戸山香澄は勇者である   作:悠@ゆー

186 / 326
後編です。

3人が歩む先は希望が絶望か--

人の数だけ物語はあります。





最高のズッ友

 

 

ショッピングモール--

 

香澄と沙綾は夏希の夢を叶える準備の為、ショッピングモールで買い物をしていた。

 

香澄「必要な物は確か……お米とお花だっけ?」

 

中沙綾「そうだね。後は高嶋さん達が用意してくれるって。」

 

香澄「でも……ふふっ。」

 

香澄は沙綾を見ながらはにかんだ。

 

中沙綾「ん?どうしたの?」

 

香澄「やっぱさーやって凄いんだなって。」

 

中沙綾「凄いって?……あぁ、夏希の夢を覚えてたって事?友達なら当たり前だよ。」

 

香澄「それはそうだけど、やっぱさーやは凄いよ。」

 

中沙綾「大袈裟だよ。自分が楽しいからこんな事してるんだから。」

 

沙綾はそう言って謙遜する。

 

香澄「そんなに楽しみなの?夏希ちゃんの花嫁姿。」

 

中沙綾「もちろん!」

 

そんな事を話しながら、香澄達は買い物を進めていった。

 

 

---

 

 

同時刻--

 

高嶋、紗夜、あこ、燐子は別の場所で買い物を進めていた。

 

高嶋「髪留めとか、小物はこれで全部かな?」

 

燐子「そうですね…。お米とお花は、戸山さん達が…。」

 

紗夜「ライスシャワーに生ブーケ…かなり大掛かりにやるんですね。」

 

燐子「海野さんの夢を良い形で叶えてあげる為ですから…。」

 

あこ「ねえ、りんりん?お米は買ったけど、おかずとかは買わないで良いの?」

 

燐子「あこちゃん…。このお米は食べる用じゃなくて…撒く為の物だよ。」

 

あこ「そっかぁ…。ご馳走は出ないんだね。」

 

あこがしょんぼりする。

 

高嶋「メインは食事じゃなくて、写真を撮る事だからね。」

 

そんな時、

 

高嶋「でも、結婚かぁ……。」

 

高嶋がボソリと呟いた。

 

燐子「どうかしましたか…?」

 

高嶋「もし私だったらって思ったんだ。深い意味は無いよ。」

 

紗夜「も、もし………。」

 

紗夜は高嶋のその言葉に生唾を飲み込む。

 

あこ「もしって、香澄は結婚したくないの?」

 

高嶋「うーん、そう…かな?」

 

紗夜「…っ!?」

 

動揺する紗夜を他所に高嶋は話し続ける。

 

高嶋「あっ、違うかな?…もし私が同じ事をするなら、新郎新婦でお揃いのドレスを着たいなって!」

 

紗夜「……っ!?」

 

高嶋「なーんてね!」

 

燐子「それは…素敵ですね…。」

 

紗夜「ま、任せてください…!!」

 

突如紗夜が前のめりで叫び出した。

 

あこ「うわっ!び、びっくりしましたよー…紗夜さん。」

 

高嶋「ん?紗夜ちゃんに何を任せるの?」

 

紗夜「そ、それは………その………。何でもないです……。」

 

紗夜は顔を真っ赤にさせて、話をはぐらかした。

 

燐子(紗夜さん……お察しします…。)

 

高嶋「じゃあ、残りの物も早く買って帰ろうか。」

 

紗夜「そ、そうですね…。」

 

4人は再び歩き出した。

 

 

---

 

 

同時刻、勇者部部室--

 

部室ではゆりとりみが当日のタイムテーブルの最終確認をしていた。

 

ゆり「………こんなものかな。」

 

りみ「着替え用の姿見とか、ドライヤーも用意出来てるよ。」

 

ゆり「ありがとう、りみ。……はぁ。」

 

ゆりがため息を吐くと、そこに薫がやって来る。

 

薫「どうしたんだい?ため息を吐くと幸せが逃げてしまうよ。」

 

ゆり「こうして結婚式の準備なんかしてると、いつかりみもお嫁に出す日が来るのかなぁ…ってね。」

 

りみ「私より先にお姉ちゃんじゃないかな?」

 

そこに有咲と美咲もやって来た。

 

有咲「本当仲良いよなー。姉妹じゃなかったら結婚しそうな勢いだよ。」

 

