キーワードは……夜、月、中立神。
天の神が天照大神、造反神が素戔嗚尊。じゃあ中立神は……。
樹海--
花音を逃がす為に1人、眼前に迫る新種のバーテックス達に立ち向かうイヴ。
イヴ「行ったか……。アイツにはアイツにしか出来ない事がある…だから、これは俺にしか出来ねぇ事だ!!来い"雷獣"!!!」
イヴは自身の精霊である"雷獣"をその身に憑依させる。
イヴ「来いよ、虫けらども!!こっから先は一歩も通しやしねぇぞ!!!」
"雷獣"の能力は身体能力と反射速度の向上。全身に雷を纏い、高速で移動。自身が持つ武器にも電撃が付与され攻撃力も増している。
イヴ「これでも喰らって痺れやがれっ!!」
イヴは牽制する為電撃を新種向かって放出しまず敵の動きを止める。
イヴ「だりゃぁ!!な、何っ!?」
怯んでいる隙に銃剣で切りかかるも、新種は全く麻痺している様子はなくイヴの斬撃を鎌で受け止める。
イヴ「こいつら感覚ねぇのかよ!?」
銃剣の攻撃力も千聖の"尊氏"同様ある程度強化はされている筈なのだが、新型の皮膚を切り裂く事が出来ない。イヴが驚いている隙を狙って新種が後ろから鎌を振り下ろした。
イヴ「くっ!あぶねえじゃねぇか!この野郎!!」
今度は銃で狙い撃つが装甲の様な皮膚に銃弾が弾かれてしまう。
イヴ「銃弾も効かねぇのか……。」
攻撃の手をこまねいている間に、何匹かの新種が花音を追撃しようとイヴの横を通り過ぎようとする。
イヴ「行かせる……かよっ!!」
イヴは銃剣で新種を薙ぎ払い後退させる。
イヴ「はぁ…はぁ…。」
イヴ(今の俺じゃぁコイツらには敵わねぇ……。一人じゃ無理だ…。今は花音を信じるしか……。)
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花音サイド--
花音「はぁ…はぁ…ふぇえええっ!!!」
花音は自分の直感を頼りに樹海を走り続けていた。自分の身体に鞭打って無理やり身体を動かしている。
花音「はぁ…イ、イヴちゃんが1人で頑張ってるんだ……。わ、私だってやれる事をやらなくちゃ…。はっ!?」
我武者羅に走り続けた先には、2匹の新種バーテックス。
花音「そ、そんな……。」
ジリジリと花音に迫ってくる新種を前に遂に花音の身体が限界を迎えてしまう。
花音「あっ…。あ、足が……う、動かない……。」
動けない花音にバーテックスの鎌が迫る--
花音(も、もうダメかも………千聖ちゃんっ!!!)
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花音「あ、あれ……痛くない…。」
身体を触って確かめてみるが花音はどこも怪我をしていない。それもその筈、
千聖「間に合ったわ。大丈夫、花音?」
花音「ち…千聖ちゃん!!」
すんでの所で千聖が間に割って入りバーテックスの攻撃を銃剣で防いだのである。
千聖「赤嶺っ!私が押さえている間に!!」
花音「あ、赤嶺って……えっ!?」
赤嶺「了解。火色舞うよ"山本"全開…勇者キック。」
"山本五郎左衛門"--
赤嶺が持つ精霊であり、かつては魔王とも呼ばれた巨大な力を持つ精霊。その力は"酒呑童子"や"大天狗"に匹敵する程と言われている。赤嶺は足に赤黒い炎を纏った蹴りを新種にお見舞いし、それを食らった新種は金切り声を上げながら光となって消えていく。
赤嶺「さぁ、この調子でもう一匹もやっつけるよ。」
千聖「ええ。」
花音「ふぇええ……。」
花音は目の前で起こる目まぐるしい出来事に頭が追いつく事が出来ず、ただ茫然となって2人の戦いを見ているしかなかった。
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赤嶺「っと…ざっとこんなもんだね。」
千聖「そうね。無事でよかったわ、花音。」
花音「……。」
駆け寄って声をかけるも花音は驚き過ぎて声も出ない。
千聖「花音っ!!」
花音「ふぇ!?ち、千聖ちゃんだぁ!!何で赤嶺と一緒に!?」
千聖を見るや否や抱きつきだす花音。
