今回の主役はモカちゃん。4人いる巫女の中で巫力の力関係は
モカ>リサ>彩>沙綾
となっています。
たった1人で諏訪を守り切る中でモカの巫力は実は1番高いのです。
勇者部部室--
リサの体調が良くなってから数日が経った頃。
リサ「これって……神託だ。モカ、彩。沙綾も…集中して。」
彩「うん、リサちゃん……。」
中沙綾「感じる……瞼の裏に何かが見える……。」
モカ「………………。」
沙綾を含め4人が神樹からの神託を受け取る中、全員が曇った表情を浮かべた。
彩「変だよ…いつもより不鮮明で……イメージにノイズの様な物が………。」
リサ「深く集中して……。」
中沙綾「これって……水…かな……。」
彩「大きな波が見えるよ………海。」
モカ「オレンジ色の光……。これは…えっと?」
リサ「夕日………。海………。」
徐々に神託が鮮明になってくる。
中沙綾「この敵の気配には、何だか覚えが……。"爆発型"だ………。」
ゆり・友希那・千聖「「「………。」」」
暫く経ち、降りてきた神託をリサがまとめて話し始める。
リサ「神託だよ。時刻は夕暮れ、西側の海から奇襲攻撃が来る。」
ゆり「沙綾ちゃん、地図を開いて。」
小沙綾「分かりました!」
友希那「海……。だとすると、瀬田さん。」
薫「ああ。先陣は私が切ろう。」
みんなが作戦を練り上げる中、
モカ「西の………海?」
モカは訝しげに首を傾げていた。
リサ「モカ、どうしたの?何か違ったビジョンが見えた?」
モカ「あ……いや。そんな……事は……。」
彩「いつもよりイメージが不鮮明なのはどうしてなのかな…?」
リサ「多分だけど、敵側がこっちに悟られない様にバリアみたいな物を張ってるんだと思う。」
あこ「へっへーん!だけどリサ姉達の力はそれを上回ってた訳だね!」
美咲「奇襲の筈が待ち構えられて、敵さんきっとびっくりだね。」
モカ(海………。それに夕日にしてはあれは…………。ううん、他の3人が同じ意見なんだしそれが間違ってる筈が無い。私の勘違いだよね………。)
勇者部の巫女のリーダーはリサである。そしてその他3人が同じ意見を出したのだ。"3人が同じなのだから自分が間違っている"この時のモカはそう思っていたのである。
蘭「モカ?どうしたの、そんな考え込んで。」
モカ「あ……ううん!何でもない。何でも……ない…よ。」
ゆり「よし、それじゃあみんなでバーテックスを迎え撃つよ!」
赤嶺「うん!」
勇者達は意気込んで西の海へと乗り込んだ。たった1人の不安を残して--
---
西の海--
夏希「さあ、来るなら来い、バーテックス!」
勇者達は全員戦闘態勢で来るバーテックスを待ち構えていたのだが--
小たえ「あれ?来ないよ?」
何故か敵の気配が無いのである。端末を見るも警報が鳴っているのにも関わらず、樹海化は起こっていない。
香澄「さーや、これってどういう事!?」
薫「夕日が沈みかけているけれど、海に異変は無いね……。」
みんなが困惑していたその時、リサから緊急連絡が入る。
リサ「大変だよ!高知県東側、奥物部湖に敵襲!急いで"カガミブネ"で移動して!」
友希那「何ですって!?」
3人の神託が間違っていたのである。予想外の出来事に勇者達は戸惑いを隠せない。
りみ「西の海じゃなかったんですか!?」
有咲「まずい!急がないと!」
ゆり「沙綾ちゃん!"カガミブネ"を!」
中沙綾「は、はい!ですけど、私だけの力じゃ一度に全員の移動は無理です!」
巫力が1人分しかない今の状況では全員を高知へ飛ばすのには限界がある。勇者達は完全に出鼻を挫かれてしまったのだ。
花音「ど、どうするのどうするの!?」
ゆり「先ず沙綾ちゃんと先発隊で飛んで!他はリサちゃん達を待つしかない!」
千聖「く……っ、どうしてこんな事態に。」
