戸山香澄は勇者である   作:悠@ゆー

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六花が語る"神世紀100年から200年までの間"。また来訪者は来るかもしれません。

今更なのですが第1章の1話と19話を編集しました。特に19話は香澄のとある場面を加筆しております。




氷河家の盛衰

 

 

樹海--

 

樹海を蹂躙しているのは"蟷螂型"と防御特化型"に"飛行型"の群れ。勇者達はそれぞれ迎撃にあたっている。

 

中沙綾「つぐみ達ばっかに負担はかけられないね。」

 

小沙綾「そうです。私達の力も見せてあげましょう。」

 

銃撃と矢の雨が"飛行型"を次々に撃ち落としていく。時折"飛行型"はその身を回転させて矢を弾くが、そうなった場合はりみのワイヤーで雁字搦めにしていくといった方法で連携してバーテックスを倒していく。

 

つぐみ「みんなも中々やるね。」

 

赤嶺「でしょ。造反神の試練に打ち勝った人達だもん。」

 

一方で前線では赤嶺とつぐみの2人が"蟷螂型"相手に奮闘していた。敵の数が多い為、つぐみは精霊憑依は使わず弱点である関節部分を"精霊刀"で重点的に攻めバラバラにしていく。

 

あこ「この調子で今回の戦闘も楽チンだ……っ!」

 

突如樹海の彼方から聞こえる狙撃音。そして直後紫色のビームが勇者達目掛けて飛んでくる。

 

友希那「新種!?みんな気をつけて!」

 

ビームは前線で戦っている赤嶺達を捕らえるが、

 

あこ「2人とも、下がって!ぐぬぬぬ……ソイヤーー!」

 

あこが旋刃盤でビームを防ぎ2人を守る。

 

赤嶺「ありがとう、助かったよ。」

 

あこ「あこはどんな攻撃でも防ぐみんなの盾だからね!」

 

つぐみ「それにしても何処から……。」

 

目を凝らし索敵すると、遠くから再びビームが飛んでくる。

 

あこ「つぐちん、下がって!」

 

つぐみ「心配ないよ、あこちゃん。ちょっと借りるね。」

 

あこ「え?」

 

そう言うと、つぐみはあこの肩に手を乗せ力を込めた。すると"精霊刀"が炎を纏ったのである。

 

あこ「つぐちんの剣からあこの炎が!?」

 

赤嶺「"輪入道"の力……。」

 

つぐみ「あそこだね。」

 

ビームが飛んで来た方角から相手の位置を割り出したつぐみは東北東の方角へと走り出す。その間もビームはつぐみ目掛けて飛んでくるが、ビームはどういう訳かつぐみに当たらず、すぐ側を通過するだけ。

 

香澄「ビームがつぐみちゃんに当たってないよ!」

 

燐子「どういう事でしょうか……。」

 

他の勇者達は困惑するが、バーテックスは待ってくれない。

 

花音「……ちょっと暑くなってきてないかな?」

 

有咲「確かにな……。」

 

気が付けば樹海の彼方が揺らめき蜃気楼が出るほど。耐熱性に優れている防人の戦衣を纏っている花音が気付くくらい樹海の温度は上がっていた。

 

燐子「私の"雪女郎"の力で冷やしますか…?」

 

有咲「ちょっと待ってくれ。……このままで良い。」

 

香澄「有咲?」

 

有咲「"輪入道"……炎…蜃気楼……やるじゃんか。」

 

樹海の今の状況を見て有咲は一つの仮説を立てた。

 

有咲「恐らくつぐみは"輪入道"の炎の力を使ってビームを屈折させてるんだ。」

 

千聖「成る程ね。この暑さ……それならつぐみちゃんにビームが当たらない理由の説明がつく。」

 

つまりつぐみは蜃気楼を作って意図的に屈折率を変えてビームを逸らしていたのだ。

 

日菜「御先祖様凄い!」

 

友希那「私達は目の前の敵を殲滅するわよ!」

 

高嶋「りょーかいです!」

 

 

--

 

 

つぐみは正確にビームを放って来るバーテックス、"遠距離型"へ接近する。当たらない事を察知したのか"遠距離型"は単発のビームを止め、形振り構わずビームを乱射して強引に当てにきていた。

 

