季節感めちゃくちゃになってるかもですが、そこは大目に見てください……。
狭間の空間--
蘭とモカは光の中を歩いていた。
モカ「…最後に良い思い出出来た、蘭?」
蘭「うん。みんなで頑張って繋いだバトン。あの光景は忘れたくても忘れられそうにないや。」
蘭は自分の右手に目をやる。
蘭「私達の後ろにはみんながいる。……私が先頭を走らないとね。」
モカ「そうだね。……ずっと見てるよ。」
蘭「ありがと、モカ。」
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勇者部部室--
香澄「次は蘭ちゃんとモカちゃんの番だよ!」
蘭「え、私達?」
モカ「何が良い、蘭?」
蘭「考えて無かったな…。」
蘭は窓から外の景色を眺めた。外は夏の日差しが眩しく照りつけている。
蘭「ん、あれは……。」
蘭はグラウンドに目をやった。そこでは花咲川中学の生徒がリレーの練習をしている。
モカ「何か見つけたの?」
そこへモカもやって来た。
モカ「リレーの練習だね。確かもうすぐ体育祭だったよね。その練習かな?」
間も無く花咲川中学では体育祭が開催される。中でも目玉は今年から開催される事になった部活対抗リレーだ。
蘭「体育祭か……。あっ……!」
蘭が何かを思いつく。
蘭「ゆりさん、やりたい事決まりました。」
ゆり「なになに?何でも言ってみて。」
蘭「----。」
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香澄「リレーで1番を取る?」
蘭「そう。今度の体育祭の部活対抗リレーで1番を取る。それが私達のお願い。」
モカ「何か私の願いも含まれちゃってるけど、それで良いや。」
ゆり「りょーかい!2人の為にも、リレーで1番取るよ!!」
全員「「「おーーーっ!!!」」」
紗夜「ですが、部活対抗なら運動部にも勝たなければなりません。」
香澄「大丈夫!みんなと一緒ならきっと良い勝負が出来るよ!」
紗夜「……ですね。やるからには勝ちましょう!」
ゆり「じゃあ、今から練習だよ!体操着に着替えて校庭に集合!」
諏訪組のお願いを叶える為、勇者部のリレーの練習が始まる。
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校庭--
有咲「対抗リレーって事は誰が出るか選抜しないといけねーな。」
ゆり「安心して!既に私が6人を選んでるから。」
部活対抗リレーに出るメンバーは6人。残りのメンバーは応援に回る事になる。
ゆり「勿論1人目は蘭ちゃんでしょ。それに友希那ちゃん。」
友希那「任せてちょうだい。勇者部に恥じないようリレーでも頂点を目指すわ。」
蘭「みんなで優勝するよ。」
ゆり「で、小学生組を代表して夏希ちゃんお願いね!」
本来なら小学生組の3人は中学の体育祭に参加は出来ないのだが、部活対抗との事なので特別に参加が認められていた。
夏希「分かりました!中学生にだって負けません!」
ゆり「後は、香澄ちゃんに千聖ちゃん。そしてたえちゃんだよ。」
香澄「戸山香澄頑張ります!」
千聖「分かりました。」
中たえ「ゆり先輩。他の5人は分かりますけど、どうして私なんですか?」
こう見えてたえは勇者部の中でかなり速い方なのだ。
ゆり「勿論足が速いのもあるけど、一見運動得意そうに見えないダークホース的な人が欲しかったから。」
中たえ「馬よりウサギの方が良いですけど、任されました。」
走るメンバーも決まり、6人の練習が始まる。
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校庭--
花音「モカちゃんはリレーに出なくて良かったの?リレーで勝つ事が願いだったのに。」
モカ「あはは…。私は足遅いですから、応援に回りますよ。それに……。」
花音「それに?」
モカ「蘭の笑顔を見てるだけで、私は充分幸せだから。」
花音「……そっか。じゃあ精一杯応援しようね。」
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香澄「メンバーは決まりましたけど、練習は何から始めるのが良いんだろう?取り敢えずみんなで走ってみる?」
夏希「あっ、練習の前に走る順番を決めておいた方が良いんじゃないですか?」
中たえ「そう思ってくじ引きを用意しておいたよ。」
たえは懐から番号が書かれた札を用意する。
夏希「いつの間に!?」
6人は早速札を取っていく。
千聖「私は……5番ね。」
