戸山香澄は勇者である   作:悠@ゆー

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バレンタイン編の最後になります。

次回少し間が空いてしまうかもしれませんがご了承下さい。
いつも読んで頂き本当にありがとうございます。




愛のカタチは人それぞれ

 

 

浜辺--

 

六花「あっ、赤嶺ちゃんいましたよ!」

 

波打ち際で黄昏ている赤嶺を見つけ、六花は駆け寄って来た。

 

赤嶺「どうしたの、ロック?」

 

六花「つぐみちゃんが赤嶺ちゃんに愛を届けたいんだって。」

 

つぐみ「そ、そんな事は言ってないですよー!」

 

あわあわと慌てながらつぐみは首を何度も横に振って否定する。

 

つぐみ「そ、それより…赤嶺ちゃんは薫さんにチョコを渡さなくて良いの?」

 

赤嶺「うん。今はお姉様と気兼ねなく一緒にいられるから、別に良いんだ。それよりも私は2人にあげたかったんだ。ロック、つぐちん。はい、半分こして食べて。」

 

つぐみ「ありがとう。それにしても、まさかこの世界に召喚されてまさかバレンタインを楽しむ余裕があるなんて思って無かったよ。」

 

六花「ありがとうございます、赤嶺ちゃん。半分こだとつぐみちゃんと私は恋のライバルですね。」

 

赤嶺「えー。私は2人とも大好きだよ?」

 

つぐみ「実は私も2人にチョコを用意……。」

 

そんな3人の元へ向こうから手を振りながら駆け寄って来る1人の姿が。

 

日菜「やっと見つけた御先祖様〜!!子孫の日菜ちゃんがチョコレートを持って来たよ〜!」

 

つぐみ「日菜さん……私の為にですか?早速頂きますね!」

 

日菜「口に合うと良いんだけど…。」

 

つぐみ「もぐもぐ……この味は…カツオ?それに後味に爽やかさをもたらすこれは…。」

 

日菜「柚子ピールだよ。やっぱりカツオと柚子は切っても切れない食べ合わせだから。」

 

つぐみ「創意工夫が素晴らしいです!流石は氷河家の子孫ですね!」

 

日菜「はぁ〜!その言葉だけで今までの苦労が報われるよ!」

 

つぐみ「勿論、私も日菜さんにチョコを用意してましたよ。どうぞ。」

 

六花「え?さっきチョコは私達2人にって言ってませんでしたっけ?」

 

つぐみ「ど、どの2人かとは言ってません!」

 

その言葉を聞いて赤嶺が笑顔で聞いてくる。

 

赤嶺「ふーん。じゃあ、1個は日菜ちゃん。後の1個は私とロックのどっち?」

 

つぐみ「そ、それは……。」

 

日菜「御先祖様、私は大丈夫だから2人にあげてよ。」

 

流石の日菜でもつぐみの友達である2人の為に遠慮してしまう。

 

六花「……ふふっ、冗談ですよ。日菜さんも座ってください。このバラエティパックを開けますから、みんなで食べましょう?」

 

4人は波打ち際から少し離れ、シートを敷いて座った。

 

日菜「バラエティパック!?」

 

赤嶺「ロック……天才?」

 

つぐみ「1人2個までしか渡せないのにバラエティパックだなんて……とんちが効いてるね。」

 

六花「たまたまだよ。たまたま今日のおやつがバラエティパックだったってだけ。さぁ、つぐみちゃんのチョコも混ぜましょう。そうすればみんな平等です!」

 

 

---

 

 

一方その頃--

 

友希那は迫る女生徒達の波に押しつぶされそうになっていた。

 

女生徒達「「キャー!湊さーーん!私のチョコレートを受け取って下さーい!!」」

 

友希那「お、お願いだから押さないで頂戴……!危ない…!」

 

そこへリサがタイミング良くやって来る。

 

リサ「友希那!?だ、大丈夫!?」

 

友希那「リサ!良い所へ来てくれたわ!花園さんを追うかこの状況を何とかして!」

 

リサ「たえを追ってって言っても……たえならそこにいるよ?」

 

指差した先には女生徒達の波に埋れているたえがいた。

 

女生徒達「「キャー!キャー!湊さん!!湊さん!キャー!キャー!!」」

 

中たえ「ま、まさか自分の撒いた種から出た芽が蔓となって自分に絡みついてくるなんて……。」

 

リサ「はいはい!うちの友希那にチョコを渡す人はこっちのノートにクラスと名前、住所、電話番号を書いてね!」

 

そう言い放った直後、さっきまで黄色い歓声を上げていた女生徒達が水を打ったように静かになる。

 

友希那「………?まだ誰かが腕を引っ張って……っ!?」

 

みんなの視線がリサへ向いている一瞬の隙に友希那は隣の図書室へと吸い込まれてしまったのだった。

 

 

---

 

 

図書室--

 

友希那「一体どういうつもりかしら……。」

 