つぐみ「くっ…!攻撃方法を切り替えてきた…。」

 

借りた"輪入道"の力を解除し自分に当たりそうなビームだけを"精霊刀"で弾いていく。そんな時後ろから声が。

 

中たえ「やっと追いついたー。」

 

日菜「御先祖様早いんだもーん。」

 

つぐみを手助けする為、香澄達に残った敵を任せ、たえと日菜が先行して駆けつけたのである。

 

つぐみ「たえちゃんに日菜さん……。」

 

中たえ「勇者部は助け合いです。ビームは私が防ぎます。」

 

槍を傘へと変化させ飛んでくるビームからつぐみ達を守る。

 

中たえ「…っと。このバーテックスは私達も初めて見る敵です。つぐみは力を温存しておいて。」

 

 

--

 

 

日菜「見えてきた!」

 

3人はようやく"遠距離型"を目視。その姿はさながら固定砲台に節足動物の脚が付いている歪な形をしている。"遠距離型"はビームが効かないと踏んだのか、発射口から星屑を3人目掛けて飛ばし始めた。

 

中たえ「星屑は私が相手するから、2人は"遠距離型"をお願い。」

 

つぐみ「行こう、日菜さん。」

 

日菜「オッケー!御先祖様と一緒に戦えるなんてこれ以上るん!ってくる事ないよ!」

 

 

--

 

 

日菜「まずはこっちも遠距離から……。」

 

銃剣を構え狙いを定めるが、

 

つぐみ「ちょっと待って日菜さん。もうあまり時間が無いですから一気に攻めましょう。」

 

日菜「うん!来て"座敷童子"!」

 

つぐみ「借りるね"座敷童子"。」

 

2人は"座敷童子"の力で透明になり"遠距離型"に接近、銃剣と精霊刀を振り上げる。

 

つぐみ「これが私達…!」

 

日菜「氷河家の連携攻撃だよっ!」

 

2人の鋭い斬撃攻撃が"遠距離型"に決まる。

 

日菜「止めはお願い、御先祖様!」

 

つぐみ「了解です。決めるよ"玉藻前"!」

 

精霊刀が呪詛を纏い"遠距離型"を真っ二つに切り裂き爆発。同時に樹海化が解け勇者達は部室へと帰還するのだった。

 

 

---

 

 

空き教室--

 

沙綾達とつぐみは途中だった料理を完成させ歓迎会が始まる。

 

六花「今日は私達の為に歓迎会を開いてくれてありがとうございます。」

 

つぐみ「今日の事は絶対に忘れられないね。」

 

ゆり「2人ともこれからよろしくね。」

 

全員がつぐみが作ったうどんに舌鼓を打っている。豆乳をベースにした汁のうどん。食べるとピリリと辛く、隠し味には黒胡麻が使われている。

 

日菜「氷河家の味、堪能してね!」

 

千聖「どうして日菜ちゃんが得意げに…。」

 

つぐみ「美味しいって言ってもらえて何よりだよ。体は資本だからね。食べ物にはちゃんと拘らなきゃ。」

 

日菜「そうだよね!だから私も食べ物には気を遣ってるよ。」

 

花音「でもそう言ってるけどいっつもフライドポテトばっか食べてるよね。」

 

りみ「赤嶺さんは何か好きな食べ物とかあるんですか?」

 

赤嶺「鶏肉とかかな。毎日食べてるよ。うどんも好きだけど、そんなに頻繁には食べないんだ。」

 

うどんすすりながら赤嶺は答える。

 

薫「体を鍛える為にメニューにも拘っているんだね。」

 

赤嶺「はい、お姉様!つぐちんが拘ってお弁当作ってくれるんです。」

 

羽丘中学組もすっかり勇者部に打ち解けたようだ。壁は無く3人とも笑顔で色々な人と話をしている。

 

高嶋「和やかムードで素敵だね友希那ちゃん。」

 

友希那「そうね。仲良くやって行けそうで嬉しいわ。」

 

そんな時だった。

 

日菜「偉大な御先祖様を見てると、氷河家の再興なんてあっという間に思えて来るよ。」

 

つぐみ「え?日菜さん、再興ってどう言う事?」

 

日菜「うぇっ!?」

 

