そしてまだ見ぬ香澄は出てくるのだろうか--
と、そこはかとなく伏線を張っておいたりおかなかったり。
花咲川中学、廊下--
赤嶺「〜♫」
陽気に鼻歌を歌いながら廊下を歩いている赤嶺。そんな赤嶺を見つけたたえは丁度いいとばかりに声をかけ駆け寄って来た。
中たえ「おーい。」
赤嶺「あっ、たえちゃん。どうしたの?」
中たえ「丁度良い所にいた。ちょっと聞きたい事とやって欲しい事があるんだ。ちょっと自分がビビっときたものに丸つけて欲しいんだ。」
赤嶺「良いけど……どうしたの?」
どうやらたえが見せているのは心理テストの一種のようだ。答えを書きながら赤嶺は訪ねた。
中たえ「あのね、前にこんな事をしたんだけど--」
それは造反神の試練の途中、勇者達が赤嶺に出会う前の事である--
--
花咲川中学、廊下--
それは奇しくも今と同じ状況だった。
高嶋「〜♫」
中たえ「あっ、高嶋さん。ナイスタイミングです。」
高嶋「ん?どうしたの、たえちゃん?」
中たえ「実はね、今こんな物を作ってるんだけど……。」
制服のポケットから取り出したのは1冊のノート。そこには"香澄観察日誌"と書かれていた。
高嶋「香澄…観察日誌…って、私の日誌!?」
中たえ「最早双子じゃないかと思えるくらいの2人の香澄の観察記録を作るの。そしてそれをいつか学校の課題として提出するんだ。」
嬉々として飛び跳ねるたえ。
高嶋「課題かぁー!だったら、私に出来る事なら協力するよ。」
中たえ「課題の先取り……私にしては良い考えだよ。」
高嶋「凄いよ、たえちゃん!私には思いつかないよ!」
高嶋の性格上、友達からの頼みは絶対に断らない為、ツッコミ不在の会話が続いていく。
中たえ「じゃあ、これから私が色々と質問していくね。それで、前に取った香澄とのデータと比較研究するんだ。」
高嶋「データ!ヒカクケンキュー!何だかガクジュツテキな響きだよ。」
中たえ「まずは私が調べた情報の照らし合わせからね。血液型はA型、誕生日は1月11日生まれで大丈夫?」
高嶋「合ってるよ。」
香澄は7月14日のO型。この時点でも2人は大分違っている。
中たえ「次に、趣味は?」
高嶋「うーん……趣味って言えるものは無いんだけど、強いて言うなら武道かな。空手とか日本拳法とか。」
中たえ「楽器を弾くのとかは?」
高嶋「楽器かぁー。弾いた事ないんだよね。」
中たえ「香澄はギターが弾けるんだ。バンドとかもやるんだよ。」
高嶋「そうなんだ!今度何か弾いてもらおうかな。」
ここでも2人には違いが見られた。
中たえ「出身は?香川?」
高嶋「私は奈良県なんだ。」
中たえ「ナラケン………確か鹿が沢山いた所だった様な気がする……。そうだ。」
徐にたえは端末を取り出し沙綾に奈良県について質問をする。神世紀には四国しか存在しない為、他の地域に関しては進んで勉強をしないと知識を得る事は出来ないからだ。
中沙綾『奈良県は西暦の時代に存在してた四国外の地域だよ。日本で1番古い歴史があるんだ。』
中たえ「さすが沙綾。ありがとう。……高嶋さんは四国の外から来たんだね。」
四国にいる勇者の中で、四国以外の出身なのは後にも先にもこの高嶋香澄ただ1人である。
高嶋「うん。バーテックスが出てきた日…"7.30天災"の時に四国に移ってきたんだ。」
それからたえは高嶋に質問を幾つか重ねていく。
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15分後--
中たえ「……ふむふむ。あれ?こうして見てみると、香澄と高嶋さんって共通点が少ないかも。」
そこで、たえはもう少し切り込んだ質問をする。
中たえ「じゃあ、身長とスリーサイズは?」
高嶋「えっと…身長は156センチで、スリーサイズは………分からない…。」
すかさずたえは再び端末を取り出し、誰かに電話をかける。
中たえ「……もしもし、紗夜さんですか?実はかくかくしかじかなんですけど……高嶋さんのスリーサイズはいくつですか?」
高嶋「何で紗夜ちゃんに聞くの!?」
紗夜『どうして本人も知らない情報を、私が知ってると思ってるんでしょうか……。』
中たえ「何となくです。」
すぐさま紗夜は通話を切る。
中たえ「切られちゃった…。」
だが、すぐに紗夜から折り返しの電話が来る。
中たえ「紗夜さん?」
紗夜『あの……さっきの事なんですけど…。』
中たえ「高嶋さんのスリーサイズですか?」
紗夜『もし……分かったのでしたら、後でメールで教えて下さい……。』
そう言い残し再び通話を切るのだった。
中たえ(紗夜さんが知らないなら、多分誰も知らないだろうな。)
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それから更に10分後--
