今の人達はコマの元ネタ分かる人いるんですかね?1つはすぐ分かると思うんですけど、もう1つは知ってたら中々にマニアです。
神社--
12月31日、時刻は23時過ぎ。
小沙綾(本当だったら、こんな時間に子供が1人で外出するなんて問題だと思うけど…。)
沙綾は1人神社へと足を運んでいた。やっぱり大晦日の日くらいは神社で過ごしたいと言う沙綾のちょっとした我儘だ。鳥居をくぐり少し歩くとぼうっと薄明かりが見え、その周りを沢山の人が囲んでいた。
小沙綾(あ、お焚き上げをやってる。寒いし、少し当っていこうかな。)
沙綾がお焚き上げの場所まで行くと、そこには見覚えのある人物が1人。
小沙綾「あれは……イヴさん…?」
イヴ「沙綾さん?」
小沙綾「イヴさんも来てたんですね。」
イヴ「静かな所が好きなので…。」
小沙綾「私もです。隣、良いですか?」
イヴ「はい。寒いですから一緒に火に当たりましょう。」
小沙綾「そうします。」
2人は火の側で暖をとり始めた。肌を刺す冷たい寒さの中、パチパチと炎の音が静かな神社に響き渡る。
イヴ「………。」
小沙綾「火って不思議ですよね。見ているとなんだか心が落ち着きます。」
ふと沙綾は火についての自分の心情をイヴに零す。火は"安心出来るもの"だと。火が人類を助けてきた事は周知の事実なのだから。
イヴ「そうですね……。でも、怖さも覚えます。」」
イヴも自分の心情を沙綾に話す。しかし、それは真逆の感情。火は"恐怖の対象である"と。何故ならイヴは知っているから--現実の四国外の惨状を。だが、イヴは沙綾にそれを悟らせる事は無かった。知らない方が幸せな事もあるのだから。
小沙綾「……。」
イヴ「………。」
小沙綾(イヴさんと一緒にいるのは言葉が無くても、気まずさが無い……。)
2人は暫く無言の時を楽しんでいた。イヴが余り話さない事は知っているし、沙綾もこの瞬間がキライではなかった。
小沙綾「イヴさん。30秒以上、無言でいて気まずくなかったら、友達なんだそうですよ。本で読んだ事があります。」
イヴ「そうなんですね…。では、私と沙綾さんは友達です。」
笑って沙綾に語りかける。
小沙綾「そうですね。」
笑ったイヴに沙綾も笑顔で返した。そこへ、もう1人見知った顔がやって来る。
夏希「あ、沙綾にイヴさん。」
小沙綾「夏希も来たんだね。」
イヴ「こんばんは、夏希さん。」
小沙綾「夏希はどうしてここへ?」
夏希「ははっ、何だかここに行ったら沙綾に会えるかなってね。」
夏希は照れ隠しに鼻を擦って軽く笑った。そして更に、
小たえ「あー!夏希に沙綾にイヴさん!みんなも来てたんだね。」
たえも神社へやって来たのだ。理由を聞くとどうやら夏希と同じ考えだったようである。
小沙綾「おたえ!ふふっ、示し合わせた訳でもないのに、みんなここに集まったね。」
夏希「神樹館チームのシンパシーって事だね!」
イヴ「友情…ですね。」
"友情"の2文字がイヴの心をギュッと締め付ける。その時、人一倍大きな鐘の音がゴーンと鳴り響く。時刻は0時を回り年が明けたのだ。
小たえ「丁度12時を回ったー!明けましておめでとう!」
小沙綾・夏希・イヴ「「「明けましておめでとう!」」」
夏希「じゃあ早速みんなでお参りに行こう!初詣だ!」
イヴ「はい…!」
3人は足早に境内へと向かって行った。そんな3人を見てイヴは思う。
イヴ(……1人でいても、もう1人の私がいるから1人じゃない…。そう思っていましたが、千聖さんや彩さん、日菜さんに花音さんとお友達になり、そしてこの世界にやって来て夏希さん達ともお友達になれました……。今は、こんなにも沢山の友人がいます。私は……--)
そんな時、少し先の方からイヴを呼ぶ夏希の声が。
夏希「イヴさーん!早くしないとおいて行っちゃいますよー!」
イヴ「…今行きまーす!」
一方踏み出したイヴは小さく笑っていた。
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浜辺--
美咲「はぁ……はぁ………。」
