戸山香澄は勇者である   作:悠@ゆー

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遂に起動する"ヤチホコ"。勇者達は起動までの時間を稼ぐ為に決死の戦いに挑む。そして、新たなチカラが咲き誇る--

今期毎週水曜日23時半に"結城友奈は勇者である"が再放送されていますので気になった方は視聴してみて下さいね。



勝利への祈り

 

 

花咲川中学、体育館--

 

1人で自主練をしている友希那。そこへリサが差し入れを持ってやって来る。

 

リサ「やっぱりここにいたね、友希那。」

 

友希那「リサ。どうしてここに?」

 

リサ「何年一緒にいると思ってるの?友希那の考えてる事なんか私にはお見通しなんだから。………大方私達の為に躍起になって稽古してるんでしょ?」

 

友希那「………そうよ。正直"凶攻型"一体だけでもあれだけ苦労した。今のままじゃリサを守りきるなんて……。」

 

リサ「……そっか。でも私は友希那を信じてるよ?」

 

友希那「リサ?」

 

リサ「だって友希那はここ1番じゃ誰よりも負けない力を発揮してるじゃん。それに……。」

 

その時体育館のドアが開き、誰かが入ってくる。

 

千聖「あら……友希那ちゃんもいたのね。」

 

蘭「湊さん。それにリサさんも…。」

 

友希那「美竹さんに白鷺さん。」

 

千聖「丁度良かったわ。友希那ちゃんも私達の特訓に付き合ってくれないかしら?」

 

蘭「お願いします。」

 

2人も考えは友希那と同じだった。口ではああ答えたが、いざ1人になって考えると恐怖と不安で押し潰されてしまいそうになる。迷いを払拭する為に2人はここへ来たのだった。

 

友希那「勿論よ。私からもお願いするわ。リサ、ごめんなさい。話の続きはまた後で。」

 

リサ「うん、分かった。頑張ってね、友希那。」

 

友希那「ええ!」

 

体育館を出る瞬間に後ろを振り返る。友希那は2人と三つ巴の組み手をしていた。

 

リサ(大丈夫。友希那は1人じゃない……。みんなが支えて、支えられて。その想いがみんなを何倍も強くさせるんだから。私達がみんなを守る。)

 

 

---

 

 

翌日、勇者部部室--

 

バーテックスの総攻撃が始まると巫女達に神託が下り、勇者達に緊張がはしる。

 

ゆり「それじゃあ、大方の作戦は前回と同様。固まり過ぎず、前衛は3人くらいで纏まって迎撃していくよ。」

 

リサ「私達4人はゴールドタワー地下の装置がある部屋で待機。私達の祈祷でタワーに設置されてる"ヤチホコ"にエネルギーが溜まったら、私が端末で香澄に知らせるよ。」

 

中たえ「そして香澄とリサさんが持つ2つのスイッチを同時に押した瞬間に、スイッチをマーカーとして"ヤチホコ"からエネルギーが放出されるんだ。」

 

燐子「戸山さんが目印という事ですね……。」

 

紗夜「つまり、戸山さんは何としても生き残らないといけないという訳ですね。」

 

あこ「あこに任せて!香澄にくる攻撃は全部あこが防いで見せるから!」

 

香澄「頼りにしてるね、あこちゃん。」

 

千聖「それじゃあ行きましょう!犠牲はゼロに、何としても全員無事に戻ってくるわよ!」

 

全員「「「おーっ!!」」」

 

 

---

 

 

樹海--

 

樹海に降り立った勇者達は周りを見て唖然とする。

 

香澄「これ…全部敵なの……!?」

 

空を覆い尽くす程の星屑と"飛行型"の群れ。そして彼方からは"超超大型"がゆっくりと近付いていた。

 

美咲「これが全戦力だと良いんだけど、そうもいかないよね。」

 

燐子「まだ"凶攻型"が見えません……増援もあり得ますね…。」

 

友希那「リサ、そっちの準備は大丈夫?」

 