中たえ「成る程成る程。プロフィールとしては香澄と高嶋さんはやっぱり共通点少ないね。」
高嶋「たえちゃん博士!では私と戸山ちゃんの研究結果はどのようになるのでしょうか!?」
結果を知りたがる高嶋を宥めながらたえは答える。
中たえ「焦っちゃいけないよ。今までのは表面的なパーソナルデータだよ。次はもっと内面的なメンタルデータを取るよ。」
高嶋「メンタル?」
今度は制服のポケットから1冊の本を高らかに取り出す。
中たえ「じゃじゃーん!"5分で出来る心理テスト(本体価格500円+税)"だよ。」
高嶋「面白そう!」
中たえ「科学とは、再現性と検証性が保たれてこその科学…それらに欠ける心理学はオカルトに近いんだ。」
高嶋「な、何だかよく分からないけど分かったよ!」
中たえ「じゃあ早速第1問!蟻が地面を行進しています。何をしにいってるのでしょうか?」
選択肢は次の四つだ。引越し中、敵と戦いに行っている、餌を探している、仲間を助けに行っている。少し悩んで高嶋が答えたのは--
高嶋「うーん、引越し中?」
中たえ「ほうほう。」
高嶋「どんな結果なの?」
中たえ「高嶋さんは、みんなと仲良くなれる潤滑油タイプだね。でも周りを気遣いすぎて、自分自身を他人に見せる機会が少ないから、少し謎めいて見えるって。」
高嶋「そうなのかなぁ。でも、自分の事を話すのはあんまり得意じゃないから合ってるかも。」
中たえ「因みに、香澄も同じ質問で同じ答えだったんだ。……興味深い。じゃあ次の質問ね。」
高嶋「よし来た!」
中たえ「高嶋さんは、仕事で新製品のボールを作る事にしました。どんなボールを作りますか?」
2問目の選択肢は消えるボール、色が変わるボール、投げても戻ってくるボールの3択。
高嶋「……戻ってくるボールで!」
中たえ「成る程……このテストはね、友人関係を表すテストだよ。」
高嶋「私の答えだと、どんな結果なの?」
目を輝かせながら尋ねる高嶋であるが、たえは結果を言わなかった。
中たえ「ふふっ、秘密。」
高嶋「え!?何で急に!?」
中たえ「今日の観察日誌はここまで。色々興味深い事が分かったよ。ありがとう。」
そう言い残し、手を振って去ってしまった。
高嶋「あ、行っちゃった……。心理テストの結果、どうだったんだろう?」
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赤嶺「成る程ねぇ。って、じゃあ今私が答えてたのも同じ心理テストだったって事なんだね。」
中たえ「そうだよ。パーソナルデータはつぐみ達に聞いたけど、やっぱり共通点は少なかったんだ。」
赤嶺「蟻の心理テストは私も引越し中のところに丸してあるし、ボールのやつも高嶋さんと同じところに丸してるよ。」
その結果を見てたえは深く頷き暫く考えた後、
中たえ「……やっぱり。ありがとう、本当に良いデータが取れたよ。結果は後で纏めて報告するね。」
赤嶺にお礼を告げ、たえは足早に何処かへと行ってしまうのだった。
赤嶺「うん…分かった…。どんな結果だったのかな?」
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中たえ(さっきの心理テスト……2人の答えだと、他人への思いやりが凄く高い。友達と何かあっても、関係を保つ為に頑張る。友達が悩んでたら励まし、元気になるように努める……これも全部香澄と一緒。)
そんな事をぶつぶつ言いながら廊下を歩いていると対面からゆりがやって来る。
ゆり「たえちゃん、どうしたの?独り言なんか言って。」
中たえ「ゆり先輩。香澄と高嶋さんと赤嶺さんの比較研究をしてたんです。」
ゆり「比較研究って…。でも、3人って本当にそっくりだから不思議だよね。」
中たえ「表面的な部分に騙されちゃダメです。3人は案外違う部分の方が多いんですよ。」
ゆり「そうなんだね。」
中たえ「私調べではそうです。共通点は案外少なかったです。名前と見た目、後……他人との関係の中での自分の在り方みたいなものですね。」
ゆり「……結局性格が似てるって事?3人とも気遣い屋で、他人への思いやりが強いって事かな。」
たえは自分よりもずっと的を射てるゆりの考え方に思わず感心してしまう。
中たえ「……赤嶺さんが別れ際に言っていた香澄の"因子"……。そして"香澄"という名前は大赦から与えられる特別な名前。だから"香澄"の名前を持つ人は他にもいるかもしれない。他の"香澄"の事も気になって来たなぁ。どんな人だったんだろう。」
この世界は神樹の恵みで成り立っている。ならば他の時代にも香澄という名前を持つ少女はいたのかもしれない。そんな事を思い、まだ見ぬ香澄に想いを馳せるたえなのだった。
中たえ「今度沙綾と紗夜さんとつぐみの3人と一緒に"香澄同好会"でも作っちゃおうかな。」