この世界では出来なかった事が出来る、会いたかった人に会える夢の世界。でも、その夢もいつかは醒めてしまう日がやって来るのです--
勇者部部室--
3人が綾川から戻って来てから暫く経った日の事--
リサ「むぅ……。」
リサは依然機嫌が戻っていなかった。
リサ「綾川の枝垂れ桜、きっと見頃だったよなぁ。一緒に見たかったよ。」
友希那「わ、私もリサと一緒に見に行きたかったのだけれど…見られたのはたまたまだったのよ。」
リサ「それは分かってるけどさぁ……。」
傍から見れば2人の言い合いはまるで夫婦のようである。
ゆり「珍しいね。どうしたの?」
リサ「あ、ゆりさん。綾川の枝垂れ桜…私も友希那と一緒に見に行きたかったんですよねぇ……。」
ゆり「それってこの間香澄ちゃんと沙綾ちゃんと一緒に見たっていう。」
リサ「そうです……。」
すると項垂れているリサの元へ2人のたえがやって来る。
中たえ「友希那さん、リサさん。それなら明日お花見に行けばいいんですよ。」
小たえ「行きましょう御先祖様。」
友希那「そうは言っても…流石に急すぎじゃないかしら?」
リサ「だね…。やるにしてもみんなの予定や準備も整えないと。」
中たえ「お花見ならきっと明日でも大丈夫ですよ。」
小たえ「楽しいですよお花見。ね、ゆり先輩。」
ゆりは少し考えて、
ゆり「…うん、それじゃあ明日は勇者部のみんなでお花見に行こう!」
2人のたえは童心に戻ったかのように飛び上がった。
中たえ「さすがゆり先輩!賛成してくれると思ってました。」
小たえ「私、沙綾や夏希達に教えてきます。」
リサ「ゆりさん、良かったんですか?」
ゆり「良いんだよ。みんなこういうノリに慣れてると思うしね。綾川…だったっけ?そこに行くのは難しいかもしれないけど。みんなでお花見を楽しもうよ。桜ものんびりしてると散っちゃうよ?」
中たえ「そういう事です。」
友希那「良かったわね、リサ。」
リサ「うん!」
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それから数分後--
みんなを呼びに行っていたたえがみんなを連れて部室に戻って来る。
日菜「話は聞いたよ~!花見って聞いてとってもルンってしてきたよ!」
高嶋「すっごく楽しみだよね、紗夜ちゃん!」
紗夜「はい。そろそろ満開だとTVでも言っていましたし、良いんじゃないでしょうか。」
突然の召集だったものの、他のみんなもかなり乗り気である。
中たえ「ね、リサさん。みんなお花見に賛成みたいです。」
リサ「あはは。勇者部の団結力を感じるよ。」
有咲「けど、色々と準備もしないとな。何が必要だ?」
あこ「レジャーシートならあこ持ってます!」
彩「水筒とかもいるよね?」
蘭「この人数だと、現地調達が良いんじゃないかな。」
香澄「飲み物は蘭ちゃんのアイデアに賛成!でも食べ物はどうしよう?」
中沙綾「お弁当は私が用意するよ、香澄。」
小沙綾「私も手伝います!1人でこの人数分は大変だと思いますから。」
中沙綾「ありがとね。」
中たえ「私も作ってみたい。沙綾、教えて?」
小たえ「私も!夏希と一緒に教えて、沙綾。」
夏希「……ええ?2人とも料理出来るの?」
中沙綾「大丈夫だよ、夏希。教えてあげるから一緒にやろう。」
ゆり「お弁当作る係はこれで決まりだね。5人もいるなら私は楽させてもらうね。」
あこ「ゆりセンセー質問です!おやつは300円までで良いんですか!?」
ゆり「そうだなぁ……今回は大サービスで1000円までオッケーだよ!!」
夏希・あこ「「おおぉーー!!」」
大まかな持ち物と担当が決まったところで、各自は準備に取り掛かり始めたのだった。
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家庭科室--
早速5人はお弁当作りに取り掛かっていた。
夏希「これで……卵焼きの出来上がり!」
中たえ「夏希私より上手だよ。美味しそう!」
夏希「これくらい朝飯前ですよ。たえさん、どうせ2年間料理ほどんどしてないんでしょ?」