千聖「詳しい事は後で話すわ。花音は1人なの?」
花音「あっ!イヴちゃん!!千聖ちゃん、イヴちゃんがピンチなの!!助けて!!」
千聖「分かったから落ち着いて!!案内して頂戴。」
花音「うんっ!!」
千聖と赤嶺は花音と合流し、1人戦っているイヴの元へと急ぐのだった。
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イヴサイド--
イヴ「うっ……。」
一方、孤軍奮闘しているイヴも体力の限界が訪れ地に伏せていた。そこへ、
花音「イヴちゃん!!」
応援を引き連れ花音が戻って来たのである。
花音「イヴちゃん、大丈夫!?」
イヴ「へっ……これくらいなんて事ねぇよ…。それより、やるじゃねえか…。お前の直感を信じて正解だったぜ…。」
千聖「よくこれだけの新種を相手にして無事だったわね。」
イヴ「防戦一方だったけどな…。アイツらに俺の攻撃は殆ど通らなかった…。」
千聖「私もよ。私じゃ太刀打ち出来なかった。でも私"達"なら出来るわ。」
千聖はイヴに手を差し伸べる。
イヴ「はっ……やっぱ変わったな白鷺は。」
イヴはその手を掴んで立ち上がる。
千聖「イヴちゃんもね。仲間の盾になるなんて前までのあなただったら考えられなかったわ。」
イヴ「身体が勝手に動いたんだよ。」
千聖「そう言う事にしておきましょうか。花音も動ける?」
花音「うん、大丈夫だよ。」
千聖「赤嶺、準備は良い?」
赤嶺「良いウォーミングアップになりそうだよ。」
千聖「誰も死なせない!犠牲ゼロで他のみんなと合流するわよ!!」
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4人の中で唯一新種に対抗できているのは赤嶺ただ一人。千聖達は赤嶺を中心にして新種を1匹ずつ殲滅していく。
千聖「はぁっ!!」
イヴ「今までのお返しだ、この野郎!!」
2人は新種の動きを止め、
赤嶺「はぁぁぁぁっ!!勇者パンチ。」
赤嶺の攻撃で止めを刺していく。これには赤嶺の精霊である"山本"の存在が大きい。"山本"の力の根幹は他の精霊と違い"呪詛"が大部分を占めている。呪詛の力をバーテックスに打ち込んで殲滅しているのだ。"天の逆手"の力がこの世界のバーテックスにも通じない事から赤嶺は新種も地の神が作り出した疑似バーテックスの類ではないかと踏んだのだ。
花音「何で赤嶺の攻撃だけは効いてるの?」
赤嶺「それは多分私の精霊"山本五郎左衛門"が関係してると思うんだ。ここのバーテックスも多分地の神である神樹が作り出した存在。だからこの魔王と呼ばれた"山本"の呪詛の力は地の神にとっては毒みたいなものなんだろうね。だけど……。」
突然赤嶺は"山本"の憑依を解いた。
千聖「どうしたの?」
赤嶺「はぁ…この精霊力が強いから長時間は身体がしんどいんだよね…。」
その時、新種が赤嶺目掛けて鎌を振り下ろす。
花音「危ない!?来て"波山"!」
花音は"波山"を護盾に憑依させ赤嶺を強化された盾で守る。
花音「仲間は私が守る…!」
赤嶺「ありがとう…助かったよ。」
その時、花音が何かを見つける。
花音「っ!?千聖ちゃん!」
千聖「どうしたの?」
花音「ここ…もしかしたら敵の弱点かも。」
花音が指で示したのは新種の前足の関節部分。虫でいう所の節である。
千聖「そうか…いくら固い表皮でも関節までは流石に守れない……。花音上出来よ!行くわよ、イヴちゃん。」
花音は勇者の中でも最も臆病だ。臆病ではあるがその分周りを見る能力に長けている。今まではその力を自衛の為だけに使っていたのだ。
イヴ「了解!!」
2人は強化されたスピードで新種をかく乱し、一気に関節を切り裂いた。
千聖「効いてる!」
イヴ「このまま一気に行くぞ!!」
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雑草はしぶとい--
いくら引っこ抜かれようが次々と生い茂っていく--
仲間を増やして--
