戸山香澄は勇者である   作:悠@ゆー

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薫編です。

薫がこの世界に来る前の話。そこでは2人の友がいたのだった……。





幸せと幸運の笑顔を

 

 

狭間の空間--

 

真っ直ぐに続く光の道を、薫はただ1人出口に向かって歩き続けていた。同じ時代に生存反応があった四国と北海道。そこで生き抜いてきた勇者達や未来の勇者達と共に、薫は造反神の試練を乗り越える。

 

薫「…初めはどうなるかと思っていたけど、こうしてここまで来れたのは、"彼女"の思いがあったからかな……。最後にみんなに話せて良かったよ。彼女の--」

 

薫「こころの思いを……。」

 

元の時代へ戻る途中、薫はみんなと過ごした最後の時を振り返っていた--

 

 

---

 

 

勇者部部室--

 

ゆり「それじゃあ、次は誰にしようか。」

 

小学生組の思い出作りが終了し、次の順番を決めていた時だった。

 

薫「1つ良いかい?」

 

薫が議論を遮った。

 

ゆり「どうしたの、薫?」

 

薫「私はみんなと御役目を通していく中で、沢山の思い出を作って来れた。だから、私に関しては大丈夫だよ。」

 

香澄「でも……。」

 

薫「代わりに、私の話を聞いて欲しいんだ。私がここに来る前の事やそこで出会った1人の少女についてを……。」

 

他のみんなは少し悩んだが、本人の希望を尊重して薫の話を聞くことにした。

 

 

---

 

 

沖縄、南城市--

 

沖縄で育ってきた薫は海が好きだった。小さい頃から生活の一部に海があったからだ。海は薫の人生、人格の一部と言っても過言ではない。

 

 

運命の日である2015年の7月30日--

 

 

その日も薫は海に揺られながら過ごしていた。

 

 

---

 

 

2015年7月30日--

 

?「薫くん、今日も海に入るの?危なくないかな?他の所じゃ災害が起こってるみたいだし……。」

 

薫「ああ、そのニュースなら見たさ。……だけど、ここの海はいつもの様に穏やかだから心配無いさ。心配してくれてありがとう、はぐみ。」

 

 

北沢はぐみ--

 

 

薫の同級生であり、いつも一緒にいる仲間の1人である。小柄でボーイッシュなオレンジ色の髪が特徴的だ。

 

 

はぐみ「本当?海がそう言ってるの?」

 

薫「ああ、語りかけてくるんだ。だから大丈夫さ。そうだろ、こころ。」

 

こころ「そうね。薫には海の神様がついているもの!」

 

 

弦巻こころ--

 

 

こころは薫の幼なじみで、はぐみとは対照的にロングの金髪が目立つ女の子である。薫ははぐみ、こころを含めた3人で毎日のように海を満喫し過ごしていた。

 

 

はぐみ「薫くんが海の声を聞けるようになったのっていつ頃からだっけ?」

 

薫「確か小学3年生の頃だったかな。海で浮かんでいたら声が聞こえたのさ。」

 

薫が海で聞いた声。それは優しくも温かい、そんな声だった。

 

はぐみ「薫くんはやっぱり凄いなぁ!あっ、そうだ。今日はお祭りの練習があるんだった!それじゃあね!」

 

はぐみは用事を思い出し、足早に去って行く。はぐみと別れた薫はいつもの様に海に入り、空を眺めた。こころはいつもそんな薫を砂浜から見つめている。こころは海から薫を眺める事が好きなのだ。薫が海に来る時は必ず行くスポットが決まっていた。町から少し離れた入江、静かでマリンジェットやウェイクボードも来ないこの場所が薫のお気に入りなのだ。

 

 

薫が波に揺られているその時--

 

 

薫(おや、誰か今私の名前を呼んだ様な…?)

 

薫はこころの方を見るが、こころがいる距離からでは幾ら何でも聞こえる筈が無い。寧ろ、声は海の中から聞こえている。その声に薫は聞き覚えがあった--

 

その声は小学3年生の頃、海で聞いた声と全く同じだったのだ。そう思った薫は海の中へと潜る。

 

薫(誰だい、私を呼んでいるのは?姿を見せてくれ。)

 

その時、海中が光に包まれる--

 

 

薫(こ、これは………!!)

