戸山香澄は勇者である   作:悠@ゆー

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ラスト2話となりました。ここまで読んでくださり本当にありがとうございます。皆さんあってこその道のりでした。

次回、神樹の記憶編最終回。最後まで読んでくださると嬉しいです。




神樹の記憶〜かけがえのない色纏って〜

 

 

勇者部部室--

 

赤嶺香澄によるバーテックスの襲撃があったものの、何とかこれを退けパーティを成功させた勇者達。

 

ゆり「まぁ、一悶着あったけど無事パーティは終わったね。」

 

あこ「ご飯美味しかったなぁ。またやりたいよ。」

 

夏希「本当ですね。」

 

小沙綾「全く、いつまでもこの世界にはいれないんだからね。」

 

美咲「良いじゃない。どうせいつ帰っても元通りなんだし、長引くのも歓迎だな。私は。」

 

紗夜「不謹慎ですけど、そう言いたくなる気持ちは分かります、奥沢さん。」

 

花音「私も!戦闘が怖いのは何処でも同じだけど、ここなら強いみんながいるし、毎日楽しいし。」

 

彩「この世界に呼ばれて、今まで知らなかった事が沢山勉強出来たのが嬉しかったよ。」

 

イヴ「はい。それに、元の世界だと知り合えなかった人と仲良くなる事が出来て良かったです。」

 

日菜「確かに。私も、敵だったとはいえ氷河家を知る人と出会えた事は感慨深いもん。」

 

千聖「まだ短い期間だけれど、自分に起きた変化。それが、私にとって好ましい物だと思ったのは、収穫だわ。」

 

有咲「真面目で堅すぎる所も、これから変わったら尚良いんだけどな。」

 

千聖「あら、それはあなたみたいなという意味かしら?」

 

有咲「私?私は別に、何処にいたって変わらないよ。今も昔もずっと完全完璧完成型勇者の市ヶ谷有咲だ。」

 

千聖「………そういう事にしておくわ。」

 

勇者部のみんなはここで過ごしてきた日々を懐かしみ、互いにこれまでの日々に思いを馳せていた。

 

薫「これまで、振り返ると長かった気もするが、あっという間だった気がするね。」

 

友希那「ええ。その間、私達はここで戦い、守り、同時に人々に支えられながら生きてきたわ。最後に街の人達に何か感謝の意を示す事が出来たら良いわね。」

 

蘭「私も同じ事を考えてました。畑でお世話になった人達も多いですから。」

 

全員が思っている事は同じ。みんなが同じ言葉を思い浮かべていた。

 

 

恩返しがしたいと--

 

 

モカ「なんだかんだでこっちでもお世話になる人多かったもんね。」

 

小たえ「勇者の恩返しだね。」

 

中たえ「それ良い考え。」

 

中沙綾「私達に出来る事だね。」

 

香澄「ゴミ拾いとか?」

 

リサ「それだと普段通りじゃない?」

 

高嶋「どうすれば、街の人達に喜んでもらえるような恩返しが出来るかな?」

 

香澄達は唸る事しか出来なかった。簡単なボランティア等は部活動として普段からやってきている。何か特別な事をしてあげたい。それが一番のネックだった。

 

紗夜「これは……意外と難題かもしれませんね。」

 

ゆり「あっ、そうだ!!」

 

ゆりはとある催しが商店街である事を思い出す。

 

りみ「何か思いついたの、お姉ちゃん?」

 

ゆり「あのね、次の週末に商店街の活性化計画の一環で吹奏楽団が演奏パレードをするって聞いてるんだ。」

 

高嶋「うわぁ、楽しそう!曲を演奏しながら街を練り歩くやつですよね?テレビで見た事あります!」

 

 

ゆり「そう!大通りに街のみんなが見物に出て来て商店街が出店を出したりして、大賑わいの催しだよ。それで思い付いたんだけど、勇者部もそのパレードに参加させてもらったらどうかな?」

 

