良ければご覧ください。
新世紀300年5月、突如けたたましく鳴ったアラームと共に周りの時が止まり、日常の世界は突然異質なものへと変わった。
香澄と沙綾は驚きながら周りを見回す。
香澄「教室にいたのに…何これ……。」
呆気に取られた香澄とは対照的に、沙綾は落ち着いている様にも見える。まるで初めて見る世界では無い様に。
香澄「さーや?大丈夫?」
沙綾「あっ、うん、何だか怖くて…。」
香澄「大丈夫!私がついてるからね!」
香澄が答えると沙綾も笑顔を取り戻す。
少し経ち、そこに牛込姉妹がやってきた。
香澄「ゆり先輩!りみりん!良かったー!」
香澄は2人を見つけると安堵の息を漏らし抱きついた。
ゆり「不幸中の幸いだわ。2人がスマホを手放していたら見つけられなかった。」
ゆりがそう言うと、香澄と沙綾はスマホを見る。
確かにスマホにはピンク青黄色緑の4つの点があり、それぞれピンクが香澄、青が沙綾、黄色がゆり、緑がりみを示している。
ゆり「この事態に陥った時、自動的に機能する様になってるの。」
ゆりが淡々と説明し驚きの事を口にする。
ゆり「私は大赦から派遣された人間なの。ここは神樹様が作った結界の中。私達はここで敵と戦わなければならない。」
その時スマホの画面に4人とは違う点が現れる。そこには"乙女型"と書かれていて、4人が点の示す方向を見ると、まるでこの世の物とは思えない巨大で異質な物体がゆっくりとこちらへ向かってきていた。
ゆり「あれはバーテックス。世界を殺す為に攻めてくる人類の敵。バーテックスが神樹様に辿り着いた時、この世界は死ぬ……。」
沙綾は感じていた。アレを見ているだけで"恐怖"という感情が溢れてくる。
根源的な恐怖---
まるで恐怖という概念が形を持っているかの様。
沙綾「あんなのと戦えるわけない…。」
震えが止まらない沙綾を香澄が抱きしめる。だがそれでも沙綾の震えは止まらない。
沙綾「ダメ……戦うなんて…出来るわけがない……。」
ゆり「香澄ちゃん、沙綾ちゃんを連れて逃げて。」
ゆりが香澄に言う。
ゆり「りみも香澄ちゃんと一緒に逃げて。」
りみにも逃げる様促すが、
りみ「ううん、お姉ちゃんを残しては行けない。ついて行くよ、何があっても。」
りみのこの言葉を聞きゆりは思い出す。
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ゆり「りみ、もしお姉ちゃんに隠し事があったらどうする?」
りみ「どうしたの?急に。そうだなー、付いて行くよ何があっても。だってお姉ちゃんは私の唯一の家族だもん。」
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ーーー
ゆり「ごめんね、ありがとう。」
ゆりがそうりみに言うと、2人はスマホのアプリ"NARUKO"に現れたボタンをタップする。その瞬間、2人は勇者システムを起動し勇者へと変身する。
牛込ゆりは、髪が金色へと変化し黄色の勇者服を身に纏う。そして左の太腿にはオオキザリスの花の刻印がある。そしてその横には、青っぽい犬の様な生き物が宙に浮いていた。
牛込りみは、緑を基調とした勇者服を纏い、背中には鳴子百合をモチーフとした刻印がある。同じように横には、黄緑色で頭に葉が生えた生き物が。
ゆりの横にいる生き物は"犬神"。りみの隣にいるのは"木霊"と呼ばれる精霊である。
次の瞬間、ゆりは"乙女型"と呼ばれるバーテックスに向かって突っ込んでいった。刹那、ゆりの手から大剣が現れた。
ゆり「戦う意思を示せば武器が出てくるわ。」
そうりみに言い放ち、ゆりはバーテックスへと斬りかかる。
ゆり「黙っててごめんね。」
ゆりがスマホで香澄達に謝る。
香澄「ゆり先輩は私達の為に黙ってたんですよね。だったら先輩は全然悪くないです。」
その最中バーテックスはゆり達に向かい光球を飛ばし、2人は躱すも光球は突如爆発、2人は吹っ飛ばされてしまう。
香澄「ゆり先輩!りみりん!」
香澄がバーテックスの方を見ると、バーテックスは香澄と沙綾を狙っているかの様にゆっくりだが少しづつ近づいてきていた。
沙綾「逃げて!香澄死んじゃうよ!」
香澄「友達を置いてそんな事絶対にしない!ここでみんなを見捨てたら勇者じゃない!」
香澄はそう言いながらバーテックスへと向かっていった。
沙綾「ダメ!香澄!」
香澄「嫌なんだ…誰かが傷つく事や辛い思いをする事は……。」
その時、香澄の体が光り出し--
桜色の勇者へと姿を変えたのだった。