 

光が薫を包み込む--

 

 

--

 

 

次の瞬間、薫は白い装束を身に纏っていたのである。

 

薫「これが私なのか……。」

 

これにはこころも驚き駆け寄ってくる。

 

薫「見てくれ、こころ。気がつけば私はこの様な姿になっていたんだ。」

 

こころ「凄いわね、薫!きっと海の神様が薫にくれたのよ!………はっ。」

 

その時、こころの頭の中に何やら風景が浮かんでくる。

 

薫「どうしたんだい、こころ?」

 

こころは頭を抑え、ある方向を指差して話し出す。

 

こころ「……あの方向。向こうに何か白いものが次々と人を襲っているの………。」

 

こころが指した方向は町。薫は急いで町へと駆け出した。

 

 

---

 

 

南城市、市街地--

 

どうやら薫が身に纏っている装束は着ている者の身体能力を上げる力があるのか、薫は物凄い速さで町へと辿り着いた。

 

薫「為すべき事は、あの時海の中で聞いた……。あの光はきっと…海の神様なんだろうね。」

 

薫は神の存在を疑う事は無かった。元来、薫の地域には神聖な聖域が存在していたからだ。町は電柱が折れ、道路はひび割れ、まるで災害が起こったかの様な状態だった。

 

はぐみ「な、何これ……?」

 

練習の為に戻ってきていたはぐみに怪我は無かったが、あまりの町の変わり具合に愕然としていた。だが、そこへ白い異形の化け物がはぐみを襲おうと近付いて来ていた。

 

薫「危ない、はぐみ!」

 

薫は持っていたヌンチャクを使い、化け物を吹き飛ばす。

 

はぐみ「ありがとう、薫くん……って、どうしたのその格好?」

 

薫「下がっていてくれ、はぐみ。これが海の神が言っていた敵……私が倒すべき存在。」

 

はぐみ「薫くん……凄い………。」

 

薫「はぁーーーーっ!!」

 

薫ははぐみを下がらせ、異形の化け物へと攻撃を繰り出す。

 

はぐみ「薫くん……神様みたい!」

 

薫「神様の力を借りているだけだよ。私は瀬田薫、そこは変わらないよ。」

 

はぐみ「そ、そっか……。」

 

薫「だから怖がる必要は無いよ。」

 

はぐみ「驚いてるだけだよ、怖くない…怖くないよ。それより花を纏って綺麗って感じ!」

 

薫「花、か……。」

 

その時、異形の化け物が更にやって来る。

 

薫「私が良いと言うまで隠れてるんだ。……人類の敵…儚く散れ!」

 

 

---

 

 

これが後の"7.30天災"と呼ばれる災害で起こった出来事だった。あれから世界は大変な事になり、大勢の人の命が白い異形の化け物に奪われてしまう。薫の地元の被害も大きかった。今まで普通に暮らしていた筈が、一瞬にして絶望が支配する世界へと変わってしまったのである。だが、こんな世界でもこころだけは笑顔を絶やさず毎日を過ごしていた。

 

 

最初はこころを毛嫌いする人が大多数だった--

 

 

この状況で笑っていられる方がおかしい、そう思うのは至極当然の事である。それでもこころはどんなに毛嫌いされていても、笑顔を絶やさない。

 

 

--

 

 

何日か経った頃、周りの子供達に笑顔が戻った。こころの笑顔が子供達を変えていったのである。

 

こころ「そんな悲しい顔をしないで。笑顔になりましょう!笑顔になれば自然と幸せがやって来るのよ!」

 

子供達に笑顔が戻ると、今度はその親に笑顔が戻り、その親を通して次第に町に笑顔が戻り始めたのである。

 

市民A「あんなに笑顔で接されたら、落ち込んでるのが馬鹿らしくなってくるよ。」

 

市民B「そうだな。何もしないでいるより、笑っていた方が活気が戻る。」

 

そのせいもあってか、南城市では"天空恐怖症候群"に罹る者が1人もいなくなり、罹っていた人も、笑う事によって、症状が緩和されてきていたのだ。

 

 

--

 

 

薫はそんなこころの事を尊敬していた。

 

薫(私は戦ってこの町を守る事しか出来ない……。だが、こころは私には出来ない事が出来る……。あぁ、なんて儚く素晴らしいんだ。)

 

