序章完結、此処から勇者部の新たな御役目が始まる事となります。新たな謎が勇者部達を待ち受けます。
樹海--
日菜と彩と合流してからどれくらい経っただろうか。花音の直感を頼りに樹海を突き進んで行くのだが、他の仲間に出会す事が出来ずにいた。
千聖「ふぅ……。花音、少し声を落としてくれるかしら。」
千聖は戦衣の録音機能を起動し、これまでの事を記録する。
千聖「防人、白鷺千聖。状況を記録しておく。樹海にいきなり飛ばされてから……大体1週間程かしら。相変わらず夜は明けない。赤嶺、松原、若宮、氷河、丸山とは合流出来た。しかし、それ以外の面々とは全く合流出来ない。」
千聖達は他の仲間を探している道中、泉を発見していた。幸い人体に無害だった為千聖達6人はここを拠点としてこれからの対策を練っている。
千聖「……水の確保は出来た。食料は樹海に生えている実を食べているわ。この様な状況に置かれていても、幸いな事にみんなの健康や精神状況に問題は見られない。今の内に打開策を見つけていきたい。探索を続けるわ--以上。」
彩「………むむむ…。」
イヴ「大丈夫ですか?彩さん。」
彩「ごめんね。神託が中々来なくて。」
唯一ここを抜け出す事が出来る可能性がある神託も未だ降りる事がなく、彩も責任を感じている様だった。
イヴ「謝る事ではありません。気長に行きましょう。」
一方で日菜、赤嶺、花音はというと--
赤嶺「はーっ。水浴び気持ち良かったぁー!」
日菜「リフレッシュするよー!見張り交代するから、行って来なよ。」
花音「千聖ちゃんも!気持ち良いよ。」
千聖「じゃあ彩ちゃん、次は私達が行きましょうか。」
彩「うん!」
赤嶺「さっぱりしたらマッサージしてあげるね。」
千聖、彩、イヴが今度は泉に向かった。
花音「もぐもぐ……。ここの実って個々で少し味が違うんだね…もぐもぐ。」
赤嶺「一口ちょーだい。………あ、本当だね。また今までとは違う味。」
日菜「こんな樹海でも、食べ物があって飲み水もある。順応出来るもんだね。」
赤嶺「っ!?」
赤嶺が敵の気配に気がつく。花音が水浴びをしていた千聖達を呼びに走った。
千聖「全く…水浴びをしている時に。」
花音「千聖ちゃん、端末持ってきた……ふぇええ!?」
花音は顔を真っ赤にして視線を下に晒す。目の前には産まれたままの状態の千聖と彩。千聖は端末を受け取り、戦衣を纏った。
千聖「樹海に順応し過ぎるのも問題ね。さぁ、行きましょうか。」
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千聖達は新種との戦い方に大分慣れてきたようだった。流石に1週間も同じ敵と戦い続けていれば敵の行動パターンも読めてくる。
赤嶺「…勇者パンチ。っと、日菜、次は向こうを攻めるよ!」
日菜「了解、盟友!」
日菜の"座敷童子"の能力をフルで生かし、赤嶺が広範囲に行動。
千聖「イヴちゃん、今よ!」
イヴ「任せな!おりゃああああっ!」
千聖とイヴの連携で新種の節を集中攻撃しながら1匹づつ確実に倒していく。
花音「彩ちゃんには指……鎌一本触れさせないんだから!」
彩への攻撃は花音が身を挺して守っていく。このフォーメーションを崩さぬ様千聖達は戦い続けていった。
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千聖達が夜の樹海へ迷い込んでから半月が経過しようとしていた。
花音「もうここに飛ばされてから半月は経ったよね……私達戻れるのかなぁ。」
千聖「戻れるわ。弱音を吐ける心の余裕が残っているのなら探索行くわよ。」
これも千聖なりの励まし方である。花音を焚きつけ千聖達は今日も樹海を歩き続ける。
赤嶺「良いリーダーがいるから、こんな状況でもみんなしっかり行動出来てるよ。」
千聖「あなたのタフさにも助けられているわ。」
赤嶺「あはは。こういう時、身体を鍛えておいて良かったって思うね。」
千聖「あなたって慣れると結構距離が近いのね。花音で慣れてるから良いけれど。…散々な目に遭っているけど、互いを理解出来たのは良かったわ。」
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6人は探索を続けたが、今日も他の仲間は誰一人見つける事が出来なかった。
赤嶺「ふーっ。今日の探索も終わりっと。沢山敵倒したね。」
花音「相も変わらず樹海暮らしだけど、そろそろどうにかなりそうな気がしてきたよ。」
イヴ「それなら嬉しいですけど…。」
千聖「パニックになるより全然良いわね。」
