戸山香澄は勇者である   作:悠@ゆー

232 / 326
第1章から続いてきたこのお話も本編残り11話で終わりとなりました。

この世界に、再び刀を携えた巫女がやって来ます。




蘇りし記憶の燈火

 

 

?(もし、何かを守る為に命を投げ出さないといけなかったら……そうしないと守れないとしたらあなたなら、どうする?)

 

 

--

 

 

戸山宅、自室--

 

香澄「またあの夢……。だけど前より少し鮮明になってる…。」

 

暫く前から香澄は毎晩同じ夢を見ていた。少女が投げかける問い。"何かを守る為に自分の命を投げ出す覚悟"。それはまるでこの先の自分の事を暗示しているかの様な--

 

香澄「私は…知っている様な気がする……。あの人を…違う、あの人に似た誰かを…。」

 

 

---

 

 

勇者部部室--

 

勇者達は記憶をどうにかして持ち帰る術を今までずっと探してきた。しかし未だにその方法が分からない。

 

リサ「大赦も調べてはくれてるけど、手がかりすら全く掴めないよ。」

 

中たえ「心にずっと残るような思い出を作り続ける……これしか無いのかな…。」

 

リサ「前みたいにまた神樹様との対話を試みるしか…。」

 

友希那「それは本当に最終手段よ、リサ。一度失敗して酷い目にあったでしょ。」

 

リサ「そう…だね。」

 

遅々として解決方法は見つからない。その時、全員の端末から聞いた事が無いアラームが鳴り響く。

 

 

ノイズが混じったアラームが--

 

 

---

 

 

樹海--

 

樹海に降り立った勇者達を待ち構えていたものは、いつもの白く蠢く星屑では無かった。

 

赤嶺「何あれ…?」

 

千聖「バーテックス……なのかしら…。」

 

赤銅色をした昆虫の体に般若の顔を持つ有象無象。バーテックス程のグロテスクさは無いが、それでも見る者にとっては恐怖を感じるだろう。

 

花音「ふえぇ〜〜っ!?な、何これ!?」

 

沙綾は端末で確認する。するとそこにはバーテックスのとは違うマーカーがびっしりと樹海全体に示されており、"荒魂"と名前が振られていた。

 

中沙綾「荒…魂…。バーテックスじゃない?っ!?」

 

荒魂の名前を沙綾が呟いた途端、樹海にいる勇者達全員に頭痛が走る。

 

美咲「痛っ!何この頭痛!?」

 

友希那「頭が…っ!」

 

中たえ「荒魂……私達はこの名前を知っている…!?」

 

一同は頭の痛みを振り払い、眼前に蠢く荒魂の大群を殲滅する為に行動に移った。

 

香澄「勇者パーンチ!!」

 

動きはそれ程速くはなかった。正面から香澄の勇者パンチが炸裂するも、

 

香澄「くぅ……!この敵硬い…。」

 

逆に攻撃した香澄の拳がダメージを受けてしまう。他の勇者達の攻撃も同じだった。全く攻撃が通らないという事は無いのだが、殆どダメージを与える事が出来ていない。

 

燐子「この硬さ……"凶攻型"と同じです…!」

 

友希那「それなら……!」

 

友希那は端末からリサに"ヤチホコ"の使用を通達する。"凶攻型"と同じであるなら"ヤチホコ"の弱体化が通用する筈だと踏んだのだ。初めて"ヤチホコ"を起動して"凶攻型"を倒すのに成功した後、大赦では更に"ヤチホコ"に改良を加えており充填時間がより短縮する事に成功していた。

 

その為起動の指示をしてから10分程でリサ全員の端末に充填完了の通知が届く。

 

リサ『香澄、準備は良い?』

 

香澄「大丈夫です!」

 

タイミングを合わせ、2人が同時に"ヤチホコ"起動のスイッチを押し、光の粒子が樹海全体に降り注いだ。

 

あこ「動きが鈍くなったよ!」

 

燐子(やっぱり……この敵は"凶攻型"と似ている…?)

