戸山香澄は勇者である   作:悠@ゆー

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新年編前半です。

日本で一番早い年越しの話だと思われます。春の話も入れたいと思ってますので、季節間はお気になさらずに……。




神樹の記憶〜同じ時を過ごしたい〜

 

 

大晦日、勇者部部室--

 

除夜の鐘鳴り響く大晦日、人々は思い思いに今年の終わりを過ごす中、部室は何やら緊迫した空気で覆われている。

 

香澄「あ、もうこんな時間ですよ。今年ももうすぐ終わりですね。」

 

友希那「ええ。年越し"うどん"も食べたし、後は待つだけね。」

 

蘭「そうですね。"蕎麦"も食べましたし。」

 

モカ「蘭まだやってたのー?」

 

千聖「けど、本当なのかしら?大晦日にバーテックスが襲撃を仕掛けて来るなんて。」

 

彩「うん。少し前に神託があったから。」

 

するとタイミング良く端末のアラームがバーテックスの襲来を知らせる。

 

リサ「やっぱり来たね。」

 

モカ「………。」

 

蘭「どうしたの、モカ?」

 

モカ「新たな神託だよ。四ヶ所で襲撃があるみたい。」

 

蘭「四ヶ所か……。」

 

出撃間際で下された新たな神託。それはバーテックスが四ヶ所を同時襲撃するという知らせ。リサは端末のマップを表示して襲撃地点を示した。

 

リサ「ここ、ここ、ここ、ここの四ヶ所だね。」

 

リサの示した地点には既に多くの星屑が表示されていた。すると沙綾はある事に気付く。

 

中沙綾「ここは……全部初日の出が見える地点ですね。」

 

美咲「バーテックスも初日の出が見たいの?」

 

薫「この世界のバーテックスは風流が楽しめるのかもしれないね。」

 

友希那「何はともあれ、殲滅しに行くわよ!」

 

友希那の掛け声と共に、勇者達は樹海へと向かった。

 

リサ「今年は平穏に終わりそうにないね…。」

 

彩「みんな、気をつけてね…。」

 

 

---

 

 

樹海--

 

南側には小学生組と薫、美咲、日菜が対応に当たっている。

 

日菜「来た来た来たぁ!!」

 

美咲「日菜さん落ち着いてください。今からそれだと電池持ちませんよ。」

 

薫「よし、夏希ちゃん。行こうか。」

 

夏希「はい、薫さん!たぁあああ!」

 

2人は精霊をその身に宿し、前線へと向かった。

 

小沙綾「2人共行っちゃった…。」

 

小たえ「2人共戦闘の時は息ぴったりだよね。」

 

日菜「よぉし!私も続くよ!」

 

猪突猛進に飛び出そうとする日菜の腕を美咲が引っ張って止める。

 

美咲「ちょっと待って下さい!流石にこんな序盤から半分も特攻するのはマズイですって!」

 

日菜「えー!でも、氷河家再興の為にも功績あげないと。」

 

美咲「前線で戦う事だけが功績じゃありません。それに、名家である氷河家の末裔である日菜さんは最終兵器だから温存しておかないとダメです!」

 

日菜「最終兵器……氷河家!」

 

最終兵器という甘美な言葉が日菜の瞳を輝かせる。

 

日菜「そうだね!そういう事なら力を貯めておかないと!」

 

小たえ「美咲さんがあっという間に日菜さんの心を鷲掴みだ。」

 

小沙綾「しー!あまり大きな声で言わないで。折角日菜さんが納得してくれたんだから。」

 

美咲「ねえ、沙綾ちゃん。夏希ちゃんと薫さんの様子はどうかな?」

 

小沙綾「はい、既に戦闘を始めてますが…。」

 

 

--

 

 

薫「はぁぁぁぁっ!」

 

夏希「てりゃああっ!」

 

互いに背中を預け合いながらバーテックスを殲滅していく2人。

 

 

--

 

 

小沙綾「第一陣の出鼻を挫く事に成功してます。」

 

美咲「オッケー。それじゃ、遠距離攻撃が出来る組は2人に敵が殺到しないように、牽制しますか。主力っぽい奴は私が対応するから、沙綾ちゃんと日菜さんは、他をお願いします。」

 

