戸山香澄は勇者である   作:悠@ゆー

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この時代の勇者達は、まだ勇者システムの力が不足している為、倒す事が出来ません。"鎮花の儀"で追い返すのが精一杯です。




たいちょうのししつ

 

 

強化合宿が終わった次の日の学活の会--

 

夏希「ギリギリセーフ!」

 

安芸「セーフじゃありません。」

 

安芸先生は今日も出席簿で夏希の頭を小突く。

 

夏希「おぅ。すいません……。」

 

その様子を見ながら沙綾は、

 

沙綾(それにしても夏希は遅刻が多すぎる。でも、頑なに理由は話そうとはしない…。何か事情でもあるのかな…。)

 

そんな事を思っていた。席にカバンを置いた夏希だが、その時カバンの中から猫が顔を出す。

 

夏希「おわあっ!?こら、ダメだって!」

 

沙綾(な、何故猫が!?怪しすぎる…。)

 

 

 

 

 

 

休日ーー

 

沙綾はたえを誘って夏希の家に向かっていた。夏希の遅刻の理由を確かめる為である。

 

沙綾「そろそろ夏希の家に到着するね、おたえ。」

 

後ろを振り返るが、たえが着いて来ていない。

 

沙綾「って、あれ!?いない!?」

 

たえ「アリだー。やあやあ元気かい?」

 

たえは道端のアリに夢中になっていた。

 

沙綾「はい、フラフラしない。」

 

沙綾は無理やりたえを連れて行く。

 

 

 

 

 

 

海野宅--

 

沙綾「ここが夏希の家か。早速様子を…。」

 

たえ「どうやって?」

 

沙綾は何かを取り出す。

 

沙綾「こんな事もあろうかと持ってきたんだ。」

 

沙綾が出したのは、塀の外からでも中の様子が確認出来る双眼鏡の様なものだった。中では夏希が縁側で赤ちゃんをあやしていた。

 

夏希「おい、泣くなー。お前、この夏希様の弟だろー。泣くなって。泣いていいのは母さんに預けたお年玉が返ってこないと悟った時だけだぞー。」

 

弟「うぅ、うぅー……。」

 

夏希「ああ、ぐずり泣きが始まってしまった。ミルクやおしめじゃないだろうし…。」

 

夏希はガラガラを取り出す。

 

夏希「ほーらほらほら。」

 

弟「あー、あー。」

 

弟が泣き止む。

 

夏希「おお、泣き止んだ。偉いぞ、弟よー。ったく、甘えん坊な弟だよなー。」

 

その時、

 

冬樹「姉ちゃん買い物はー。」

 

夏希「はーい、ちょっと待っててねー。」

 

声の主は夏希のもう一人の弟である。

 

たえ「わー!夏希ってばワンダフル。子守とかお手伝いとかしてるよ。」

 

沙綾「遅刻の理由はお世話が大変という事なのかな?」

 

そこで、たえが何かに気付く。

 

たえ「あ、沙綾見て見て。」

 

そこにはおじいさんの手を引いている夏希の姿。

 

沙綾「道を尋ねられたのかな?」

 

たえ「まただ。」

 

沙綾「あっ、今度は自転車を起こしてる。」

 

たえ「今度は逃げた犬を追いかけてるよ。」

 

沙綾「夏希って事件に巻き込まれやすい体質なんだね。」

 

たえ「これも勇者だからなのかな?」

 

そんな事を言い合いながら、2人はさらに夏希の後を追いかけて行った。

 

 

 

 

 

 

イネスに入っていく夏希。

 

沙綾「次は迷子の子を届けてるよ。」

 

たえ「ケンカの仲裁?」

 

沙綾「果物を落とした人を手伝ってる!?」

 

たえ「巻き込まれてるっていうか、ほっとけないんだろうね。」

 

沙綾「もう見てられない。」

 

沙綾が手伝いに走り出した。

 

たえ「おっ?あっ、沙綾!?」

 

沙綾「手伝うよ。」

 

夏希「え?え?なんだよ2人ともー。」

 

 

 

 

 

 

そのまま一緒に食事をとる3人。

 

夏希「じゃあ、2人とも家の前から見てたっていうの?うへぇ…。なんか恥ずかしいな、それ。」

 

たえ「恥ずかしくなんかないよ。偉いよ。」

 

沙綾「いつも遅れてくる理由はこれだったんだね。それならそうと言ってくれれば良かったのに。」

 

夏希「それはなんか他の人のせいにしてるみたいで…。何があろうと遅れたのは自分の責任な訳なんだし。」

 

沙綾「昔からそういう体質なの?」

 

夏希「ついてない事が多いんだよね。ビンゴとか当たった事ないもん。とほほ…。っ!」

 

夏希が何かに気が付く。

 

 

周りの時が止まっていた--

 

 

大橋の鈴が鳴り出す。

 

夏希「ほらねー。せっかくの日曜が台無しだよ。」

 

 

大橋の向こうから世界が割ける--

 

 

3人はアプリを起動し、勇者へ変身する。

 

 

 

 

 

 

樹海--

 

樹海の向こうから現れたのは"山羊型"のバーテックス。

 

沙綾(今度こそ私が……。)

 

沙綾は意気込み、

 

沙綾「まずは私がこれで様子を見る!」

 