リサ『うん、問題なし。頼んだよみんな。』

 

香澄「やりましょう!」

 

勇者達は各方面へと散り、雑魚の掃除へと向かった。

 

 

--

 

 

中沙綾「ビット展開!」

 

香澄「かっとべ!勇者キック!」

 

沙綾を中心に据え、香澄が地上の敵を薙ぎ倒す。ビットの遠隔操作で香澄を援護し、無防備になる沙綾を美咲が守りつつ空から来る敵もしっかりカバーする。

 

美咲「守りは気にせずやっちゃって!」

 

中沙綾「背中は任せるよ。」

 

美咲「言ってくれる。じゃあ私も張り切っちゃうよ!うりゃうりゃうりゃうりゃーーー!」

 

投槍を文字通り投げやりに投げる美咲。右も左も敵がいるこの状況。何処へ投げても何かしらの敵に命中する程にバーテックスが密集している。

 

香澄「やるよ、"火車"!勇者ーーー火柱!」

 

"天の逆手"で樹海を叩くと、"火車"の力で炎の柱が幾つも香澄の周りに立ち昇った。爆発が広がって一面にいたバーテックスが雲の子を散らす様に消滅してしまう。

 

香澄「さぁ、どんどん来ーーーい!」

 

 

--

 

 

紗夜「来なさい"七人御先"!」

 

方々に散りながら死神の如く星屑を鏖殺していく。

 

紗夜「沙綾さん、たえさん、海野さん、背中は私の分身が守ります。思い切りやってください!」

 

それぞれ2人づつ紗夜の分身が小学生組の背後をカバーし、3人は息のあったコンビネーションで更に互いをカバーしながら戦っていた。

 

小沙綾「おたえ、右から星屑3体!」

 

小たえ「任せて!うわっ!?」

 

沙綾「足元がお留守ですよ、たえさん。」

 

小たえ「ありがとうございますぅ……。」

 

夏希「あはは!気をつけなよ、おたえ!」

 

小たえ「夏希、後ろから爆弾飛んでくる!」

 

夏希「うわうわうわーー!!」

 

紗夜「はぁっ!!」

 

飛んでくる爆弾を分身の紗夜が切り刻み爆発。巻き込まれてしまうが分身の為紗夜本体は当然無傷であり、すぐさま新たな分身が現れる。

 

夏希「助かりました、紗夜さん。」

 

紗夜「全く……口より手を動かしてください。」

 

 

--

 

 

ゆり「せいっ!たぁーーーっ!」

 

大剣で1匹ずつ処理していくゆりだったが、いつまでたっても減らない星屑に対し徐々にフラストレーションが溜まっていく。

 

ゆり「んもーーーーっ!!面倒臭い面倒臭い!りみ!ちょっとワイヤーで網作って!」

 

りみ「網!?えっと………こう?」

 

即席でワイヤーで網を作り上げるりみ。

 

ゆり「薫!りみの反対側のワイヤー持って星屑捕まえるよ!こういうの得意でしょ!」

 

薫「あぁ……地元でよくやった投網漁を思い出すよ。」

 

ゆり「感情に浸るのはまた今度!一気に捕まえちゃって!」

 

薫「いくよ、りみちゃん。」

 

りみ「はい!」

 

薫「やぁーーーーーーっ!!」

 

ワイヤーの長さに際限は無い為、何処までも大きくなる網に星屑や"飛行型"が次々と捕らえられていき一纏めに集まっていく。

 

ゆり「逃がさないでしっかり持っててね!出番だよ"鎌鼬"!」

 

薫はバーテックスで大漁の網を地面に置き、その上でゆりは大剣を振り回し巨大な竜巻を作り出す。

 

ゆり「全部まとめて吹き飛べ!!」

 

そして大剣を振り下ろし作り出された竜巻が網目掛けて降り注ぐ。

 

りみ「うぅーーーーっ!お姉ちゃんやり過ぎやぁーー!」

 

