そして物語は過去へと遡りますーー
何処かの空間--
香澄は何もない灰色の空間をただ歩いていた。
香澄「ここは……。確か私は…。あれ?」
必死で何があったか思い出そうとするも、頭が痛み思い出せない。そこへ一羽の烏が舞い降りてくる。色は青色、胸には桔梗のマーク。直後、どこからともなく少女の声が聞こえてくるのだった。
?「◾️◾️◾️戻ったらきっと覚えていないだろうけど………あなたは消滅するはずだった。神樹様は貴方の身体を蘇生してくれたわ。しかしそれはかなり無理な蘇生だった"御霊"に触れてしまった影響で精神が目覚めず、あなたは今ここに在るのでしょう…。」
香澄「あなたは……。」
?「初めまして、未来の勇者達。私は湊◾️◾️那。西暦2019年、いえ、神世紀元年において、勇者の御役目を担っている者よ。何十年、もしかしたら何百年も先のあなたに、未来の希望を託した者よ。バーテックスが出現した日、私達は多くのものを奪われた。それを取り返す為に、私達は強大な敵に立ち向かい、戦った。」
?「だけれど、全ての勇者達が、時に恐怖して、悩んで、苦しんで…守りたいものの為に戦っていくのだろうと信じている。私達の代の勇者は、美◾️◾️からバトンを引き継いだ。そのバトンはいずれ次の世代に渡される。そして次の次の代へ……何代でも、何度でも、どれ程の時間が経とうと…引き継いで行かれるだろうと、私は思っているわ。」
香澄「この声……優しくて温かい…。」
?「そのバトンの名は"勇気"。または"希望"、"願い"とも言うの。今の未来の貴方に対し、何もしてあげる事が出来ない。せいぜい、こうして声をかけてあげる事しか出来ないわ。だけど、信じて欲しいの。貴方の後ろには、バトンを引き継いできた沢山の人達がいる事を。」
?「見回して欲しい。貴方の隣には、今まで貴方が一緒に過ごしてきた友達や家族がいる事を。貴方は決して1人では無い事を知って欲しい。多分、今の貴方はとても苦しんでいると思う。痛い事、悲しい事、絶望する事…頑張って、頑張って、それでも耐えられないくらい、辛い事があったでしょう。」
すると、何やら遠く彼方から音楽が流れている事に香澄は気付いたのだった。
ゆり(私達の戦いは夢物語だった訳じゃない。それは…実際に大きな被害が出ている事からも分かる。)
ゆりは教室の窓の外を見ながら思ったのだった。
山吹宅--
沙綾「っ……。」
身体を起こす沙綾。
沙綾「?」
足を床に付けて、立ってみようとする。少しふらつき、ベッドに尻もちを付く。
沙綾「少しだけ…立てた。」
牛込宅リビング--
ゆりが朝ごはんの料理をしている中、りみが起きて来る。
ゆり「おはよう、りみ。あっそうだ着替えさせてあげないと。」
しかし、そこには既に制服に着替えていたりみが居た。
りみ「お姉ちゃん、1人で、出来たよ。」
ゆり「っ!!本当に…本当に…取り戻した……!」
ゆりがりみに抱き着く。りみもその腕で、抱き締め返した。
ゆり「治るんだ…私達……。」
りみ「うん…。うん……。」
2人は涙を流しながら喜んだのだった。
砂浜--
ゆりと有咲が話している。
有咲「あれから大赦のメールは一方通行のまま…。返信も出来なくなってる。」
ゆり「私達は神樹様に開放してもらえたのよ。」
有咲「もう必要ないって事か……。」
ゆり「目的が無くなって不安?」
有咲「そんな事ねーし。だけど、外の世界があんななのは変わらない。私らの戦闘データが役に立ってりゃ良いけど。」
ゆり「私達の戦いは無駄じゃない。だから、神樹様は供物を求めない様になったのかもね。」
有咲「なぁ……。」
ゆり「何?」
有咲「なんで香澄だけが目を覚まさないんだ?」
ゆり「香澄ちゃん…1人で頑張りすぎたから……。」
花咲川病院--
病室の扉を開ける沙綾。そこには、動かない香澄がいた。看護師に病院のベンチに香澄を座らせてもらい沙綾は香澄に話しかける。
沙綾「今日はね、ゆり先輩がまたおかしなことを言いだして…それで私…。」
ゆり「おーい!」
そこへゆりとりみ、有咲がやってきた。
りみ「こんにちは、香澄ちゃん。」
りみが香澄に話しかけるも返事は無い。
有咲「くっ、ちきしょう…。」