最早ルーティーンと化してしまっている日菜の氷河家再興と言う言葉につぐみが反応したのだ。無理もない事、つぐみが来た時代ではまだ氷河家は落ちぶれてはいないのだから。

 

紗夜「そうでした…。来た瞬間から慌ただしかったですからこの問題の事をすっかり忘れていました。」

 

事の顛末は以前赤嶺から聞いている。紗夜はつぐみにその事について説明するのだった。

 

 

 

--

 

 

つぐみ「……成る程。私は御役目の最中で失敗をした…。そんな話が赤嶺ちゃんから語られてたんだね。」

 

香澄「でも赤嶺ちゃんはそんなつぐみちゃんを誇りに思うって言ってたよ。」

 

つぐみ「そうだったんだ…。」

 

自身の未来について聞かされても尚つぐみは笑って答える。

 

美咲「氷河家って、つぐみの時代では結構有名な家柄だったんだよね?」

 

つぐみ「有名かどうかはその人次第だけど、私を引き取って育ててくれた。私の誇りだよ。でも、私が庇ったばっかりに徐々に衰退していった……。」

 

赤嶺「ごめんねつぐちん……。」

 

つぐみ「気にしないで赤嶺ちゃん。」

 

つぐみはみんなに悲しい顔を見せない。事の顛末をしっかり受け止めていた。

 

薫「優しいんだね。」

 

つぐみ「私ばっかり悲しんでいられないよ。元の世界に戻れば危険が待っている勇者だっているんですよね?」

 

そう言いながら夏希と蘭を見た。

 

中沙綾「そうだね…。」

 

六花「感動しました、つぐみさん。」

 

美咲「つぐみもまた、勇者なんだね。」

 

日菜「ごめんね、私の一言で歓迎会が…。」

 

謝る日菜に六花が近付き、

 

六花「気にしないでください。いつかは出る話題だったんですから。元気出してください。」

 

ゆり「それじゃあ気を取り直して歓迎会、続けるよ!」

 

 

---

 

 

寄宿舎、廊下--

 

歓迎会も終わり、自分の部屋へ戻ろうとしていた六花は、向かいからやって来る戸山高嶋の2人の香澄を見つけ話しかける。

 

六花「あっ、戸山さんに高嶋さん。」

 

香澄「ロックだ!つぐみちゃんは大丈夫?」

 

高嶋「そうだね。家の事内心ではショックだったんじゃないかな?」

 

六花「そこは心配ありません。赤嶺さんが側にいますから。」

 

香澄「さすが赤嶺ちゃん!」

 

高嶋「六花さんも何かあったら相談してくださいね!」

 

六花「ありがとうございます。その時は頼りにさせて頂きますね。」

 

軽く会釈し3人は別れた。

 

六花(それにしても見れば見るほど赤嶺さんとそっくりですね…。でも、赤嶺さんには無い何かが2人はあるかもしれません。)

 

 

 

--

 

 

砂浜--

 

浜辺では千聖と有咲が日菜の自主練に付き合っていた。

 

日菜「もうひと稽古付き合って!千聖ちゃん有咲ちゃん!」

 

いつになく真剣な眼差しで日菜は稽古に打ち込んでいる。

 

有咲「何だか今日は凄い気合だな。」

 

日菜「御先祖様と一緒に戦ってみて思ったんだ。もっと自分を磨かないとって!」

 

千聖「確かにつぐみちゃんは堂々と戦っていたけれど…。日菜ちゃんも頑張ってると思うわよ。」

 

思いがけない千聖の言葉に日菜の動きが止まる。

 

日菜「え?ええ?千聖ちゃん、今の言葉もう一回お願い!」

 

千聖「何でもないわ!さぁ、稽古の続きを始めましょう!」

 

咄嗟にはぐらかし稽古を続ける3人。だが、草陰でひっそりその会話を聞いていた人物がもう1人。

 

花音「………録音に成功したよ。千聖ちゃんと交渉する時に使えるかな…。」

 

花音である。そそくさと草陰から離れようとしたその時、

 

千聖「聞こえているわよ、花音!」

 

花音「ふえぇ〜〜!?」

 

 

 

--

 

 

寄宿舎、つぐみの部屋--

 

つぐみ「………。」

 

つぐみは日記を付けている。毎日日記を付ける事がつぐみの日課なのだ。

 

赤嶺「1.2.3.4……。」

 

