戸山香澄は勇者である   作:悠@ゆー

216 / 326
中立神の攻撃が本格化し3箇所の同時侵攻が始まる。

勇者達は部隊を分け同時迎撃を行うのだった--




二重の力

 

 

勇者部部室--

 

新たな神託が降りた為、勇者達は急遽部室へと集まり作戦会議を開始する。

 

リサ「かなり大規模な侵攻が行われるよ。」

 

彩「しかも同時に3箇所で、それぞれ距離も離れてる。」

 

モカ「造反神の試練の時と同様に、部隊を3つに分けて当たらないと抑えきれないよ。」

 

六花「これはかなりの消耗戦になる予感です。」

 

いつになく真剣な眼差しで説明する巫女達。以前にも部隊を分けて戦闘した事はあったものの、敵の強さもその時とは格段に上がっている。いくら新たな仲間も増え、勇者達も成長したとしても苦戦は免れないだろう。

 

友希那「それなら慎重に部隊分けをしなくてはね。」

 

燐子「はい…。事前に今井さんから聞かされていたので私と山吹さん、白鷺さんの3人で部隊を編成してみました。」

 

そう言って燐子達は黒板にメンバーを書き記す。

 

燐子「最初は西側です…。西側は海岸近くでの戦闘が予想されます…。なので、瀬田さんを中心とした機動力重視の編成で行きます…。」

 

リーダーの薫を中心にたえ(中)、りみ、高嶋、紗夜、燐子、日菜の7人。

 

中沙綾「次に北側です。ここは敵の神樹様に比較的近い為敵の数が多く長期戦が想定されます。リーダーの友希那さんを軸に力で一気に勝負をつける形です。」

 

こちらは友希那、あこ、美咲、香澄、沙綾(中)、ゆり、赤嶺、イヴの8人。

 

千聖「最後に東側ね。ここは起伏が激しい山岳地帯が戦闘の中心となるわ。何処から敵が来るか分からない。つぐみちゃんの冷静な判断を起点として慎重に行くわよ。」

 

メンバーは有咲、沙綾(小)、たえ(小)、夏希、蘭、つぐみ、千聖、花音の8人。

 

リサ「多分襲撃は次の満月だと思う。みんな準備を怠らないでね。」

 

香澄「分かりました!みんなで力を合わせて頑張っていこう!」

 

 

---

 

 

次の日、樹海西側--

 

薫「やはりあの2体が来たね……。」

 

燐子「周りに水が多いので予想はしてましたが…。」

 

後方からやって来るのは"蟷螂型"を中心としたバーテックスの群れに"水瓶型"と"魚型"の2体の完全型バーテックス。

 

燐子「瀬田さんと花園さん、りみちゃん、そして私が"完全型"を相手取ります。高嶋さん達はその他のバーテックスを"完全型"に合流させない様にお願いします。」

 

高嶋「りょーかい!頑張ろう、紗夜ちゃん、日菜ちゃん!」

 

紗夜「ええ。」

 

日菜「援護射撃は任せて!」

 

 

--

 

 

紗夜「来なさい、"七人御先"!」

 

6人の死神が星屑を切り刻んで突き進む。

 

紗夜「夜の樹海だとより死神感が増しますね…。」

 

日菜「こうするともっと死神感出るよ。」

 

"座敷童子"を降した日菜が紗夜に触れると7人の紗夜が闇夜に溶ける。

 

紗夜「"座敷童子"の力ですか…。これで名実共に死神です…ねっ!」

 

見えない鎌が星屑の命を刈り取っていく。しかしバーテックスもタダでやられまいと"遠距離型"が紗夜と日菜がいる範囲を無差別に狙撃し始めた為、2人は動きを止める。

 

高嶋「ここは私が何とかするから、2人はビーム飛ばして来る奴お願い!」

 

"一目連"を憑依させ周りを竜巻で包み込みその外側に2人を逃す。

 

日菜「竜巻のドーム…。これならしばらくは出て来れないよ。今のうちに。」

 

紗夜「えぇ……。」

 

 

--

 

 

高嶋「日菜ちゃん……紗夜ちゃんを宜しくね。」

 

1人高嶋は竜巻のドーム内に残っている星屑や"蟷螂型"と相対する。

 

高嶋「やぁっ!」

 

