赤嶺とつぐみ、2人を鍛えるべく現れたのは西暦の時代、終末戦争を生き抜いた生きる伝説--
西暦の風雲児だった--
勇者部部室--
中沙綾「"鏑矢"……。それが赤嶺さんがいた時代の勇者の呼び名……。」
香澄「平和な時代だったのに勇者が必要だったんだね…。」
赤嶺「前に言った様に平和を脅かす人達が出てきたんだよ。"天空恐怖症候群"--天の神を畏れ信仰する人達が出てきたんだ。」
紗夜「…………。」
夏希「?紗夜さん、大丈夫ですか?顔色が悪いですけど……。」
紗夜「ええ…大丈夫です。」
赤嶺「そして"鏑矢"として私はつぐちんと一緒に"ある人"の元で鍛錬を受ける事になるんだ--」
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神世紀71年、羽丘中学校、寮--
六花「では歓迎会とくれば、ご馳走です。お金は大赦から頂いているので買い出しに行きましょうか。」
赤嶺「料理出来る人いるの?」
六花「え…っと……。」
2人が沈黙していると、
つぐみ「私料理出来るよ。良く手伝ってたから。」
そう言うとつぐみは徐に冷蔵庫を開けて中に入っていた小松菜を使って料理を始めた。
赤嶺「いきなり料理を始めたけど、手慣れた手つきでびっくり!」
六花「手つきは凄いけど、問題は味だよね…。」
赤嶺「でもすっごい包丁捌きだよ。それに良い匂いもしてきました。」
ものの数分でつぐみは何品か作り上げ、2人は味見をする。
つぐみ「味には自信があるけど、どうかな?」
赤嶺「うわぁー!小松菜がこんなに美味しく感じたのは初めてだよ!」
六花「沢山種類がある細巻きも可愛いし、飽きないです!」
つぐみ「六花さん。この寮ではある程度自炊する必要があるんですよね?」
六花「そうですね。朝は食堂でご飯が出ます。」
つぐみ「じゃあ、私が食事をつくるね。香澄ちゃん、良いかな?」
赤嶺「えーっ。良いの?な、何だか全部やってもらってる雰囲気だけど。」
六花「雰囲気じゃなくて実際そうなんですけどね…。」
赤嶺「流石に全部任せっきりは良くないよ。私も手伝える事があれば手伝うから。」
つぐみ「ありがとう。何かあれば言うね。」
赤嶺「う、うん。」
赤嶺(何だろう……。何だかじっと見つめられるとドキドキするなぁ。)
つぐみ「ん?どうしたの?」
赤嶺「な、何でもないよっ!」
真っ赤になった頬をつぐみに見せない様に赤嶺は顔を必死に晒した。
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次の日、象頭橋--
歓迎会の次の日、六花は2人を連れて羽丘中学近くの象頭橋へと来ていた。
六花「今回、私達が選ばれたのは特別な御役目の為です。私は"巫女"として、2人は"鏑矢"としてです。」
つぐみ「……私達が行う事は神事と聞いています。」
六花「そう。私達が行う事は妖魔を退散させ、五穀豊穣や無病息災を祈願する神事です。」
赤嶺「大赦で時々やってますよね。」
六花「それは普通の神事ですね。こう、弓の弦を鳴らして穢れを祓ったりするやつです。でも、私達は違います。」
突如六花の雰囲気が一変する。
六花「"物理的"に矢を放つ。そして妖魔を退散させます。その放たれた矢は"鏑矢"と呼ばれます。つまりお2人の事ですね。」
赤嶺「え?私達は妖魔と戦うんですか!?……あの、"伝説の勇者"の様に?」
六花「違いますよ。そんな敵はもういません。私達の敵は………平和を脅かす"人間"です。」
赤嶺・つぐみ「「っ!」」
六花「だから勇者様の様に装束を纏う事もありません。ただ粛々と、目標を射抜くんです。」
つぐみ「穢れを祓う大変な御役目だとは聞かされてましたけど……。」
赤嶺「そ、それを中学生の私達が……。」
一気に空気が重くなる。六花は体よく言ってはいるが、人を粛清しろという事である。それをまだ年端もいかない中学生の女の子が。
六花「神樹様に選ばれた無垢な少女は、その体に大きな力を宿せるんです。祝詞で、その力を2人に付与させるのが私の役目。そして、その超常的な力で、厄を祓うのがお2人。決して表には出せない御役目です。」
つぐみ「厄を…祓う……。つまりそれは…。」
六花「……神の力を振るわれた人間は昏睡状態に陥るそうです。その人間が最終的に助かるのか、神罰が下るのか……それは神樹様が決める事。2人は気にせず矢として役割を全うしてください。」
眈々と説明する六花を他所に、つぐみは何か思うところがあるようだった。
つぐみ「………。」
赤嶺「つぐちん……。」
六花「いきなり言われても絶句でしょうね。より詳しくは大赦の人が説明してくれます。言える事は一つだけ。これからの平和を守る為に神樹様が私達を選んだんです。」
赤嶺「神樹様の…御意志……。」
つぐみ「……それは、名誉な事です。」
六花「ちなみに、お2人の訓練には"あの御方"も見てくださるそうです。」