ゆり「……。」
有咲とゆりも落ち込む。
沙綾「私は…1番大事な友達を犠牲に……。私が、あんな事を…。」
ゆり「言っちゃダメだよ。誰も悪くないって、みんなで話し合ったじゃない。」
ゆりが沙綾を諭した。
勇者部部室--
ゆり「さて、衣装も歌詞作曲も完成したし、もう文化祭まで間もなくだね。今後の事なんだけど……。」
りみの指は比較的他の3人より状態は良く、マッサージやリハビリもありある程度は動き、演奏に支障はない。しかし、肝心のボーカルである香澄がいない。
沙綾「あの……。」
沙綾が手を上げる。
沙綾「香澄のパートはそのままにしておきたいです。」
ゆり「沙綾ちゃん…。」
沙綾「私の足だって治ってきてるんです。きっと香澄だって…!」
有咲「沙綾の言う通りだ。なんか、割り切っちゃうのは私も嫌だし…。」
りみ「練習続けよう。香澄ちゃんならきっと戻ってきてくれるよ。」
ゆり「そうだね、そうしよう!」
香澄がいつ戻ってもいい様に4人は練習を続けた。
文化祭まで1週間後の放課後--
今日は病院に無理を言って外出許可を貰い、香澄を音楽室まで連れてきたのだった。みんなの身体の調子も段々と良くなっており、沙綾は杖が片方でも何とか歩けるようになり、ゆりの視力は完全に回復した。有咲とりみも日常生活にほとんど支障がない位元通りになっている。
しかし、肝心の香澄はまだ動かないままだった。
4人は楽器を準備しそれぞれのポジションに付く。4人はライブでやる曲を聴いてもらいたくて香澄を連れてきたのだった。
ゆり「みんな準備はいい?」
ゆりがみんなに確認する。
りみ「うん。」
沙綾「大丈夫です。」
有咲「オッケー。」
ゆり「それじゃあ聞いてね香澄ちゃん、メロディだけになるけど。」
―STAR BEAT!〜ホシノコドウ〜―
~♪
4人は演奏しながら香澄との思い出を思い返していく。
ゆり--
ーーー
ーー
ー
ゆり「退きなさい、香澄ちゃん!!」
香澄「イヤです!ゆり先輩が人を傷付ける姿なんて見たくありません!」
ゆり「こんな事が許せるかぁっ!!」
香澄「分かってます!」
ゆり「だったら!!」
香澄「でも、もし後遺症の事を知らされていても、結局私達は戦ってた筈です!」
ゆり「っ!!」
香澄「世界を守る為にはそれしかなかった!だから誰も悪くない!選択肢なんて誰にも無かったんです!」
ー
ーー
ーーー
ゆり(あの時はごめんね、香澄ちゃん。香澄ちゃんがいなかったら私とんでもない事をしてた。香澄ちゃんが勇者部にいてくれたから。私は、何事にも諦めないでやっていけるよ。)
りみ--
ーーー
ーー
ー
りみ「あっ、あの、どうも初めまして。わ、私1年の牛込りみって言います。ど、どうぞ宜しくお願いします。」
香澄「わー初めまして。私、戸山香澄って言います。よろしくねーりみりん。」
りみ「り、りみりん⁉︎」
香澄「あーりみりん変だったかなー何となくりみりんって感じだったからそう呼んでみたんだけど嫌だった?」
りみ「ちゃ、ちゃう!あっ違う…嫌じゃないですよ。」
香澄「可愛いーー。確か関西弁って言うんだよね、さーや。」
香澄「そうだよ、りみりん。勇者部5箇条"成せば大抵なんとかなる"だよ!」
香澄「大丈夫だよ、りみりん。今はただの練習なんだし楽しんで演奏すればいいんだよ!私だって間違えちゃったところあったもん。気にしない気にしない。」
ー
ーー
ーーー
りみ(香澄ちゃんの笑顔には何度も励まされた。初めてで緊張してた私にも凄く優しく話しかけてくれて、バンド練習の時だって。私、勇者部に入って良かった。勇者部のみんなや、香澄ちゃんがいたから私は夢に向かって頑張っていけるよ。)
有咲--
ーーー
ーー
ー
有咲「私は勇者として戦う為にこの学校に来た。あの部にいたのは戦う為に。他の勇者達と連携を取ったほうがいいからだ。それ以上の理由なんて、ない……。大体、ゆりも何考えてんだ!勇者部はバーテックスを殲滅する為の部なんだろ!バーテックスがいなくなったら、そんな部、もう意味ない!」
香澄「違うよ!」
有咲「っ!?」