 

攻撃が通用するようになり、士気が上がる勇者達。しかし攻撃が通るがトドメを刺すことが出来ずにいた。

 

日菜「どういう事!?弱ってるのは確かな筈なのに全然倒せないよ!」

 

どんなに威力が高い攻撃でも、力を合わせた連続攻撃でも、勇者達の攻撃でトドメを刺す事が出来ない。攻めあぐねている中、更に敵増援のアラームが鳴る。

 

高嶋「奥からまた荒魂が来るよ!」

 

 

 

その時だった--

 

 

 

?「はぁっ!!」

 

?「ふっ!」

 

突如何処からともなく現れた5つの影が荒魂を次々に斬り伏せていったのだ。

 

?「数が多い…。」

 

?「仕方ない"S装備"を使う!」

 

?「ここは任せて"姫和"ちゃん!」

 

?「面倒くせーがやるしかねー。行くぞ"エレン"。」

 

?「では、ミッションスタートデス!」

 

1人をその場に残し4つの影は方々へ散開し荒魂を瞬く間に殲滅していく。

 

?「ふぅー。後は姫和ちゃん達がやってくれるかな。私ももっと戦いたいけど……。」

 

その場で戦っていた少女は一息つくと勇者達の方を振り返った。

 

?「また会えたね。友希那ちゃん、みんな!」

 

 

 

その少女--

 

 

 

 

衛藤可奈美は笑顔で話しかけるが、

 

友希那「私を……知っているの?」

 

蘭「湊さんの知り合いですか?」

 

友希那「いえ……。」

 

感動の再会の筈だったのだが、予想外の反応に可奈美は狼狽えてしまう。

 

可奈美「えっ!?えぇーーっ!!忘れちゃったの!?友希那ちゃん、私だよ!私!」

 

友希那「ごめんなさい…。」

 

困惑している中、遅れてもう1人可奈美と同じ服を着た少女が走ってやって来る。

 

?「可奈美ちゃーん!」

 

可奈美「"舞衣"ちゃん!偵察ありがとう!」

 

舞衣「はぁ…ふぅ…。皆さん、お久しぶりです。」

 

可奈美「それなんだけど、友希那ちゃん達私達の事覚えて無いみたいなんだよ!」

 

舞衣「えっ!本当ですか!?」

 

ゆり「ごめんなさい。どんなに記憶を手繰ってもあなた達の事が思い出せないんだ。」

 

可奈美「どうしてなんだろう…。"刀使"達みんな忘れちゃったなんて…。」

 

可奈美が"刀使"という言葉を発したその時、再び勇者達にあの頭痛が起こった。

 

香澄「痛っ!まただ…。」

 

紗夜「一体なんなのでしょう、この頭痛は…。」

 

友希那「うっ……!私は……知っている…!?」

 

 

--

 

 

可奈美「改めて、私の名前は衛藤可奈美。」

 

沙耶香「糸見沙耶香……。」

 

友希那「湊友希那よ。」

 

 

--

 

 

舞衣「改めて先ずは私達の事についてお教え致します。私達は"刀使"……正式名称"特別祭祀機動隊(とくべつさいじきどうたい)"と呼ばれる組織に属しております。」

  

燐子「機動隊……という事は警察みたいなものでしょうか?」

 

舞衣「それに近いですね。警察の組織の1つで、主に蔓延る"荒魂"を専門に扱っています。」

 

姫和「"荒魂"は"ノロ"と呼ばれる負の神性を帯びたチリの事で、それが集まったものが"荒魂"だ。」

 

益子「オレ達は巫女って立場もある。だから"刀使"ってのは女しかなる事が出来ない。そしてその全員が"御刀"ってもんを持ってる。」

 

 

--

 

 

勇者達全員の脳裏に鮮明な映像がフラッシュバックされていく--

 

燐子「これは……。」

 

 

--

 

 

赤嶺「"満開"の力でも…決定打にはなってない……!?」

 

可奈美「"荒魂"の力がバーテックスの治癒力を強めてるんだよ。」

 

姫和「あいつを完全に滅ぼすには"荒魂"を完全に滅さないと無理だ。」

 

美咲「でも、どうすれば……。」

 

舞衣「刀使だけではバーテックスの威力に耐えられない……。」

 

燐子「勇者の力じゃ決定打にかける……。」

 

友希那・可奈美「「簡単(だ)よ!」」 

 

燐子・舞衣「「えっ……?」」

 

友希那「私達の力を合わせれば良いのよ。」

 

可奈美「そうだよ!友希那ちゃん、私をその船に乗っけて!」

 

友希那「ええ。」

 

姫和「私も!」

 

 

--

 

 

中たえ「この記憶は……私達の…。」

 

中沙綾「うん、紛れもなく…。」

 

記憶のピースが1つ1つはまっていき知らず知らずに涙が溢れ始める。

 

 

--

 

 

舞衣「短い間でしたが、とても有意義な時間を過ごす事が出来ました。」

 

沙耶香「うん…。楽しかった。」

 

リサ「これ、あっちで食べてよ。」 

 

沙耶香「ありがとう…!」

 

