戸山香澄は勇者である   作:悠@ゆー

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このお話は163話の続きとなります。

沙綾と紗夜のキモチが香澄達から離れた時、2人は何を思うのか--




神樹の記憶〜互いのキモチが行き着く先〜

 

 

花咲川中学、体育館--

 

今日も今日とて勇者部は部活の手伝いの依頼を受けていた。

 

香澄「たぁーーーっ!」

 

高嶋「てやーーーっ!」

 

今回はバスケ部からの依頼。香澄と高嶋の2人は他のバスケ部員を寄せ付けないドリブル捌きでゴールを量産している。

 

女生徒1「きゃーーっ!戸山さーん!高嶋さーん!双子みたいで可愛いーーーっ!!」

 

香澄・高嶋「「ありがとう!!」」

 

女生徒のピンク色の声援に2人は手を振って応える。その一方で、

 

あこ「どーーーん!!」

 

別のコートではあこがバスケの試合をしていた。小さい体とは思えない程の跳躍力でダンクを決めたところだ。

 

女生徒2「きゃーーっ!宇田川さーん!小さいのにすごーーーい!」

 

あこ「どうだー!あこ必殺のダンクシュートだよ!」

 

また別のコートでは、

 

女生徒3「きゃーーーっ!湊さん素敵ぃーー!瀬田さんもカッコイイーーーっ!」

 

友希那と薫のペアが見事なコンビネーションで華麗なシュートを決めた。

 

友希那「…ふぅ。声援感謝するわ。」

 

薫「ありがとう、子猫ちゃん達。」

 

薫が応えると昇天して倒れる女生徒が何人か出てくる始末である。

 

りみ「バスケの試合に出るって聞いてたけど、すごい人気だね……助っ人なのに。」

 

中沙綾「うぅ…。香澄の活躍は嬉しいけど、心のモヤモヤが治らない……。」

 

紗夜「剣道部のみならず、どうしてバスケ部まで高嶋さんが……。」

 

そんな香澄達を苦虫を噛み潰したように見つめているのは沙綾と紗夜、そしてたまたま居合わせたりみと燐子である。リサは他の部員とは少し離れた場所で友希那の活躍を見つめていた。

 

中沙綾「ダメだよ、香澄!そんな笑顔だと悪い虫が寄って来ちゃうよ!」

 

紗夜「くぅぅ、高嶋さん、手なんか振らないでください!ストーカーが大量発生してしまいます!」

 

余りにもおぞましい憎悪を感じ取ってかリサが2人の元へやって来る。

 

リサ「2人とも、そんなハンカチ噛み締めないで少しは応援したらどう?ほら、燐子みたいに。」

 

そう言ってリサは燐子の方を見た。

 

燐子「あこちゃん…カッコイイよ…!瀬田さんも…頑張ってください…!」

 

他の女生徒達より活気は無いが、燐子は2人に憧れに近い眼差しで精一杯応援している。

 

ゆり「最近やけに体育会系からの助っ人依頼が来るのは、これが理由なんだね……。」

 

前回の剣道部の助っ人に続き今回はバスケ部からの依頼。女生徒からの憧れの的である勇者部を試合に出場させればそれ目当てに応援する人が沢山やって来る。だからどの部活も勇者部に依頼してくるのである。香澄達の様子を見に来たゆりに沙綾と紗夜が駆け寄って来る。

 

紗夜「牛込部長!」

 

ゆり「うわぁ!?ど、どうしたの?」

 

紗夜「もう部活の助っ人は止めるべきです!」

 

ゆり「な、何でですか……。」

 

紗夜の気迫に思わず敬語が出てしまう。

 

中沙綾「無駄な体力を使ってたら、いざという時に対応出来ないです!」

 

紗夜「そう、その通りです!」

 

ゆり「そ、そう言われても…3ヶ月先まで予約が入ってて、急には断れないよ…。」

 

そう言ってゆりはスケジュール帳を見せる。確かにテニス部やサッカー部ハンドボール部など数多くの助っ人の予定が書き込まれていた。

 

中沙綾「それでも部長ですか!?」

 

ゆり「す、すみません……。」

 

何故だか分からないがゆりの口から謝罪の言葉が出てきた。

 

 

--

 

 

りみ「あっ、ハーフタイムになったよ。」

 

中沙綾「香澄…。」

 

紗夜「高嶋さ…。」

 

2人が労おうと近付こうとした矢先、

 

女生徒達「「「きゃーーーっ!!」」」

 

中沙綾・紗夜「「っ!!」」

 

以前と同じ様に女生徒達が雪崩れ込み、2人は香澄達に近付く事すら出来ない。

 

女生徒3「湊さん!タオルをどうぞ!後半戦も頑張ってください!」

 