ゆり「それも良いかもねー。」

 

美咲「いや、それは無理ですよ……。」

 

そんな中、1人間に受ける人物が--

 

 

薫「神世紀にもなるとそんな事も出来るんだね……。ふふっ、私がゆりを娶りたいくらいだよ。」

 

ゆり・りみ・有咲「「「………え?」」」

 

薫の一言で部室が一瞬で凍りつく。

 

美咲「あ、あのー………薫さん?」

 

薫「君は誰がどう見ても素晴らしい良妻賢母だよ。ゆりの料理なら毎日でも食べたいくらいさ。」

 

ゆり「ぇえ…?ぅぇえ!?なっ、ちょっ、ええっ!?」

 

聞いたことのない声がゆりの口から発せられる。

 

りみ「か、薫さん…それって…い、今のって……。」

 

美咲「………どっからどう見てもプロポーズだよ……。」

 

有咲「ちょっ、ちょままっ!!待てぇ!!」

 

有咲は支離滅裂になりながらも薫に突っ込む。

 

美咲「市ヶ谷さん落ち着いて…深呼吸深呼吸。」

 

りみ「きゃおりゅさっ、おねっちゅわっ!ちょわっ!」

 

さすがのりみもこれにはテンパってしまう。

 

美咲「りみまで!?」

 

周りのガヤを無視して薫は続ける。

 

薫「ゆり、私は……。」

 

ゆり「は、はひっ!?」

 

薫「雑煮が好きだ。」

 

美咲「お雑煮かーい!」

 

ゆり「わ、わかりますた……。」

 

有咲「分かるなーーーーー!!」

 

りみ「お姉ちゃーーーーん!!!」

 

美咲「はぁ…誰か助けて…。」

 

もう美咲には突っ込む余力も残っていなかった。

 

 

---

 

 

撮影当日--

 

何も知らされず、ウェディングドレスに身を包んだ夏希は驚きで呆然としていた。

 

夏希「え…どういう事…?みんな…?え、これって……!?」

 

中沙綾「元の世界に帰る前のプレゼントだよ。」

 

中たえ「夏希の夢を叶えたんだ!」

 

香澄「夏希ちゃんの夢がお嫁さんだって聞いたから、帰る前の思い出作りにと思ったんだ。」

 

日菜「内緒にするの大変だったよー。」

 

夏希「今朝…、急におたえが来て、浜辺で撮影会だとか…意味が分からなくて…で、でも…こんな事…私の為に?ど、どうしよう…。」

 

千聖「せっかくの晴れ舞台なのだし、いつもよりお淑やかにしていないとね。」

 

夏希「は、はい……。けど…私変じゃないかな?ウェディングドレスなんて初めてで…。」

 

夏希は頬を抓るが、痛みを感じてを離す。

 

有咲「そりゃそうだ。だけどちっとも変じゃねーぞ。自信を持って。」

 

夏希「あ、ありがとうございます有咲さん…。みんなも…皆さんも本当に…。」

 

香澄「みんな行くよー!それー!!」

 

香澄の合図で皆が夏希にライスシャワーをかける。それと同時に扉の奥からタキシードに身を包んだたえがやって来た。

 

小たえ「お嫁さん、お手をどうぞ。」

 

夏希「お、おたえ!?その格好!」

 

リサ「じゃあ……新郎新婦の2人は…誓いのキスを……行っちゃって!!」

 

カメラを構えノリノリでリサが式を進行していく。

 

夏希「えええっ!?」

 

小たえ「お嫁さん、覚悟は良い?さあ、目を閉じて…。」

 

夏希「お、おたえ……ゴクッ。」

 

夏希は息を呑み目を閉じる。

 

たえは夏希のおでこにキスをした。

 

夏希「お…おでこか…。ビックリしたぁ…。」

 

目を開けた夏希の顔は真っ赤だった。

 

彩「夏希ちゃん、感想は?」

 

夏希「あ、あの…確かに私、前に沙綾とおたえに、夢がお嫁さんだって言ったけど…まさか2人がそれを覚えてるなんて全く思ってなくて、だから…ちょっと自分でも何を言ってるのか良く分からないですけど……最高の気分です!」

 

夏希は笑顔で答えた。

 

香澄「でもね!この結婚式にはまだ続きがあるんだよ?夏希ちゃん。」

 