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樹海--
薫「全員が揃うまで持ち堪えてみせる!はぁっ!!」
"カガミブネ"で飛んだ先発隊が戦線を維持すべく戦いを始めていた。
高嶋「水の中からどんどんバーテックスが!」
イヴ「チクショー!湖のくせに、すげえ波だ!」
湖の中心では"爆発型"がわざと爆発し、湖に激しい波を作り上げ中々近付く事が出来ない。その時、空が光り"カガミブネ"で残りの勇者達と巫女が樹海に降り立った。
彩「今ので勇者全員到着したよ!」
千聖「疲弊した先発隊は下がって!後発部隊が入れ替わるわ!!」
小たえ「リサ先輩達は私の後ろに来てください!」
友希那「あこと松原さんも防衛ラインに!3人で巫女を攻撃から守って!!」
リサ「巫女が樹海にいることで戦力の分散を招いちゃう………。モカ、私達は下がるよ!」
そう言ってリサはモカを見るとモカは今の光景を目の当たりにして震えていたのである。
モカ「あ……ぁあ……こ、これ……だ。」
勇者達は奇襲に耐え、何とか戦線を維持しているがその最中で沙綾はある物を見つけた。
中沙綾「あの敵は……"爆発型"が何十匹も一塊になってる!?」
さながらそれは巨大な時限爆弾--
紗夜「接近すると大爆発します!皆さん、逃げてください!!!」
紗夜の掛け声虚しく"爆発型"はオレンジ色の光を撒き散らしながら大爆発、その爆発に多くの勇者が巻き込まれてしまう。
香澄・夏希「「きゃあああっ!」」
モカ「あ…ぁあ……大きなオレンジ色の光……私が…見たのは…これだった……。」
大きな波--
そしてオレンジ色の光--
全てモカが神託で見た光景だった。3人の神託が誤りであり、ただ1人モカだけがしっかりとした神託を受け取っていたのである。
燐子「敵全体に仕掛けます…!その間に、体勢を整えてください…!」
燐子は"雪女郎"の広範囲攻撃で湖を凍らせて敵の動きを制限させる。
蘭「モカ、早く樹海から出て!リサさん!モカをお願いします!!」
リサ「モカ、彩!行くよ!」
リサはモカの手を引くが、モカは震えてその場を動かない。
モカ「私のせいだ………私の…。」
友希那「燐子のお陰で隙が出来たわ!ここから反撃するわよ!!」
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勇者部部室--
"爆発型"の奇襲に耐えながら何とかバーテックスの攻撃を凌ぎきり、撃退に成功した勇者達。だが湖や森に多少なりとも被害が出てしまい、怪我をした勇者達も出てしまった。
ゆり「どうしてこんな事になったのか説明してくれる?」
リサ「ごめん……私のせいだ…。神託を読み誤ったみたい…。」
彩「リサちゃんのせいだけじゃないよ!今回は本当にノイズが酷くて……!」
リサが頭を下げ、彩もリサを庇う様に頭を下げた。
有咲「その、ノイズってのは敵の妨害だったんだろ?」
燐子「それは防ぎようがありませんし、仕方ありません……。」
中沙綾「もしかしたら、神樹様の力も弱まってるのかもしれません……。」
友希那「そう……。色々な要素が重なって波立つ水面、オレンジ色の夕日………ね。」
美咲「そう見えたものは仕方ないです。誰のせいでも無いって事で……。」
みんなが巫女2人を庇い合う中、モカが声を荒げて叫ぶのだった。
モカ「違う!私のせいだよ!!」
蘭「モカ……?」
モカ「実は……もう少しだけ見えてたんだ。海にしては周りに緑が多い…とか。夕日にしては、何かちょっと……光が強すぎるんじゃないか…とか。」
蘭「え、違和感を感じてたのにどうして言わなかったの?」
モカ「他の3人が同意見だから、私が間違ってるって……思い込んで………。もし私が何か言って、それが間違いだったら私のせいでみんなが危険な目に遭うから…。それが恐くて……言えなくて……ごめんなさい、ごめんなさい……。」