少ない人数で状況を判断しながら美咲は他の勇者達に指示して対応していく。

 

美咲「たえちゃんはタイミングを見て、前衛2人のどっちかと交代してもらえる?」

 

小たえ「分かりました。」

 

美咲「それじゃあ、行きますか。」

 

小沙綾「日菜さん、私は右側を。」

 

日菜「オッケー。じゃあ、私は左側だね!最終兵器の力見せちゃうよ!」

 

 

---

 

 

勇者部部室--

 

リサ「……オッケー。ありがとね、美咲。」

 

モカ「何かありました?」

 

リサ「ううん。南側は問題無しだって。美咲が引っ張ってるみたい。」

 

彩「良かった。一安心だね。」

 

モカ「蘭は大丈夫かなぁ?」

 

モカ(大丈夫だよね。だって、蘭はずっと道を切り拓いてきたんだから。)

 

 

---

 

 

樹海、西側--

 

西側では蘭、紗夜、たえ、高嶋、イヴが戦っていた。

 

蘭「っ!今のは危なかったかな。あの"大型"……遠距離攻撃が厄介…。」

 

紗夜「どうしますか、美竹さん?こちらから近付こうにも、"防御特化型"が道を塞いでます。」

 

中たえ「っ!また遠距離攻撃!みんな集まって!盾を広げるよ!」

 

たえの槍が盾に変形し、みんなを攻撃から守る。

 

高嶋「危なかったぁ!たえちゃんがいなかったらあっという間にやられてたよ!」

 

蘭「イヴ、あの"大型"に銃で対抗出来る?」

 

イヴ「出来ますが、堅そうです。私の銃では倒せません…。」

 

こちらも遠距離で応戦しようとするも、相手が堅牢過ぎでイヴの銃剣ではダメージが通らない。

 

紗夜「つまり、あれを排除する為には、接近戦に持ち込むしか無いという訳ですね…。」

 

高嶋「となると、先に"防御特化型"を全部倒さないとダメかなぁ。」

 

蘭「そうだね。でも、被害は出来るだけ少なくしていくよ!」

 

西側は蘭が中心となり、他の4人に指示を出していく。

 

蘭「高島さんと紗夜さんは後衛で力を出来るだけ温存。他の人は楔型陣形で、"防御特化型"の群れに穴を開けるよ。2人は、その穴から"大型"に近付いて一気に倒してください。」

 

高嶋「分かったよ、蘭ちゃん!」

 

蘭「という事で、露払いは私とたえ、そして…。」

 

イヴ「俺の出番だろ?」

 

蘭「流石イヴ。分かってるね。」

 

イヴ「仕方ねーから手伝ってやるよ。イヴを危険な目に遭わせる訳にはいかねーからな。」

 

中たえ「私も頑張るよ。」

 

蘭「人数は少ないけど、いつも通りに行くよ!」

 

 

---

 

 

勇者部部室--

 

モカ「うん……分かった。」

 

リサ「蘭から?」

 

モカ「はい。西側はもう大丈夫みたいです。」

 

彩「流石蘭ちゃんだね!後は…友希那ちゃん、千聖ちゃんのチームだね。」

 

 

---

 

 

樹海、東側--

 

友希那と有咲はバーテックスにより分断され囲まれていた。

 

友希那「まずいわね、市ヶ谷さん。私達だけ分断されているようよ。」

 

有咲「やられたな…。バーテックス達意外に小賢しい事してくるな…。」

 

友希那「全くね…。だけど、退路を断たれたのなら……!」

 

有咲「ああ、出来る事を思いっ切りやるだけだ!」

 

だが、2人は怯む事無く状況を打破する為、バーテックスの群れへと立ち向かう。

 

 

--

 

 

花音「す、凄い…!包囲されてても、どんどんバーテックスを倒してるよ……。」

 

あこ「うん。確かに凄い……けど…。」

 

燐子「そうだね…。簡単にはやられないと思いますが…あの勢いはいつまでも続きません……。」

 

2人と少し離れた所で花音、あこ、燐子の3人がバーテックスと戦っていた。

 

花「ふぇええええっ!!こっちにも来るよぉ!!」

 

あこ「落ち着いて、大丈夫!ここはあこに任せて!」

 