中たえ「お色直しタイムだよ!」

 

全員は場所を神社へと移動する。

 

 

---

 

 

神社--

 

夏希は白無垢にお色直しを行い、その隣に今度は紋付袴姿の沙綾がやって来る。

 

小沙綾「夏希、とっても綺麗だよ。」

 

夏希「今度は沙綾!?でも、これって逆じゃない?」

 

小沙綾「今日はこれで良いんだよ。私達、夏希にお嫁さんになってもらいたかったんだから。」

 

夏希「でも、私みたいな暴れん坊が女らしい沙綾のお嫁さんなんて…。」

 

小沙綾「何言ってるの。私のお嫁さんは夏希しかいないんだから。」

 

夏希「ふぁ……。」

 

沙綾のその一言で、再び夏希の顔が赤くなり、一筋の涙が。

 

ゆり「ダメダメ、涙はまだお預けだよ。綺麗な顔で写真を撮らないとね。」

 

夏希「……はいっ!」

 

いつもの元気は身を潜め、しおらしさが前面に出ていた。

 

高嶋「とっても幸せそう……。綺麗だね、夏希ちゃん。」

 

紗夜「そうですね…。あの様な顔もするんですね……。」

 

リサ「はいはい、みんな並んで並んでー!」

 

最後に全員で写真を撮って終了となる。

 

 

---

 

 

全ての段取りが終了し、夏希も普段着へと着替えて戻ってきた。

 

夏希「リサさーん!撮った写真見せてください!」

 

夏希はリサに駆け寄って今日撮った写真を確認した。

 

夏希「あの…1つだけ、お願いがあるんですけど……。」

 

リサ「どうしたの?」

 

夏希「これ、現像してもらっても良いですか?」

 

リサ「……分かった。帰るまでには間に合わせるよ。」

 

リサは少し考えたが、敢えて何も言わず了承した。夏希も分かっている筈だと思ったからだ。

 

夏希「ありがとうございます!沙綾、おたえ!私綺麗に写ってるよ!」

 

小沙綾「どれどれ?」

 

小たえ「見たい見たい!」

 

沙綾とたえも夏希に呼ばれて写真を確認する。

 

 

--

 

 

そんな3人の姿を少し離れた所で沙綾とたえが見ていた。

 

中たえ「夏希……良かったね……。」

 

中沙綾「…そうだね、見て、あんなに笑ってるよ……。」

 

沙綾とたえの瞳から涙が溢れる。

 

香澄「良かったね、さーや、おたえ。夏希ちゃん、あんなに喜んでるよ。」

 

中沙綾「そうだね。」

 

中たえ「大成功だよ。」

 

中沙綾(夏希…今の夏希なら本当に運命を変えられそうって思えてくるよ…。)

 

中たえ(私達はここで過ごせた日々をずっと胸に刻んでいくからね…。)

 

 

---

 

 

狭間の空間--

 

小沙綾「あの時の夏希のドレス姿、本当に綺麗だったよね。」

 

小たえ「うんうん!私もいつかはあんなドレス着てみたいよ。」

 

夏希「おたえは家にドレスいっぱい持ってるでしょ。」

 

小たえ「あははっ!それもそうだね!」

 

小沙綾「っ!?夏希、おたえ!」

 

沙綾は奥を指差す。差した先には出口と思われる光が見えた。3人は歩き続ける。

 

 

--

 

 

数分歩き続け、3人は出口の前までやって来た。

 

小たえ「……。」

 

小沙綾「……。」

 

夏希「……。」

 

3人は無言で互いを見つめ合う。

 

小たえ「ここを抜けたら…遠足の前日なんだよね…。」

 

夏希「そうだね…。」

 

小沙綾「……夏希……っ!」

 

沙綾が夏希に話しかけようとした時、それを夏希が遮った。

 

夏希「あっちでも言ったでしょ!運命なんか変えてみせるって!私を信じて!……ね。」

 

 

本当は夏希が1番怖い筈なのに--

 

 

それでも夏希は誰よりも笑顔で2人を抱きしめた。

 

夏希「私達は?」

 

小沙綾・小たえ「「……ズッ友!!」」

 

3人は一歩を踏み出した--

 

 

3人は光の中へ消えていく--

 

 

夏希が持つ写真には教会と神社が写ってるだけだった--

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。