紗夜「いくら怒鳴っても無駄です。この部屋は防音になっていますから……。」

 

腕を引っ張った者の正体は紗夜だった。紗夜は図書室の鍵を閉める。

 

友希那「それで、何かしら?」

 

紗夜「大勢の人に囲まれていて焦っていたので助けてあげたんです。」

 

友希那「そうだったの……。でも、今花園さんから離れる訳には…。」

 

紗夜「………………だからです。花園さんに覗かれたくありませんから………。」

 

友希那「え?」

 

紗夜「湊さん、今日は朝から花園さんにべったり。まさかそこまで監視し続けるとは思っていませんでした。」

 

友希那「紗夜?」

 

紗夜「頑固で……馬鹿正直で……生真面目で…………。私は…そんな湊さんが………嫌い……でした。」

 

友希那「でした?」

 

紗夜「ですが……嫌いなのと同じくらい……憧れて……嫌いなのと同じくらい……あなたの事が……。」

 

そう言って紗夜は小さな包みを手渡した。

 

友希那「この包みは?」

 

紗夜「…………っ!い、要らないのでしたら返してください!」

 

その反応で友希那は全てを察する。

 

友希那「まさか……チョコなの!?紗夜が……私に……!?」

 

紗夜「そ、そこまで驚く事ですか!?」

 

友希那「さっき散々罵っていたわよ!?」

 

紗夜「で、ですから……今は…前ほど………嫌いでは…ありません………。」

 

顔を真っ赤にして小さな声で紗夜は呟いた。

 

紗夜「勘違いしないでください!だからと言って……別に………好きと言う訳ではありません……。」

 

友希那「そ、それは解っているけれど………ダメ…もう我慢出来そうに無いわ……紗夜…。」

 

一歩。一歩づつ友希那は紗夜へ歩み寄って来る。

 

紗夜「ちょ………!何するんですか!?そ、そういう事は………こ、困……っ!」

 

友希那「ごめん…なさい……。昨夜から花園さんを見張っていて…一睡も……してなかっ……た…………zzzzz。」

 

見張っていたツケが今ここで来てしまったのだ。友希那は紗夜にもたれかかる様に目を閉じ眠ってしまう。

 

紗夜「ど……どうして私が密室で湊さんの枕にならないといけないんですか……!」

 

つい強く当たってしまいそうになるが、友希那の寝顔は安心したかの様に微笑んでいた。

 

紗夜「…………………はぁ。5分だけですからね………。」

 

 

---

 

 

廊下--

 

中たえ「はっ!友希那さんの気配が消えた。今の内だっ!」

 

女生徒達も散り散りになり、監視の目が外れたたえは勢い良く走り出した。

 

リサ「しまった!たえを逃したら友希那に申しわけが立たないよ。………こうなったら。」

 

リサは禁断の作戦に打って出る。

 

 

---

 

 

空き教室--

 

たえは自分のチョコを取りに戻った後、沙綾を教室へと呼び出していた。

 

中沙綾「えっ、おたえから私に?ありがとう!」

 

中たえ「良かったぁ。ゴタゴタしてたから一時はどうなるかと思ったよ。」

 

中沙綾「そのゴタゴタを使ってるのはおたえでしょ。」

 

中たえ「そうかもしれないけど、沙綾にはちゃんと渡したかったんだ。沙綾は私と同じ気持ちでいてくれる大切な友達だから。」

 

中沙綾「おたえ………。これからも、傍にいてね。頼りにしてるよ……。」

 

中たえ「私達はズッ友だからね……離れない。いつも一緒にいるよ。」

 

互いの気持ちを確かめ合う良い雰囲気を醸し出していたその時だった。

 

女生徒3「あっ、ここにいた!今井さん!花園さんを発見しました!」

 

リサ「ありがとね。後で友希那の生写真を1枚進呈しちゃうよ。」

 

何とリサは友希那の写真をダシに使い、女生徒達にたえを探させていたのである。

 

中たえ「無垢な女生徒を使って捕獲するなんて……極悪非道です!」

 

リサ「何とでも言って構わないよ。さ、行こうか。2度目は無いからね………?」

 

不敵な笑みを浮かべながらたえを連行する。

 

リサ「たえも捕らえたからみんなで体育館に移動しようか。さぁ、友希那ファンのみんな!一列に並んでついて来て!」

 

中たえ「沙綾ーーー!ズッ友ーーーー!!離れたくないよーーーー!」

 

 

---

 

 

花咲川中学、屋上--

 

真っ赤な夕日が空一面に広がっている。長かったバレンタインの1日ももう間も無く終わりを告げる頃、沙綾は香澄に呼ばれて屋上へ来ていた。

 

中沙綾「香澄、まだ来てないのかな……きゃっ!」

 

その時、誰かが後ろから沙綾を目隠しし直後、声が聞こえる。

 

?「だーれだっ!」

 

中沙綾「香澄!」

 

高嶋?「ハズレー!高嶋でーす!」

 