薫「バーテックスが一気に塵と化していく……あぁ…儚い。」

 

 

--

 

 

花音「ふえぇぇ〜〜〜そこら中にバーテックスがいるよぉ〜〜!!」

 

叫び声を上げながら戦場を駆け回るのは花音だった。護盾を体前面に展開しながら突進してくる星屑の攻撃を防御している。

 

日菜「ちょっと花音ちゃーん、走り回ってるだけじゃなくて敵を攻撃してよー。」

 

花音「む、無茶だよぉ〜!死んじゃうよぉ〜!!守って"波山"!!」

 

護盾に"波山"を憑依させその場に蹲る花音。それを見つけた星屑や"新型"は待ってましたと言わんばかりに花音目掛けて襲いかかるが、

 

花音「ひいぃ〜〜!」

 

直後護盾から凄まじい炎が吹き出し花音を護る様にドーム状に展開。そのまま突っ込んできたバーテックスが勢いよく燃やし尽くされてしまう。

 

日菜「あー………まっ、良っか。」

 

イヴ「やるじゃねえか松原!おい氷河、ありったけの火薬空にぶち撒けろ!」

 

日菜「オッケー。日菜ちゃんにお任せ!」

 

ポケットから事前に持って来ていた火薬入りの小袋を幾つか空に投げ上げる。

 

イヴ「巻き込まれない様に気を付けろよ。"雷獣"!!」

 

"雷獣"を憑依させたイヴは銃剣を指針として小袋目掛けて雷を落とす。すぐさま火薬に引火し真っ暗な空が爆炎で真っ赤に染まりその爆発にバーテックスも巻き込まれ一網打尽となる。

 

花音「この世の終わりだぁ!?!?」

 

日菜「凄い凄い!このままどんどん行っちゃおー!」

 

 

---

 

 

ゴールドタワー地下--

 

地下の一室、床に祝詞が描かれた4つの魔法陣があり、その真上で巫女が祈りの姿勢をもって待機していた。

 

リサ「樹海での戦闘が始まった。みんな準備は良い?」

 

3人が無言で頷き祝詞を唱える。

 

六花(みんなで笑いあえる様に……。)

 

六花「掛巻くも畏き神樹、産土大神 、大地主神の大前に恐み恐みも白さく……。」

 

 

 

彩(みんなが無事であります様に……。)

 

彩「捧奉りて乞祈奉らくを平らげく安らげく聞し召して……。」

 

 

 

モカ(みんなに奇跡が起きます様に……。)

 

モカ「神樹の高き広き厳しき恩頼に依り、禍神の禍事なく……。」

 

 

 

リサ(みんなに勝利が訪れます様に……。)

 

リサ「身健やかに心清く、守り恵み幸へ給へと恐み恐みも白す……。」

 

 

 

唱え出すと、魔法陣の祝詞が白く輝きだし、光の粒子が上へ上へと次々に上昇していく。

 

 

---

 

 

樹海--

 

 

リサ達が祈り始めた頃、全勇者の端末に連絡が入りゲージとパーセンテージが表示される。

 

友希那「みんな、ここから先が本番よ!このゲージが溜まりきるまでここを死守するわ!」

 

蘭「俄然やる気が湧いてきましたよ。行こう、高嶋さん。」

 

高嶋「うん、蘭ちゃん!友希那ちゃんも!」

 

友希那「ええ。"義経"!」

 

高嶋「"一目連"!」

 

友希那は高速で移動、高嶋は突風を発生させてその風を纏い友希那にも負けない速さで樹海を駆け抜ける。

 

蘭「そのまま突っ走ってください!"覚"の能力で敵の位置を知らせます。」

 

高嶋「私は右行くから、友希那ちゃんは左側ね。」

 

友希那「任されたわ。」

 

夜空に駆ける2つの流星が縦横無尽に駆け巡る。"爆発型"が爆発した爆風ですら置き去りにしてしまう。

 