友希那「ありがとう。その声援に応えられるよう精一杯頑張るわ。」

 

女生徒達「「「きゃー!湊さーーん!」」」

 

そこへ、

 

リサ「みんな、うちの友希那を応援してくれてありがとね。」

 

リサが笑顔で女生徒達に挨拶しに来たのだ。リサの一言で女生徒達が一斉に一歩後ろに下がる。

 

 

一方--

 

 

女生徒達「「「きゃー!宇田川さーん!」」」

 

あこの周りにも女生徒達が集結するのだが、

 

あこ「りんりーん!あこのダンクシュート見てくれたーー?」

 

燐子「うん…。すっごくカッコ良かったよ…あこちゃん…!」

 

あこは女生徒に目もくれず燐子の元へ駆け寄る。それを見て女生徒達は引き下がってしまう。

 

ゆり「うん。みんな体力は大丈夫みたいだし、助っ人は問題なさそうだね。」

 

中沙綾「大ありです!」

 

そして香澄達はというと--

 

 

女生徒達「「「戸山さーん!高嶋さーん!」」」

 

香澄「わわっ!そんなに押したら危ないよ?」

 

高嶋「ちゃんと1人ずつお話聞くから、ね?」

 

女生徒達「「「きゃーーーーっ!!」」」

 

香澄達の丁寧な対応に悲鳴が上がる。そんな場面を見ていた紗夜は、

 

紗夜「………あぁ……いっそ、今すぐ変身して、あの並みいる雑魚を大鎌で……。」

 

闇落ちしかかっていたのだった。

 

 

--

 

 

数分後--

 

香澄「みんな、ありがとう。こんなにお菓子貰っちゃって、悪いなぁ。」

 

香澄の両腕には抱えきれない程のお菓子の山。

 

女生徒4「今度、私達と一緒に遊びに行こうよ!」

 

香澄「うん!予定が合えば是非!」

 

女生徒5「高嶋さん、はい!冷たいタオル!」

 

高嶋「ありがとう!あっ、後半戦始まる!後で洗って返すね。」

 

香澄達は誰に対しても優しく接する。別に悪気は無い。だからこそ、それが沙綾達の心をモヤモヤさせるのだ。

 

中沙綾・紗夜「「くぅぅ…ぁ…あああ……。」」

 

紗夜「高嶋さん……どうしてそんなに誰にでも優しいんですか……。ですが、それだからこそ私にも優しくしてくれていると思うと……!」

 

中沙綾「香澄も無防備すぎだよ!プレゼントに爆弾とかあったらどうするの!?紗夜さん……。もうこうなったら私達であの暴徒を制圧しましょうか……。」

 

紗夜「………そ、それは……。そんな事をしたら…私は本当に高嶋さんに嫌われてしまいます……。高嶋さんは私の所有物では無いのですし…。束縛する権利なんて私には……。」

 

紗夜の残った最後の理性が踏み止まらせる。

 

中沙綾「……正論過ぎて何も言い返せません…。」

 

ゆり「だから、2人とも恨みがましくブツブツ言ってないで頑張ってる香澄ちゃん達を応援してあげよ?2人とも親友なんでしょ?」

 

中沙綾・紗夜「「あ………。」」

 

部長からの言葉で2人は正気を取り戻す。

 

中沙綾「言われてみれば…自分の鬱屈ばかりに気を取られて………。」

 

紗夜「高嶋さんが、懸命に試合をしているのに……。これでは……駄目です!」

 

中沙綾「紗夜さん。一緒に応援しましょう。香澄ーー!!頑張ってーー!!」

 

紗夜「山吹さん……はい。高嶋さん、頑張ってください!!」

 

2人が応援しだしたその時、

 

女生徒4「あれ?ねえ、あなた達も戸山さん達のファン?」

 

女生徒達が2人に声をかけてきたのだった。

 

中沙綾「え?は、はい……。」

 

女生徒3「2人の香澄さん、凄いよねぇ。あの子達が入ると、チーム全体に活気が出るんだぁ。」

 

紗夜「そ、そうなん……ですね。」

 

女生徒5「劣勢の時でも、あの子達が声を掛け合うとまたすぐに盛り返すんだ。まるで太陽みたい!」

 

中沙綾「はい……そうなんです。香澄は、人に元気をくれる明るい人だから。」

 

紗夜「高嶋さんも……いつも自分より他人を気遣ってみんなを盛り立ててくれる、凄い人です…。」

 

さっきまで目の上のたんこぶの様な扱いだった女生徒達と話が弾み出す2人。

 

女生徒1「気が合うね!良かったら、試合の後も一緒にお喋りしない?2人の香澄ちゃんについて。」

 

中沙綾・紗夜「「是非!」」

 

 

--

 

 