モカは涙を零しながら謝った。巫力には個人差があり、それも相まってリサが巫女の中でリーダーを務めていた。そして今回リサ含め3人の巫女が同じ意見。気が弱いモカがそれに従ってしまうのは想像に難くない事だった。
リサ・蘭「「モカ……。」」
モカ「本当にごめんなさい……。」
中沙綾「私だって、敵が"爆発型"と分かった時点であの光がそうかもと疑うべきだった……。だから泣かないでモカ。あの時は、それで仕方なかっ……。」
神託にノイズがかかっていたから仕方なかった。敵の姿から察知出来なかったから仕方なかった。全員が仕方なかったとモカを慰める中、
ゆり「仕方なくない。」
りみ「お、お姉ちゃん………。」
ゆりが静かにモカに言い放った。
ゆり「モカちゃん。勇者部五箇条の四つ目を言ってみて。」
モカ「……悩んだら…相談……です。」
ゆり「あなたは"言えなかった"んじゃないの。"言わなかった"んだよ。」
"言わなかった"--
その一言がモカの心に突き刺さる。
ゆり「その事で私達勇者が危険な目に遭うのは構わない。だけど……私達の後ろには何も知らない大勢の一般市民がいるんだよ。それだけは忘れないで。」
モカ「…………はい。」
夏希・あこ・蘭「「……………。」」
部長としての厳格な言葉に他のみんなも言葉が出ない。
リサ「あの………もう少し、時間をもらっても良いですか?」
そんな中でリサが話し出した。
リサ「今回の事は、巫女の連帯責任です。モカだけを責めないであげてください。」
モカ「リサさん………私は巫女としての御役目を放棄したんです……庇ってもらう資格なんて……。」
リサ「違うよ。モカが意見を言えない雰囲気を作ったのは私だよ。涙を拭いて。」
モカ「………私が臆病だったばっかりに…また私は自分の弱さのせいでみんなを……。」
リサ「臆病は決して悪い事じゃないよ?でもね、モカ………。モカにはせっかく持って生まれた高い巫女の力があるんだから。」
モカ「そんな………私なんて……。」
"私なんて"--
モカがよく言う口癖である。
あこ「それ、悪い口癖だよ?自分の事、そんな風に決めつけちゃダメだよ。」
蘭「そうだよ。もっと胸を張って良いんだから。」
花音「わ、私も自分なんてっていつも思うよ!だからその気持ちはすっごく良く分かる。」
彩「あはは。でも、モカちゃんは凄いよ。私、水辺に緑なんて全然見えなかったもん。」
リサ「モカ。私達はモカを頼りにしてるんだよ?」
モカ「でも……また同じ失敗をしちゃうかもしれませんよ。」
香澄「いくら失敗したって良いじゃん!私、何回だってモカちゃんをフォローするよ!」
中たえ「そうそう。失敗は成功の母。」
夏希「あと、七転び八起きとか!転んでもまた起き上がれば良いんですよ!」
有咲「今度からガンガン自分の意見をぶつけて行けよ!」
リサ「ははっ、お手柔らかにね。」
誰かが失敗したとしても、他の人がカバーし合っていく。それが勇者部の最大の強みである。
モカ「みんな……ありがとう。私…頑張るから…。もっと………強くなるよ。」
蘭「私"達"でしょ。1人で頑張り過ぎちゃダメだから。」
モカ「…………うん!」
みんながモカの周りに集まり温かい言葉を掛け合っている中、ゆりは少し離れた所でみんなを見ていた。
ゆり「………ふぅ。やれやれ、何とか纏まったみたいだね。私も人に説教出来るような立派な人間じゃないのにね………。」
りみ「何言ってるの、お姉ちゃん。お姉ちゃん、立派だったよ。」
ゆり「りみ……。」
りみ「帰りにプリン買って帰ろ?今日は私が奢るね。」
ゆり「ありがと。」
叱ってくれる人がいて、背中を押してくれる人がいる。失敗を糧に勇者部はまた1つ強くなったのであった--