彩「みんな、今日もお疲れ様。みんなが沢山バーテックスを倒してくれたから、何だか霊的な風通しが良くなってきた気がするよ。神託が拾いやすくなるかも。」
千聖「神託は脱出する道筋の1つ。少しでも可能性を上げていかないと。」
日菜「ねぇねぇ、私もっと御先祖様の話し聞きたいなぁ。」
赤嶺「つぐちんはカッコいいんだよ。バァァーンって感じで。」
日菜「おぉ……何か凄そう。」
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次の日--
千聖達がそろそろ探索に行こうとした寸前、彩が血相を変えて叫び出した。
彩「みんな!神託が!神託があったよ!」
赤嶺「おぉー。流石巫女さん。」
彩「えっと…えっとね……。」
神託は抽象的でしか降りてこない。今彩ははやる気持ちを抑えながら必死でみんなに分かりやすいようにまとめようとしていた。
千聖「落ち着いて、彩ちゃん。ゆっくりで良いわよ。」
彩「う、うん。すー、はー。大丈夫、整ったよ。」
花音「謎かけみたいだね。」
彩「新しい敵が、沢山の敵を引き連れて現れるから、それを倒せば問題が解決するって。」
千聖「っ!これは気合を入れる必要がありそうね。」
日菜「敵を倒す事はここに来てからずっとやってる事だよ!」
やがて彼方から無数の星屑、そして新種のバーテックス、そして今まで見た事が無いバーテックスが千聖達目掛けてやって来る。
赤嶺「彩ちゃんの言う通り敵が来たよ。」
花音「見た事無い敵もやって来たぁ!?」
千聖「どうやらあれが親玉ようね。行くわよ、みんな。こんな目に遭っている怒りを全部ぶつけてやるわ!来なさい"尊氏"!」
イヴ「防人と赤嶺さんだけで決戦……。」
イヴ「面白ぇじゃねぇか!気合の入れどころだぜ、氷河!来な"雷獣"!」
日菜「言われなくても!行くよ"座敷童子"!」
花音「彩ちゃんは私が守るよ。来て"波山"!」
赤嶺「これは強敵だね。改めてスイッチ入れ直しておこうかな。火色舞うよ"山本"。」
4人は一斉に敵の群れに飛び込むのだった。
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日菜「星屑は任せて!狙い撃つよ!」
日菜は遠距離から銃で星屑を正確に狙い撃っていく。狙われていると気付いた他の星屑は日菜の方へ突進する。
日菜「来た来た!狙い通り、こっちおいで。」
次に日菜は自身を透明化させ星屑の動きを混乱させる。
日菜「近付いてきた敵は……こうっ!」
今度は剣を使って近距離で攻める。
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イヴ「おらぁ!虫けらども!叩き切ってやるから覚悟しろよ!」
新種の相手をしているのはイヴ。
イヴ「あの時やられた借りを利子付けて返してやるよ!」
ここに飛ばされた直後は全く歯が立たなかったイヴだったが、半月の経験により1人で相手取れる程成長していた。新種は高速で鎌を振り下ろすが、
イヴ「遅え遅え遅え!!止まって見えるぜ!」
振り下ろした直後の隙を突いて節を的確に斬り伏せていく。
イヴ「そして、これが……。」
イヴは銃を新種に向けて構える。効かないと分かっているのか新種は避ける素振りを見せず堅牢な表皮を盾にして近付いて来る。
イヴ「新技だぁ!!」
イヴは狙いを定め引き金を引く。直後轟音と共に新種の体に風穴が空いた。
イヴ「へ…。何が起きたか分かってねぇ素振りだな。レールガンってヤツだよ。」
"雷獣"の雷の力をフルに使った電磁砲。体力の消費は激しいが、堅牢な表皮を持った新種すら貫くその威力は凄まじいものを誇る。
イヴ「はぁ……。何発も撃てねぇが十分だ。覚悟しな!!」
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千聖と赤嶺は親玉であるバーテックスと戦っていた。その姿はまるで巨大な蜘蛛の容姿をしている。
千聖「親玉ってだけあって、中々やるわね。」
赤嶺「巨体だから呪詛の力が効きにくい…。」
2人が近付こうにも親玉は糸を吐いて接近を許さない。
千聖「………。」
千聖は攻撃を避けながら作戦を練っている。
千聖「赤嶺、後は任せたわよ。」
赤嶺「千聖?」
千聖さ避けるのを止め、親玉の真前に立った。直後親玉は糸を吐き千聖を糸で包み込んでしまったのだ。
赤嶺「千聖!!」
絡めとった千聖を親玉はゆっくりと自分の元へ引き寄せていく。赤嶺は助けまいと近づくも、
千聖「来ないで!」