"あの御方"--
今の時代でそう呼ばれる人物はただ1人しか存在しない--
赤嶺「あ、あの御方って……!まさか…!」
つぐみ「うん…。西暦の時代、終末戦争を生き抜いた伝説の勇者……!」
赤嶺「花園…友希那様……!」
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花園友希那--
西暦の時代、5人の勇者と共に四国を護り抜いた伝説の勇者。神世紀71年の今、齢85歳になった今でもその実力は衰えておらずその存在は四国に住んでいる人なら誰もが知っている。本来の名前は湊友希那なのだが、西暦の終わりにとある理由から花園へと名を変えている。
六花「それだけ"鏑矢"が大事だって事です。平和になった筈なのに、再び終末戦争に巻き戻るような時間が起ころうとしている…。それを止める為の手段が"鏑矢"…私はそう聞いています。」
赤嶺「もし、そんな事が起これば…。」
つぐみ「放ってはおけないね……。」
ここから2人の、"鏑矢"としての訓練が始まっていく。
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大赦、訓練場--
2人が訓練場に入ると、そこには大赦の神官が壁に沿うように座っており、最奥には1人の老齢の女性が瞑想をしていた。
赤嶺「あ、あの御方が……。」
つぐみ「は、花園様…。」
友希那「2人ともそんなに畏まらないで頂戴。楽にして良いわ。」
2人は緊張な面持ちで友希那の前に座った。
友希那「これからあなた達2人を指導する湊--」
赤嶺「湊?」
友希那「…ごほん、花園友希那よ。早速だけれど、これから1年であなた達を徹底的に鍛え上げるわ。来るべき時に備えて。あなた達、覚悟はあるかしら?」
赤嶺・つぐみ「「……はいっ!!」」
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赤嶺香澄と氷河つぐみも、厳しい訓練の中で、その腕を鍛えていった。香澄は接近戦を主体に。つぐみはそれを補佐する形でめきめきと力をつけていく。最初は友希那に触れる事すら出来なかった2人だった。毎日鍛錬が始まる時間よりも早くから自主練、そして鍛錬が終わった後も夜遅くまで残り復習をする。次第に友希那の動きに着いて行ける様になり、半月が経った頃には漸く一発だが攻撃が通るようになった。
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そして時は流れ、1年後の神世紀72年。
大赦、訓練場--
友希那「今日であなた達を教えるのは最後になるわ。今日まで良く着いて来れたわね。私が教える事はもう何も無いけど……最後に1つ。」
赤嶺・つぐみ「「?」」
友希那「西暦の時代、私は友である美竹蘭からバトンを受け取り、終末戦争を生き抜いてきた。それは長く険しい、終わりが見えない道で私はその中で多くの友を失ってきたわ。私含め全ての勇者達が、時に恐怖して、悩んで、苦しんで……守りたいものの為に戦っていき、そして半ば降伏に近い形で今の平和な世の中がある。あなた達もこの先同じ事が待っているかもしれない。」
赤嶺・つぐみ「「………。」」
友希那「今、私はそのバトンをあなた達2人に託す。」
つぐみ「友希那様からの……。」
赤嶺「バトン……。」
友希那「そのバトンの名は"勇気"。または"希望"、"願い"とも言える……。信じて欲しい。あなた達の後ろには、バトンを引き継いできた沢山の人達がいる事を。見回して欲しい。あなた達の隣には、今まで一緒に過ごしてきた友達や家族がいる事を。決して1人では無い事を知って欲しいの。私が最後に贈る言葉は、"戦いなさい"や"頑張りなさい"でもないわ。」
友希那「"生きて"--」
赤嶺・つぐみ「「えっ?」」
友希那「大切な人がいるのなら、その人の事を思い出して欲しいの。あなた達が生きるのを諦めてしまったら、その人が悲しむ事を思い出して欲しい。私は多くの大切な友達を失ってしまった。あなた達の大切な人に、私と同じ思いをさせないで。その人のところへ、必ず戻ってあげて。」
言葉1つ1つの重みが違う。激動の西暦を生き抜き、その中で培ってきた本当の思いがこの言葉に溢れている。
赤嶺「……分かりました。その御言葉、しかとこの心に刻み、」
つぐみ「そのバトン確かに私達が受け継いでいきます。」
友希那からの最後の言葉を受け取り、2人は訓練場を後にする。2人が出ていった後、友希那は大赦のとある部屋へと赴いた。
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大赦、とある部屋--
そこでは1人の友希那と同じくらい老齢の女性がベッドで眠っていた。
友希那「……待たせたわね、リサ。」
友希那が呼びかけるもリサからは返事が返ってこない。