竜巻を纏った右ストレートを"蟷螂型"にぶつけるが、相手は鎌を構えそれを防ぐ。

 

高嶋「これも防いじゃうの!?うわっ!?」

 

横から他の"蟷螂型"が鎌を振りかざし斬りかかるが、高嶋は紙一重でそれを躱し蹴りを入れる。

 

高嶋「天の逆手が効きにくくなってる……。中立神もそこら辺はちゃんと考えてるんだね。」

 

呪詛の力が効きにくくなっている以上ここから先は力と力の真っ向勝負になる。高嶋は"蟷螂型"の攻撃を避けつつ先に周りの星屑を殲滅させた。

 

高嶋「……っと。これだけ時間を稼げれば大丈夫かな。」

 

一旦"蟷螂型"と距離をおき、一呼吸入れ"一目連"の憑依を解いた。同時に竜巻のドームも消えてしまう。

 

高嶋「力と力の真っ向勝負……。行くよ"酒呑童子"!」

 

鬼の力をその身に宿し真っ向から高嶋は"蟷螂型"に殴りかかる。

 

高嶋「はぁぁぁっ!!」

 

再び"蟷螂型"は防御の構えを取るが、高嶋はそのガードの上から"蟷螂型"を殴り潰す。

 

高嶋「まだまだぁ!」

 

拳を叩きつけ地鳴りが響き、それを聞きつけ周りの"蟷螂型"が高嶋目掛けやって来る。ドームが消えた為だ。接近戦だと部が悪いと理解してるのか、遠距離から真空波を一斉に浴びせる"蟷螂型"。

 

高嶋「くっ……!これくらい……何ともないよ!」

 

真空波を跳ね除けパンチの乱打を繰り出す。リスクが無いとはいえ"酒呑童子"を長時間憑依させ続ける事は危険だという事は高嶋も理解している。

 

高嶋(…意識が飛びそう……。だけど…私は負けないよ!)

 

高嶋「私は……勇者だから!」

 

 

 

 

 

 

 

 

次の瞬間、高嶋の拳に竜巻が発現する--

 

高嶋「これって……"一目連"!?今は憑依させてないのに……。」

 

精霊の二重憑依--

 

かつて一度薫が造反神の試練で"水虎"と美咲の精霊である"コシンプ"を二重憑依させているが、それはあくまでも他者からの介入で起こった偶発的な出来事。勇者部の中で唯一"一目連"と"酒呑童子"の2体の精霊を持つ高嶋が自身の力で二重憑依を成し遂げたのである。

 

高嶋「私は1人じゃない……。"一目連"…"酒呑童子"……力を貸して!」

 

高嶋の声に応えるかのように竜巻が唸りをあげる。危険を察知したのか"蟷螂型"は再び距離をとり鎌から真空波を飛ばす。

 

高嶋「一気に決める!遠距離なら……こうだ!勇者ぁ………!」

 

拳を振り上げ狙いを定め、手甲を飛ばしたのだ。

 

高嶋「ロケットパーーーンチ!!」

 

竜巻を推進力に使い手甲はとてつもない速さで"蟷螂型"目掛けて進み続ける。"蟷螂型"も負けじと真空波で弾こうとするが、ロケットパンチの前では最早そよ風と同義であった。

 

高嶋「貫け!!」

 

ロケットパンチは"蟷螂型"を圧殺した後も威力、スピードが衰える事無く他の"蟷螂型"を追尾し始める。

 

高嶋「一旦戻れ!」

 

一度手甲を手元に戻し、再び拳を構える。体力もごっそり持っていかれる為、次が最後の攻撃となるだろう。

 

高嶋「はぁ…はぁ…。これでトドメ!勇者!タ・ツ・マ・キ〜〜〜ダブルロケットパーーーンチ!!」

 

放たれた2つの手甲は螺旋を描きそれ自体が竜巻となり飛んでいき、残っていた"蟷螂型"を全て殲滅するのだった。

 

 

--

 

 

高嶋「はぁ…はぁ…はぁ…。」

 

静まり返る樹海の中、高嶋は憑依を解き仰向けで大の字になって倒れ込んだ。

 

高嶋「はぁ……ちょっと張り切りすぎちゃったかな…。」

 

そこへ"遠距離型"を倒した紗夜と日菜が戻ってくる。

 

紗夜「高嶋さん!」

 

