戸山香澄は勇者である   作:悠@ゆー

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3部作の中編です。

バンドをやる事になった千聖。絆について考えていく中で1つのとある提案を防人達にするのだった--




夢の架け橋ーBanD Dream!!-〈中編〉

 

 

狭間の空間--

 

千聖は思い返していた。異世界での日々を。

 

彩「どうしたの、千聖ちゃん?」

 

千聖「彩ちゃん……思い返してたのよ。あの日の事を。」

 

彩「みんなでセッションした時の事?」

 

千聖「そうよ。今までの私だったら絶対に考えられなかった事だもの。」

 

千聖が防人になった時、千聖を突き動かしてきたのは怒りである。勇者に選ばれなかった怒り、都合の良い駒として使われる怒り、そして犠牲を良しとする考えに対する怒りである。

 

日菜「確かに。ゴールドタワーでの千聖ちゃんからは想像も出来ないよ。」

 

イヴ「何が千聖さんを変えたんでしょうか?」

 

花音「有咲ちゃんじゃないかなぁ?有咲ちゃんとは昔からの幼なじみだったんだもんね。」

 

千聖「……そうね…それもあるわね。」

 

市ヶ谷有咲。千聖のライバルにして目指すべき目標である"勇者"。異世界での有咲の変わり様に千聖が驚いたのも事実である。

 

彩「それだけじゃないの?」

 

千聖「………絆……かしらね。」

 

 

---

 

 

勇者部部室--

 

千聖「私の……防人組の願いを今言わせてもらいます。」

 

花音「え?」

 

千聖「私達もバンドをやります。そして、神世紀組と西暦組の対バンに参加させてください!」

 

彩・花音・日菜・イヴ「「「えぇーーー!?」」」

 

ゆり「私達は別に構わないけど……。」

 

友希那「他の防人メンバーは寝耳に水の様だけれど?」

 

日菜「当たり前だよー!」

 

花音「ふぇええっ!?千聖ちゃん楽器演奏出来るの!?」

 

千聖「出来ないわ。」

 

イヴ「ではどうしてですか?」

 

千聖は前日に友希那と語った事を防人組に説明する。

 

千聖「………私はより高みを目指したい。だけれど1人では限界があるの……。でも…あなた達となら……元の世界に戻っても前以上に強くなれる!私の信念を貫き通す事が出来る!」

 

千聖は今までの御役目を通して、そして友希那と話す事で自分に足りないものに目を向ける事が出来たのだ。

 

イヴ「……っへ!白鷺がその気なら、俺は異論なしだ。俺は白鷺に着いて行くって決めてるからな。」

 

日菜「何かるんってきた!面白そう!絆を深めて強くなるのなら大歓迎だよ。その方が家名を上げやすくなるしね!」

 

彩「私もやってみたい!みんなをもっとサポート出来るように頑張る!」

 

千聖「花音はどうかしら?」

 

花音「……。」

 

花音は目を閉じる。花音はずっとこんな臆病な自分を変えたいと考えていた。

 

花音(守られてばかりじゃ……ダメ…だよね!)

 

花音「わ、私もやりたい…自分を…変えたい!」

 

千聖「全会一致ね。ゆりさん、友希那ちゃん、これが私達の意思です。」

 

ゆり「うん!その気持ち受け取ったよ!」

 

香澄「はい!今から楽しみです!」

 

友希那「ではまず、それぞれのパートを考えてもらえるかしら?」

 

 

---

 

 

家庭科室--

 

千聖達は隣の家庭科室でそれぞれのパートについて話し合う。

 

千聖「まずは、各々これがやりたいとか希望はあるかしら?」

 

すると日菜がすかさず手を上げ、

 

日菜「はいはーい!私ギターがやりたい!」

 

千聖「ギターね。他にギターがやりたい人はいるかしら?」

 

千聖が見回すが、他に手をあげる人はいない。

 

千聖「じゃあギターは日菜ちゃんね。」

 

日菜「いやったぁ!」

 

千聖「イヴちゃんは何か希望はある?」

 

イヴ「…私はキーボードがやりたいです。」

 

花音「イヴちゃんにキーボード……うん、何かしっくりくるよ。」

 

彩「そうだね。じゃあキーボードはイヴちゃんだ。」

 

イヴ「精一杯頑張ります。」

 

残りはドラムとベースとキーボード。

 

花音「ち、千聖ちゃん…。」

 

千聖「どうしたの花音?」

 