夏希「すっごい盛り上がりそうです!やりましょう!参加したいです!」

 

小沙綾「楽器を演奏するんですか?」

 

ゆり「違う違う。私達が参加するのは豪華衣装でパレードに加わって、盛大に盛り上げて街中をアゲアゲにしちゃうって事!」

 

千聖「確かにアゲアゲは良い事ですね。防人は参加するわ。」

 

珍しく千聖が前向きに賛成を表明する。

 

彩「コスプレだね♪可愛い洋服が着れるのはとっても嬉しいよ!」

 

美咲「そうですね。せっかくですから手作りの洋服で参加しませんか?こんな事もあろうかと、燐子さんにも衣装作りの勉強をしてもらったんです。」

 

あこ「凄いよ、りんりん!」

 

燐子「ありがとう、あこちゃん…頑張るよ…。」

 

ゆり「ありがとう、任せるね。」

 

美咲「任せてください。時間も無いですし、みんなにも手伝ってもらいますけどね。」

 

香澄「勿論だよ!ね、さーや。」

 

中沙綾「そうだね。何でも協力するよ!」

 

勇者部は美咲と燐子を中心として早速衣装作りに取り掛かるのだった。

 

ゆり「私は早速、商店街と吹奏楽団に連絡して調整作業に取り掛かるから、後は任せたよ!」

 

ゆりが部室を後にしようとした時、

 

薫「ゆり。」

 

ゆり「ん?」

 

薫「いつも……済まないね。」

 

ゆり「ど、どうしたの急に。私が好きでやってる事だよ。それじゃあね!」

 

 

--

 

 

日菜「そうと決まったら早速役割分担だね。美咲ちゃん、お願い!」

 

美咲「分かりました。今リスト作りますから、少し待っててください。」

 

りみ「私も手伝うよ。これまでのイベントの作業表が残ってるからそれを参考にしてね。」

 

千聖「この効率で無駄の無い動きと流れ。これが共に戦う仲間同士の連携なのね……。」

 

この世界に来て一番学ぶ事が多かったのは千聖だったのかもしれない。ここに来て千聖は仲間と戦う大切さを学んだのだから。

 

有咲「何しみじみしてるんだよ。今は千聖もその中の1人だろ?」

 

千聖「私も……ふふっ、そうね。その通りよ。さあ、私は何をすれば良いのかしら?」

 

 

--

 

 

それから数十分が経過した頃--

 

燐子「これで…大体の方針は決まりました…。」

 

美咲「はい。先ずは衣装班ですけど、こっちは私と燐子さんのアイデアを元にデザイン及び衣装の製作が主です。」

 

製作班のメンバーは沙綾達、高嶋、リサ、りみ、モカ、たえ達、日菜、彩。そして小道具作成班は残った夏希、あこ、香澄、紗夜、友希那、蘭、有咲、千聖、花音、イヴ、薫である。

 

美咲「仲良しと離して悪いんですけど、今回は我慢してください。」

 

燐子「効率を重視して…それぞれの得意分野で分けました…。」

 

2人はそう言って沙綾と紗夜に目線を送った。

 

中沙綾「私達の事?大丈夫だよ、心配しないで。」

 

紗夜「何処か遠い知らない世界に行く訳ではありませんし、大袈裟です。」

 

薫「ふむ……美咲はみんなの事をよく見ているんだね。」

 

紗夜「それもこの年月が培ってきた新たな資質という事なのでしょうね。」

 

蘭「私達はただガムシャラに戦ってきただけじゃ無いって事です。」

 

日々が積み重なっていく事で時間はかけがえのない物へと変化していく。

 

香澄「何か…良いね、これ!友達が、もっともっとすっごい友達になっていくのって。」

 

イヴ「はい…友達…とっても良い響きです。」

 

千聖「イヴちゃん、頑張りましょう。このイベントを私達の手で成功に導くわよ。」

 

有咲「それも良いけど、千聖も楽しめよ。」

 