そして何故だか、こころは異形の化け物の存在を察知する事が出来た。こころが化け物がやって来る場所を示し、それを基に薫が化け物を退ける--

 

そんな風に南城市を守っていたのだった。

 

 

---

 

 

とある日--

 

おばあ「海底を宮としている神からの助力。それが勇者…瀬田薫に宿りし力の正体さね。」

 

市民A「神の力が宿った、か…。おばあが言うからには間違いないだろうけど。」

 

おばあ「深く考える必要は無いさね。重要なのは化け物を倒せる力を持っているのが瀬田薫。そしてその化け物を察知出来る力を持つ者が弦巻こころって事さね。」

 

市民B「こころにそんな力が…。なんだか不思議な子だとは思っていたけど…。それにしても、これからどうなるんだ?」

 

市民C「たった2人の少女達に守られていくのか。でも……。」

 

町に活気が戻ったのは確かだが、このままではどうしようもないのも事実である。大人達はおばあの元に集まって会議をしていた。

 

おばあ「そうさね…。瀬田薫と弦巻こころ……いや、薫様とこころ様には神様が味方している……希望はあるさね。」

 

市民D「こころ様の尽力もあって、みんなが暴走せずにいるのは助かっていますね。」

 

おばあ「お二方は今何処さね?」

 

市民A「稽古が終わったから、海ですかね?こんな時でも海に入るのは欠かさないんですね。」

 

市民B「……だからこそ海の神に選ばれたのかも。」

 

その時、1人の市民が会議場に駆け込んで来る。

 

市民E「大変だ!白い化け物が、薫様がいる海に向かってる!」

 

おばあ「っ!!」

 

 

---

 

 

南城市、町外れの海岸--

 

その頃、薫はいつものように海に入っていた。こころもそんな薫の様子を海岸から見ている。

 

薫「………。」

 

突然、こころが叫び出した。

 

こころ「薫っ!!」

 

こころの声に薫が反応する。

 

薫「っ!?敵が来たんだね。助かったよ、こころ!!」

 

薫は勇者装束に着替え、やって来る敵を見据える。

 

薫「あんなに沢山…。直接私を狙ってきたのか。」

 

こころ「薫、大丈夫?」

 

こころは心配しているが、不思議と薫は落ち着いていた。

 

薫「安心するんだ、こころ。君はいつも笑顔でいてくれ。それだけで私は頑張れる。」

 

こころの頭に手を置き、薫は敵に向かって駆け出した。

 

薫(私を狙って来るなら、着いておいで。)

 

敵を引き付けた薫は海に潜る。化け物も後を追って海に飛び込んでいった。

 

薫(どんなに大量の敵が来たとしても、海の中でなら負ける気はしないよ。)

 

薫は海中で動きが鈍った化け物をヌンチャクで次々と倒していく。

 

 

--

 

 

全ての敵を倒し終え、薫が海岸に戻って来ると、はぐみが駆けつけていた。

 

はぐみ「あ…薫くん!大丈夫だった!?」

 

薫「私なら大丈夫だよ。海でなら負けないさ。」

 

こころ「さっすが薫ね!」

 

薫「こころが教えてくれたお陰さ。ありがとう。」

 

 

---

 

 

襲来してくる敵の数が増えてきた事により、薫とこころは町をパトロールするようになった。

 

薫「…このあたりに異常は無いみたいだね。」

 

町では2人がやって来ると、市民が労うようになっていた。

 

市民D「薫様、本日も御役目ありがとうございます!」

 

薫「薫様……。中々その呼び方には慣れないね。」

 

こころ「そうね。」

 

薫「次はもう少し西へ行ってみようか、こころ。」

 

こころ「そうしまし……っ!」

 

移動しようとした時、突然こころがふらついてしまう。

 

薫「っと!大丈夫かい、こころ。少し休んで行こうか。」

 

こころ「ごめんなさい、薫。」

 

こころは笑顔で薫に謝った。そこにはぐみがやって来る。

 

はぐみ「……あっ、薫様とこころ様!パトロールですか?」

 

薫「はぐみも薫様なんだね…。いつも通りで構わないのに。」

 

はぐみ「勇者様に様付けしないと怒られちゃいますから!」

 

はぐみは真面目な子なのだ。市民全員が2人を神格化してしまい、薫に変わらず接してくれる人はこころだけになってしまった。

 

