最終章を通じての美咲の心境の変化が分かってきます。
九月末の勇者部部室--
有咲「来月の1日は美咲の誕生日だな。」
美咲「あれ?何で知ってるの?」
有咲「完成型勇者ともなれば何でもお見通しだ。」
美咲「ふーん。お見通しねぇ……。だったらさ…。」
美咲は含んだ笑みをこぼす。
有咲「な、なんだ?」
美咲「私が欲しいプレゼント当ててみてよ。」
有咲「ちょまっ!?……そ、それは多分、ラー……。」
ラーメンと言おうとした時、
美咲「言うと思った。でもラーメンじゃないよ。それじゃあ、楽しみにしてるね。」
美咲は踵を返して部室から出て行ってしまう。
有咲「ち、ちょっと!」
香澄「どうしたのかな?美咲ちゃん。誕生日なのに…。」
そこへ入れ違いにゆりが部室へやって来た。
ゆり「どうしたの?そんな深刻な顔して。」
有咲「ああ、美咲の様子が変だった…かも。」
香澄「うん…なんだか…ね。」
ゆり「……2人とも、説明してくれる?」
2人はさっきの出来事について説明するのだった。
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香澄「それが……美咲ちゃん、あんまり自分の誕生日が嬉しくないみたいで…。」
夏希「えっ!?誕生日が嬉しくない人なんているんですか!?」
有咲「ああ。いつもならこういう話なら乗ってくるんだけどな…。」
友希那「途中で出て行ってしまったわ。」
香澄と有咲の話を聞き、ゆりはしばらく考える。
ゆり「むむむ……。そんなに嬉しくないのなら、私達が美咲ちゃんを泣くほど喜ばせてあげよう!」
りみ「な、泣くほどって……ちょっと怖いよ、お姉ちゃん。それに、どうやって?」
燐子「やっぱり…プレゼントとかじゃないでしょうか……。」
あこ「美咲ちゃんの好きな食べ物ってなんだっけ?」
夏希「私知ってます!ラーメン!」
モカ「でも、誕生日の度に食べ物じゃ芸がないんじゃない?」
蘭「モカがいうの、それ…。」
中沙綾「じゃあ、どうしようか…。私達案外美咲の事って知らないんだよね。」
高嶋「そうだね。楽しんではいるみたいだけど、個人的な事はあんまり教えてくれない感じ。」
中たえ「質問しても、上手く躱されちゃうよねー。」
美咲に関する事を何も知らない。いや、美咲が自分の事を話そうとはしてくれない。美咲と自分達にはまだ壁があるのだと感じてしまう。
蘭「薫さんは何でも教えてくれるんですけどね…。」
薫「………そうだね…。」
分からないながらも、何とかして楽しませる方法を探す勇者部。
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小沙綾「故郷の北海道をイメージ出来るものとかは?」
香澄「…………。」
蘭「……?」
あこ「北海道って寒いんだよね?雪とか氷は勘弁だよ。」
蘭「そういえば、香澄。」
香澄「え?」
蘭「さっき沙綾が北海道について話してた時、何か気にしてなかった?」
香澄「あはは…。蘭ちゃんの目は誤魔化せないなぁ…。美咲ちゃんね…普段から故郷の話をしたがらないな…って。だから、もしかしたら北海道の事はあまり思い出したくないんじゃないかな…。」
薫「………。」
夏希「だとしたら、北海道をイメージさせるものは逆効果って事ですね…。」
りみ「今の環境には満足なのかな…。」
ゆり「戦闘もちゃんと参加してくれるし、不満は無いと思うんだけどね。」
みんなで話し合いが続く中、薫が口を開く。
薫「……それなら、ここでの思い出をプレゼントすれば良いんじゃないかい?」
リサ「うーん……これは難題だね…。」
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花咲川中学、屋上--
美咲「…………。」
部室を後にした美咲は屋上で佇んでいた。そこに薫がやって来る。
薫「やぁ、美咲。やっぱりここにいたんだね。」
美咲「薫さん…どうしてここに?」
薫「いつ戦闘が始まるか分からないからね。一緒にいるに越した事はないだろ?」