中沙綾「うーそ。」

 

赤嶺?「うん、当たり。本当は赤嶺香澄だよ?」

 

中沙綾「それも、うーそ♪」

 

香澄「あっれー!?どうしてバレちゃったんだろうなぁ。結構似てた筈なんだけど。」

 

中沙綾「ふふっ、無駄だよ。私が感知する香澄は世界で1人だけだから。」

 

香澄「そっかぁ。そっくりな人がいるのも嬉しいけど、1人だけって言われるのも嬉しい!そう言ってくれる沙綾に……じゃじゃーん!ハッピーバレンタイーン!!」

 

香澄は大きな瓶に入ったチョコを沙綾に手渡した。瓶の中には飴玉の様に一つ一つチョコが包まれている。

 

香澄「どれでも良いから、好きなの1つ選んで食べてみて!」

 

中沙綾「じゃあ……これ。」

 

包みを開けると、裏側に何か文字が書いてあるのを発見する。

 

中沙綾「これ、"遊園地"って書いてあるけど……。」

 

香澄「全部の包みにさーやと行きたい所ややりたい事が書いてあるんだ!」

 

中沙綾「えっ!?こんなに沢山あるのに!?全部で幾つあるの?」

 

香澄「365個!足りなくなると困ると思って…あはは。ちょっとやりすぎちゃった?」

 

中沙綾「ううん!足りない!全然足りないよ!今すぐ全部食べちゃいたいくらい!」

 

香澄「分かった!好きなだけ食べて。足りなくなったらいくらでも書くから!」

 

中沙綾「そんな香澄に私からもハッピーバレンタイン!」

 

香澄「うわぁ……!本物の写真みたい!」

 

沙綾が渡したチョコは夏希と同じ様にチョコに香澄とのツーショットが彫られているチョコ。だけど夏希のものと違うのは色が付いている点である。まるで本物の写真の様に精巧に色が塗られているのだ。

 

香澄「今すぐにでも食べたいけど……少しの間飾っておこうかな。じっくり見たいし、写真も撮りたいし!」

 

中沙綾「香澄の好きにしてね。私もそうするから。」

 

そう言うと沙綾は香澄から貰ったチョコを次々と食べ始める。

 

中沙綾「"映画""ボウリング""ショッピング"……!」

 

香澄「もうそんなに食べちゃったの!?」

 

中沙綾「だって、何が書いてあるか気になるから。ねぇ、1番の当たりって何?」

 

香澄「あっ、それはねぇ〜………秘密だよ♪」

 

中沙綾「意地悪だなぁ。鼻血出しても知らないからね。」

 

 

---

 

 

勇者部部室--

 

下校のチャイムが鳴り響く。残っている生徒も少なくなり、校内が閑散としてきた頃、たえはまだ友希那とリサに監視されていた。

 

中たえ「お、終わった………。終わってしまった……。」

 

友希那「そんな大袈裟に落ち込まなくても良いじゃない。」

 

中たえ「フルコースの料理で最初のスープを一口味わってから全部お預けにされた気分……。」

 

友希那「はぁ………受け取って頂戴。これは私からよ、花園さん。」

 

中たえ「え?」

 

リサ「そして、これは私からだよ。」

 

中たえ「で、でも……。」

 

友希那「思えば今まで私はあなたに何もしてあげられなかったわ。だからこれはその気持ちよ。」

 

リサ「私達2人で決めたんだ。」

 

中たえ「でもそれじゃあ2人はどうするんですか?」

 

リサ「良いんだよ、たえ。私達は毎日がバレンタインみたいなものなんだから。」

 

友希那「な、何言ってるのよ……。」

 

リサ「だってそうでしょ?少なくとも私は毎日友希那に惜しみない愛情を注いでるんだからさ。」

 

友希那「………解ってるわ。私も、片時もそれを忘れた事など無いわ。」

 

リサ「友希那………。」

 

友希那「リサ………。」

 

たえがいる目の前で抱き合う2人。それを目の当たりにしたたえは--

 

中たえ「おぉぉぉ………目が耳があぁぁぁ!」

 

急激なイチャラブ指数の上昇によりたえは悶え苦しむのだった。

 

友希那「はぁ……花園さんは賢いのかそうでないのか時々本気で分からなくなるわね…。」

 

リサ「良いじゃん。なんだかんだみんなたえの企画を楽しんでくれてるみたいだし。覗くのはともかくとして、楽しさを追求する姿勢そのものは見習わないとね。」

 

友希那「そうやってリサが甘やかすから、花園さんは調子になっちゃうんじゃないかしら?」

 

リサ「あはは!飴と鞭の両方が無いとバランス悪いじゃん。」

 

長かったバレンタインはこうして幕を閉じる事となる。まるで今この場の雰囲気は一家団欒かであるかの様な空気感を醸し出している。もしかすると友希那とリサは将来--

 

なんて事があるかもしれないのだった--

 

 

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