花音を後ろに下がらせ、バーテックスに立ち向かおうとするのだが、

 

燐子「待ってあこちゃん…!ここは花音さんに対応してもらいましょう……。」

 

あこ「分かった!」

 

2人は花音を前に出し、その後ろに隠れる。

 

花音「ふぇええ!何でぇ!?」

 

花音は泣きじゃくりながらも盾を構えて襲い掛かるバーテックスの攻撃を次々と防いでいく。

 

あこ「凄いよ!敵の攻撃を全部防いでる!」

 

燐子「花音さんは防御する事においては誰よりも上です…。これが千聖さん曰く、花音さんの生き延びる道を見つける嗅覚なんだと思う……。」

 

あこ「成る程ね!なら、花音を先頭にして友希那さん達の所に行けば良いんだ!」

 

花音「ええっ!?死んじゃう!本当に死んじゃうよぉ!!!」

 

2人は花音を盾にバーテックスの群れをかき分け2人の元へと進んでいく。その道中も花音は悲鳴を上げ続けるものの、バーテックスの攻撃は無傷で防ぎながら進んでいた。

 

 

--

 

 

友希那「ん?あれは……。」

 

有咲「何だあれ!?花音を盾にしてあこと燐子が近づいて来るぞ!」

 

友希那「いけるわ市ヶ谷さん!このまま3人と合流して一気にあの"大型"を仕留めるわよ!」

 

有咲「ああ!」

 

 

---

 

 

勇者部部室--

 

リサ「そっか……。お疲れ、友希那。」

 

彩「友希那ちゃんからだね。」

 

リサ「そう。花音の活躍で何とかなったって。」

 

彩「花音ちゃんは本当は凄い人なんだよ。自分では気付いてないんだけどね。」

 

彩は花音をまるで自分の事の様に褒め出した。

 

モカ「後は千聖さんのチームだね。」

 

リサ「そうだね。北側は一番過酷な戦場になるって神託でも出てた…。でも大丈夫…。」

 

 

---

 

 

樹海、北側--

 

香澄「勇者パーーーンチ!!」

 

北側で戦っているのは香澄、千聖、沙綾、ゆり、りみ。奮闘しているものの、バーテックスはひっきりなしで向かって来る。

 

ゆり「見渡す限りに敵だらけ…骨が折れるよ。」

 

りみ「っ!お姉ちゃん、香澄ちゃん、後ろ!」

 

香澄・ゆり「「っ!?」」

 

2人の背後からバーテックスが襲いかかるも、銃撃がバーテックスを貫いた。

 

中沙綾「香澄、大丈夫!?」

 

香澄「ありがとう、さーや!今のは結構危なかったよ…。」

 

千聖「ゆりさん、どうしますか?戦力的には向こうの方が上のようですけれど。」

 

ゆり「うーん…このまま耐えるだけ耐えて、他のチームの増援を待つって手もあるけど……。」

 

そうこう考えている間もバーテックスは待ってくれる訳でも無く、次々に襲いかかって来る。

 

ゆり「……っと。本当にキリがないなぁ。まるでイワシの群れだね…。」

 

中沙綾「っ!ゆり先輩、それです!」

 

ゆり「どれ?」

 

ゆりの言葉で何か閃いた沙綾はりみに指示を出す。

 

中沙綾「りみりん、私達の後ろにワイヤーを出来るだけたくさん張り巡らせて!でも、下の部分に少し隙間を作って!」

 

りみ「うん!ワイヤー展開!」

 

りみは沙綾の指示通りにワイヤーをある一点に隙間を作って張り巡らせる。

 

中沙綾「皆さん、私の合図でりみりんのワイヤーで作った網の裏側へ!」

 

ゆり「っ!そういう事だね!みんな、殿は私がやるから、一目散に走り抜けて!」

 

中沙綾「3.2.1、今!」

 

沙綾の合図で4人は一斉にりみの元へと走り出した。

 

中沙綾「みんな、下の隙間に潜り込んで!」

 

香澄「いっくよー!勇者スライディーーング!」

 

りみ「お姉ちゃん、急いで!」

 

ゆり「分かってる……って!」

 