友希那「私は2番よ。」
全員がくじを引き終わり、1番が蘭、2番が友希那。3番が夏希、4番がたえ、5番が千聖。そしてアンカーが香澄で決まる。
友希那「くじで決めたにしては中々良い順番だと思うわ。」
千聖「私としても異論は無いわ。」
香澄「それじゃあ、実際にバトンを使ってこの順番で走ってみようよ!」
6人はそれぞれポジションへ移動する。
高嶋「それじゃあ私がタイムを計るよ!」
あこ「スタートの合図はあこがするよー!」
最初の走者、蘭がポジションにつく。
あこ「位置についてー……よーい、ドン!」
蘭「はっ!」
蘭は思いっきり走り出す。
紗夜「流石に速いですが……あれでは…。」
俯瞰から見ていた紗夜は蘭が走った直後にすぐ察知した。これではダメだと。蘭は次の走者である友希那にバトンを繋ぐ。
蘭「……っと、頼みましたよ、湊さん!」
友希那「ええ……任、せて!」
もたつきながら蘭からバトンを受け取った友希那は走り出す。
あこ「友希那さーん!!もっと腕を振ってくださーい!!」
あこのアドバイスを受けながら、友希那は夏希へとバトンを繋ぐ。
友希那「……海野さん!」
夏希「…はいっ!そりゃあああああっ!」
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夏希「……っはい!たえさん!」
中たえ「はい!行くよー!」
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中たえ「はい!お待たせしました!」
千聖「ええっ!はああぁっ!!」
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そして千聖はアンカーである香澄へとバトンを受け渡す。
千聖「香澄ちゃん!」
香澄「は、はい!大丈夫…!たぁああっ!」
香澄は千聖からバトンを貰い、全速力でゴールへと向かう。
香澄(もうちょっと!もっともっと速く!)
香澄はスピードを落とさずゴールテープを切った。
あこ「ゴーール!!」
香澄「はぁ……はぁ……。」
夏希「高嶋さん高嶋さん!タイムどんな感じですか?」
高嶋「うーんとね、こんな感じだよ。」
高嶋はみんなにストップウォッチを見せる。
千聖「これは……あまり良くないわね。」
お世辞にも速いとは言えないタイムだった。
香澄「そうなの?みんなで頑張って走ったのに…。」
友希那「どうしてかしら?」
悩む6人の前に、俯瞰で見ていた紗夜がやって来て説明する。
紗夜「気付いてなかったのですね。バトンを受け取る時、落とすのを警戒しすぎて皆さん殆ど足が止まってました。」
問題はバトンの受け渡しの時だった。みんながもたつきそこでタイムが伸びてしまっていたのだ。
紗夜「特に酷かったのは美竹さんと湊さんですね。」
友希那・蘭「「えっ……。」」
あこ「あれじゃ、タイムは伸びません…。」
香澄「ならバトンの受け渡しも練習しないとね!」
紗夜のアドバイスを受け、6人は一先ずバトン受け渡しの練習を開始した。
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高嶋「受け取る人は走りながら、渡す人は渡す瞬間に"はいっ!"って声をかけるのを忘れちゃダメだよ!」
あこ「それと、腕を振った形でそのまま相手に渡せると、走りながらでもスムーズに受け渡し出来ます。」
早速受け渡しの練習を開始する。
夏希「はいっ!たえさん!」
中たえ「受け取ったよ。はい!」
千聖「はい!……香澄ちゃん!」
香澄「ありがとうございます!なんだか大分受け取りやすくなってきました!」
6人はもう一度トラックを走ってみる事にする。
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あこ「行きまーす!よーい、どーーん!!」
蘭「……今度はスムーズに渡してみせる!」
友希那「……走りながら…。」
蘭「…スピードを殺さずに……はい!」
友希那「受け取ったわ!これなら--」
次の瞬間、紗夜が待ったをかける。
紗夜「ダメです、美竹さん、湊さん。」
友希那「………えっ?」
蘭「どうして!?」
驚く2人に紗夜はトラックを指差す。
紗夜「テイク・オーバー・ゾーンです。決められたバトンの受け渡し区間を越えてしまったからルール違反です。」
友希那「……仕方ない。もう一度よ!」
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その後もリレーの練習は続いていく。