花音「私ドラムやって良いかな?」

 

千聖「それはまたどうして?」

 

花音「実はね--」

 

花音が語るには元の世界で防人番号2番の少女に以前ドラムについて教えてもらった事があるというのだ。

 

日菜「防人番号2番ってあの子?ちょっと笑い方が不思議な…。」

 

彩「フヘヘ…って笑う子だよね?」

 

花音「そうそう。あの子筋金入りらしくてね、話してるうちに結構教えてもらったんだ。」

 

千聖「そうだったのね…。それなら花音はドラム……っ!」

 

その時、千聖もある事を思い出す。

 

千聖「そういえば、私も元の世界でベースを教えてもらった事があったわ。」

 

日菜「え?誰に?」

 

千聖「確か……防人番号5番の子よ。」

 

日菜「あぁっ!あのナイスバディな…。」

 

花音「確かに、最年少であの豊……。」

 

彩「あわわわっ!?た、確か何かする時はいつもえいえいおーって掛け声する子だよね!」

 

咄嗟に彩が顔を真っ赤にさせて話を逸らす。

 

日菜「じゃあ千聖ちゃんがベースって事は、ボーカルは彩ちゃんだね!」

 

彩「えっ!?私がボーカルで大丈夫かなぁ…。」

 

千聖「大丈夫よ。彩ちゃんは防人達にとってはアイドルだもの。」

 

イヴ「そうですね。彩さんはアイドルで天使です!」

 

日菜「よっ、彩ちゃん!日本一!」

 

彩「そ、そうかなぁ……。」

 

千聖「そうよ。もっと自信を持って。」

 

彩「…分かった。私ボーカル頑張る!」

 

これにてパートは日菜がギター、イヴがキーボード、花音がドラム、千聖がベース、彩がボーカルで決定する。

 

日菜「バンドの名前はどうする?」

 

防人組「「「うーーーん……。」」」

 

5人は少し考えてみるも、パッとアイデアが出てこない。

 

千聖「名前は後々考えましょう。」

 

そして防人組は香澄達"Glitter*Party"から各担当楽器の指導を受ける事となるのだった。

 

 

---

 

 

三階、空き教室--

 

ここではイヴと日菜が楽器の練習をしている。

 

ゆり「……日菜ちゃん中々センスあるよ。」

 

中たえ「そうですね。感覚で弾いてる感じです。」

 

日菜「実際やってみると簡単だね!教えられるより身体で覚えるタイプなのかも!」

 

有咲「確かに施設でもいつも感覚で動いてたよな。」

 

日菜「あははっ、うん。考えるより先に身体が動いちゃうんだよ。」

 

日菜は数分弾いただけでFのコードもマスターし、簡単な曲程度なら既に弾けるレベルまで達していた。

 

中たえ「身体が真っ先に動く事は良い事だけど、周りをよく見る事も大切だよ。」

 

日菜「え?」

 

中たえ「……そういう人は仲間が危険に瀕してたら身を挺して守るから。」

 

イヴ「たえさん……。」

 

有咲「ほい、イヴは集中。荒削りだけど大分形にはなってきたぞ。」

 

イヴ「本当ですか!精進して頑張ります。」

 

 

--

 

 

一階、空き教室--

 

ここでは花音が沙綾と練習していた。

 

花音「ふえぇぇっ!?目がぐるぐるしてきたよ!?」

 

中沙綾「少し休憩しましょうか。」

 

花音「う、うん。」

 

2人は椅子に座って一息ついて渇いた喉にお茶を流し込んだ。

 

花音「…はぁ。沙綾ちゃんはドラム上手いんだね。」

 

中沙綾「花音さんだって負けてないですよ。」

 

花音「あはは、ついて行くのが精一杯。」

 

中沙綾「私も始めた頃は全然下手でしたよ。今は身体が動きますけど…。」

 

花音「あっ……。」

 

沙綾の一言で花音はふと初めて勇者部と会った事を思い出す。以前隠れて会った時沙綾は車椅子に乗っていた事を。

 

 

--

 

 

花音「そっか……大変だったよね…。」

 

中沙綾「大変でした。けど……それと同じくらい私は楽しかったんです。」

 

花音「どうして?」

 

中沙綾「みんなが私を支えてくれました。私がどんなに折れそうになっても、突き放しても、私を見捨てなかった。特に香澄ですね。だから私は頑張る事が出来たんです。みんなとなら辛い事は半分こに。楽しい事は何倍にもなるんです。」

 