舞衣「良かったね、沙耶香ちゃん。」

 

沙耶香「うん……!」

 

益子「あんたらの事、"忘れない"。」

 

薫「あぁ……。」

 

可奈美「……忘れないよ。」

 

友希那「え?」 

 

可奈美「私が、私達が覚えてる。この世界での思い出や出来事を。例えみんなが覚えて無くても、私達が覚えていれば………みんなは"いる"から…。」

 

舞衣「ええ……。」

 

沙耶香「忘れない……。」

 

益子「忘れたくても忘れらんねぇよ。」

 

姫和「そうだな…。」

 

友希那「衛藤さん……。さよならは言わないわ。また会いましょう。」

 

可奈美「うん!約束!」

 

 

--

 

 

そして勇者達は全ての記憶を思い出す--

 

友希那「約…束。」

 

薫「あぁ。また会うと約束した。」

 

可奈美「友希那ちゃん?」

 

友希那「忘れてしまってごめんなさい、衛藤さん。」

 

中沙綾「まさかまた会えるなんて思ってもみませんでした、舞衣さん。」

 

可奈美「みんな…思い出してくれたの?」

 

香澄「勿論です!」

 

感動の再会に涙している最中、向こうで戦っていた刀使達が戻ってきた。

 

益子「向こうは片付いたぞ……って何抱き合ってんだ!?」

 

エレン「ハグは友情のシルシデスネ。」

 

高嶋「益子さん…と、隣の方は誰ですか……?」

 

益子「あぁ、あんた達は会うの初めてだよな。エレン。」

 

金髪ロングの少女は挨拶をする。

 

エレン「古波蔵エレンデス!Nice to meet you!」

 

燐子「が、外国の方…でしょうか……。」

 

益子「ハーフなんだ。」

 

赤嶺「古波蔵って言うと……沖縄に多いよね、お姉様。」

 

薫「確かにそうだね。海は好きかい?」

 

エレン「Yes!大好きデス!」

 

薫「おぉ……私は今儚さに打ち震えているよ!」

 

エレン「ハカナイデスネー!」

 

赤嶺を含んだ3人で謎の盛り上がりを見せている。

 

沙耶香「何か意気投合してる…。」

 

姫和「っと、なに遊んでる!まだ奥からゾロゾロやって来るぞ!」

 

2人も1度みんなと合流する為に戻って来た。姫和は見慣れない鎧の様な外装を纏っている。

 

千聖「沙耶香ちゃんに姫和ちゃんも久しぶりね。ところで、姫和ちゃんが着ているその鎧は何かしら?私達防人の戦衣に似ているけれど。」

 

姫和「これは"S装備(ストームアーマー)"だ。」

 

花音「ストームアーマー?」

 

あこ「カッコいいー!!」

 

"S装備"。正式名称を"ストームアーマー"。刀使の身体能力や筋力等を向上させる効果がある荒魂殲滅用の強襲装備。ただし制限時間あり、稼働時間が短く時間切れになると鎧そのものが消滅してしまう。

 

説明していた途中で時間が来てしまい鎧は消滅してしまった。

 

香澄「どうして私達こんなに大切な友達の事をずっと忘れてたんだろう…。」

 

中たえ「それを散策するのは後にしよう、香澄。今は目の前の敵だよ。」

 

香澄「おたえ…そうだね。今度はみんなで力を合わせて行こう!」

 

友希那「そうね。私達も強くなったわ。それを見せてあげましょう。」

 

可奈美「わぁ!見たい見たい!手合わせもしてみたい!」

 

姫和「ちょっと待て!私が先だぞ!」

 

ゆり「それじゃあ全員突撃ー!!」

 

一同「「「おぉーーっ!!」」」

 

 

--

 

 

薫「打ち上げるっ!」

 

ヌンチャクを振り回し上空へ荒魂を打ち上げ身動きを取れなくさせる。

 

エレン「八幡力・二段メデス!」

 

そして上空の荒魂をエレンが御刀で次々と切り倒していった。見かけによらずパワーファイターな戦法を取るエレンに圧倒される勇者達。

 

蘭「人は見かけに寄らないって言うけど…。」

 

美咲「あれはちょっと予想外。」

 

エレン「薫サン、ドンドン行きますヨ。」

 

薫「任せてくれ。」

 

益子「いやーエレンがいるお陰で楽出来るな。」

 

 

--

 

 

舞衣「……どうなってるんでしょう。荒魂の動きが鈍って、色も若干淡くなってますね。」

 

後衛で"明眼"を使いながら戦況を分析しているのは舞衣。

 

燐子「それは…"ヤチホコ"の力です…。」

 

