戸山香澄は勇者である   作:悠@ゆー

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神樹の記憶編最後のお話になります。

前半2つの物語の時系列は赤嶺と最後の決着をつける前です。




神樹の記憶〜最後のシャボン〜

 

 

誰もいない勇者部部室--

 

 

これまでに数々のシャボンから様々な勇者達の記憶を上間見てきた--

 

 

笑顔や--

 

 

時には悲しみ--

 

 

楽しかった思い出に悲しかった思い出--

 

 

出会いと別れ--

 

 

記憶のシャボン残り1つとなった。今、その最後の1つが光に包まれる--

 

 

---

 

 

勇者部部室--

 

ゆり「あれからどれくらい経ったでしょう。」

 

厳かな空気の中話し始める神世紀勇者部組。

 

中たえ「固い絆に想いを寄せてみると。」

 

中沙綾「語り尽くせない青春の日々がありました。」

 

有咲「時には傷付き、時には喜んで。」

 

りみ「肩を叩き合ったあの日々。」

 

香澄「という訳で、ジャジャーン!!」

 

美咲「ジャジャーン?さっぱり意味不明だけど、なんか笑える。」

 

あこ「今日は誰かの記念日なの?」

 

リサ「違うよ。でも、強いて言うならみんなのかな。」

 

友希那「それはどういう事?」

 

モカ「間も無くこの世界での御役目が終わるんで、その前にパーっとって事です。」

 

ほぼ全ての領地を奪還する事が出来た勇者部一同。残るは赤嶺との決着と造反神を鎮めるだけとなり、その前にお祝いをしようとの事だった。

 

花音「私達は合流してから少ししか経ってないけど良いのかな?」

 

香澄「勿論です!」

 

薫「思えば、当初から考えると私達は随分と仲良くなったものだね。」

 

彩「そうだね。これも神樹様の加護があっての事だよ。」

 

ゆり「さて、それじゃあどうするかみんなで決めていこうか!」

 

 

--

 

 

日菜「はいはーい!みんなでドレスを着てパーティなんかどうかな?」

 

リサ「それ良いね!写真の撮り甲斐があるよ。」

 

日菜の提案に盛り上がりをみせる勇者達。

 

千聖「けれど、本当にここの人達は特別なイベントが好きなのね。毎回よく考えるものだと感心するわ。」

 

高嶋「それはそうだよ!元の世界にいたら絶対に知り合えなかったみんなとこうして出逢えた奇跡を感謝してるから。」

 

香澄「盛大にお祝いしたいですから!」

 

ゆり「よーし、じゃあ今からドレスを選びに行くよ!」

 

ドレス選びにはある程度時間がかかってしまう為、勇者達は何班かに分かれて順番に行く事にした。まず初めは防人組からだ。

 

花音「ドレス選びなんて初めてだから分かるかなぁ。」

 

リサ「安心して。後で私と美咲も見に来るから。」

 

イヴ「そのお二方がいれば安心ですね。」

 

中沙綾「それにそんなに心配ないよ。5人で行って、互いに見せ合って選べばすぐに最高の1着が決まるから。」

 

花音「そ、そうかなぁ。」

 

香澄「そうです!自分ではあやふやでも、似合う色とかはきっと親友が分かってくれてますから。」

 

有咲「そういう事だ。」

 

香澄達に背中を押され、防人組は早速レンタルショップへと出かけるのだった。

 

 

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レンタルショップ--

 

千聖「こ、これは……。」

 

目の前に広がるのは様々な数のドレス達。夥しいと言っても過言ではない。

 

イヴ「ドレスが沢山です…。」

 

いざ豪華絢爛なドレスを目の前にすると、年頃の少女達もどれを選べば良いのか迷ってしまう。

 

日菜「たかがドレス選びだよ?そんな挙動不審になる必要なんてないよ。」

 

彩「日菜ちゃんはこんなドレス着た事あるの?」

 

日菜「え?」

 

彩「慣れてるなら日菜ちゃんに選んでもらいたいな。」

 

イヴ「そうですね。着た事があるのなら教えて欲しいです。」

 