倒れている高嶋を見つけた途端に紗夜は慌てて高嶋に駆け寄り抱き起こす。

 

紗夜「大丈夫ですか!?」

 

高嶋「大丈夫だよ……。ちょっと休めばへっちゃらだよ…。」

 

紗夜「もう…。高嶋さんは無茶し過ぎですよ……。」

 

高嶋「えへへ……。紗夜ちゃんの手、暖かい……。眠く…なってきちゃった……。」

 

そう言って高嶋は眠ってしまった。

 

紗夜「……お疲れ様でした、高嶋さん。」

 

 

--

 

 

一方、"完全型"2体を相手取る4人も苦戦を強いられていた。

 

中たえ「うへー。やっぱ水辺だと生き生きしてるよね。」

 

"水瓶型"に"魚型"。共に水を武器とする"完全型"はまさに水を得た魚。強力な水流や水球を放ち勇者達を攻撃してくる。

 

りみ「ワイヤーじゃ水は防げないし……どうすれば…。」

 

薫「一体でも厄介だが……何か良い手は無いかい、燐子ちゃん。」

 

少し離れた場所で援護している燐子に薫は指示を仰ぐ。

 

燐子「……出来るか分かりませんが、2体を分断します…。」

 

中たえ「出来るんですか?」

 

燐子「それにはりみちゃんの力が不可欠です……。」

 

りみ「私!?」

 

燐子は一旦りみを下がらせ耳打ちし作戦を伝える。

 

 

--

 

 

燐子「私の合図でお願いします……。」

 

りみ「うん!」

 

たえが"水瓶型"を、薫が"魚型"をそれぞれ相手取り、注意を逸らしつつ2体を引き離す。

 

中たえ「こっちだよー!」

 

燐子「………今です…!」

 

りみ「えーーーいっ!!」

 

燐子の合図でりみはワイヤーを球体状へと変化させ"水瓶型"を包み込んだ。しかし網目の隙間から"水瓶型"は水球を飛ばし攻撃を続ける。

 

中たえ「これじゃあ意味ないよ!?」

 

燐子「まだです……!"雪女郎"!」

 

すかさず"雪女郎"を憑依させた燐子が水で濡れたワイヤーを凍らせる。氷の球の中に"水瓶型"を閉じ込めたのだ。

 

燐子「これで1体に集中出来ます…!花園さんと瀬田さんで"魚型"を倒してください…!」

 

中たえ「一体だけなら…!」

 

薫「簡単な事さ。」

 

"水瓶型"は氷を砕こうと水流を放つが燐子が冷気を放出し続け氷の牢獄を維持し続ける。後は燐子との体力勝負だ。

 

中たえ「燐子さんの為に速攻で行くよ。"満開"!」

 

たえは満開し方舟に薫を乗せ"魚型"へ突貫する。"魚型"は接近させまいと水流を放つがファンネル状の刃が折り重なり盾となって水流を防ぎながら近く。

 

薫「花により儚く散れ…!"暖流蒼打"!」

 

ヌンチャクを叩きつけ"魚型"が体制を崩しノックバック。そこへすかさずたえが無数の刃を叩き込む。

 

中たえ「"満開・滅尽の刃"!」

 

無数の刃が花吹雪の如く"魚型"を切り刻み"御霊"ごと破壊。"魚型"は光となって消滅する。同時に燐子の体力も限界が訪れ"水瓶型"が氷を砕き暴れ始めた。

 

燐子「きゃあっ……!」

 

りみ「大丈夫!?」

 

燐子「はい……問題ありません…。」

 

"雪女郎"の憑依を解いた燐子はその場で尻餅をつく。

 

りみ「燐子さんを……許さないよ!"満開"!」

 

背中の鳴子百合の花弁から無数のワイヤーを伸ばし"水瓶型"を包み込むりみ。

 

りみ「お仕置きや!"死神ワイヤー"!」

 

包み込んだワイヤーを一気に引き絞る。するとグシャッと鈍い音をたてて"水瓶型"が"御霊"ごと切り刻まれ消滅したのだった。

 

中たえ「やっぱりみの攻撃って1番容赦無いよね…。」

 

薫「綺麗なバラにはトゲがある……これもまた儚いね…。」

 

苦戦はあったものの何とか西側を守りきった7人は一度部室へと帰還するのだった。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。