タイトルは百日草の花言葉。
そして次回、再びあの刀を携えた少女達がやって来る--
花咲川中学、渡り廊下--
夜桜のお花見から翌日、蘭とモカは昨日の事を振り返りながら廊下を歩いていた。
モカ「昨日のお花見、楽しかったね。」
蘭「そうだね。昼間のライトアップの設営も楽しかったし、夜桜を囲んでの花見も盛り上がったよね。そういえばモカ、花見の後に高嶋さんから花の種を貰ったよね。」
モカ「そうだね。」
手に握られていたのは昨日高嶋が、依頼人から貰った花の種が入った小袋。
モカ「百日草っていう花の種らしいんだよね。一緒に育ててみよーよ。」
蘭「うん、折角の機会だしやってみようか。……って、言いたいところだけど、その種モカが育ててみたらどう?」
モカ「私?でも、こういうのは蘭の方が得意なんじゃ……。」
蘭「私が教えてあげるから大丈夫だよ。それに、この間花屋の手伝いした時も言ってたでしょ?花を育てるのも楽しそうだって。折角チャンスが舞い込んできたんだから、やってみると良いよ。」
モカ「確かに良い機会だとは思うけど……。種から花を育てるなんて小学生以来だから出来るかなぁ。」
蘭が背中を押すも、中々踏ん切りがつかないモカ。
蘭「一度でもやった事あるなら問題ないじゃん。」
モカ「でも、その時育てたのは朝顔なんだよねー。種類が違えば育て方も全然違うだろうし、やっぱ自信無いかも……。」
蘭「相変わらずモカは心配性なんだから。何事も前向きにやってみないと。私もフォローするからさ。」
モカ「蘭がそこまで言うなら、やろうかな。」
蘭「そう来ないと。」
モカ「ちゃんと花が咲くように頑張るよ。」
蘭「じゃあ、最初はこの種をよく知る事から始めよう。」
モカ「そだね。野菜の時と同じ様に、植物の特徴とか育てる時の注意点とか事前に知っておかないと。」
2人は百日草について調べる為に図書室へと向かうのだった。
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図書室--
蘭「モカ、『花の育て方大辞典』っていうのがあったよ。」
モカ「おー。分厚い本の中に花の育て方が沢山書いてありますなー。」
蘭「野菜と同じ様に、花も中々育て方が奥深いんだよね。」
早速2人は辞典で百日草の項目を調べる。
蘭「百日草………このページだね。」
モカ「ふむふむ……丁度この時期に種を撒けば、夏頃には花が咲くんだね。それに、上手く育てれば名前通り長い期間花が咲くらしいね。」
蘭「百日も咲くなんてなんかロマンあるね。初心者にも安心って書いてあるし、安心して種蒔きに臨めるよ。種蒔きに必要な植木鉢と土は私の畑にあるのを好きなだけ使って良いよ。」
モカ「ありがと、蘭。じゃあこのまま畑に行っても良い?」
蘭「もちろん、行こうか。」
2人は図書室を後にするのだった。
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花咲川中学、渡り廊下--
畑に行こうとしていた道中、2人は巫女達3人と出会った。
リサ「蘭にモカじゃん。奇遇だねぇ。」
モカ「リサさん?それにロックに彩さんも。巫女が集合だなんて何かあったんですか?」
彩「帰ろうと思ってたら、たまたま会ったんだよ。」
六花「ここまで来たらモカさんにも会うんじゃないかってさっきまで話してたところだったんです。お2人は何をしてたんですか?」
蘭は3人にここまでの経緯を話した。
彩「種蒔きかぁー!」
六花「折角ですし、私達も一緒に行きませんか?」
リサ「それ良いね!2人とも、一緒について行っても良い?」
蘭「良いですよ。それじゃあ、みんなで畑に行きましょう。」
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美竹農園--
モカ「………取り敢えず土を植木鉢に入れてみたけど、ちょっと多くない?」
蘭「私が野菜の種蒔きをする時の経験からして、これくらいが丁度良いと思うよ。」
植木鉢に少しこんもりと土を盛った後、指先で種の入る穴を掘り、種を何粒か蒔いた。
彩「種蒔きも色々とコツがあるんだね。奥が深いよ。」
そして種の上に薄く土を被せ、じょうろで水を撒く。
六花「モカさん、とってもいい感じです!」
リサ「後は芽が出てくるのを待つだけだね。手伝える事があれば何でも言って。」
モカ「ありがとうございます。」
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翌朝、勇者部部室--
昨日種を植えた植木鉢を両手に持ちながらモカは部室へとやって来た。
モカ「よいしょ……っと。ゆりさん、おはようございますー。」
ゆり「あれ、モカちゃんどうしたの?植木鉢なんか持って。」
事の経緯をゆりに話すモカ。
モカ「……という事なんです。ここは日当たりも良いし、すぐに世話出来るから芽が出るまで置かせてもらっても良いですか?」
ゆり「大歓迎だよ!それで、芽はいつ出そうなの?」
モカ「昨日からずっと観察してるんですけど、今のところ変化は全く無しですねー。」