蘭「高嶋さん、右から"飛行型"3体!その後左下から"蟷螂型"が待ち構えてる!」

 

高嶋「りょーかいーっ!!」

 

"飛行型"3体をパンチの三連撃で弾き飛ばし、勢いそのままに"蟷螂型に接近。掌で風を圧縮し、圧縮した風の塊を"蟷螂型"目掛けて投げ飛ばす。"蟷螂型"が叩き斬ろうと鎌を振り下ろすも、圧縮された風の球は高密度に圧縮されている為に刃が通らない。

 

高嶋「弾け飛べーーーーっ!!」

 

合図と共に圧縮された風が拡散。烈風に上半身を持っていかれ動かなくなってしまう。

 

蘭「湊さんは3メートル先左右から星屑の群れが突っ込んでくる!左右に牽制して右下で固まってる"爆発型"に突っ込んで!」

 

友希那「分かったわ。」

 

蘭の言う通りに左右から星屑が突進を仕掛けてくるが友希那は出鱈目な軌道でそれを振り払い"爆発型"に迫る。

 

友希那「自ら間合いを詰める居合も中々のものね。」

 

すれ違いざまに"爆発型"を居合で一閃。爆発に星屑が巻き込まれ一網打尽の結果となる。

 

友希那「この調子で"凶攻型"を引っ張り出すわよ。」

 

"ヤチホコ"充填率15%--

 

 

--

 

 

有咲「くっ!キリねーなこの数!」

 

千聖「あら?もうバテたのかしら?」

 

有咲「完成型勇者舐めんじゃねーぞ!やっと体が温まってきたとこだ。はぁーーっ!!」

 

小刀を四方八方に投げつけ星屑を射抜く有咲。更に突っ込んでくる星屑を足場にしながら宙を駆け上がり"飛行型"を数体十字に斬りつける。

 

有咲「見たか、千聖!これで100体目だ!」

 

千聖「…………。」

 

千聖は何故か有咲に向け銃剣を構えている。

 

有咲「ちょまっ!?」

 

次の瞬間有咲の頬のすぐ横を銃弾が横切り、真後ろから迫っていた星屑を撃ち抜いた。

 

千聖「私はこれで101体目よ、有咲ちゃん?」

 

有咲「まだまだこれからだぁー!!飛ばすぞ"鬼童丸"!」

 

千聖「模擬戦の借りを返すわよ"尊氏"!」

 

互いをライバル視しているからこその戦い方。そんな2人を横目でみながら近くでは赤嶺とつぐみが"超大型"の大群と戦っていた。

 

赤嶺「あの戦い方。何だか私達を見てるみたいだね。」

 

つぐみ「そうだね。私達も負けてられないよ。」

 

赤嶺「勿論。火色舞うよ"山本"。」

 

紫色のオーラを纏い、天の逆手が"超大型"の頭部に入る。途端に悲鳴にも似た唸り声を上げて消滅。

 

つぐみ「借りるよ、赤嶺ちゃんの力。」

 

赤嶺「オッケー。」

 

精霊刀が"山本"の力を吸い上げ刀身が紫色のオーラを放つ。

 

つぐみ「せぇぇぇーーーーいっ!」

 

近付けるさせまいと"超大型"はつぐみ目掛けて一斉にミサイルを発射するが、精霊刀でそれを捌きつつ身軽なフットワークで接近、片腕を斬り落とした。そして、

 

赤嶺「はい、バトンタッチ。」

 

つぐみ「力を貸して"玉藻前"!」

 

今度はつぐみが"玉藻前"をその身に降ろし、九つの尾に狐火を灯した。

 

赤嶺「つぐちん!その狐火まとめて真上に飛ばして!」

 

つぐみ「分かった、それっ!」

 

9つの小さな炎が1つの大きな炎へと変化し、赤嶺はその炎目掛けて蹴り込んだ。

 

赤嶺「勇者………シュート!」

 

サッカーの要領で狐火を"超大型"にシュート。"超大型"は炙られ消滅してしまう。

 