蘭「区間内での受け渡しを意識して……。」
友希那「だけど、受け取るのが遅くならないように……。」
蘭「……はいっ!湊さん!」
友希那「受け、とったわ!……これなら!」
区間は越えなかった2人だが、凄まじくぎこちない走り方になってしまっている。2人とも区間を意識しすぎているのだ。これなら寧ろ始めの方が良かったくらいである。
友希那「……頼んだわよ、海野さん!」
夏希「分かりました!……はい、たえさん!」
中たえ「受け取ったよ!……はい!」
千聖(いい感じね…。)
千聖「……はい、香澄ちゃん!」
香澄「行っきまーーす!!」
千聖からバトンを受け取り香澄は走り出す。
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千聖「香澄ちゃん、さっきは良い走り出しだったわよ。」
香澄「はい!千聖さんの声が聞こえたら、掴んで走る!それだけ考えてました!」
千聖「練習の成果ね。良かったわ。」
中たえ「だけど……。」
最初の受け渡し、蘭と友希那の所だけは、何度やってもぎこちなくなってしまう。
紗夜「2人は区間を意識し過ぎて、大分タイムロスが出ています。」
蘭「……こうなったら練習するのみです、湊さん!」
友希那「そうね。出来るようになるまで。」
2人はみんなが練習が終わった後も日が落ちるまでバトンの受け渡し練習を続ける。
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蘭「はいっ!」
友希那「良いわよ!」
蘭「もう一度!」
友希那「ええ。今度は私の初動を少し早くしてみるわ。」
蘭「なら、私はスピードを緩めずに渡してみます。」
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中たえ「あれ?まだやってたんだね。」
香澄「充分上手く受け渡し出来てると思うんだけど。」
中たえ「……満足するまでやらせてあげようか。」
紗夜「そうすると、日が落ちるまで続けそうですね……。」
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蘭「協力してくれるみんなの為にも頑張らないと!」
友希那「ええ。私もあなたの為に頑張るわ!」
結局2人の練習は日が落ちても続き、2人はリサとモカに連れられて強制的に練習終了となったのだった。
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体育祭当日--
花咲川中学の生徒を紅白に分けて行う体育祭は凄い盛り上がりを見せていた。
あこ「りんりーん、頑張ってー!!」
中沙綾「りみりんも負けないでー!」
今は徒競走の真っ最中である。
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あこ「一位は取れなかったけど、頑張ったりんりんにはあこが一等賞をあげる!」
中沙綾「そうだね。りみりんもよく頑張ったよ。」
あこ「応援も悪くないけど、見てるとやっぱり自分の番が待ち遠しくなるよ!」
有咲「まぁ、気持ちは分かる。りみの頑張りを見たら余計にな。」
白熱した体育祭は続いていく。
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そして遂に部活対抗リレーがやってきた。6人は準備を開始する。
中たえ「もしかして緊張してますか?」
千聖「集中してただけよ。後は練習した事を本番で繰り返すだけだから。」
夏希「あれから結構練習しましたからね。」
友希那「ええ……。数えきれない程のバトンの受け渡しをしたわ。」
蘭「任せて。良いスタートダッシュを切って、湊さんに繋げます。」
香澄「練習の成果を出せば、良い結果に繋がるよ!みんな一生懸命頑張ろう!」
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応援席--
小沙綾「そろそろ始まるみたいですよ。」
モカ「おっ、本当だね。」
小たえ「モカさんはいつも通りですねー。私なんか走らないのに緊張してますよ。」
モカ「そんな事ないよ。このリレーは蘭にかかってると言っても過言じゃないから。」
蘭のバトンの受け渡しで全てが決まる。
モカ(蘭……。自分を信じて……。)
--
そして、リレーがスタートする。蘭のスタートダッシュは問題なく、出だしは上々だった。
蘭(……運動部も中々やるじゃん!)