友希那「今日でやっと訓練が終わったわ。これで私の役目も終わる。バトンは未来の勇者に託したわ。」
友希那は眠っているリサに優しく話しかけるかのように話を続けていく。
友希那「赤嶺って少女。まるで香澄の姿そっくりだったわよ。名前も香澄で一緒。本当に生まれ変わりと思ったくらいよ。腕も確か。これからの大赦を引っ張っていくのはあの子でしょうね。」
リサからの返事は無い。体動も無い。
友希那「そしてもう1人の氷河さん。苗字からもしやとは思ったけれど、どうやら紗夜の子孫の様よ。紗夜と同じで愚直で真っ直ぐ。赤嶺さんに何かがあってもちゃんとサポートする筈よ。だけど心に迷いがあるのも紗夜と同じ………。それを御する事が出来るかどうかはあの子次第。」
全てを話し終わると友希那は動かないリサの手を握り、
友希那「美竹さん、燐子、あこ、香澄…紗夜……そして、リサ……長い事待たせてしまったわね……。この続きは…一緒に……話し………ま…しょ……う…。」
神世紀72年--
"神事"が始まる一方でバーテックスの襲来を実体験した最後の生き残りが老衰で死去。
それを2人が知る事は無いだろう--
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同時刻、象頭橋--
六花「いよいよ今夜から"神事"が始まります。」
つぐみ「全ては万人の暮らしの為に…。」
赤嶺「火色舞うよ…。」
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3人が目指す場所は象頭橋近くのとある集会場。大赦からの情報ではここに大規模な天の神の信仰集会が開かれているとの事だ。3人は天井裏から様子を伺っていた。
赤嶺「段取りは大丈夫?」
つぐみ「オッケーだよ。」
そして六花は祝詞を唱え始める。
六花「掛巻くも畏き神樹、
唱え終わると2人の身体に青白い光の膜に包まれる。
赤嶺「行くよ。3.2.1…今!」
赤嶺の合図で2人は会合中のど真ん中へ降り立った。
教祖「な、なんだ!?」
赤嶺「あなた達な恨みは無いけれど、これも世界の平和の為だから…。」
つぐみ「あなた達の行く末を決めるのは神樹様…神に祈る事です。最も、その神は神樹様の敵ですけどね。」
2人は信者達を次々に拳で殴打していく。そして殴られた信者は昏倒して倒れていく。倒れた信者の行く末を決めるのは神樹だ。青年や老人、年端もいかない子供もいる。その全てが粛清対象であり、赤嶺は粛々と御役目を遂行していく。自分の感情を押し殺してまでも。
つぐみ「………。」
教祖「ま、まて……!お、御慈悲を………。」
赤嶺「……それは神樹様が決める事だよ。」
赤嶺は最後に残った教祖を殴打、御役目遂行を完了させた。
かに思えた--
赤嶺「つぐちん……その子で最後だよ…御役目を遂行しないと。」
つぐみ「……分かってる……分かってるけど………この子は教祖に魅せられた親に着いて行っただけかもしれない。」
つぐみの後ろには1人の少年が震えて縮こまっていた。彼の親も既に昏倒している大勢の中に混じっているのだろう。
赤嶺「それを決めるのは私達じゃない……神樹様だよ。」
つぐみ「そうだけど……。」
六花「…………。」
六花は2人の様子をただ見ているだけ。横入りする気はなかった。
赤嶺「どいてつぐちん…。つぐちんがやらないなら私がやるよ。」
赤嶺は庇うつぐみを押し除け強引に近付こうする。その目に迷いは無い。
つぐみ「待って香澄ちゃん!」
赤嶺「………ごめんね。」
神世紀72年某月某日深夜、大規模テロ未遂鎮圧--
集会参加者473人が昏睡、そこから1時間後全員の死亡を大赦が確認--
その後"赤嶺家"はその功績を買われ大赦での地位を確実なものへとする一方、"氷河家"は私情が混ざったとし徐々に衰退。"赤嶺家"との地位が開いていく事となった。そして後にこの事実は大赦により検閲され"カルトの集団自殺事件"として世に知れる事となる。
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勇者部部室--
赤嶺「これが神世紀72年の真実。この事件をきっかけに"氷河家"は衰退していく事になる。」
日菜「…………。」
千聖「日菜ちゃん…。」
赤嶺「だけど……前にも言ったけど、それでも私はつぐちんの事を尊敬してるんだ。私情が混じって失敗したけど、人間的にはつぐちんの方が正しいから…。」
日菜「やっぱり御先祖様は凄い人だったんだね…。」
千聖「そうね。確かに彼女も立派な"勇者"だわ。」
日菜「真実を話してくれてありがとう。今からその偉大な御先祖様に会えるのが楽しみで待ちきれないよ。」
香澄「私も!早く会いたいな!」
赤嶺「……そうだね!すっごく良い人だからきっとすぐ仲良くなれるよ。」
新たな仲間の事を知った香澄達勇者部。その仲間が到着する日は近い--