沙綾が口にした言葉は以前商店街のパレードでイヴが言った事と全く同じ言葉だった。

 

花音「みんなとなら……。」

 

中沙綾「そうです。だから花音さんも忘れないでください。みんなとならどんな困難にだって立ち向かえるんですから。」

 

花音はグッと拳を握り何かを決意した目をする。

 

花音「ありがとう、沙綾ちゃん。私あの時勇者部に会っておいて本当に良かった。」

 

中沙綾「私もです。花音さんは香澄を守ってくれた恩人ですから。」

 

 

--

 

 

音楽室--

 

音楽室では千聖がりみからベースの基礎を教えてもらっている。彩と香澄のボーカル組もいるが、ボーカルはこれといって練習する事はあまり無い。彩が千聖の練習を見たいと言ったのでボーカル組は音楽室にいるのである。

 

千聖「……指が痛くなってきたわ。」

 

りみ「最初は誰でもそうです。私も最初は血が出たりもしましたし。」

 

千聖はりみの指を見る。りみの指は皮が厚くなりゴツゴツとしている。まさに楽器を弾く人の指だ。

 

千聖は「りみちゃんは相当努力を積んできたのでしょうね。」

 

香澄「はい!りみりんは頑張り屋さんなんです!夢はバンドマンなんですよ!」

 

何故か香澄が自慢げに答える。

 

りみ「か、香澄ちゃん…め、めっちゃ恥ずかしい……。」

 

彩「とっても素敵な夢だと思うよ!」

 

千聖「どうしてなりたいと思ったのかしら…。」

 

りみ「それは……勇者部に出会えたからです。」

 

りみは千聖と彩に勇者部この世界に来る前の出来事を話すのだった。

 

 

--

 

 

りみ「……それから私は満開の代償、散華で両指の身体機能を捧げました。その事が原因でお姉ちゃんやみんなに迷惑をかけちゃった事もありました。」

 

香澄「りみりん……。」

 

千聖「りみちゃんは散華の事を隠していた大赦に対して怒りは無かったの?」

 

りみ「最初はありました。でもみんなだって辛い思いをしている…。だからせめて私だけでもみんなの前では涙を見せない様……笑顔でいる事に決めたんです…。」

 

千聖「それも……絆なのかしらね…。」

 

香澄「そうです!私達は固い絆で結ばれてるんです!」

 

千聖「そう……。」

 

気付けば外は日が沈みかけていた。昼から練習を始めたので既に5時間近くは練習をしている。

 

千聖「もうこんな時間なのね。今日は付き合ってくれてありがとう。後はみんなで合わせて練習をしてみるわ。」

 

彩「そうだね。私もみんなの演奏に合わせて歌える様にしないと。」

 

千聖と彩は香澄とりみに別れを告げ、それぞれ寮へと戻るのだった。

 

 

---

 

 

それからの1週間は個々で練習をしたり合わせて練習をしたりとを繰り返しながら千聖達の演奏はどんどんとスキルアップしていった。

 

 

最初の練習から1週間経った日の夜--

 

 

千聖は屋上のベンチに座り夜空を眺めていた。この1週間千聖の頭の中を駆け巡っている考えはずっと同じ。

 

千聖「絆……。どうすれば良いのかしらね…。」

 

その時、屋上のドアを開ける音が背後からする。

 

千聖「有咲ちゃん?」

 

有咲「よ、よう。」

 

千聖「私に何か用かしら?それにしてもどうして私がここにいる事が分かったのかしら?」

 

有咲「いっぺんに質問するな。りみがあんたの様子が変だったって聞いてな。場所は彩から聞いたんだ。」

 

千聖「あら、私を心配して来てくれたのかしら?」

 

有咲「そ、そんなんじゃねーよ!」

 

有咲は千聖の隣に座る。

 

有咲「ベースの方はどうだ?」

 

千聖「まずまずね。大分コツが分かってきたわ。

 

有咲「そりゃ良かった。千聖はあの時から努力型だったからな。」

 

千聖「そういうあなたこそ。」

 

有咲「防人はどうだ?」

 

千聖「大赦といい神官といい理不尽な事ばかりよ、全く。そういうそっちはどうなのかしら?」

 

有咲「みんな個性が強い奴らばっかりだよ。ゆりは妹バカだし、りみはチョココロネに目がないし、沙綾は二言めには香澄だし、香澄は……。」

 

千聖「……ふふっ!」

 

有咲「な、何だよ!」

 