中たえ「あはは、夏希にはバレバレだね。」
小たえ「沙綾さんも凄い!焦げ目1つない黄色卵焼きだ!」
中沙綾「コツがあるんだよ。練習すればたえちゃんだって出来るよ。沙綾ちゃんはコツを掴んだみたいだね。」
小沙綾「はい、これくらいは。それより気になる事が……。」
中沙綾「どうしたの?」
小沙綾「…私が練習して料理が上手くなった場合、沙綾さんの腕前にも反映されるんですかね?それとも、私の未来と今の沙綾さんは直接繋がってないんでしょうか……?」
小学生の沙綾の質問に中学生の沙綾も思わず料理の手を止め考え込んでしまう。後者の場合、小学生のたえが中学生のたえよりも料理が上手くなるという事もあり得るのだ。
中たえ「うーん、これは答えが出せない問題だよね。」
中沙綾「……未来はどうあれ、たえちゃんが今練習した事は、必ず何かの役に立つ筈だよ。」
小たえ「はい!じゃあその時の為にいっぱい卵割ります。」
夏希「卵はもう良いよ!」
小たえ「えー。」
中沙綾「それじゃ、たえちゃんは次の料理にやる気を注いでね。」
小沙綾「次はおにぎりを作りませんか?お弁当の必需品です!」
中沙綾「そうだね。」
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お花見当日、海岸線--
天気は快晴。風もそれほど強くなく、絶好のお花見日和となった。
りみ「こうやってみんなで歩いていくのも、なんだか遠足みたいで楽しいね。」
香澄「そうだね、りみりん!5人が作ってくれたお弁当が待ち遠しいよー!」
小沙綾「腕によりをかけて作りました。特に唐揚げは自信作です!」
香澄「あぁ……聞いただけでお腹が空いてきちゃったよー。」
リサ「たえ達は料理、どうだった?」
中たえ「はい、すっごく頑張りました!」
小たえ「夏希達に教わるの楽しかったです。」
幸せそうに料理中の出来事を2人が思い返す中、夏希は内心ハラハラが止まらなかった。
夏希「いやいや…!おたえ達の手付きを見てて何回指を切り落とすかと思ってハラハラしたよ……。」
美咲「それは……見てるだけで怖いね…。」
中たえ「大丈夫、ちゃんと10本あるよ。」
小たえ「もしかしたら11本になってるかも?」
有咲「急に増えたらそっちの方が怖いだろ…。」
小たえ「でも、バーテックスと戦ってた時の傷とか結構すぐ治るし。もしかしたら神樹様の力で指の1本や2本生えてくるかも。」
その直後、樹海化警報のアラームが響き渡った。
紗夜「どうやらバーテックスの方が生えてきたみたいですね。」
花音「でもお花見の最中じゃなくて良かったよ…。」
イヴ「はい。楽しんでいるところを邪魔されたくはありません。」
あこ「だね!バーテックスなんかドーンとすぐやっつけちゃえば大丈夫!」
彩「みんな、気を付けてね。」
千聖「大丈夫よ、彩ちゃん。荷物お願いね。」
勇者達は樹海へと消えていく。
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樹海--
ゆり「はぁ……。」
友希那「ゆりさん、どうかした?」
ゆり「いや、お弁当を彩ちゃん達に任せたよね?」
友希那「持ったままだと戦えないし、問題ないように思えるのだけれど…。」
ゆり「戻るまでに全部食べ切っちゃわないかって心配でね。」
友希那「…………。どうしてそんな心配を?」
ゆりからの突拍子もない回答で友希那は唖然としていた。
りみ「お姉ちゃん、友希那さん困ってるよ。」
ゆり「え?そんなに衝撃的だった!?」
中沙綾「食べずに待ってますって。」
りみ「みんなで食べるものだもん。」
ゆり「でも分からないよ?沙綾ちゃん達の料理美味しいもん!」
小沙綾「あ、ありがとうございます…。」
あこ「分かります!思わずつまみ食いしたくなるほど美味しそうでした!」
ゆり「よし!お弁当を食べる為にも、早くバーテックスを倒すよ!!」
あこ「おーーー!!!」
りみ「お姉ちゃん……凄い気合…。」