千聖「……あまり張り付かないでもらって良いかしら、花音。」
花音は千聖に会えた事に安堵したのか千聖にべったりとくっついている。イヴが花音を剥がすも、すぐ引っ付く。
赤嶺「あはは、千聖は好かれてるんだね。」
イヴ「これはもうお手上げです。ですが、千聖さんにくっつく花音さんの気持ちもよく分かります。会えて良かったです。助けてくれてありがとうございました。」
千聖「私もよ。2人に会えて良かったわ。」
千聖は赤嶺と合流した経緯を2人に話し、2人は今まであった事を話し情報の交換を行った。
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イヴ「そうだったんですね…。こちらは有益な情報を持っていなくてすみません。」
千聖「無事だっただけでも十分よ。」
花音「それにしても不思議だよね。赤嶺が操れないバーテックスだなんて。」
イヴ「この樹海は私達の知ってる樹海とは勝手が違います。つまり……樹海化させている神様が違うのかもしれません。造反神ではない、また新しい神様とか。」
千聖「…それはあるかもしれないわね。新種がいる理由にもなる。」
赤嶺「新しい神様かぁ…何か思い出せれば良いんだけど。」
そんな赤嶺にイヴはある提案をする。
イヴ「自分の事は覚えているんですよね?知っている事を口に出すと良いかもしれません。」
花音「そういう拍子に何か思い出すかも。じゃあチャームポイントは?」
赤嶺「うーん…筋肉、かなぁ。腹筋とか結構自信あるよ。見る?」
そう言って赤嶺は3人に鍛え抜かれた腹筋を見せつける。
千聖「本当ね。美しく割れているわ。理想的な鍛え方で羨ましい。じゃあ、趣味は何かしら?」
赤嶺「私はストリートダンスが好きなんだ。音楽聞くと身体が動いちゃうよ。」
花音「香澄って名前の付く人は身体動かす事が好きなんだねぇ。」
イヴ「どうでしょう?自分の事を話していて何か思い出してきましたか?」
赤嶺は目を閉じて唸るも、肝心な所は全く思い出す事はなかった。
千聖「根気良くいきましょう。どこかで思い出すかもしれないわ。」
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4人は他の仲間を探しに樹海を歩き続ける。
イヴ「……この夜の樹海…もしかすると…。」
花音「な、何?」
イヴ「あまりこういう事は言いたく無いのですが…。」
花音「じゃ、じゃあ言わない方が良いよぉ。言霊ってあるし。」
イヴは口を噤むがもう一人のイヴに人格が交代し、
イヴ「いや言うぜ。ここの樹海って距離が無限じゃねーか?ずっと同じ景色が続いてる。」
赤嶺「それは思ったよ。でも、同じ所をぐるぐる回ってる訳でもないんだよね。ただ物凄い広い空間ってだけかも。」
千聖「こうなったら…。」
千聖は花音を先頭に立たせた。
花音「え?」
千聖「花音の直感で進みましょう。さっきもそうやって私達と合流出来たんだし。」
花音「わ、解ったよ!」
4人は花音の指示に従って樹海を歩き続ける。
花音「……こっちは何だか怖いからこっちに行こう。」
赤嶺「そんなに当たるんだね、花音の直感って。」
直感というよりは生存本能に近い物だろう。より安全な方角を目指して進んでいく。
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一方では--
日菜「彩ちゃん、大丈夫?結構歩き続けてるけど。」
彩「うん、全然平気だよ、日菜ちゃん。」
日菜と彩は運良く樹海の同じ場所に飛ばされていた為、彩がバーテックスに襲われるという事にはならなかったのである。
彩「私達には神樹様の御加護があるもん。絶対大丈夫だから進もう。」
日菜「そうだね。それに、私がいるからには百人力だよ。っ!彩ちゃん、私の後ろに隠れて!」
日菜が遠くに何かを見つけた。
彩「ひ、日菜ちゃん!?」
日菜「安心して、私の精霊はこういう時も役に立つんだから。行くよ"座敷童子"」