美咲「あはは…それは言えてますね。」
お互いを気遣うようなぎこちない会話が続いていく。
薫「…元の世界の事を思い出してたのかい?」
美咲「……はい。こうやって1人になっても、みんなの…勇者部のみんなの顔が頭に浮かんでくるんです。」
薫「仲間であり、友達でもあるからね。」
美咲「こんな気持ち…初めてですよ。」
薫「その気持ちを感じてどうだい?」
美咲「それは……。」
次の瞬間、端末からアラームが鳴り響いた。
薫「どうやら敵襲のようだね。みんなと合流しようか。」
美咲「はいっ!」
2人は樹海へと急いだ。
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樹海--
薫「みんな、遅れてすまない。」
ゆり「美咲ちゃん。薫も一緒だったんだね。」
美咲「遅れた分は頑張って取り戻しますよ。」
ぐるぐると腕を回す美咲に有咲が近付いて話しかける。
有咲「美咲、降参だ。」
美咲「え?」
有咲「美咲が欲しいもの、思いつきそうに無いんだ。」
美咲「ああ、それか。良いよ、そんなの。私も思いついてなかったし。」
有咲「そうなのか!?」
美咲「そういう事。降参って事は、誕生日は無しって事かな?」
美咲は不敵な笑みを浮かべる。
小たえ「そうは問屋が卸さないよ。」
中たえ「そうそう。そんな時は逆転の発想だよ。」
美咲「ぎ、逆転…?花園さん達の発想は先が読めない…。」
小沙綾「諦めてください…。」
中沙綾「私達でも読めないからね…。」
夏希「そうだよね…。」
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バーテックスの第一陣を突破し、続く第二陣に備える勇者達。
香澄「よーし、頑張るぞ!美咲ちゃんのサプライズパーティーの為に!」
夏希「わわっ!?香澄さん!それ言っちゃダメです!」
美咲「いや……。隠されたところで、今までの経験からすれば薄々勘付いてたよ。」
ゆり「と、ともかく!残りのバーテックスを倒すよ!突撃ー!」
全員「「「おー!!」」」
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10月1日、勇者部部室--
ゆり「というわけで、今日は美咲ちゃんの誕生日パーティーだよ!」
全員「「「おめでとう!!」」」
中たえ「それじゃあ早速、プレゼントタイムだよ!」
たえが高らかに宣言し、勇者部のみんながプレゼントを取り出した。
有咲「まずは私から。はい、鍛錬用の木の槍。」
美咲「へ……?」
香澄「次は私!手作りのアクセサリーだよ!はい、どうぞ!」
中沙綾「誕生日おめでとう。私特性の手作りパンだよ♪」
次々と美咲の机の前にプレゼントが積み重なっていく。
美咲「ちょ、ちょっと待って!え?これって、どういう趣向ですか!?」
薫「あぁ。欲しい物が分からないのなら、自分達が好きな物を美咲に贈ろうとなったんだ。」
美咲の考えている事が分からないのであれば、自分達の好きな物を美咲にあげるという逆転の発想である。
紗夜「そういう事です。私からはゲームのソフトです。ハードが無かったらいつでも部屋に来てください。」
美咲「…………ぷっ、あははははっ!!確かにこれは逆転の発想です!超最高ですよ。こんなの、みんなを丸ごと貰うようなものです。」
香澄「あっ、美咲ちゃんが喜んでる!作戦大成功だね!」
美咲「また少し、仲間って良いなって気持ちが大きくなってきたよ……ありがと、みんな。」
蘭「みんな、後がつっかえてるよ。……はい。私とモカからは蕎麦打ちセットだよ。」
リサ「私からは友希那の手作り写真集。巻末には袋とじもあるんだから!」
友希那「ちょ!?リサ!?」
美咲「あははははははっ!!ヤバイです!全部受け取る前に笑い死んじゃうかもしれません!」
薫「どうだい?これも良いものだろ?」
美咲「……はい。確かにそうですね!」
あこ「次はあこの番だよ!--」
また一つこの世界で大切な思い出が増えた美咲なのだった。