一方、試合中の香澄達も横目で沙綾達が笑顔で女生徒と話している姿に気付く。

 

香澄「………あれ?さーや…?」

 

高嶋「紗夜ちゃん……?」

 

香澄・高嶋「「………………。」」

 

香澄達はそれを見て胸に手を当てていた。

 

 

---

 

 

試合終了後、勇者部部室--

 

試合後、香澄と沙綾は部室でお喋りをしていた。

 

中沙綾「試合お疲れ様、香澄。凄い活躍だったね。」

 

香澄「うん!バスケって特別やった事無かったけど、キラキラドキドキしたよ!」

 

中沙綾「疲れたでしょ?今お茶淹れるね。」

 

香澄「あ、うん……。」

 

そう言って沙綾はお茶の準備を始める。

 

香澄「あ、あのね…さーや…。」

 

突然香澄は沙綾の後ろから抱きついた。

 

中沙綾「……うわっ!びっくりした。どうしたの?香澄。」

 

香澄「えっと……あのね?試合の時って、何話してたの?」

 

中沙綾「試合の時?ゆり先輩と?」

 

香澄「じゃなくて…。知らない人と喋ってるのが見えたから…。」

 

中沙綾「ああ……。あれは、香澄を応援してくれてる人がいたから、意気投合してね。一緒に応援しようって、言ってたんだ。」

 

香澄「そ、そっかぁ!アハハ。そーだったんだぁ!」

 

沙綾の言葉を聞いて、香澄は胸のつっかえが取れた気持ちになった。

 

中沙綾「香澄?」

 

香澄「ごめんごめん。なんかね、さーやが他の人と話してるの見てたら……何かヤキモチ妬いちゃったみたい!アハハ。バカだよねー、私って。」

 

中沙綾「香澄が…私に……?ううん。香澄は馬鹿なんかじゃないよ。」

 

香澄「でも、変じゃない?そんな事でそんなに…ヤキモチ妬いちゃうとか。」

 

中沙綾「変じゃないよ。私だって何回も妬いてるんだからさ。」

 

香澄「そうだったんだ…。ごめんね、そんなにヤキモチ妬かせちゃって、さーや!」

 

中沙綾「香澄!」

 

香澄・中沙綾「「大好き!!」」

 

 

---

 

 

同時刻、空き教室--

 

此処では高嶋と紗夜がお喋りしている。

 

紗夜「お疲れ様です、高嶋さん。完勝、おめでとうございます。」

 

高嶋「ありがとう、紗夜ちゃん!すぐ着替えちゃうから待ってて。」

 

紗夜「え、ええ……。じゃあ、後ろを向いていますね…。」

 

高嶋「あ、ゴメンね。気を遣わせちゃって。」

 

紗夜「当然のマナーですから。」

 

 

--

 

 

高嶋「………ねー、紗夜ちゃん。」

 

着替え始めて少しすると、後ろから高嶋が紗夜に話しかけてきた。

 

紗夜「何でしょうか…?」

 

高嶋「あのさ、試合中に話してたのって誰?お友達?」

 

香澄が沙綾に聞いた事と同じ事を聞いてきたのだ。

 

紗夜「ああ……。あれは知らない人です。高嶋さんのファンだと言っていました。」

 

高嶋「そうなんだー?紗夜ちゃんが色んな人と仲良くなれて、嬉しいよ。」

 

紗夜「そうですか…。私も、高嶋さんを見習って少しは社交的にならないとと思っ……。」

 

次の瞬間、

 

高嶋「紗ーーー夜ちゃん♪」

 

突然高嶋が紗夜に抱きついてきたのだった。

 

紗夜「え……っ!?たたた高嶋さん!?急にどうし……。」

 

突然の事で紗夜も狼狽えてしまう。

 

高嶋「うーん、何だろう?紗夜ちゃん欠乏症かな♪」

 

紗夜「そ、それはどういう事ですか!?」

 

高嶋「最近、他の部活ばっか手伝ってたから、紗夜ちゃん分が足りなくなっちゃった。」

 

紗夜「わ……私…分……がですか!そ、それは、ど、どうしたら……。」

 

高嶋「うんとねー、今夜紗夜ちゃんの部屋に泊まりに行っちゃおうかなー。」

 

紗夜「!?!?」

 

高嶋「なーんてね♪」

 

紗夜「はぁ……。で、ですが、私の欠乏症は満たされました……。」

 

 

ヤキモチに嫉妬--

 

 

さっきの試合中に香澄達が胸に秘めていたものの正体--

 

 

あの時香澄達は沙綾と紗夜の周りの女生徒達を見て、少しだけそんな感情を抱いたのである。リサと友希那とはまた違った愛情のカタチ。だけど行き着く先は同じなんだと感じた沙綾と紗夜なのであった。

 

 

 

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