はぐみ「那覇の方には白い怪物が沢山来てるみたいですけど…。」

 

薫「だけど、私達の地元にはあまり近づいて来ないね。」

 

こころ「確かにそうね。世界遺産にもなってる聖域があるからかしら?」

 

薫「海の神が何かしらの力で守護してくれているんだろうね。」

 

はぐみ「海側は比較的安全だもんね。」

 

薫「だけど、敵が来ない訳じゃない。侵入してくれば私が倒すよ。」

 

こころ「そうね!薫があの敵を倒せば町のみんながもっと笑顔になるわ!」

 

2人はみんなの笑顔の為に戦っているのである。その時、

 

こころ「っ!?薫!向こう!」

 

こころは町の西側を指差した。

 

薫「敵が来たんだね。ありがとう、こころ!2人とも、行って来るよ、奴等をこの町には近付けさせない!」

 

はぐみ「頑張ってね…。」

 

こころ「負けないで、薫!」

 

そう言って、薫は飛び出して行った。

 

 

---

 

 

数日後--

 

薫「今日は敵は来ないみたいだね。」

 

こころ「それは良い事だわ!」

 

薫「そうだね。こころには何度も助けられたよ。」

 

こころ「私もよ、薫。"世界を笑顔に!"これが私達の使命だもの。」

 

 

"世界を笑顔に"--

 

 

2人が心に決めた事である。その誓いを胸に2人は戦い続けてきた。

 

薫「この海の先、四国には生き延びている人間が多くいると聞いたが、同じ様に戦っている人達がいるんだろうね。」

 

こころ「そうね。いずれはそこの人達も笑顔にしていかないとね!」

 

薫「そうだね。」

 

こころ「ねぇ、薫。」

 

薫「何だい、こころ?」

 

こころ「もし……。もしね?私がいなくなっても、薫は世界を笑顔にする為に戦い続けてちょうだい!」

 

薫「急にどうしたんだい、こころ。縁起でも無い事を。」

 

こころ「約束して!」

 

こころは真っ直ぐな瞳で薫を見つめながら話している。そこには冗談の一欠片も感じなかった。

 

薫「……分かった、約束しよう。私は世界を笑顔にする為に戦うと。」

 

 

---

 

 

同時刻、南城市市街地--

 

市民A「本土とは完全に連絡が取れなくなってしまった。でも……。」

 

市民B「四国が大きな避難場所になっている。私達の生存反応も認知されている。」

 

市民C「四国に行けば安全という訳か。しかしどうやって移動する?」

 

市民D「九州から陸路……は危険だろうな。連絡が取れないから。」

 

おばあ「あの白い異形は、人が多い地域によく出るって話さね。思い切って海路を使ってそのまま四国に行った方が良いさね。全員の脱出は難しい……そもそも私は離れる気なんて無いさね。」

 

市民達はここから四国に避難すべきか、留まるべきかについて議論していた。

 

市民A「大体無事に着ける保証が無い。」

 

市民D「それなら瀬田様と弦巻様がいるここにいた方が。」

 

市民E「あぁ全然良い。私も残りたい。物資が少なくなってきても…神が、薫様とこころ様がいる。」

 

市民B「その物資の点から考えても、四国に行く事は挑戦した方が良いと思う。」

 

市民E「しっかり考えていこう。お2人が頑張っておられるんだ。私達だって。」

 

議論は平行線をたどっていた。

 

 

---

 

 

南城市、海岸--

 

こころ「薫!あっちからも敵よ!」

 

薫「そうか、待っていてくれ!」

 

薫が敵を倒す為駆け出す。

 

こころ「薫、頑張って……。」

 

こころは薫を見送る事しか出来ない。だからこころに今出来る事、笑顔を作って薫を送り出す。

 

こころ「っ!?」

 

薫が飛び出してからすぐ、こころは反対方向から来る敵の気配を察知した--

 

 

---

 

 

南城市市街地--

 

 

市民C「本当、ここにきて皆が冷静でいられるのも、瀬田様と弦巻様のお陰、だね。」

 

おばあ「初めは信仰のお陰で皆が冷静だったさね。でも今、冷静なのは間違いなくお2人方のお陰さね。」

 

 

---

 

 

南城市、海岸--

 

薫「はぁ……はぁ………。っ!?」

 