香澄「勇者部は、ゆり先輩がいて、りみりんがいて、沙綾がいて。有咲もいて。みんなで楽しみながら人に喜んでもらう事をしていく部だよ。バーテックスなんかいなくっても、勇者部は勇者部。」
有咲「でも……。」
香澄「戦う為とか関係ない。」
有咲「でも…、私…。戦う為に来たから……。もう戦いが終わったから。だからもう私には価値がなくて、あの部にも居場所が無いって思って…。」
香澄「勇者部5箇条ひとーつ!」
有咲「えっ?」
香澄「悩んだら相談。」
有咲「え……。」
香澄「戦いが終わったら居場所が無くなるなんて、そんな事無いんだよ。有咲がいないと部室が寂しいし、私は有咲と一緒にいるの楽しいし。それに私、有咲の事好きだから!」
有咲「ちょまっ!」
有咲「っ…!ったく!しょーがねーなー、そこまで言うなら行ってやるよ、勇者部。」
ー
ーー
ーーー
有咲(最初はやたらと絡んでくるうるせー奴、なんて思ってた。けど、一緒にいる中で何だかすっげー楽しい、こんな日常も良いなって思えるようになった。バーテックスを倒し終わって私が落ち込んでた時も、お前は探しに来てくれて励ましてくれたよな。言葉にするのは恥ずいけど、あん時すっげー嬉しかった。だから早く戻って来いよな。)
沙綾--
ーーー
ーー
ー
香澄「もしかして隣に引っ越して来た人?私の名前は戸山香澄。お隣さん同士これから宜しくね!」
沙綾「私は山吹沙綾。戸山さんこれから宜しくお願いします。」
香澄「香澄で良いよー。あと敬語も無しね!そうだ、この街を案内してあげるよ。」
香澄「えへへ。でも安心だよ。」
沙綾「どうして?」
香澄「神樹様にははっきり意思があるって事だもん。私達の事だって何とかしてくださるよ。さーやが昨日言ってた通り、病院で寝てた分は遊ばないと。」
沙綾「そうだよね。1人になると、つい悪い方に色々考えちゃって…。みんなといるとそんな事も忘れられるんだけど。」
香澄「勇者部5箇条、悩んだら相談だよ。」
沙綾「でも、こんな事相談されても困るでしょ?」
香澄「そうでもないよ。1人になるとつい暗い事考えちゃうなら…。今日はもーっとさーやにくっ付いてよーっと。」
沙綾「香澄やみんなの事だって忘れてしまう。それを仕方がないなんてで割り切れない!1番大切な者を無くしてしまうくらいなら……。」
香澄「忘れないよ!!」
沙綾「どうしてそう言えるの!?」
香澄「私がそう思っているから!メチャクチャ強く思っているから!!」
香澄「忘れない。」
沙綾「ウソ…。」
香澄「ウソじゃない。」
沙綾「ウソ……。」
香澄「ウソじゃない!!」
沙綾「っ……本当?」
香澄「うん。私はずっと一緒にいるよ。そうすれば忘れない。」
沙綾「うぅっ…香澄ぃ………!忘れたくないよ!私を1人にしないで…!うああああん……!」
香澄「うん………うん!」
ー
ーー
ーーー
沙綾(私、香澄に出会えて本当に良かった。香澄はいつも私の心配してくれて、それでいてみんなを幸せにしてくれる。自分を顧みないのは玉に瑕だけど、そんなところも香澄らしい。香澄がいたから勇者になれたし、大切な記憶も思い出す事が出来た。私が道を間違った時は、ちゃんと怒ってくれて元に戻してくれた、感謝してもしきれないよ。)
沙綾(だから、戻ってきて香澄….。私に恩返しさせてよ…。私だけ貰ってばっかりで、こんなのズルいよ……。)
何処かの空間--
香澄は音楽が聞こえる方へ走り出す。青い烏もついてくる。
?「だからこそ、私の声が届いている筈よ。そんな貴方に、私が言いたい事は、"もっと戦いなさい"や"もっと頑張りなさい"でもないわ。」
香澄「えっ?」
香澄の足が止まる。
?「"生きて"--」
?「"ただ、生きて"--」
香澄「生きる……。」
?「大切な人がいるのなら、その人の事を思い出して欲しいの。貴方が生きるのを諦めてしまったら、その人が悲しむ事を思い出して欲しい。私は多くの大切な友達を失ってしまった。貴方の大切な人に、私と同じ思いをさせないで。その人のところへ、必ず戻ってあげて--」
その言葉を最後に少女の声は聞こえなくなり、青い烏も彼方へと飛んで行ってしまった。
香澄「私が……私が行くべき場所は……!」
4人は泣きながら演奏を終える。
ゆり「この音楽、香澄ちゃんに届いたかな?」