美咲は今必死で走っていた。足場の悪い砂浜を全力疾走している。まるで何かに捕まらんとすべく。そんな美咲の少し後ろから声が聞こえる。
中たえ「はぁ、はぁ……待ってーー!美咲ー!」
美咲「はぁ……はぁ…だ、だからさー!別に振袖は着なくても良いんじゃないかなー!」
美咲はたえの猛追を必死で逃げ切ろうとするものの、足場が不安定、ましてや砂浜での追いかけっこには慣れもあるたえに部があった。徐々に差が縮まっていく。
美咲(はぁ……疲れる…。年明け早々花園さんに振袖着ようって言われてからずっと逃げてるから……。)
中たえ「はぁ……疲れたなら、大人しく振袖着ちゃいなよー!」
美咲「な、何でさぁー!花園さんが着れば良いじゃーん!」
中たえ「はぁ……ふぅ…まてー!」
美咲の言葉を他所に、たえはこの状況で更に加速をかけ美咲を詰めにかかる。こんな状況下で美咲は何故か北海道での事を思い出していた。
美咲(そういえば…北海道にいた時も、こんな風に撤退戦をやった事があったっけ……。)
脳裏に浮かぶのは苦しかった、辛かった、寒かった故郷の寒さ。
美咲(でも……あの時とは違う……。)
美咲のスピードが落ちる。その隙を見逃す程たえの体力は落ちていなかった。
中たえ「なんとぉー!ダイビングキャッチー!」
軸足で踏ん張りを効かせ、渾身の跳躍で美咲に覆いかぶさったのだ。相手が悪い。なんせ美咲が相手にしているのは曲がりなりにも勇者達の"切り札"、神世紀最強の勇者であり初代勇者の子孫花園たえ。
美咲「う、うわぁ!捕まっちゃったかぁ……。」
観念したのか美咲は抵抗もせずたえに身を任せる。
中たえ「捕まえた…!はぁ…はぁ……。」
美咲「……良いよ、分かった。着るよ、振袖。」
中たえ「やったー!思ったより簡単に納得してくれて良かったよ。」
美咲「あはは……。良く考えたら、逃げ回る様な事じゃなかったなって。」
中たえ「え?」
美咲「何でもないよ。さぁ、行こっか。」
美咲は立ち上がり、砂浜に座っているたえの手を引っ張って立ち上がらせる。
美咲(今は…悪いものに追われてる訳じゃない……。北海道にいた、あの頃みたいに…。)
今は寒くない。一緒に笑って、泣いて、喜んで、支え合える友達が美咲の周りには沢山いるのだから。
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花咲川中学、屋上--
夏希「………っ!」
あこ「…………ごくりっ!」
寒空の下2人は向かい合い、見つめ合ったまま動かない。
夏希「正月の遊びといえば……コマ。」
あこ「だけど!あこ達勇者にとっては、ただのコマなんてぬるい、生ぬるいよ!勇者部全員で星屑1匹と戦うくらい生ぬるいよ!!あこ達のコマはこれだよ!」
そう言って2人はおもちゃのコマを互いの眼前に突きつけた。
夏希・あこ「「コマブレード!!」」
2人が手にしている"コマブレード"とは、近未来型ハイテク玩具であり、トップ・ミドル・ボトムの3層構造からなり、それぞれを自由にカスタマイズして自分だけのオリジナルのコマを作って勝負が出来るおもちゃである。漫画化やアニメ化もされており、神世紀の子供達はこぞって夢中になっているものの1つだ。
あこ「あこが使うコマはこれだよ!"クリムゾン・ホーク
あこが手にしてるコマはアニメ化された際に主人公が愛用しているもの。数少ない左回転であり、超攻撃型で下からすくい上げる様なアッパー攻撃の連続で相手を場外へ吹き飛ばす事が出来る。
夏希「激レアなコマですね…。」
あこ「ふっふっふ……。これは戦う前から勝負ありかな?」
夏希「いや……むしろ安心しました。」
あこ「えっ!?」
夏希「それくらいが相手じゃないと、一瞬で勝負がついてしまって、面白くないですからね!私のコマはこれです!"グローリー・マウント・フジ
夏希が持っているコマはあことは正反対で主人公のライバルが使う右回転の絶対防御型のコマ。重心が下にあり、どんな攻撃も跳ね返しその場を動かない山の如き鉄壁を誇り、耐え抜いて持久戦へと持ち込む事を得意としている。
