 

リサ「……良く分からないけど、分かったよ。」

 

りみ「本当ですか⁉︎怒ったりしてませんか?」

 

リサ「そんな事無いよ。経験豊富なりみがいれば大丈夫だと思うけど、無理はしないでね。」

 

りみ「あ、ありがとうございます!じゃあ行こうか、沙綾ちゃん。」

 

小沙綾「分かりました!全力で頑張ります!」

 

リサ「いや、だから無理だけはしないでよ……。」

 

軽やかな足取りで向かう沙綾をリサは心配そうに見送るのだった。

 

 

---

 

 

樹海--

 

りみ「沙綾ちゃん。リサさんも言ったように、今は2人だけだから無理はしないようにね?」

 

小沙綾「勿論です!一緒に来てくれたりみさんの為にも無理はしません。」

 

りみ「ふふ。それなら良かった。」

 

2人はバーテックスを探して探索するも、中々見つからない。

 

小沙綾「………いつもは大勢の勇者の皆さんと共に戦ってきたので、何だかこういうのは久しぶりな感じがします。」

 

りみ「そっか。元の世界では夏希ちゃんとたえちゃんの3人で御役目をやってたんだもんね。」

 

小沙綾「はい。今は更に少ない2人ですけど、りみさんがいるので少しも不安はありません。」

 

りみ「ありがとう、沙綾ちゃん。……でも、凄いなぁ。私なんか、勇者部のみんながいないと心細かったよ。」

 

小沙綾「今は私の為にたった1人で来てくれてます。りみさんも、私が尊敬する勇者の1人です!」

 

りみ「えへへ…そっかぁ。」

 

沙綾の言葉に胸打たれるりみ。今までは自分が最年少として勇者部の後ろをついてきてたりみだったが、今はこうして自分の後ろをついてきてくれる後輩の存在に背中を押されていた。

 

りみ(お姉ちゃんや香澄ちゃん達もこんな気持ちだったのかな……。)

 

りみ「ところで、沙綾ちゃん。本当に"大型"と戦うの?」

 

小沙綾「はい。バーテックスに仮装すると決めたからには曖昧な物にはしたく無いですから。しっかりこの目に焼き付けます。」

 

りみ「今までに戦ったバーテックスでも良いと思うんだけどなぁ。」

 

りみ(意気込みは凄いけど、何だか間違ってるような……。)

 

沙綾は少しせり上がった高台へと駆けて行き、

 

小沙綾「さあ、バーテックス!いつでもかかっておいで!」

 

バーテックスを挑発しだした。

 

りみ(でも、今の沙綾ちゃんより頑固で真面目で、私よりも優秀で………なのに凄く頑張り屋さんの沙綾ちゃん。こんな沙綾ちゃんだから今の沙綾ちゃんがあるのかな。)

 

小沙綾「どうしたの⁉︎まさか怖気付いたって言うの⁉︎意気地無し!意気地無しのバーテックス!!」

 

りみ(……ちょっと一生懸命過ぎて周りが見えなくなっちゃう所はあるみたいだけどね…。)

 

沙綾が挑発をするも、バーテックスは中々姿を現さない。

 

小沙綾「おかしいですね……全然現れません。どうしましょう、りみさん。」

 

りみ「この辺りはもう出てこないのかも。もう少し奥まで行ってみようか。」

 

小沙綾「はい!」

 

2人は樹海の奥へと足を進めて行った。

 

 

--

 

 

10分後--

 

小沙綾「っ!いました!"大型"です!」

 

2人は遂にバーテックスを発見。沙綾が弓を出現させるが、りみがそれを止める。

 

りみ「………ねぇ、沙綾ちゃん。」

 

小沙綾「…?どうしました?」

 

りみ「仮装の為に姿形を覚えるのなら、戦わなくても良いんじゃないかな?」

 

小沙綾「え……?」

 

りみ「勿論戦うなら私も全力で援護するけど、わざわざ沙綾ちゃんが危ない目に遭うのは嫌だよ。」

 

小沙綾「りみさん……。」

 