りみ「届いたよ、絶対。」
その時だった--
香澄「演奏…凄かった……。」
沙綾・ゆり・りみ・有咲「「「「っ!!!」」」」
香澄「みんなの気持ち……ちゃんと届いてたよ…。」
そこには涙を流している香澄の姿があった。
ゆり・りみ「「香澄ちゃん!!」」
沙綾・有咲「「香澄」」
4人は香澄の傍へ駆け寄る。
香澄「聴こえた……みんなの音楽、みんなの心の声が。」
有咲「ったく……本当に心配したんだからな!」
香澄「心配かけてごめんね、有咲。」
ゆり「香澄ちゃん……本当に良かった。」
香澄「ゆり先輩、メロディ凄く心に響きました。」
りみ「おかえり、香澄ちゃん。」
香澄「りみりん、指動くようになったんだね。努力した事、手を見ればよく分かる。」
沙綾「香澄…香澄ぃ……本当に良かった。」
香澄「さーや、心配かけてごめんね。いつも病室に来てくれた事ちゃんと分かってたよ。これからも、ずっと傍にいるから。」
沙綾「おかえり、香澄。」
沙綾が呟く。
香澄「ただいま。」
香澄が答えた。
時同じくして--
たえ「沙綾達、やったんだね。おめでとう。」
花園たえが包帯を取り、外を見る。外には青空が広がっていた。
たえ「夏希……夏希が守った世界を、今度は沙綾達が救ってくれたよ。勇者部か……。私も入ってみたいな。」
文化祭当日--
ゆり「とうとう次が私達の出番、みんな準備はいい?」
りみ「緊張するけど、大丈夫だよお姉ちゃん。」
有咲「こっちもオッケーだ。き、緊張なんか、ぜ、全然してねーし。」
沙綾「有咲、言葉と態度が合ってないよー。」
有咲「う、うっせー沙綾。」
ゆり「香澄ちゃんも準備オッケー?」
香澄「はい!いつでも大丈夫です。」
スタッフ「もうまもなくでーす。」
ゆり「よし、じゃあみんな行きましょう!」
香澄・沙綾・りみ・有咲「「「おーーーー!!!」」」
香澄「皆さん、盛り上がってますかーーー!」
香澄がセンターに立ち、観客に向かって話し始める。
香澄「私達勇者部は、世の為人の為になるような活動を日々やっています。皆さんも生きていたら辛い事や悲しい事で目を背けたくなる様な事があると思います。でも、皆さん1人1人の気の持ちようで世界は変わっていくんです。」
香澄「大切だと思えば友達になれる。互いを思えば何倍でも強くなれるし、無限に力が湧いてくる。日常には嫌な事も悲しい事も自分だけではどうにもならない事も沢山あります。だけど、思いやる心があれば挫けないし諦める事も無い。何度だって立ち上がれる。今日は皆さんにそんな心を少しでも持てるような、そんなライブをしたいと思います。」
香澄「それでは聞いて下さい。"STAR BEAT!〜ホシノコドウ〜"」
~♪
演奏している途中で香澄は思う。
香澄(そう、何度だって乗り越えられるんだ、大好きなみんなと一緒なら!!)
曲が終了する。
香澄「バンドメンバーを紹介します!」
香澄「ベース、りみりん!」
香澄「ドラム、さーや!」
香澄「リードギター、ゆり先輩!」
香澄「キーボード、有咲!」
香澄「そして私、ギターボーカルの戸山香澄!」
香澄「私達、花咲川中学、勇者部バンド!その名も……。」
全員「「「「「Glitter*Partyでーす!!!」」」」」
最後まで読んで頂いた皆様に感謝致します。
至らない部分、読みにくい点沢山あったと思いますがそこはご容赦くださいませ。
この小説を書き始めた発端は、「結城友奈は勇者である~花結いの章~」というアプリを始めた事でした。
風と樹が姉妹だという点、東郷さんが友奈ラブな点を見て「BanG Dream!」に当てはめてみて、自分的になんだかしっくりきたので小説を構想しました。
まだまだ先になるとは思いますが、「乃木若葉の章」「楠芽吹の章」の登場人物も一応はバンドリの登場人物を当てはめていますが、その結果残念ながら出て来ない人物も5人程出てきてしまいました。そこは申し訳ありません。
物語は「戸山香澄は勇者である~第2章 山吹沙綾の章~」へと続いていきます。
拙い小説になるとは思いますが、是非よろしくお願いいたします。
それでは、最後まで読んで頂き本当にありがとうございました。