千聖「楽しむ?」

 

有咲「あんたが楽しむ姿を見て、喜ぶ人間が周りに大勢いるだろ?成功だけを目指して力むより、作業の工程を楽しんでやる事も大事なんだからな。」

 

そう言われ、千聖は周りを見回し、ため息をついた。

 

千聖「ふぅ……。あなたはいつもそうやって私の一歩先を歩いているわね。」

 

有咲「え?」

 

千聖「いいえ、何でも無いわ。………そうね。私も精一杯楽しむわ。言われなくてもね。」

 

有咲「ならオッケーだ。」

 

勇者達は各班に分かれて作業を開始するのだった。

 

 

---

 

 

製作班サイド--

 

燐子「以上が、今回のコンセプトです…。ここに、皆さんのアイデアを盛り込みたいんですが…。」

 

美咲「基本は基本でありますけど、やっぱり勇者部ならではのオリジナリティも大事ですから。」

 

高嶋「勇者部のオリジナリティって?例えばどんな所かなぁ。」

 

彩「勇ましい感じとか、猛々しい雰囲気とかかなぁ。」

 

りみ「確かに、勇者ならそんなイメージですけど、私達はそれだけじゃ無いかも…。友希那さんや夏希ちゃんはそんな感じだけど、私は…あんまり。」

 

中沙綾「確かにね。」

 

美咲「まぁ、そうだよね。勇者部にいるのは勇者だけじゃ無いし。」

 

モカ「巫女もいるよー。」

 

小沙綾「そうですね。巫女さんがいてこその勇者部ですし。」

 

燐子「そこです…。可愛さと雄々しさの融合…。それこそが大事なポイントだと思うんです…。」

 

そう言って燐子は1つの絵をみんなに見せた。

 

モカ「おー!エモいですねー。」

 

りみ「カッコよくて可愛い!それにそこはかとなく勇者部っぽいよ!」

 

リサ「きっとみんなの中で勇者部のイメージが統一されてるんだろうね。」

 

美咲「じゃあ、これを参考に作っていきましょうか。出来たデザインから、小道具班に発注する部分を指定して、素材や色の相談に移りましょう。」

 

燐子「その間に製作班は、誰に着せるかを決めて…サイズの確認と型紙を起こしてから、裁断に入ります…。」

 

デザインが決まった途端にするすると事が進んでいく。この調子で行けば本番までには間に合いそうだ。

 

彩「凄いなぁ、勇者部は。自分がこの中の一員だなんて、未だに信じられないよ。」

 

りみ「大袈裟だよ、彩さん。私達で皆さんのサイズを測りに行きましょう。」

 

彩「うん!えへへ、りみちゃんについて行くよ!」

 

 

---

 

 

花咲川商店街メインストリート--

 

いよいよパレード本番となり、勇者部達がそれぞれ自作した衣装を見に纏って練り歩く時がやって来た。トップバッターは香澄、有咲、美咲の3人。

 

香澄「うっわあーー!すっごい人だかり!みんなこっちを見てるよ、有咲!」

 

有咲「うぅ…は、恥ずかしい……。な、何だよこの羽は……。」

 

3人が着ている衣装のコンセプトは天使をモチーフにしている。香澄がピンク、有咲が赤、美咲が紫を基調としている。

 

美咲「ただの天使じゃ無いよ。花の天使です。」

 

香澄「デザインすっごく可愛い!さすが美咲ちゃん率いる衣装班だね!」

 

美咲「ううん、みんなのお陰だよ。全員の力を1つに合わせて出来たのが今回の衣装だからさ。」

 

有咲「……確かにな。この歓声、悪くない。」

 

香澄「有咲ったら素直じゃないんだからぁ。」

 

有咲「う、うるせぇーーー!香澄ぃーー!」

 

美咲「あはは!……やっぱりこの世界に来て良かったよ。」

 

 

--

 

 

