小学生組とイヴの神樹館組でのお話。これからもまったりと更新してまいります。
寄宿舎、夏希の部屋--
小たえ「さてさて、お正月早々集まって貰いました、我らが小学生組三天王。」
夏希「3人だったら、三銃士とか三人衆とかの方が語呂が良くない?」
小沙綾「夏希、これは前振りだよ。」
夏希「前振り?」
小たえ「今日はスペシャルゲストを呼んでるんだ。」
小沙綾「どうぞー!」
沙綾が呼ぶと、夏希の部屋の玄関が開き、
イヴ「夏希さん、たえさん、沙綾さん。明けましておめでとうございます…。」
夏希「イヴさんだ!明けましておめでとうございます!」
小沙綾「イヴさん、こちらへどうぞ。お菓子と飲み物を用意してますよ。」
イヴ「お邪魔します。」
夏希「あ、私もお菓子欲しい!で…イヴさんまで呼んで何するつもりなの?」
小たえ「お正月恒例の着物の着せ替えだよ。イヴさんにも参加してもらいます。」
夏希「えっ!?恒例なの!?」
小沙綾「勿論!沙綾さんとたえさんにお願いして、色々着物も用意してもらったからね。」
何故だか沙綾とたえの目は夏希を見ながらキラキラと輝きを帯びていた。
イヴ「それは初めて聞きました…。てっきりカルタとか凧揚げをするのかと…。」
夏希「イヴさん、すみません。付き合わせてしまって…。」
イヴ「大丈夫ですよ。神樹館では皆さんと遊んだ事はありませんでしたから…。今こうして遊べるのは嬉しいです。どんな事でも…。」
夏希「そういえばそうですね。神樹館の時はクラスが別でしたし。」
小沙綾「まずはイヴさんの着物選びから始めますか。」
小たえ「早速行ってみよう!我ら神樹館四天王!」
夏希「あ、ちゃんと四天王になった!」
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沙綾はいくつかある着物から1つをイヴに見せる。
小沙綾「イヴさん、これなんかどうですか?」
イヴ「ピンク色…良いですね。」
夏希「こっちの方が良いんじゃない?カッコイイ刺繍があって。どうですか、イヴさん?」
イヴ「龍の刺繍…カッコイイです。」
小たえ「うーん、もうちょっと意外性が欲しいなぁ。この渦巻の柄はどうです?」
イヴ「渦潮みたいですね…。じゃあ、その3つ全部にします。」
夏希「どれか1つにした方が…。」
小たえ「夏希、十二単って言葉があるくらいだから、きっと12枚までは大丈夫だよ。」
小沙綾「おたえ。十二単は五衣唐衣裳の俗称で、12枚って意味じゃないんだよ?」
小たえ「流石沙綾。じゃあ何枚まで良いの?」
小沙綾「そうだね……五衣が下重ねの5枚で、唐衣は一番上に羽織るもの、裳は腰に巻くものだから…。」
小たえ「じゃあ6枚までは行けそうだね。」
小沙綾「厳密には今の着物とは違うんだけど……とにかく羽織るだけやってみようか。」
取り敢えず三人はイヴに選んだ着物を着せていく事にした。
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小沙綾「イヴさん、こちらに腕を通してください。」
イヴ「分かりました。」
その時だった。
小沙綾「っ!?樹海化警報!」
夏希「えー!こないだの大晦日の戦いが凄い数だったから、お正月は来ないと思ってたのに。」
小たえ「サクッと倒しちゃおう。」
イヴ「私も行きます…あっ。」
イヴが着物を脱ごうとした時だった。着物の袖がコップにぶつかり、ジュースが着物にかかってしまったのである。
イヴ「…どうしましょう……。」
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樹海--
ゆり「本当にもう…。バーテックスも正月くらい休めば良いのに。」
ゆりは若干怒り気味であった。
有咲「どうしたんだ?そんなに怒って。」
ゆり「せっかくりみと2人きりでのんびりお雑煮を食べてたのに!」
中沙綾「分かります、ゆり先輩。私も香澄と炬燵でのんびりしてましたから…。」
香澄「そうだね。ウトウトしてたところに樹海化警報で、びっくりしたよ。」
小沙綾「私も今回のバーテックスには怒ってます!」
2人の沙綾も険しい目をしながら、バーテックスを睨み付けていた。