赤嶺「で、でも…。」
千聖「私を信じて。」
赤嶺「…分かった。」
赤嶺は千聖の言葉を信じ、構えを崩さず親玉に狙いを定める。やがて自身の口元まで引き寄せた親玉はゆっくりと大口を開け、千聖を飲み込もうとしていた。
赤嶺「くっ……!」
赤嶺は千聖を信じ、助けに行きたい気持ちを押し殺してただ待っていた。次の瞬間、
千聖「そこよ!!」
千聖が糸を切り裂き、親玉の口目掛けて銃弾を撃ち込んだ。
千聖「近付くにはこれしか無かったけど、成功したようね。今よ、赤嶺!」
赤嶺「全く……ヒヤヒヤしたけど、信じて良かったよ!」
赤嶺は怯んでいる親玉目掛けて拳を振り下ろす。
赤嶺「勇者パンチ!」
勇者パンチが命中し、親玉は宙に吹き飛ばされた。
赤嶺「トドメは任せたよ、リーダー。」
千聖「任されたわ。はぁっ!!!」
千聖の鋭い一閃が親玉の腹部を切り裂き、親玉は呻き声を上げて光となって消えるのだった。
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イヴ「はぁ…はぁ…はぁ……ふぅ…。千聖さん、敵の全滅を確認しました。」
千聖「はぁ…はぁ…。よし、全員無事ね。」
全員満身創痍ではあるが、大きな怪我も無く殲滅する事に成功する。
赤嶺「みんな…ナイスガッツ。」
日菜「盟友もね…流石だよ。」
直後、辺りが光り出す。樹海化が解ける前兆である。
花音「も、戻れるの?」
彩「うん!樹海化が解けるよ!」
6人は離れ離れにならないよう手を繋いで一ヶ所に集まる。
イヴ「ちゃんとみんなの所に戻れるでしょうか?」
彩「神樹様、どうかお願いします…。」
光の明滅が激しくなっていく。
赤嶺「樹海化が解けるよ!」
6人が辿り着く先は--
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花咲川中学、校庭--
6人が目を開けると、そこは花咲川中学だった。
千聖「……ここは、間違いなく…。」
イヴ「はい……花咲川中学です。」
花音「……結局ゴールドタワーじゃ無いんだね。」
ここは元の神世紀300年の花咲川中学なのか、そうでないのか。その疑問は直ぐに晴れる事となる。
夏希「あー!!いたーー!!」
あこ「みんな、何処行ってたのー?探したよー!」
日菜「異世界に戻ってきちゃったって事?そっちはみんな揃ってるの?」
あこ「うん。防人組がいないからみんなで探してたんだ。」
どうやら防人組意外の勇者達もみんな戻ってきてしまっているようだった。
あこ「夏希、みんなを部室に召集だ!」
夏希「分かりました、あこさん!」
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勇者部部室--
イヴ「何ぃー!?俺達の姿が見えなくなったのは数時間程度だって!?」
イヴは余りの事実に驚き人格が変わってしまう。夜の樹海での半月は此処では数時間程度の時差があるようだ。
小たえ「世界が樹海化した訳じゃなくて、千聖さん達が夜の樹海に行ったって事なのかな。」
友希那「私達も狭間の空間の先が元の異世界だった事も驚きだったけど、白鷺さん達も大変だったようね。」
日菜「他のみんなは異世界に戻って来て、私達だけが夜の樹海に飛ばされたなんて。」
燐子「飛ばされたのは防人の皆さんと赤嶺さん……。」
蘭「どういう事なんだろう。」
有咲「全員無事だしお疲れ。本当優秀な指揮官だな。」
千聖「みんなが頑張ったお陰よ。」
香澄「何はともあれ、無事で本当に良かったよ。」
高嶋「みんなお疲れ様。こっちでもね、何か今日は夜が長くて変だなーって思ってたんだ。」
中沙綾「そしたらみんながいない事に気が付いて。」
美咲「元の世界に戻ったのかと思いましたよ。」
りみ「とにかく探そうって流れになって。」
赤嶺「じゃあ、一応こっちでも異変は起きていたんだね。」
小沙綾「造反神を鎮めた今、一体何が……。」
神樹からの試練を乗り越えた今、異世界にいる理由も無くなった筈なのだが、勇者部は何の理由かまた異世界に戻って来てしまっている。そして、防人組と赤嶺だけが夜の樹海に飛ばされた。これには何か理由があるのだろうか。
リサ「とにかく何かしらの神託が予想されるから私とモカは今後に備えておくよ。」
彩「私も大丈夫だよ。みんなが守ってくれたから神託に備えるよ!」
中たえ「うーん……。新しい何かが始まる予感がするよ。」
再び異世界に集められた勇者部プラス赤嶺。この異世界で一体何が起こっているのだろうか。外には大きな満月が静かに異世界を照らし続けていた。