千聖「みんなの事良く見てるのね。」

 

有咲「っ〜〜〜〜!」

 

確信を突いた千聖の言葉で有咲の顔は茹でダコの様になる。

 

有咲「そ、そういう千聖はどうなんだ!?」

 

千聖「そうね………。」

 

千聖は目を閉じ、防人のみんなの事を思い浮かべる。

 

千聖「あなたと同じかしらね。」

 

有咲「どういう事だ!」

 

千聖「私も彩ちゃんに日菜ちゃん、イヴちゃん、花音……そして防人のみんなが大切って事よ。」

 

有咲「わ、私はそんな事思ってねーーーっ!!」

 

千聖「自分の気持ちに正直になった方が良いわよ?」

 

千聖・有咲「「…………。あはははっ!」」

 

 

--

 

 

千聖「……久々にこんなに笑ったわ。」

 

有咲「私もだ。」

 

有咲は立ち上がって千聖に背を向ける。

 

千聖「帰るの?」

 

有咲「ああ。風邪引くとイヴに楽器教えられなくなるしな。」

 

有咲は屋上のドアへ歩き出し、途中で振り返る。

 

有咲「千聖が探してるもの、とっくに手に入ってると思うぞ?」

 

千聖「え?」

 

有咲「あんたがちゃんと防人達の事を思ってるって事が分かったからな。絆ってのはな手に入れようと頑張っても無理なんだ。気付けば自然に手に入るものなんだよ。千聖はもう持ってる筈だぞ。防人達との絆ってやつを。それに……。」

 

千聖「それに?」

 

有咲「---。」

 

有咲が呟くが声がどもっていて上手く聞き取れない。

 

千聖「?もう一回言ってちょうだい。」

 

有咲「………私達にも絆があるっつったんだ!!」

 

千聖「………アッハッハッ!!」

 

有咲「わ、笑うなぁーー!!」

 

千聖「ごめんなさい。ワザとじゃないのよ。本当にあなたは変わったのね。」

 

有咲「口うるさいみんなのお陰だ。」

 

千聖「ありがとう、助けられたわ。この借りは必ず返すわね。」

 

有咲「覚えてたらだろ?」

 

千聖「そうね。何かあったらあなたの力になるわ。」

 

有咲「……それは楽しみだ。」

 

 

---

 

 

次の日、千聖の部屋--

 

千聖は彩達4人を自分の部屋に呼び出した。

 

彩「千聖ちゃん、緊急要件って何があったの?」

 

千聖「みんなに伝えたい事があるのよ。」

 

日菜「なになに?」

 

千聖「私達のバンド名の事よ。」

 

花音「確かにバンドをやるんだったらバンド名は決めておかないとね。」

 

イヴ「何か候補があるんですか?」

 

千聖「ええ。でも、まずはその前にみんなに言いたかった事があるの。」

 

4人「「「?」」」

 

千聖「今まで私について来てくれて本当にありがとう。あなた達がいたから私は、つまらない単調な日常を彩る事が出来、防人達は強くなる事が出来たわ。私1人じゃここまで来る事は出来なかった。今の私がいるのはみんなのお陰よ。」

 

4人「「「千聖ちゃん……。」」」

 

千聖「だからバンドの名前は色に関する名前が良いと思ったのよ。」

 

日菜「それ良いじゃん!私達みんな個性的だし。」

 

花音「合わせ方によって色んな色になれるもんね。」

 

イヴ「まるで絵の具の様です。」

 

彩「絵の具かぁ………。あれなんて名前だっけ?絵の具の受け皿みたいな。」

 

日菜「パレット?」

 

彩「そう、パレット!」

 

千聖「パレット………良いわね。彩り………パレット……こんなのはどうかしら?」

 

千聖は黒板に書き始める。

 

4人「「「パステルパレット……。」」」

 

日菜「良いじゃん良いじゃん!!でも香澄ちゃん達も友希那ちゃん達のバンドも英語だから英語にしない?」

 

千聖「じゃあ"PastelPalettes"?」

 

彩「英語だけだと味気ない気がするから……。」

 

彩はピンクのチョークを手に取りマークを付け足す。

 

千聖「Pastel✽Palettes……。」

 

イヴ「可愛いです!」

 

千聖「みんな異論は無いかしら。」

 

4人「「「うん!」」

 

千聖「じゃあ決まりよ。私達のバンド名は……。」

 

 

 

5人「「「"Pastel✽Palettes"!!」」」

 

 

 

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