美咲「私も食べたいし、ちょっと本気出しますか。」
お弁当を食べるという思いで一致団結した勇者達は迫り来るバーテックスの第一陣へと突っ込み戦闘を開始する。
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10分後--
第一陣が8割程倒し終えたのだが、バーテックスは勢いそのままに勇者達へ向かって進撃を続けていた。
ゆり「まだ来るの!?……はっ!もしかしてバーテックス達もお花見のお弁当狙ってるの!?」
あこ「えっ!?それは困るよぉ!」
りみ「すみません……お姉ちゃんはお腹が空き過ぎて我を失っているみたいです…。」
蘭「空腹は何物にも勝る強敵だから…。」
香澄「りみりん、ゆり先輩何かあったの?」
りみ「それが……今朝寝坊しちゃって、朝ご飯食べる時間が無くなっちゃったんだ…。」
香澄「っ!?じ…じゃあ、まさか……ゆり先輩は朝ご飯を食べずに戦っているんですか!?」
ゆり「……そうだよ、香澄ちゃん…。」
ゆりは悲し気な目で香澄を見ながら呟いた。
香澄「辛い……。そんなの、辛すぎます!なんでゆり先輩が犠牲にならないといけないんですか!?」
ゆり「仕方ないんだよ、香澄ちゃん……これも、部長にして上級生の務めだから…。」
香澄「……バーテックス、絶対に許さない!!」
香澄の目が怒りに満ち満ちる。
有咲「部長も上級生も、バーテックスも関係あるか!!」
あこ「朝ご飯抜きで戦うのはキツイよ…。あこも分かるもん。」
夏希「おにぎり1つくらい先に貰えば良かったんじゃ?」
ゆり「ダメだよ、後輩がまだ食べてないのに1人だけ先に食べるなんて出来ないよ!」
有咲「立派な心掛けなんだか、てんでダメなのか判断に困る……。」
香澄「みんな!ゆり先輩の為にも一気に全部倒しちゃおう!!」
全員「「「おー!!!」」」
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とある公園、お花見スポット--
ゆり「さて、お花見だよ!お弁当だよ!!」
中沙綾「沢山ありますから、いっぱい食べて下さい。」
小たえ「私が握ったおにぎりもありますよ。ゆり先輩食べてください。」
ゆり「それじゃあ、そのおにぎりから。あむっ………美味しい!」
美咲「今日のゆりさんは花より団子だね。おっ、この卵焼き丁度いい味付け。」
夏希「それ、多分私が焼いたやつです。」
美咲「夏希ちゃん結構料理上手なんだね。これならいつでもお嫁にいけるよ。」
夏希「お、お嫁さんって……。美咲さん何言ってるんですか…。」
思わず夏希の顔が赤くなる。
薫「それくらい美味しいよ、夏希ちゃん。」
夏希「薫さんまで…。なんか恥ずかしくなってきました…。」
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友希那「ここの桜も綺麗ね、リサ。」
リサ「本当だね。」
友希那「……今度は2人で枝垂れ桜を見に行きましょう。」
リサ「本当?約束だよ?」
友希那「ええ、約束よ。」
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たえは舞い散る桜の花びらをみながら物思いにふけっている。
中たえ「?沙綾、来てくれたんだね。」
中沙綾「おたえ、あんまり食べてないね。調子悪い?」
中たえ「ぜんぜん。寧ろ逆だよ。」
中沙綾「逆?」
中たえ「凄く嬉しいんだ。沙綾と夏希……勇者部のみんなとこんな風にお花見が出来て。」
中沙綾「それは……私もだよ。」
中たえ「2年前に桜を見た時はこんなに綺麗だって思わなかったけど……またこうして隣同士いられるなんて……不思議だなぁ。」
中沙綾「なんだかとっても嬉しいよね。いつまでもこうやって見てたいくらい綺麗だよね……。」
中たえ「うん……。」
そんな風に2人で話していると、遠くから2人を呼ぶ夏希の声が。
夏希「おーい、2人ともー!なんかみんなでゲームやるんだってー!」
中たえ・中沙綾「「ありがとう、夏希!今行くね!」」