そこへ蘭がやって来た。
蘭「モカ。そんなすぐに芽が出る訳無いでしょ。1週間ぐらいはかかるって本にも書いてあったじゃん。」
モカ「だよねー。昨日蒔いたばっかりだもんね。」
3人で話していると次々と部員が部室に集まってきた。
夏希「あれ?モカさん何やってるんですか?」
小沙綾「植木鉢……何か植えるんですか?」
モカ「ふふーん。ここには既にモカちゃんの種が植ってるんだよ。」
夏希「モカさんの種!?ってまさかモカさんの正体は植物……。」
小沙綾「そんな訳無いでしょ。モカさん、種を蒔いて育ててるって事ですよね?」
モカ「そうとも言うね。」
夏希「花かぁ……私達も育てた事あるよね。」
小沙綾「そうだね。」
モカ「おぉ……じゃあ2人は花育ての先輩ですなぁ。」
小沙綾「そう言っても、私達が育てたのは朝顔ですから参考にならない事も多いですよ。」
蘭「へぇ……沙綾ちゃん達も朝顔だったんだね。」
モカ「私も朝顔だけなら育てた事あるよ。」
ゆり「懐かしいなぁ。私も小学生の頃は朝顔育てたよ。」
夏希「何でみんな朝顔何ですかね?世の中には色んな花の種類があるのに。」
小沙綾「そう言われると不思議だね。」
良く良く聞いてみると、ここにいる大半の人達は一度は朝顔を育てた事があるという。
因みに、小学生が朝顔を育てる理由は初めてでも育て易く、水さえあげれば成長する植物であり、基本的な育ち方の途中で真っ直ぐに伸びない蔓に四苦八苦しながら支柱で支えなければならない事を学び、種が出来たらその種を次の下級生がその種を育てる事が出来るから。つまり生命のリレーをしている訳である。
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そして更に数日後--
植木鉢への水やりはモカの毎日の日課となっていた。
モカ「………よし、今日も朝の水やりはこれで良しと。害虫もいないね。」
リサ「毎日精が出るね、モカ。」
モカ「そーなんですけど、まだ芽が出ないんですよねー。やる事は全部やってるんですけど。」
もう少し日当たりの良い場所に移すべきなのか等と試行錯誤を繰り返すモカに対し、蘭は達観した感じで眺めていた。
蘭「モカ。そんなに心配しなくてももう少し待てば芽出る筈だよ。」
彩「蘭ちゃんの言う通りだよ。」
六花「そうですね。あんまり水をあげすぎてもダメだと聞いた事がありますよ。」
リサ「後はみんなで芽が出るように祈ろりながらゆっくり待とうよ。巫女なんだからさ。」
そんな時だった。
小たえ「ちょっと待ったぁぁぁっ!」
蘭「ちょっと待ったコール!?」
中たえ「それなら植物だけじゃなくて、人間もお日様を浴びた方が良いんじゃない?」
モカ「人間って、私達?」
小たえ「そうです。花を育てるモカさんがお日様を浴びて元気にしていれば、種もきっと元気になります。」
モカ「そういうものー?」
中たえ「見ているだけじゃ芽は出ないよ。ほらほら、みんなお外にゴー!だよ。」
たえ達にせっせと連れられた5人はグラウンドへと出るのだった。
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グラウンド--
7人がやって来たのはグラウンドの脇にある花壇。普段は園芸部がここで様々な花を育て世話をしている場所である。
蘭「今の季節にぴったりの花が沢山咲いてる。」
モカ「私が蒔いた種も、いつかこんな風に咲いてくれると良いなぁ。」
香澄「あれ?モカちゃんに蘭ちゃん。それにみんなも、どうしたの?」
花壇では何故か香澄が土まみれになりながら花の手入れをしているところだった。
蘭「そういう香澄はどうしてここに?」
香澄「私?私は園芸部の手伝いでよくここの花壇を手入れしてるんだよ。」
勇者部の活動において最初の頃から香澄が1番力を入れている事がここの花壇の手入れである。故にここに咲いている花の世話をしているのは香澄という事になるのだ。たえはそれを知った上でモカ達をここに連れて来たのである。
モカ「そうなんだねー。実は--」
モカは香澄に育てている種の芽が中々出ない事を伝える。
中たえ「だから香澄なら何か良いアドバイスくれるんじゃないかって連れてきたんだ。」
香澄「そうだなぁ。いつ芽が出るかは分からないけど、心を込めてお世話をすればきっと花は咲く筈だよ!私もここの花をお世話する時は、愛情込めてやってるもん。」
彩「それでこんなに綺麗な花が沢山咲いてるんだね。」
香澄「モカちゃんも、毎日心を込めてお世話してるんだから絶対に大丈夫だよ!うん、絶対!」
全く根拠の無い自信からくる言葉ではあるが、香澄が言うと何故か本当にそうなるような気がしてくる。
中たえ「やったね!香澄の太鼓判が出たよ。」
小たえ「モカさん。香澄さんもこう言ってるんですから、きっと大丈夫ですよ。」
モカ「うん。みんな、ありがとね。」
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そしてそれから更に数日後、勇者部部室--