小たえ「やる気十分だ…。結構前から着物お願いしてたからね。」
イヴ「う……。」
中たえ「?どうしたの、イヴ?顔色悪いよ?」
夏希「あ、本当だ。大丈夫ですか?」
イヴ「はい…平気です。」
イヴは必死に取り繕った返事をする。
ゆり「イヴちゃん、体調が悪かったら無理しちゃダメだよ?人数は充分だから、休んでても良いからね?」
そこへ少し遅れて友希那と蘭が駆け付けた。
友希那「正月と言えば"初うどん"よ。」
蘭「"初蕎麦"です。湊さん、こればっかりは譲れません。」
2人は相も変わらずにうどん蕎麦論争を繰り返していた。
香澄「あ、バーテックスも動き出したよ。」
ゆり「よぅし……思い切り倒してあげましょうか!」
中沙綾「香澄とのお正月を邪魔した代償を払ってもらう!」
小沙綾「私も本気で行きます!」
夏希「私も頑張るぞ!あ、イヴさんは後方支援をお願いします。バーテックスは私達が。」
イヴ「分かりました…。」
勇者達はバーテックスの群れへと突撃するのだった。
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寄宿舎、夏希の部屋--
バーテックスを殲滅し終え、部屋に戻ってきた小学生組。しかし、そこにイヴの姿は無かった。
夏希「完勝だったね。今回はあっという間だったよ。」
小沙綾「そうだね。早く終わらせたいって気持ちはみんな一緒だったから。」
小たえ「せっかくのお正月だもんね。」
夏希「あれ?そういえばイヴさんは?」
小たえ「本当だ。やっぱり体調が悪くて休んでるのかな?」
小沙綾「でも変だね…。何も言わずに戻ったらするかな?」
3人はイヴの様子を見にイヴの部屋へと向かうのだった。
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図書室--
一方のイヴはと言うと、図書室で何やら調べ物をしていた。
イヴ「……違います。」
イヴは一心不乱に本のページをめくっている。
イヴ「…この本も違います。」
焦りからか、イヴのページをめくる速度が早くなっていく。
イヴ「……これにも、書いてません。」
イヴが読んでいる本はどれも洗濯に関する本だった。
イヴ「……見つかりません。どうすれば、着物の汚れを落とせるんでしょう…?」
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勇者部部室--
夏希「……っと、ここにもいないかぁ。」
3人は部室に来ていた。部屋にイヴがいなかったからである。
中たえ「誰か探してるの?」
小沙綾「そうなんです。イヴさんを見ませんでしたか?」
中沙綾「見てないけど…イヴがどうかしたの?」
夏希「それが、部屋も見に行ったんですけど、何処にもいなくて…。」
中たえ「さっき顔色も良くなかったし、心配だね。」
中沙綾「そうだね…。夏希、私達も手伝うよ。」
沙綾とたえも加わっての5人で再びイヴを探しに回るのだった。
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同時刻、校庭--
イヴ「…図書室で調べても、分かりませんでした…どうしましょう…。?あれは…。」
イヴが項垂れながら歩いていると、遠くに2人の人影を見つける。
有咲「はぁ、ふぅ…。もうバテたのか?こっちの世界に来て鈍ったんじゃねーの…?」
千聖「あ、あなたこそ…息が切れてるわよ…!たかがグラウンド30周くらいで…はぁ、はぁ…。」
イヴ「お二方とも、バーテックスと戦った後なのに、もう訓練してるんですね…。そうです…!」
千聖を見たイヴは何かを思いついた。
イヴ「千聖さんなら汚れの落とし方を知ってるかもしれません。」
イヴは早速千聖の元へ駆け寄るのだった。
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千聖「え?着物についた汚れの落とし方?」
イヴ「はい…。」
千聖「どうかしら…。着物にはあまり縁が無かったから、ちょっと分からないわね……。」
イヴ「そうですか…。」