蘭「……はい!湊さん!」
問題のバトン受け渡しだ。
友希那「ええ、後は任せて!」
バトンの受け渡しは滞りなく、完璧に行う事が出来た。スピードも落ちていない。勇者部の順位は3位で第2走者である友希那へ移る。
友希那(……今は先頭の陸上部と女子サッカー部に少しでも追いつくだけよ!)
夏希「友希那さーん!」
友希那「……はい、行って海野さん!」
ここも問題なくバトンを受け渡す。
夏希(これなら、少し前を走るチームにも追いつけ……!?)
その時だった。夏希の前を走る選手が転んだのである。幸い夏希は転ぶ事は無かったが、その間に抜かされ、4位になってしまう。
夏希「……はぁ、はぁ!たえさん、すみません後お願いします!」
中たえ「大丈夫、夏希は十分頑張ったよ。今度は私の番!」
第4走者のたえにバトンが渡る。たえは信じられない速さで挽回し3位に戻した。
中たえ「はい、頼みました!」
千聖「ええ!」
第5走者、千聖にバトンが渡る。
千聖(バトンの受け渡しにミスは無い……。これなら、まだ!)
千聖は少しずつ差を詰める。
千聖(私だって負けたくない……。でも、中々手強い!)
香澄にバトンを渡す寸前で、千聖は1人抜かして 2位になり、バトンはアンカーへと繋がる。
千聖「……はい、香澄ちゃん!」
香澄「はい!」
香澄の前を走るのは陸上部の生徒。
香澄(ここまでみんなが繋いでくれたバトン。だから私は最後まで諦めない!)
陸上部との差が少しずつ縮まっていく。だが、陸上部も負けていない。
香澄「うああああああああっ!!」
そしてアンカーがゴールテープを切る。
---
香澄「はぁ…はぁ……。」
最後の直線を制したのは勇者部だった。みんなが香澄の元に集まる。
友希那「良く頑張ったわ、戸山さん!」
夏希「私が順位を落とした時は焦りましたけど、皆さんのお陰で一位になれて良かったです!」
中たえ「気にしないで、夏希。困った時に助け合うのが勇者部なんだから。」
そして香澄は持っていたバトンを蘭に渡す。
香澄「はい、蘭ちゃん!これで蘭ちゃんの願いが叶ったね!」
蘭「香澄……。うん、そうだね。みんな、ありがとう!」
蘭は香澄からバトンを受け取る。
モカ「おめでとう、蘭。」
蘭「……最後に良い思い出が出来たよ。これで心置きなく戻れる…。」
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狭間の空間--
蘭「あの時のリレーを通して確かに感じる事が出来た。想いはちゃんと誰かに繋がるんだって。」
モカ「蘭……。」
蘭「例え、私達の戦いが無駄に終わったとしても、湊さんが……。そして未来のみんなが必ず私達の想いを継いでくれる。」
モカ「……そうだね。」
--
光の終点が見えてくる。
蘭「出口……。」
モカ「ここを抜けたら諏訪なんだよね。」
いざ出口まで来ると、モカは再び震えてしまう。だが、蘭がモカの手を掴んで言う。
蘭「怖くない。あっちでも言ったでしょ。私はモカがいるから頑張れる。私がモカを守るから。」
蘭の温かい言葉がモカの震えを消してしまう。
モカ「……そうだね、蘭。ずっと隣で見てるよ、蘭の事。」
蘭「ありがとう、モカ。……行こう。」
モカ「うん!」
2人は光の中へ消えていく。
2人に待つのは絶望か--
それとも--