逃げる勇者達をバーテックスも束になって追いかけて来る。作戦は順調筈だったのだが、あろう事か、バーテックスはりみがわざと開けた隙間目掛けて突っ込んで来る。

 

中沙綾「っ!隙間に気付かれてる!」

 

ゆり「任せて!隙間を塞ぐ蓋なら、ここにあるよ!大剣ガード!!」

 

ゆりは機転を効かせて大剣を大きくし隙間を塞いだ。隙間が塞がれた事で行き場を失ったバーテックスの群れはそのままワイヤーに突っ込んで行く。

 

りみ「捕らえたバーテックスは全部細切れだよ!」

 

ゆり「沙綾ちゃん、ナイス作戦!これだけ一気に数を減らせれば、何とかなりそうだね。」

 

5人は残りのバーテックスを一気に殲滅させていくのだった。

 

 

---

 

 

勇者部部室--

 

リサ「……樹海化が解けてから数時間経ったけど…。どうやら、もう襲撃はないみたいだね。」

 

彩「神樹様からの神託も無いみたいだし、きっと大丈夫だよ。」

 

モカ「じゃあみんなに連絡っと…。」

 

襲撃が落ち着いた事で、巫女達3人は胸を撫で下ろす。外もだいぶ明るくなってきており、間も無く初日の出が顔を出そうとしていた。

 

リサ「そうだ、2人とも今から屋上に行かない?屋上からも日の出が見えるみたいだよ。」

 

 

---

 

 

浜辺--

 

薫「………。」

 

夏希「あ、いたいた。薫さーん!警戒態勢はもう解除だってさっき連絡がありましたー!」

 

薫「そうかい、それは良かった。」

 

夏希「海を見てたんですか?」

 

薫「ああ…。空がこんなに明るんでいる。もうすぐ初日の出だよ。」

 

 

---

 

 

神社、境内--

 

高嶋「蘭ちゃん、今年も大変だったね。」

 

蘭「色々あったけど、あっという間だったね。」

 

高嶋「そうだね。あっ、もうそろそろ時間だ。たえちゃん達も待ってるし、初日の出見に行こう!」

 

 

---

 

 

公園--

 

友希那「市ヶ谷さん。良ければ、今度手合わせしてくれないかしら?」

 

有咲「急にどうした?」

 

友希那「自分でもよく分からないわ。今日は共に背中を預けて戦ったから……かしら。」

 

有咲「ははっ、初日の出の時に言う事じゃないな。けど……そんな元旦も良いかもな。」

 

 

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とある山の山頂--

 

中沙綾「あっ、そろそろ日の出だよ、香澄。」

 

香澄「本当だ!じゃあ、この初日の出に、お願い事しよっと!」

 

中沙綾「そうだね。じゃあ、私も。」

 

2人は手を叩いて目を瞑る。

 

香澄・中沙綾「「…………。」」

 

香澄「……さーや、何お願いしたの?」

 

中沙綾「みんなが今年も、これからもずっと、無事に楽しく過ごせますようにって。」

 

香澄「私も同じ!さーや、今年も良い一年になると良いね!」

 

勇者達はそれぞれ防衛した地点から初日の出の到来を心待ちにしているのだった。

 

 

---

 

 

花咲川中学、屋上--

 

眩しい朝焼けが辺りを包み込む。初日の出が顔を出し始めたのだ。

 

リサ「それじゃあ、ビデオ通話を繋ぐよ。……ヤッホー。こちら巫女組だよ。みんな、聞こえる?映ってる?」

 

友希那『ええ。ちゃんと繋がってるわ。』

 

香澄『はいはーい!ちゃんと聞こえてますし、みんな見えてます!』

 

蘭『こっちも大丈夫です。』

 

美咲『右に同じです。こっちは海の向こうで太陽が昇ってます。』

 

モカ「こっちも日の出だよー。……綺麗だなぁ…。」

 

彩「本当だね…。こんなに沢山の人達と初日の出を見られて、とっても良い年明けだね。」

 

リサ「そうだね…。こうして離れてても、同じ時間を共有出来てるんだね、私達……。あけましておめでとう、みんな!今年も、宜しくね!!」

 

吐く息は白く、凍えるような寒さではあるが、同じ時間を共有出来る今この時はとても暖かい時間だと感じる勇者部なのだった。

 

 

 

 

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