千聖「力になれなくてごめんなさい。でも、どうしてそんな事調べてるの?」
イヴ「実は……ジュースを溢してしまったんです…。」
イヴは千聖に正直に打ち明けた。
有咲「あー、それって小学生組がたえから借りてる着物か?」
イヴ「そうです…。」
有咲「それでさっき樹海で元気無かったのか。心配するな。そんな事なら、ウチに最適なのがいるから。」
イヴ「誰でしょう?」
有咲「沙綾だよ。沙綾に聞けば一発だ。」
イヴ「でも、あれは沙綾さんの着物かもしれません…。ジュースの事聞いたら、悲しむんじゃ…。」
有咲「そのくらいの事、気にするようなやつじゃないよ。」
有咲はそう言ってイヴの背中を軽く叩くのだった。
イヴ「ありがとうございます…。早速行ってみます。」
千聖「沙綾ちゃんなら確か部室にいる筈よ。イヴちゃん、良かったら私もついて行きましょうか?」
有咲「なら私も行くよ。提案者がほったらかしにするのはアレだしな。」
イヴ「千聖さん…有咲さん…ありがとうございます。」
三人は部室へと足を運ぶのだった。
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勇者部部室--
有咲「沙綾いるかー?」
香澄「あ、有咲だ。」
中沙綾「私はここにいるけど…あ、イヴ。」
夏希「あ、本当だ!」
小たえ「やっと見つけたよ。」
小沙綾「探しましたよ、イヴさん。」
5人はそれからもイヴを探したものの、やはり見つからなく、一旦部室に戻って来ていたのである。
イヴ「う……。」
小学生組も部室にいた事で、イヴは言葉に詰まってしまう。
千聖「イヴちゃん、こういう事は自分から話さないとダメよ。」
イヴ「はい。」
中沙綾「大丈夫だよ、イヴ。私も夏希達も大体事情は分かってるから。」
イヴ「え……?」
中沙綾「着物にジュースを溢しちゃったんでしょ?」
イヴ「っ!どうしてその事を…?」
沙綾達は何処を探してもイヴが見つからなかったので、一旦夏希の部屋に行った時、着物が濡れていた事に気付いたのだ。
小たえ「着物を見た時にみんなピンときたんです。」
イヴ「皆さんに心配かけてしまってごめんなさい…。」
中沙綾「大丈夫だよ、これくらいね。」
イヴ「ですが、シミが残ってしまうかもしれません…。」
中沙綾「それも平気だよ。ね、おたえ?」
中たえ「うん。ジュースなら私も溢した事あるし、お手の物だよ。」
香澄「あの汚れはさーやとおたえが綺麗にしたからもう大丈夫だよ。」
イヴ「……そうなんですね。良かったです…。」
イヴは肩の荷が下りたかの様にすっと力が抜けるのだった。
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寄宿舎、夏希の部屋--
小たえ「これなんてどうかな。」
夏希「おお、意外な感じだけど良さそうかも。」
イヴ「では、それにしてみます。」
小沙綾「因みに、他人事の様に言ってるけど、夏希も着るんだよ。」
夏希「ええ!?私も!?」
4人はそれぞれが選んだ着物に着替える。
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夏希「……でも、みんなも着物だから恥ずかしくは無いかな。と言うか、イヴさんが凄く美人だ!おたえ、やるじゃん!」
小たえ「それ程でもあるかな。」
イヴ「皆さんもとっても似合ってます。」
小沙綾「私達に付き合ってもらってありがとうございます。」
夏希「強引に話を進めちゃってすみません。」
イヴ「とっても楽しかったですよ。……神樹館でも、もっとこうして夏希さん達と遊べてたら良かったです…。」
夏希「これからやれば良いんですよ!この先もまだまだ楽しい事はたくさんあるんですから!」
イヴ「……そうですね。」
この世界は出来なかった事を叶えてくれる場所--
また一つ、イヴの心には忘れられない思い出が増えるのだった。
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光に包まれた勇者部部室--
また一つ、記憶のシャボンが弾けて消えていく--
シャボンの数は残り2つ--
間も無く、新たな世界の幕が開こうとしていた--