日菜は"座敷童子"を憑依させ、彩に触る。"座敷童子"の能力は自身や武器を透明にする事。銃を透明にすれば発射される弾も透明になる。また、触った対象も透明にする事が出来る。この能力を存分に駆使して2人は新種との戦闘を避けてきたのである。
彩「…ホントに見つからないね。」
日菜「へへん!隠密行動に適してるからね!」
新種が見えなくなったところで日菜は"座敷童子"を解除したその時だった。
花音「見つけたっ!日菜ちゃんと彩ちゃんだよ!」
日菜「花音ちゃん!それに千聖ちゃん、イヴちゃんも!!」
彩「赤嶺ちゃんも一緒だよ!?」
赤嶺「急に現れたって事は"座敷童子"の能力だね。成る程……確かにそれなら気付かれずに樹海を行動出来るね。流石は"氷河家"だね。つぐちんの子孫だから当然か。」
イヴ「これで防人組は全員集合ですね。」
赤嶺「再会は良かったけど……。」
赤嶺が目をやった方向には声に気付いた新種が6人目掛けてやって来る。
赤嶺「敵さんの登場だよ。」
千聖「全員無事に切り抜けるわよ!戦闘準備!!」
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花音「彩ちゃんは私の後ろに隠れてて。」
彩「うん。ありがとう、花音ちゃん。」
千聖「日菜ちゃん、敵の弱点は関節よ!装甲は堅いけれど、そこを重点的に攻撃すれば私達でも何とかなるわ!」
日菜「オッケー!!見えない銃弾で打ち抜いちゃうよ!!」
千聖が新種の相手をしている間に、日菜は"座敷童子"を憑依、見えない銃弾で新種の関節を的確に狙い撃つ。あまりに突然の出来事で新種も攻撃が当たった瞬間に何が起こったのかと一瞬怯んでしまう。
千聖「隙ありっ!!」
その怯んだ隙を突いて千聖は新種の関節を切り落とす。
イヴ「へ……中々良いチームじゃねぇか。」
日菜「確か盟友の攻撃なら普通に効くんだよね?」
赤嶺「そうだね。」
日菜「じゃあ……。」
日菜は赤嶺に触る。すると日菜と一緒に赤嶺の姿も消える。
日菜「これなら気付かれずに攻撃できるよ。」
赤嶺「良いね……。"赤嶺家"と"氷河家"のコンビプレーの復活だよ!」
敵の弱点も分かり、仲間の数も増えた千聖達の敵ではなくあっという間に新種を殲滅する4人なのだった。
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千聖「彩ちゃん、大丈夫だった?」
彩「うん、全然平気だよ。花音ちゃんがずっと守ってくれたから。」
敵を殲滅したところで6人は改めて情報のすり合わせを開始する。
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赤嶺「持っている情報に差は無かったけど、巫女さんの加入は大きいね。」
彩「何か神託が来れば、みんなに伝えるよ。」
赤嶺「これからみんなで行動する訳だけど、1つ良いかな?人数も増えてきたからリーダーを決めないと纏まらないと思うんだよね。みんなは千聖って言うと思うんだ。」
花音「防人のリーダーって言ったら千聖ちゃんだし。」
赤嶺「私もそれに同意だよ。」
千聖「良いのかしら、それで。」
赤嶺「うん。私はリーダーって感じじゃないから。……1人で樹海にいた時に思ったんだけどさ。これが何かの任務だったらもっと心穏やかだったのにって。だから自分で自分に命令して任務感を出してたんだよね。職業病ってやつなのかな。」
イヴ「分かります、その考え方。」
赤嶺「全力で補佐するから、千聖リーダーお願いして良い?」
千聖「……分かったわ。全員無事で、犠牲ゼロで夜の樹海を踏破するわよ!!」
6人は再び樹海を歩き出す。
花音「端末の電池が切れるまでにはなんとかしたいね。」
イヴ「霊的な仕掛けが施されているとはいえ中々減りませんが、限りはあります。」
千聖「…………っ。」
千聖は拳を握り締める。千聖は怒っていた。この世界に。いや、この世界を作り出している神そのものに。
千聖「……誰がどういう目的か分からないけれど、許せないわね。みんなを苦しめている首謀者を、見つけ出す。」