つぐみ「ナイスシュート、赤嶺ちゃん。」

 

赤嶺「充填率も三割。もう少しだ……っ!?」

 

突如樹海全体が大きく揺れだした。そして樹海の彼方からゆっくりと巨大な黒い影が3つ。

 

千聖「とうとうお出ましのようね。」

 

紗夜「ここからが正念場です。」

 

中沙綾「香澄は絶対に守り通す。」

 

"ヤチホコ"充填率37%--

 

 

---

 

 

ゴールドタワー地下--

 

 

彩「っ!?リサちゃん!千聖ちゃんから連絡が!」

 

リサ「私の方も友希那から来たよ。"凶攻型"が3体……モカ、充填率はどのくらい?」

 

モカ「むむむ……46%です。」

 

六花「皆さん………もう少し持ち堪えてください。」

 

 

---

 

 

ゆり「受け止めるっ!!」

 

りみ「ここは通さない!」

 

満開し大剣を真横に伸ばしこれ以上進ませないように1人で3体の"凶攻型"を押さえつけるゆり。りみはそれをサポートするようにワイヤーを樹海に巻き付けて壁状に展開。満開が出来ない勇者達は、"凶攻型"の攻撃を自分自身へ誘導させる。この瞬間勇者達は倒すのでは無く、何としても時間を稼ぐ為にと動いていた。

 

中たえ「充填率残り三割切った!何があっても死守するよ!」

 

 

--

 

 

中沙綾「友希那さん、私達も!」

 

友希那「ええ!」

 

大剣を押さえる為にたえ、沙綾、友希那の3人が乗っている方舟を使って"凶攻型"を押し返す。みんなが戦っている最中、香澄はただ1人指定された場所でじっと耐えていた。

 

香澄「………っ!?」

 

みんなが傷付き、"凶攻型"の攻撃に吹き飛ばされながらもその先の勝利の為に耐える。香澄にとってこれ程辛い瞬間はなかった。

 

香澄(みんな……もう少し…もう少しだけ!)

 

黒い雷を撒き散らし"凶攻型"は争い、空からは自分の身をも顧みない星屑の特攻。いくら精霊バリアがあるからとはいえ、完全には攻撃を防げない。攻撃の1つ1つが鉛をぶつけられたような衝撃を持っている。血だって流れるし、気を緩めてしまえば意識すら失ってしまう程である。

 

日菜「もう…限界だよ!?」

 

千聖「まだなの、たえちゃん!?きゃあっ!?」

 

 

 

充填率87%--

 

 

 

夏希「うぐぐぐぐ………も、もう満開が…!」

 

紗夜「動ける人は負傷者を下がらせてください!攻撃を避ける事に専念して!」

 

 

 

充填率91%--

 

 

 

間も無く完了するその時、3体いる"凶攻型"のうち1体のコアが激しく点滅し突如大爆発を巻き起こす。その身を犠牲に周囲の勇者達を吹き飛ばし、残った2体を逃す為に自爆したのである。

 

勇者達「「「きゃあぁぁぁーーー!?」」」

 

香澄「さーや!?みんなぁ!!」

 

 

--

 

 

友希那「うっ………。」

 

蘭「捨て身の戦法って……。」

 

満開も解除され疲労で体が言う事を聞いてくれない。邪魔が出来ないと判断したのか地に伏せた勇者達に目もくれず残る2体の"凶攻型"は神樹を目指して進みだす。

 

香澄「くっ………うわぁぁぁぁっ!!」

 

作戦とは言え友達が傷付くところを見てるだけしか出来なかった香澄は歯を食いしばり震える拳で"凶攻型"に飛びかかろうとするが、

 

燐子「落ち着いて…ください…!」

 

あこ「まだあこ達が残ってるよ。」

 

既に精霊を降した燐子が冷気で香澄を拘束したのだった。後方支援で残っていた2人は自爆の範囲外にいた為巻き込まれずに済んだのである。

 