息を切らしながら薫が戻って来る。いつもより更に敵の数が多かった為だ。だが、所々に怪我を覆いながらも薫は敵を打ち倒した。

 

 

その時だった--

 

 

薫が目にしたのは、背後から白い異形が今にもこころを襲う瞬間だったのである。

 

薫「こころっ!!!逃げるんだ!!」

 

薫は痛みをおして叫び無我夢中で駆け出す。

 

はぐみ「っ!?薫くん!?こころん!?」

 

たまたま薫達を探しに近くまで来ていたはぐみも薫の叫びを聞いて走り出した。

 

 

迫り来る異形--

 

 

駆ける2人--

 

 

だが、間に合わない--

 

 

先の戦いでの疲労が薫の足を鈍らせる。だがこころは逃げもせず、その顔に恐怖は微塵も無かった。

 

 

 

こころ「ぐっ………!」

 

 

 

 

異形がこころに噛み付き、血が薫の顔にかかる--

 

 

 

 

薫「……ここ…ろ……。っ……うああああああっ!!!」

 

薫は怒りのままに異形を薙ぎ払う。周りの敵を殲滅するまでにそう時間はかからなかった。

 

 

--

 

 

薫「こころ!こころ!!」

 

薫は血だらけのこころを抱き上げ呼びかける。そこへはぐみもやって来た。

 

はぐみ「薫くんどうしたの……って、こころん!!」

 

はぐみもこころに駆け寄る。

 

薫「待っていてくれ、直ぐに医者を……。」

 

だがこころは、

 

こころ「いい…のよ……薫……。こうなる事は…分かっていた……事…だから…。」

 

薫「えっ…?」

 

そこで薫は前にこころが言っていた事を思い出す。

 

 

--

 

 

こころ「ねぇ、薫。」

 

薫「何だい、こころ?」

 

こころ「もし……。もしね?私がいなくなっても、薫は世界を笑顔にする為に戦い続けてちょうだい!」

 

薫「急にどうしたんだい、こころ。縁起でも無い事を。」

 

こころ「約束して!」

 

薫「……分かった、約束しよう。私は世界を笑顔にする為に戦うと。」

 

 

--

 

 

こころは分かっていたのだった。自分が死んでしまうという未来に。

 

薫「……こころ…。」

 

薫から溢れる涙がこころの頬に落ちる、

 

こころ「薫……笑顔よ……。」

 

薫「……笑……顔…。」

 

こころ「そう……笑顔よ……。あなたが笑顔でなければ……この町は…ダメになってしまう……。」

 

薫・はぐみ「「………。」」

 

こころ「はぐみ……。」

 

はぐみ「何……こころん…。」

 

こころ「薫の側に……いてあげて……。笑顔で……薫を……支えてあげて………。」

 

はぐみ「……分かったよ、こころん!」

 

はぐみは笑顔で答えた。

 

こころ「世界を……笑顔に………。薫……それをわ…れな……でね……。」

 

こころの目が閉じる。こころは最後の希望を薫に託し息を引き取った。

 

薫「こころ………。誓うよ、世界を笑顔に。その役目を私が……必ず。」

 

はぐみ「薫くん……。」

 

 

---

 

 

勇者部部室--

 

薫「それから少しした後、突然光に包まれてこの世界にやって来た……という訳さ。」

 

りみ「そうだったんですね……。」

 

薫「だからみんなも忘れないでいて欲しいんだ。笑顔を……。こころが残してくれたものを……。」

 

香澄「……分かりました!私忘れません、笑顔を!」

 

花音「私も…。戦いは怖いけど、せめて笑顔だけは絶やさない様にするよ!」

 

美咲「そうだね、笑う門には福来るっていうもんね。」

 

薫「みんな……ありがとう。君達に会えて、本当に良かった!」

 

 

---

 

 

狭間の空間--

 

光の終点が見えてきた。

 

薫「こころ…君が託してくれた想いを、時代を超えた友が繋いでくれると約束してくれたよ……。記憶は消えてしまうだろうけど、想いまでは消えない……そう信じている。」

 

薫は出口に向かって歩みを進める。

 

 

その先に待つのは希望か絶望か--

 

 

どちらに辿り着いたとしても、薫は笑顔を絶やす事は無いだろう。

 

 

心友に託された想いがある限り。

 

 

 

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