りみの一言で沙綾は持っていた弓を消す。

 

りみ「だから、ね?遠巻きに観察しよう?グルグル回れば、くまなく見れるよ、きっと。」

 

小沙綾「ありがとうございます、りみさん。でも大丈夫。私、戦いたいんです。」

 

そう言って再び沙綾は弓を出現させた。

 

りみ「沙綾ちゃん……。」

 

小沙綾「最初は仮装の為にここまで来たつもりでした。でも、バーテックスを見て思ったんです。"大型"と1人で戦う事が出来ればこれからの戦いできっと役に立ちます。」

 

りみ(……違う…。)

 

小沙綾「遠距離だけで倒せるようになれば、夏希とおたえが危ない目に遭わなくて済みます。」

 

りみ(違うよ、沙綾ちゃん……。)

 

小沙綾「だからこの"大型"は私1人で倒します。りみさんも、手出し無用でお願いします。」

 

夏希とたえの事を思い、1人矢を構えた沙綾にりみは問いかける。

 

りみ「………それじゃあ、沙綾ちゃんはどうなるの?」

 

小沙綾「え?」

 

りみ「夏希ちゃんやたえちゃんの代わりに、沙綾ちゃんだけ危ない目に遭うなんて、そんなの間違ってるよ!」

 

小沙綾「………!」

 

りみの一言で沙綾は番えていた矢を落とす。

 

りみ「それに、そんな事してあの2人が喜ぶの?今の私みたいに、きっと怒ると思うよ!」

 

小沙綾「う………。」

 

りみ「"みんな"が危ない目に遭わないように、"みんな"で協力して戦う!それが勇者なんだよ!」

 

小沙綾「りみさん……。」

 

りみ「だから"私1人で"なんて、そんな悲しい事言わないで……。」

 

そう言いながらりみは沙綾を抱きしめる。

 

1人では出来ないかもしれないけれど、みんなが、仲間がいればどんな事だって乗り越える事が出来る。りみはそう確信している。何故なら、そうやって元の世界での御役目を乗り越えて来たのだから--

 

 

りみは仲間で戦う事の大切さを誰より知っている。だからりみは1人で戦おうとする沙綾を怒ったのだ。

 

小沙綾「………。すみません、りみさん。私が間違ってました。そして、思い上がってました。」

 

りみ「ううん。私もごめんね。何だか生意気な事言っちゃった。」

 

小沙綾「そんな事無いです!やっぱりりみさんは私が尊敬する勇者です。今は2人だけですが、私と一緒に戦ってくれますか?」

 

りみ「勿論!」

 

小沙綾「………!ありがとうございます!」

 

2人はお互いの目を見つめ、"大型"の元へと駆け出した。

 

 

--

 

 

りみ「私が援護するから、沙綾ちゃんは攻撃し続けて!」

 

小沙綾「分かりました!」

 

沙綾の先制攻撃が決まり、2人に気付いた"大型"は星屑を弾替わりに発射してくる。

 

りみ「沙綾ちゃんには指一本触れさせない!」

 

りみはワイヤーを張り巡らせ、星屑の弾を切り刻む。そして発射した後のタイムラグを狙って沙綾は"大型"の口に矢を放つ。

 

小沙綾「今です!りみさん、"大型の動きを止めてください!」

 

りみ「うん!はあっ!」

 

りみのワイヤーが"大型"を雁字搦めに絡め取る。"大型"は無差別に星屑の弾を放つが、2人は冷静に弾道を見極め躱していった。

 

小沙綾(私は1人じゃ無い……。夏希やおたえ……それに今は大勢の仲間がいる!)

 

沙綾は想いを矢に込める。そして想いを受け取った矢はどんどんと巨大化していった。

 

小沙綾(みんなと力を合わせて戦う!)