燐子「後少し……時間は私達が稼ぎます…!あこちゃん…!」

 

あこ「あこに任せて!てりゃあぁぁっ!」

 

投げた旋刃盤は"凶攻型"の周囲を回転しながら炎の壁を作り出し、2体を閉じ込める。そして更にその外周を燐子が作り出した氷の壁で二重に囲った。

 

燐子「充填率94%……もうすぐ…!」

 

だが"凶攻型"のコアが赤く点滅した瞬間2人の精霊憑依が解けてしまう。精霊を無力化する力で無防備になった2人にビームが飛んでくるもあこが燐子の前に立ち旋刃盤を楯にしてビームを受け止める。

 

香澄「あこちゃん!燐子さん!」

 

あこ「ぐぬぬぬぬ………っ!りんりんはあこが守る!」

 

燐子「あこちゃん!無茶だよ…!」

 

あこ「無茶…じゃない!あこはりんりんもみんなも守る!そしてバーテックスもいっぱい倒す!あこは………戦う楯になる!」

 

 

 

その時だった。首元にある姫百合のゲージが光り輝いたのである。

 

 

 

燐子「こ…これって……。」

 

あこ「うん!"満開"!」

 

樹海から光があこに降り注ぐ。その光は姫百合を型取り、勇者装束は白を基調とした羽衣が、背中に光輪が追加され神々しさを増す。どことなく女性らしさを感じる清廉さを漂わせていた。

 

姫百合の花言葉は2つある。1つは"可憐な愛情"。漢っ気勝りなあこには若干似つかわしく無い花であるが、燐子の様になりたいという願いを体現しているのかもしれない。そしてもう1つが"誇り"。この戦いを通し、誰かを守り通す事を覚悟したあこに相応しい花といえるだろう。

 

あこ「かっこいい………!」

 

燐子「あこちゃん、前…!」

 

燐子の声であこが前を向くと眼前には2つのビームが螺旋に合わさった極太のビームが迫っていた。

 

あこ「りんりん下がって!」

 

あこは宙に浮き、旋刃盤を構え力を込める。すると旋刃盤がどんどんと巨大化し極太のビームを弾き返したのだ。

 

燐子「ゆり先輩の"満開"に似てる……。」

 

燐子の推察は当たっていた。あこの満開に特別特殊な能力は追加されていない。そして旋刃盤もこれといった変化はない。あこの"満開"の真価は守る事にある。守りたい思いがある限り、旋刃盤はどんな攻撃でも跳ね返す強靭な楯となる。

 

あこ「下がれぇーーー!!」

 

今度は旋刃盤をディスクの様に投げ、2体をいっぺんに吹き飛ばした。そしてそれと同時に端末から充填完了のアラームが鳴り響きリサから連絡が入る。

 

香澄「貯まりきった!」

 

リサ『香澄、準備は良い?』

 

香澄「大丈夫です!」

 

リサ『3……。』

 

香澄「2……。」

 

リサ『1……。』

 

香澄・リサ「『"ヤチホコ"起動!!』」

 

 

---

 

 

ゴールドタワー地下--

 

モカ「うっ………ぐぅ…目標確認…オッケー。」

 

六花「はぁ………はぁ…全回線異常……無しです。」

 

部屋全体が輝き出し、タワーの壁面や内部の壁など、あらゆる所に祝詞の文言が浮かび上がる。祝詞が浮かび上がる度に巫女の体に電気が流れた様な衝撃が走った。リサ達はその衝撃を少しでも緩和する為に耐火性能に優れた"羽衣"と呼ばれる物を改良し、衝撃吸収に優れた装束を身に纏っている。にもかかわらず、その身に奔る衝撃は鍛えていないリサ達にとっては大きな負担となる。

 

リサ「うぐ……っ!」

 

彩「み、みんなの為……頑張るよ、千聖ちゃん……。」

 