モカ「今日も芽は出てないねぇ。」
彩「モカちゃん、じょうろに水を入れてきたよ。」
リサ「もっと日当たりが良い場所を片付けたから、こっちに移動すると良いかも。」
六花「今日も沢山パワーを送りますから、みんなで頑張りましょう。」
ここ数日ですっかり植木鉢の世話が板についてきた巫女一同。
モカ「ありがとです。種蒔きしてから大体1週間くらいで芽を出すのが多いので、そろそろだと思うんですけどねー。」
すると部室のドアが空き、蘭に連れられた香澄と沙綾が入ってきた。
中沙綾「役に立てるか分からないけど。」
香澄「モカちゃんの力になりたくて様子を見に来たよ。」
蘭「いつも手伝ってくれてる2人がいればモカの助けになると思うよ。」
モカ「おぉー、これは強力な助っ人登場ですな。」
中沙綾「事情は蘭から聞いてるから、状況確認からしようか。」
香澄「普段はどんなお世話をしてるか聞いても良い?」
モカはこれまで自分達がやってきた事を事細かに香澄達に伝える。
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香澄「成る程……特に問題無さそうに思えるけど、他に出来る事っていえば……。」
中沙綾「鉢の下に受け皿を置いて、そこから土に水を吸わせるって方法も有効かもよ。」
香澄「そうだね。後は腐葉土を少し混ぜて土に栄養をあげるのも良いかも。」
リサ「そうなんだ…。流石は勇者部初期メンバー。」
モカ「それじゃあ早速その方法を試してみますか。」
香澄「うん。私達もこまめに様子を見にくるから、分からない事があったら何でも聞いてね。」
そうして2人は部室を後にするのだった。
蘭「役に立ったみたいだね。」
モカ「蘭にも感謝感謝。」
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そしてそこからまた更に数日後、勇者部部室--
モカ「おはよーございまーす。」
部室には誰もいない。どうやらモカが来るのが1番早かったようだった。
モカ「今日は芽が出てると良いけど、本に書いてあった日数より時間がかかってるから大丈夫かなぁ?」
目を閉じて薄目で植木鉢を覗いてみる。
モカ「おっ………おおっ!芽が出てる!」
そこにはちょこんと可愛らしい百日草の芽が土に映える若緑色の顔を覗かせているのだった。
蘭「おはよう、モカ。」
モカ「蘭、見てよこれ。」
蘭「あっ…やっと芽が出たんだね。モカの百日草。じゃあ、花壇に植え替えてのびのび育てないとね。昼休みにみんなを呼んで植え替えようか。」
モカ「そうだね。」
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昼休み、花壇--
彩「モカちゃーん!」
リサ「やっと芽が出たんだね。私達も手伝うよ。」
六花「本当に良かったですね。あっ、香澄さんが花壇の空いてる所を自由に使って良いと言ってましたよ。」
彩「この辺りが空いてるみたいだけど、どう?」
モカ「日当たりも良さそうだし、手入れされていて土の状態も抜群だね。」
蘭「それじゃあ手分けして、土を柔らかくしてから苗を移そう。」
5人で花壇を耕し、苗をそっと花壇に植え替える。30分もかからない一瞬の出来事だった。
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モカ「皆さんが手伝ってくれたので、すぐ終わりました。ありがとうございます。」
リサ「夏にはここにモカの花畑が出来るんだね。」
彩「きっと綺麗な花が咲くんだろうね。」
六花「勿論です!モカさんが心を込めて育てたんですから、綺麗な花が咲くに決まってます。」
モカ「気が早いなぁ。でも、今回の事で花を1から育てる難しさが身に染みて分かったよ。」
六花「これからが大変ですよ。」
彩「私達も色々手伝うから、立派な花が咲くまで頑張ろう!」
蘭「良かったね、モカ。」
モカ「そだね。これからが大変になるよ。」
百日草の花言葉は"幸福"、"絆"、"遠方の友を思う"。そして"いつまでも変わらぬ心"。
長い年月を重ねても、どれだけ遠く離れていても、人は過ぎ去った日々の事を振り返り、ずっと互いを思い続ける。大切な親友との絆を。そんなこの花は蘭とモカの2人によく似合う花なのだった。
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勇者部部室--
部室の窓からモカ達が苗を植え替えている姿を見ていた香澄と沙綾。
中沙綾「モカが育てた種、芽が出て良かったね、香澄。」
香澄「そうだね。すっごく嬉しそうだよ。」
中沙綾「……それで、少し前に香澄が話してくれた夢の話なんだけど。」
香澄「うん。」
中沙綾「昨日私も似たような夢を見たんだ。」
香澄「さーやも?」
中沙綾「香澄とはまた違う夢だったんだけど、夢に出てきた女の子が香澄の夢に出てきた人と少し似てたんだ。」
香澄「何かの予兆なのかなぁ……。」
中沙綾「悪いものじゃないと良いんだけどね…。」