次に登場したのは牛込姉妹と燐子、薫の4人。4人の衣装は軍服をベースに可愛さとカッコ良さの融合をイメージしている。

 

りみ「私、軍服っぽいのは似合わないと思ってましたけど、これは可愛くて好きです!」

 

燐子「そうですね…。あこちゃんが頑張って私の為に飾りを作ってくれたのが嬉しい…!」

 

りみ「カッコ可愛いって、凄い事ですよね!燐子さんにも薫さんにも似合うっていうのが驚きです。」

 

艶やかの中にカッコ良さを兼ね備えた薫の姿を一目見ようと、花咲川の生徒達も薫目掛けて桃色の声援を送っている。

 

ゆり「薫のファンって本当に沢山いるんだね。」

 

薫「ああ。大勢の子猫ちゃん達に見てもらえるなんてとても光栄だよ。」

 

りみ「めっちゃカッコイイです……。」

 

ゆり「ホント、女の子に大人気だよね。そっち系の劇団に入ればトップスターになれちゃうよ、きっと。」

 

薫「そうかい?ゆりがそうして欲しいのなら、検討してみるのもありかもしれないね。」

 

ゆり「あはは、冗談だよ、冗談。」

 

 

--

 

 

三組目は紗夜、あこ、夏希、沙綾だ。4人がモチーフにしているのはアラビアンナイトである。紗夜と沙綾は踊り子、あこと夏希はシンドバッドの様な衣装を着飾っていた。

 

紗夜「ま、まさかこれを私が着る事になるなんて…。」

 

夏希「紗夜さん、ダメですよ。ほら、笑顔笑顔!沙綾も頑張ってるんですから!」

 

小沙綾「……みんなが喜んでくれるのなら、頑張らないと…!」

 

あこ「沙綾ちゃん!?右手と右足が同時に出てるよ!落ち着いて落ち着いて!」

 

紗夜「そ、そうですね…私も勇者、私だって……フフ…フ…フフフ。」

 

紗夜はまるで悪い魔女の如く不敵な笑みを浮かべ手を振るのだが、それが観衆の心を掴んだのか、ウットリとしている人もちらほら。

 

あこ「紗夜さんも随分と出来る様になりましたね。元の時代だったら、絶対に考えられないですもん!」

 

小沙綾「私だってそうです…。ここに来てから自分の中で色々な変化が起きました。」

 

夏希「そうだよね。真面目だった沙綾がこうして人前に出て手を振ってるんだもん。」

 

小沙綾「うぅ……言わないで…。」

 

沙綾の顔は火が出そうな程真っ赤になっていた。

 

あこ「初めてこの世界に来てから……この戦いももうすぐ終わるけど、あこは思うんです。毎日、目が覚める度に寮の部屋でね。あぁ、まだここにいられて良かったなって。」

 

御役目がもうすぐ終わろうとしている。いつか終わる瞬間がやってくる。楽しい夢の様な世界から帰らないといけないという事に目を背けながらも、勇者達は前に進んでいかなければならない。

 

紗夜「私もです。」

 

あこ「え?」

 

紗夜「同じです。寝る時は、起きたらこの世界が全部夢だったって思い知るのではないかと……。ですが、起きたらまたそこは寮で、学校へ行けばいつもの皆さんが、笑顔で迎え入れてくれて……。ああ、良かったって…そう思うんです。」

 

夏希「紗夜さん…。」

 

紗夜「私は………この世界が、勇者部の皆さんが………好きです。」

 

あこ「さ、紗夜さん……。あこも紗夜さんが大好きですっ!!」

 

紗夜「ちょ、宇田川さん、くっつかないでください!宇田川さん!」

 

小沙綾・夏希「「あははっ!!」」

 

いつか終わると解っていながらも、ここでの出来事は全部思い出になり、忘れたくても忘れられないものとしてみんなの心に刻まれて行く事となるだろう。例え思い出せなくなったとしても、それは勇者達の力になると信じて--

 

 

 

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