その横で赤嶺はスクワットをしている。

 

つぐみ「赤嶺ちゃんは何処でも筋トレするんだね。」

 

赤嶺「いい筋肉の人が多いから刺激を受けるんだよね。」

 

つぐみ「……一通り話して、歓迎会も終わって。ここで戦っている人達はみんな素晴らしいって事が分かったよ。」

 

赤嶺「そうだね。そこは私、敵対してる時から思ってたよ。」

 

つぐみ「私達の御役目についても話したんだよね?」

 

赤嶺「…うん。神樹様から力を貰って…ってね。」

 

つぐみ「ちゃんと説明出来たの?」

 

赤嶺「そこは私頑張ったんだから。……対人専門で、ちょっとダーティだって事も言ったよ。」

 

つぐみ「……そこまでみんな知ってて気にしないなんて。ますますいい人達だね。」

 

汚い仕事。人を手にかけた事を知っていながらも勇者部のみんなはいつもと変わらずに接してくれている。それがつぐみには1番嬉しい事だった。

 

赤嶺「………つぐちんは"あの人"見て驚かなかった?」

 

つぐみ「驚いたよ。中学時代からすっごく綺麗で強かったんだね。性格も変わってない。」

 

2人は"鏑矢"として鍛錬した時を思い出していた。

 

つぐみ「それにしても、赤嶺ちゃんずっと部屋にいるけど、もしかして私に気を使ってくれてる?」

 

赤嶺「だって家の事ショックだったでしょ、つぐちん。辛い時は辛いって言ってくれて良いんだよ?」

 

つぐみ「ありがとう。さすがはライバルでもあり親友だね。」

 

赤嶺「助け合いだよ。私が落ち込んでたら助けてね?」

 

つぐみ「ふふっ。もちろん!何か私も体動かしたくなってきたな。稽古に付き合ってくれる?」

 

赤嶺「良いね良いね!気持ちも切り替えられるし筋肉もつくし!」

 

 

---

 

 

次の日、勇者部部室--

 

美咲「お茶の最中お邪魔します。相席良いですか?」

 

六花とリサが話しているところに美咲がやって来る。

 

六花「もちろん良いですよ。」

 

リサ「入って入って。」

 

美咲「歓迎会の後もみんなと色々と話してたみたいですけど、どうですか?慣れましたか、ここは。」

 

六花「退屈しませんね。皆さん面白い人ばっかりです。元の世界に帰りたくないって思う気持ちも解ります。」

 

六花は笑って答えた。

 

美咲「あはは…。そう言ってもらえると助かります。」

 

リサ「六花も帰りたくないって気持ちを持った?」

 

六花「そうですね。別れるのが惜しいって意味でですけど。」

 

リサ「六花は歴代の巫女の中でも特段特殊な御役目をしてるって聞いてるよ。話題が合わない事もあるかもだけど、何かあったら私達に相談してね。」

 

六花「ありがとうございます。そうさせてもらいますね。でも、仲間も一緒に来てますし孤独は感じてません。皆さんの方が大変なのでは?」

 

美咲「いやー。今は言いたい事をみんなに吐き出せたからスッキリしてます。平和を保つ為に対人をこなしてたんですよね。すっごく理解出来ます。」

 

六花「皆さんも色々苦労してきたんですね。」

 

お茶をすすりながらこれまでの時代を思い返していく六花。

 

六花「西暦の皆さんが礎を築いてくれて……神世紀序盤の私達は、その土台を内側から固めていく…そうやって各時代で頑張ってきた皆さんが一堂に集まれるなんて夢みたいです。……そういえば神世紀100年から200年くらいまでの人はいないんですね。」

 

神世紀100年から200年--

 

それはバーテックスの脅威も無く、勇者が伝説上の存在となったある意味では最も平和な時代である。

 

美咲「平和な時代だった証拠じゃないですか。」

 

六花「後々の時代が平和だと、頑張って報われたなと思います。……さて。」

 

徐に六花は立ち上がり、

 

六花「皆さん記憶を残す手段を探してるんですよね?私も協力します。一緒に探しましょう!」

 

リサ「うん、ありがとうね。」

 

再び記憶を残す手段を探し始める勇者部一同。つぐみと六花の参戦で新たな風は吹くのだろうか--

 

 

 

 

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