そしてタワー屋上に設置されたアンテナ状の設備が青白く光り、唸る様な音を発し出す。そしてタワーの建っている周辺の地面が光り始め、その光は束となって、アンテナから放出され光は虚空へと消えていったのだった。

 

 

---

 

 

樹海--

 

 

香澄がスイッチを押した数秒後神樹の方角から光の束が接近し、戦闘が繰り広げられている上空で光の束は粒子へと変化し、戦場へと雪の様に降り注ぐ。粒子の一粒が香澄の頬に触れる。それはほんのり温かく柔らかな光。そしてその光に触れた"凶行型"や他のバーテックスの動きが鈍り、"凶攻型"に至っては漆黒の体躯が他のバーテックス同様白く変化し出したのである。

 

香澄「今しか無い……"満開"!!」

 

ゲージが輝き香澄は満開する。そして左右の巨大なアームを振りかぶり"凶攻型"へ一撃をお見舞いする。

 

香澄「効いてる!」

 

今までは"満開"時の攻撃ですら、擦り傷程度のダメージしか与える事が出来なかったのだが、"ヤチホコ"の力で負の力が祓われた為かパンチの一撃で身体にヒビが入る程のダメージを与える事が出来ていた。だが"凶攻型"も一筋縄では行かず、損傷した部分をバーテックスを吸収して再生させようと試みるのだが、

 

中沙綾・友希那「「させない(わ)!!」」

 

香澄「さーや!」

 

あこ「友希那先輩!」

 

満身創痍だった沙綾達が周りのバーテックスを殲滅し回復を阻害させたのである。"ヤチホコ"の温かな光はバーテックスを弱体化させるだけで無く、勇者達の体力や気力も回復させたのだ。

 

中沙綾「決めちゃって、香澄!」

 

友希那「あこ、かましなさい!」

 

香澄・あこ「「うん(はい)っ!!」」

 

香澄「満開・勇者パーーーーーーンチ!!」

 

あこ「焔纏(えんてん)の巨刃・瞬旋!!」

 

香澄の渾身の一発が"凶攻型"の核を貫き光となって消滅。同時にあこが投げ放った焔を纏った巨大な旋刃盤が"凶攻型"を核ごと真っ二つに切り裂き、切り口から灰塵と化すのだった。

 

 

---

 

 

勇者部部室--

 

"ヤチホコ"による回復効果のお陰もあってか、自爆による爆発の怪我もある程度は回復する事が出来ていた。

 

千聖「みんな良く無事だったわね。」

 

花音「本当にあの時は死んじゃうかと思ったよ……。」

 

みんなで怪我の手当てをしながらこの戦いを振り返る。

 

あこ「りんりん、どうだった?あこの"満開"。カッコ良かったでしょ?」

 

燐子「うん…。すっごくカッコ良かったよ、あこちゃん……。」

 

あこ「でしょでしょ!あの必殺技の名前もずっと温めておいたんだー。」

 

えっへんと大きく胸を張って自慢するあこ。そこへゴールドタワーに行っていた巫女達が帰ってくる。

 

友希那「リサ、本当に助かったわ。あなたがいなかったらどうなっていたか分からなかったわね。」

 

リサ「私……力になれた?」

 

友希那「ええ。」

 

リサ「その言葉だけで私には充分過ぎるご褒美だよ。」

 

友希那「大袈裟ね。」

 

りみ「香澄ちゃんもお疲れ様。」

 

香澄「りみりん!りみりん達が頑張って押さえつけてくれてたお陰だよ。ゆっくり休んでね。」

 

リサ「"ヤチホコ"はまだ改良の余地があるかな。次に備えてもう少し充填速度の短縮が出来るよう大赦に頼んでおくよ。だけど、今は勝利の余韻に浸ろうか。」

 

香澄「そうですね。巫女の皆さん含めて、みんなで掴んだ勝利です。」

 

みんなで乗り越え、みんなで掴んだ勝利。そしてこの後、勇者達にとって最大の転機が訪れる事となる。

 

 

 

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