千聖「こんなにあるんじゃ、見るだけで日が暮れるわね。日菜ちゃん、お願い出来る?」

 

日菜「え…?そ、そうだね……。」

 

急にみんなから頼りにされるので、日菜も若干戸惑ってしまう。

 

日菜「よ、よーし!この日菜ちゃんの慧眼でもって、みんなにピッタリなドレスを決めちゃうよ!」

 

日菜は軽く腕まくりし、みんなに合わないサイズのドレスをまず除外していく。

 

花音「着られないのは先に外しちゃうんだね。合理的だぁ。」

 

彩「さすが日菜ちゃん!」

 

着られないドレスを外したものの、残ったドレスはお店の半分以上残っている。

 

イヴ「ここならどう選んでいくのでしょう?」

 

日菜「え…っとねー……。」

 

突如日菜の手がピタリと動きを止める。

 

千聖「日菜ちゃん?」

 

日菜「………それは、もう…アレだよ。」

 

彩「アレ?」

 

日菜「センス…かな。」

 

 

--

 

 

日菜「千聖ちゃんはこれ!」

 

千聖「えっ?」

 

日菜「彩ちゃんはこれかな。」

 

彩「これって……。」

 

日菜「そしてイヴちゃんはこれ!」

 

イヴ「………。」

 

イヴ「バッキャロー!こんな素っ裸みてーな服着れると思ってんのか!」

 

日菜「えー。カクテルドレスだよ。」

 

千聖「お店に置いてあるんだから当然そうなのだろうけど………これはちょっと。」

 

日菜が選んだドレスはどれも背中と胸が開きすぎでスリットが大きく脚もかなり露出度が高めだった。

 

日菜「非日常を彩るならこれくらいやらないとダメじゃない?」

 

彩「う、うん……選んでもらってすっごく感謝だけど…で、でも…大丈夫大丈夫。」

 

イヴ「丸山。良いから思った事ははっきり言え。そうでなきゃ伝わんねーぞ。」

 

彩「こ、これを着るのは……うぅ…恥ずかしいよぉ……。」

 

日菜「がーーん!!」

 

全員からの不評を受け、思わず日菜は膝から崩れ落ちる。

 

花音「うぅ…ショック受けてるのはこっちもだよ…。」

 

千聖「日菜ちゃん、立って頂戴。店員さんがこちらを見てるわよ。」

 

彩「ごめんね、日菜ちゃん。」

 

日菜「全然気にしない!今度こそちゃんとドレス選ぶよ!」

 

千聖「大丈夫かしら……。」

 

 

--

 

それから1時間程が経ち--

 

日菜「ううーーん、ふぬぅーーー!!」

 

イヴ「日菜さん、長考ですね…。」

 

千聖「日菜ちゃん、もうかれこれ1時間は経つわよ。」

 

日菜「ま、待って!もう少しだけ…。」

 

その時、待望の援軍が駆けつける。

 

リサ「みんな、様子を見に来たよ。」

 

美咲「どうかな、みんな?」

 

彩「リサちゃんに美咲ちゃん!」

 

花音「地獄に仏とはこの事だよぉ!」

 

リサ「どうしたの、花音!?ドレスは?」

 

千聖「実は……。」

 

千聖はこれまでの経緯を2人に説明する。

 

 

--

 

 

リサ「成る程ねぇ。」

 

日菜「だってー。あれから色は良くても形はとか、シルエットが良くても飾りが多すぎるとか、注文が多いんだもーん!!」

 

リサ「うーん、ここに何着か並べてあるのが候補なんだね?」

 

最初は店の半分近くあったドレスも、何とか数十着に絞り込む事までは出来ていた。

 

美咲「どれも良いものだと思いますけど……。こうやって置いて見ちゃうと決められませんよね…。」

 

イヴ「どうしたら決められるんでしょう?」

 

美咲「あのですね、着て見る前から自分がこれを着たらって想像しない方が良いと思いますよ。」

 

花音「ふぇ?じゃあ、取り敢えず着て見るって事?」

 

美咲「そうですね。考えるな、感じろってやつです。」

 

彩「美咲ちゃんの言う通りかも。試着もしないで選んでばっかりだと、選んでくれた日菜ちゃんにも失礼だよね。」

 