舞衣「"ヤチホコ"……ですか?」

 

燐子「"凶攻型"というバーテックスを倒す為に、巫女の皆さんが作り上げたものです…。何故だか荒魂にも通用するので、もしかしたら荒魂と"凶攻型"には何かしらの共通点があるのかもしれません……。」

 

舞衣「成る程…それは興味深いですね。」

 

沙耶香「舞衣、よそ見しないで指示頂戴…。」

 

舞衣「ごめんね、沙耶香ちゃん。右から3体、左から5体来るよ!」

 

纏まってやって来る荒魂に対し沙耶香はそのまま敵の中へと突っ込んでいく。

 

あこ「防御も何もしないで良いの!?」

 

舞衣「心配ありません。私達には"写シ"があります。少しくらいのダメージは問題無いです。」

 

燐子「"写シ"……?」

 

燐子が目を凝らすと沙耶香が薄らと白い膜の様なもので包まれていた。荒魂の引っ掻き攻撃が沙耶香の左肩に当たるも、ダメージを受けた様子は無く、代わりに攻撃の当たった部分の白い膜が消えていた。

 

沙耶香「全て切り裂く…!」

 

"写シ"とは刀使の基本戦術であり、最大の防御術。御刀を媒介として肉体を一時的にエネルギー体へと変質させ、"写シ"で防御している間は、わずかな痛みと精神疲労を代償に、実体へのダメージを肩代わり出来るのである。ダメージを受けると、その部分は消失するが、"写し"を解除するまで実体へのダメージはない。

 

舞衣「お疲れ様、沙耶香ちゃん。」

 

沙耶香「後でクッキーね…。」

 

舞衣「はいはい。」

 

 

--

 

 

可奈美「てやっ!」

 

姫和「はっ!」

 

香澄「連続勇者パンチ!からの……。」

 

高嶋「連続勇者キーック!!からの……。」

 

赤嶺「えっ!?…れ、連続勇者……チョップ!」

 

香澄「良いね良いね赤嶺ちゃん!」

 

高嶋「香澄トリオ絶好調だね。」

 

駆け寄る2人の香澄に抱きつかれ顔が赤くなってしまう赤嶺。

 

赤嶺「うぅ……何度やっても恥ずかしい…。」

 

可奈美「見て見て、姫和ちゃん。香澄ちゃん達前よりすっごく強くなってるしコンビネーションも抜群だよ。」

 

姫和「そうだな。それがどうした?」

 

可奈美「私達もやろうよ!」

 

姫和「うっ………一回だけだぞ。」

 

照れ臭そうに姫和は可奈美と背中合わせになり御刀を構え"迅移"を発動する。

 

姫和「遅れるなよ。」

 

可奈美「勿論!名付けて〜……ふたつの太刀!」

 

千鳥が荒魂を微塵に切り裂き、小烏丸が弾丸の様に荒魂を穿っていく。1段階でも常人の2倍以上の速さがある為通り過ぎる度に風を巻き上げた。

 

つぐみ「凄いね、あれ…。あの子達は何者なの?」

 

赤嶺「そっか。つぐちんは初めて会うんだよね。って言う私も今の今まで記憶に無かったんだけど。戦いが落ち着いたら紹介するね。」

 

 

--

 

 

勇者が弱らせ、刀使が鎮める。適宜自分達が出来る最善の行動を行なっていく。やがてレーダーに荒魂の反応は無くなり戦闘は終了する。

 

ゆり「一時はどうなるかと思ったけど…。」

 

香澄「可奈美ちゃん達が来てくれて助かったよ。でもどうやってまたここに来られたの?」

 

舞衣「それが私達も良く分からないんです。"スペクトラム計"を辿って調査をしていたらいつの間にかまたここへ。」

 

中たえ「神樹様の意思って事かも。何か意味があって刀使をもう一度この世界へ呼び寄せたんじゃないかな。」

 

そうこう話しているうちに樹海化が解け始めていく。

 

友希那「詳しい話は部室でしましょう。リサ達にも神託が降りてるかもしれないわ。」

 

可奈美達の後ろ姿を見て何かを考え込む香澄。

 

中沙綾「香澄ー置いてっちゃうよ。」

 

香澄「あっ、待ってさーやー!!」

 

香澄(夢に出てきた女の子……服装は少し違うけど、あの刀は姫和ちゃんの刀に似てたような……。)

 

一度は別れた筈の道がまた繋がり、勇者と刀使が再び出会った。これは何を意味するのか。香澄の夢に出てきた少女は一体誰なのだろうか--

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。