矢を"山羊型"に向けて放とうとした時。"山羊型"は地面を揺らし、沙綾の体制を崩し狙いを付けられない様にしてきた。

 

沙綾「っ!?」

 

夏希「わっ!?何だ何だ何だ?」

 

沙綾「くっ…。今度こそ…。」

 

沙綾は再び構えるが、"天秤型"との戦いを思い出してしまう。

 

沙綾(今度こそ…今度こそ……。)

 

矢を構える沙綾の手に力が入る。その時夏希が沙綾の肩に手を置いた。

 

沙綾「っ!?」

 

夏希「落ち着けって、沙綾。」

 

沙綾「夏希……。」

 

たえ「私達と一緒に倒そう。」

 

沙綾「おたえ……。」

 

夏希「合宿の成果を出す。そうでしょ?」

 

"山羊型"の動きが突如止まり、足を3人に向かって伸ばしてきた。

 

たえ「はっ!」

 

たえが傘状にしてガードする。

 

たえ「よーし、敵に近づくよ!」

 

沙綾・夏希「「了解!!」」

 

相手の動きを悟ったのか、"山羊型"は飛び上がり3人に狙いを定め再び足を伸ばす。3人は避けて着地し、沙綾は矢を放ったが、相手の位置が高すぎて届かない。

 

沙綾「制空権を取られた!?」

 

夏希「ひきょーだぞ、降りてこーい!」

 

たえ「気を付けて、何か仕掛けてくるよ!」

 

たえが2人に注意する。"山羊型"は4本の足を1つに合わせ回転。ドリル状になって振り下ろしてきた。

 

夏希「まずいっ!」

 

夏希が斧で防ぐ。

 

夏希「あああああああっ!このっ!とおおおおおっ!!」

 

沙綾・たえ「「夏希!!」」

 

夏希「1分は持つ!上の敵をやれえええええっ!」

 

沙綾は考える。

 

沙綾(でも、そうしたら夏希が危ない…。どうしよう?元の世界にも被害が出始めている……。夏希が…どうしよう!?)

 

その時たえが、

 

たえ「私達で!敵を叩くよ!!」

 

そう言いつつ槍を"山羊型"に向かって投げた。投げた槍は階段状になり、沙綾はそれを駆け上がる。沙綾は弓を巨大化させ、チャージしながら登っていく。

 

沙綾(助ける、世界も………夏希も!!)

 

最上段で踏ん張り、飛び上がって矢を放った。

 

沙綾「届けぇぇぇぇぇ!!!」

 

矢は"山羊型"に命中し、当たった場所に穴が開く。

 

たえ「ここから……出ていけっ!」

 

たえの掛け声とともに、槍が巨大化する。

 

たえ「突撃ぃぃぃぃぃぃ!!!」

 

"山羊型"に向かって突撃し、貫いた。

 

たえ「きゃっ!」

 

しかし、勢い余って着地に失敗。

 

沙綾「後は!」

 

たえ「頼んだよ!!」

 

2人は夏希に託した。

 

夏希「よし、3倍にして返してやる!」

 

夏希の斧が炎を纏い、"山羊型"に向かってジャンプ

 

夏希「おりゃおりゃおりゃおりゃおりゃ!!」

 

"山羊型"を切り刻み、

 

夏希「止めだあぁぁぁぁ!!!」

 

最後に頭を思いっきり殴って後ろに吹っ飛ばした。空が光り、鎮花の儀が始まる。

 

夏希「へへっ、始まった。」

 

たえ「鎮花の儀……。」

 

樹海に花びらが降り注ぎ、

 

沙綾「終わった……。」

 

"山羊型"は消えていった。

 

 

 

 

 

 

広場で横になる3人。

 

夏希「ああ…いててて……。」

 

たえ「夏希、大丈夫?」

 

夏希「疲れたよ。腰に来る戦いだった…。」

 

たえ「ああして攻撃を受け止めてくれたから、私達が攻め込めたんだよ。ありがとね、夏希。」

 

夏希「そっちこそ、すごかったじゃん。」

 

たえ「だって、夏希が1分持つって言ったんだから。それくらいあれば何とかなるって思って。長引かせると危険だもんね。」

 

2人が会話している中沙綾は思う。

 

沙綾(先生は見抜いてたんだ…。おたえのいざという時の閃きを。私は迷ってるだけだった…。それなのに家柄のせいでおたえが隊長に選ばれたと思い込んで…。大馬鹿だ。自分がしっかりしなくちゃって思ってたけど、ただ足を引っ張ってただけなんだ……。)

 

夏希「あーぁ…お腹空いたー。」

 

たえ「そういえば、ご飯食べてる途中だったもんね。」

 

沙綾「ぐすっ…。」

 

たえ・夏希「「?」」

 

突然沙綾が泣き出した。

 

夏希「ど、どうした沙綾!?どこか痛いのか?」

 

沙綾「違うの。私…ごめんなさい……。次からは始めから息を合わせる。頑張るから。」

 

沙綾は自分の不甲斐なさに涙を流したのだ。

 

夏希「あぁ。頑張ろうな。」

 

たえ「はい、沙綾。」

 

夏希は優しい声をかけ、たえはハンカチを差し出す。

 

沙綾「ありがとう…。おたえ……夏希……。」

 

こうして3人は思いを新たにして、御役目へと励んでいくのであった。

 

 

 

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