日菜「あ、彩ちゃん……!」

 

リサ「よし!そうと決まったら、取り敢えずこの中からパッと手に取ってサッと着てみよう!話はそれからだよ。」

 

千聖達は思い思いにドレスを手に取り、試着室へと入っていくのだった。

 

 

--

 

 

試着室--

 

千聖「う……ここは、これで良いのかしら?本当に……?私、大丈夫………?」

 

日菜「花音ちゃん、後ろ向いて。ファスナー上げるから。」

 

花音「ありがとう。ふぇぇ…何だかお腹周りが苦しいような…。」

 

日菜「これはそういうものだから我慢して。」

 

彩「あ……何だか思ってたより…。ううん、想像よりずっと……。」

 

イヴ「彩さん、可愛いですよ。」

 

彩「イヴちゃんもだよ!きっともう1人のイヴちゃんにも似合うよ、そのドレス!」

 

イヴはもう1人のイヴに変わろうとするのだが、恥ずかしがって表に出てこなかった。

 

イヴ「……ダメでした。出てきてくれません。」

 

 

--

 

 

リサ「成功だね。」

 

美咲「はい。ドレスは迷うより着て見るべしって事ですね。」

 

 

--

 

 

千聖達が試着室に入ってから数十分経った頃--

 

リサ「みんな、着れた?」

 

美咲「それじゃあ、カーテンオープン!」

 

カーテンを開けるとそこには--

 

 

 

 

リサ・美咲「「おおーーっ!」」

 

美しいドレスを見に纏った防人組の面々が。千聖は黄色、彩はピンク、イヴは紫、日菜は水色、花音は青のドレスがそれぞれを美しく際立てていた。

 

千聖「だ、大丈夫なの…これで。」

 

花音「千聖ちゃん、さっきからそればっかりだよ。全然大丈夫!」

 

彩「千聖ちゃん、とっても似合ってるよ!」

 

千聖「彩ちゃんも可愛いわ。みんなも、見違えたわね。」

 

日菜「花音ちゃん、どう?私の見立ては。」

 

花音「うん。最初よりはだいぶ軌道修正出来てるよ。」

 

イヴ「日菜さん、ありがとうございます。」

 

日菜「うんうん!イヴちゃんも似合ってるよ。きっともう1人のイヴちゃんにもね。」

 

イヴ「そうですね……。」

 

千聖「日菜ちゃんだってこうしてると本当にお嬢様って感じがするわね。」

 

日菜「えへへ……そうかな?」

 

千聖「着るものなんて、普段からあまり意識してなかったけど、こうして着て見ると気が引き締まる思いがするわ。」

 

美咲「あはは、千聖さんらしい感想ですね。どうです?アゲアゲになりました?」

 

千聖「そうね……確かにアゲアゲね。」

 

リサ「最高だよ、みんな!着崩れないうちに写真撮っちゃうよ!」

 

 

--

 

 

千聖「それで、この後はどうするのかしら?ドレスも決まった事だし、当日まで何か準備するの?」

 

美咲「実は、もう準備は整ってるんです。」

 

千聖「え?」

 

千聖達がドレスを選んでいる間に、リサとたえが大赦に話をつけて会場と料理を押さえていたのである。

 

彩「そうだったの!?何も手伝えなくてごめんね…。」

 

リサ「気にしないで。みんなには沢山助けてもらったからさ。」

 

イヴ「そうなんですね。みなさん、温かい人達ばかりです…。」

 

千聖「そうね。みんな心が温かい人達ばかり。この世界に来れた事……感謝してるわ。」

 

花音「そうだね。盛大にお祝いしちゃうよ。」

 

リサ「うんうん!それじゃあ、パーティ会場まで行こうか!」

 

防人組「「「おーーっ!!」」」

 

 

---

 

 

7人がお店を後にした後、お店に入る影が1人--

 

 

赤嶺「ふーん、パーティねぇ……。良い御身分だよ…。本当にお気楽な勇者様達……。呆れるのを通り越して、感心しちゃうよ。いつまで笑顔でいられるか、見物だね…。」

 

 

 

 


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