 

小沙綾「それが………勇者だから!!」

 

沙綾は矢を放った。

 

りみ・小沙綾「「いっけぇぇぇっ!!!」」

 

"大型"は星屑の弾を矢に向けて放つが、矢は難なく弾を砕いて進み、"大型"の腹部を貫いた。

 

りみ「これでトドメ!」

 

呻き声をあげる"大型"をりみがワイヤーを引き絞ってトドメを刺した。

 

 

--

 

 

小沙綾「はぁ…はぁ……。や、やった…!」

 

りみ「はぁ…はぁ…。あのね、沙綾ちゃん…。」

 

小沙綾「はい。」

 

りみ「ハロウィンはね、いつも頑張ってる沙綾ちゃんみたいな子が、年上の人達に目一杯可愛がってもらう日なんだよ。」

 

小沙綾「りみさん……。」

 

りみ「だからね、もっと肩の力を抜いてみんなを頼ってね。それと……私の事ももっと頼ってもらえると……その…。」

 

小沙綾「りみさんには、もう十分頼らせてもらってます。でも、これからももっと、目一杯頼らせてください!」

 

りみ「ふふ。お手柔らかに。」

 

小沙綾「はい!それで早速なんですが、仮装の事で--。」

 

さっきまで必死で戦っていたのが嘘のように笑顔で仮装について話す2人を遠くから見ている人達がいた--

 

 

 

 

 

中沙綾「リサさんに言われて、念の為様子を見てたけど……。」

 

有咲「私達の出る幕は無かったな。」

 

香澄「うん!りみりん、すっごくカッコ良かった!!」

 

遠くから2人の様子を伺っていたのは勇者部の4人。そして、

 

ゆり「……立派になったね、りみ。」

 

自分の知らない所ですっかり成長していたりみに涙を流すゆり。

 

有咲「りみもやるようになったな。」

 

中沙綾「りみりんの言う通り、当日は盛大に甘やかしてあげないとね。」

 

 

---

 

 

パーティ当日、部室前--

 

部室前で沙綾達4人は待機していた。沙綾とりみは魔女のコスプレ。夏希はジャック・オー・ランタンをモチーフにしたドレス。そしてたえはフランケンシュタインのコスプレ。

 

夏希「みんな準備は良い?」

 

小たえ「バッチリだよ。」

 

りみ「今になって恥ずかしくなってきた……。」

 

夏希「何言ってるんですか!りみさんのコスプレ、すっごく良いですよ!」

 

りみ「うぅ……余計に恥ずかしい……。」

 

小沙綾「りみさんが恥ずかしがっていたら私はどうなるんですか!」

 

小たえ「沙綾も凄く可愛い!」

 

夏希「確かに、これは私の完敗だよ。」

 

小沙綾「も、もう良いから早く行こう!」

 

夏希「よーし!ハッピーハロウィン大作戦、最終フェーズに移行だ!突撃!!」

 

夏希の合図で4人は部室へ駆け込んだ。

 

 

--

 

 

4人「「「トリック・オア・トリー……。」」」

 

次の瞬間--

 

 

 

香澄達全員「「「ハッピーハロウィン!」」」

 

4人が駆け込んだ瞬間に香澄達年上組が一斉にクラッカーを鳴らす。

 

夏希「あ、あれ⁉︎サプライズの筈だったのに!」

 

小たえ「お菓子がいっぱいだ!」

 

有咲「あれだけカボチャがどうの、ハロウィンがどうの言ってれば、バレバレだっつーの。」

 

中学生の沙綾とたえを通じて年上組にはとっくの通りサプライズは筒抜けだったのだ。

 

ゆり「今日は年下組を目一杯甘やかすよ!お菓子も手作りだからね!…………お疲れ、りみ。」

 

りみ「お姉ちゃん………!うん!思いっ切り甘えるね!」

 

香澄「さーやちゃん、そのコスプレすっごく可愛いよ!」

 

あこ「確かに、闇の力が凄そう!」

 

美咲「大胆だね、こりゃ。」

 

薫「ああ……儚い!」

 

小沙綾「うぅ………!」

 

沙綾は今まさに火が出そうな程顔が真っ赤になっていた。

 

中沙綾「4人とも、今日は思いっ切り楽しんでね。」

 

秋の日差しが暖かく照らす中、部室からは一日中勇者達の笑い声が絶える事は無かったのであった。

 

 

 

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