あこ「相手にとって不足無し!行くよ、夏希!」
夏希「はい!」
両者臆する事なくコマをシューターにセットし、設置されたスタジアム目掛けて構える。超攻撃と絶対防御、究極の盾と矛の対決が今静かに始まろうとしていた。
あこ「チャージ3回、フリーエントリー、ノーオプションバトル!!」
夏希「チャージ3回、フリーエントリー、ノーオプションバトル!!」
夏希・あこ「「チャージ・イン!!」」
チャージ・インの掛け声と同時に2つのコマが唸りを上げてスタジアムを回転し始める。
あこ「良いチャージ・インだね、夏希!」
夏希「あこさんこそ良いチャージ・インです!」
しかし両者のコマが激突する瞬間、物凄い速さでもう1個コマがスタジアムに乱入、あこと夏希のコマを瞬く間に場外へと吹き飛ばしたのである。
?「まさかこんな所でブレーダーに会えるなどとは思ってもいませんでした…。
夏希・あこ「「誰だっ!?」」
2人はコマが飛んできた方向へ目をやると、そこにいたのはシューターを構えている紗夜だった。
夏希「まさか紗夜さんが3人目のブレーダーだったなんて……。」
紗夜が放ったコマは"スーパー・ダイナミック・ナスビ
紗夜「私より強いブレーダーはいるのでしょうか?」
あこ「ぐぬぬ……返り討ちにしてやります!あこは負けません!」
夏希「私のブレード魂見せつけてやります!さぁ、始めましょう!」
3人はスタジアムを囲みシューターを構える。絶対に負けられない三つ巴の戦いが今、始まる--
紗夜「チャージミリオン、フリーエントリー、ノーオプションバトル!」
夏希「チャージミリオン、フリーエントリー、ノーオプションバトル!」
あこ「チャージミリオン、フリーエントリー、ノーオプションバトル!」
夏希・紗夜・あこ「「チャージ・イン!!」」
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商店街、フードコート--
小たえ「--っていう初夢を見たんだ。」
小沙綾「おたえらしいって言うか何て言うか……。滅茶苦茶な内容だけど、きっちり一富士二鷹三茄子を達成してるのは流石おたえだね…。」
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花咲川中学、校庭--
香澄「あ〜あ…私の凧落ちちゃった。さーや、凄いなぁ、あんなに高く揚がってる。」
中沙綾「これも慣れだよ。後は風の気分次第だから、運みたいなものだし。」
香澄は負けじと凧を再びあげようとする。
香澄「よーし、今度こそ高く揚げるよ!えーーい!」
凧は風を受けぐんぐん高く揚がっていくが、直後急に突風が吹き凧糸が切れてしまう。
中沙綾「あっ!糸が切れて凧が…。」
香澄「私、追いかけてくるね!」
香澄が駆け出そうとした時、沙綾が香澄の腕を掴んだ。
中沙綾「大丈夫だよ、香澄。」
香澄「え?」
中沙綾「あの凧は自由になったんだよ。」
香澄「自由に…そっか。」
中沙綾「今頃色んな所を飛んでるんだろうね。」
一方2人から少し離れた場所では友希那とリサも凧揚げをしていた。
リサ「子供の頃を思い出すね、友希那。昔もこうやって、2人で凧揚げしたっけ。」
友希那「ええ、そうだったわね、リサ。」
2人は1つの凧を一緒に飛ばしながら昔の思い出に耽っていた。
リサ「友希那。」
友希那「何かしら?」
リサ「友希那は……束縛とかされたいの?」
友希那がリサの問い掛けに答えようとしたその時、再び突風が吹き凧が風に煽られリサが引っ張られそうになる。
リサ「うわ!風のせいで凧に引っ張られ…!」
友希那「リサ!」
咄嗟に友希那は凧糸を切ってリサを凧から助け出す。
友希那「危なかったわね。」
リサ「ありがとう、友希那!」
友希那「束縛されたいかはともかく…リサを縛るものがあるなら、私が斬るわ。」
リサ「ははっ!友希那カッコいい。」
御役目にはげに励みながらも、こうした楽しい思い出を沢山残していく事はみんなで決めた約束の1つ。日常を大切にする。勇者達にとってそれは何よりの力になるのだろう。