戸山香澄は勇者である   作:悠@ゆー

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"凶攻型"の力を振うタギツヒメに圧倒される勇者と刀使。力を合わせ立ち向かう中、タギツヒメにある変化が--

いつも拙い小説ご愛読してくださりありがとうございます。完結まであと少し、頑張りますので宜しくお願い致します。




剣の会話

 

 

"多伎都比売命(タギツヒメ)"--

 

荒魂より上位の存在である"大荒魂"であり、刀使達の世界でかつて篝達によって封印された存在。紆余曲折あり、可奈美と姫和によって討たれ理解し合えた筈だったのだが、バーテックスという神の眷属を依代とし、この世界に満ちる高濃度のノロが結びつき、本来現れる筈がなかった勇者達の世界に顕現してしまったのである。

 

燐子「中立神は…これを狙う為に技と大量の星屑と荒魂を呼び寄せた……。」

 

舞衣「"凶攻型"というのも全ては"タギツヒメ"を顕現させる為の練習台という訳ですね…。」

 

美咲「"タギツヒメ"ねぇ……。中立神も中々酔狂な事してくれますね。」

 

あこ「どういう意味?」

 

美咲「"タギツヒメ"は宗像三女神(むなかたさんじょしん)の1柱でね、他にも"タキリヒメ"、"イチキシマヒメ"がいるんだ。」

 

姫和「そうだ。それぞれが人間の持つ怒り、支配欲、存在意義を原動力としている。私達は死闘の末に分かり合えた筈だった……。」

 

美咲「神話の世界ではその三女神は"素戔嗚尊"と"天照大神"……つまり私達の世界で言う造反神と天の神の誓約(うけい)によって生み出されたんだよ。」

 

あこ「えぇっ!?それって私達の敵じゃん!」

 

美咲「そう言う事。今から私達が相手にしないといけない敵は前回の御役目の最後と同じ。ラスボスさんが相手って事に等しいんだよ。」

 

タギツヒメ「………ここは何処ぞ…我は誰ぞ。我は………。」

 

顕現したばかりで混乱している隙を突き一番槍のイヴ達が先制攻撃を試みる。

 

イヴ「先手必勝だ!」

 

薫「いくよ……っ!」

 

有咲「おりゃあっっ!」

 

タギツヒメ「我は………神ぞ!」

 

斬りかかる3人を両手の刀で軽々受け止めてしまう。

 

イヴ「なっ!?」

 

タギツヒメ「神である我に触れる事は何人たりとも許されん。」

 

有咲・イヴ・薫「「「ぐう……っ!」」」

 

赤子でも捻るかの如く3人は吹き飛ばされてしまう。

 

イヴ「つ…強え……。」

 

益子「いくぞエレン!」

 

エレン「OKデス!」

 

益子「はぁっ!」

 

身の丈よりも大きな袮々切丸を振り回し豪快に攻め立てる益子とそれとは真逆の細身の刀である越前康継で応戦するエレン。

 

タギツヒメ「ほう、少しはやるようだ…。」

 

益子「面倒臭せぇが、最初から飛ばすぞエレン!」

 

エレン「分かりました…金剛身・五段目!せえぇぇぇいっ!」

 

益子「八幡力・五段目!だりゃああっ!」

 

防御力が上がったエレンが金剛身を用いて前衛でタギツヒメの攻撃を受けつつ、益子がその隙を縫って八幡力で力を上げた一撃を振り下ろして攻撃する。これには流石のタギツヒメでも防戦一方と化してしまう。

 

タギツヒメ「一撃一撃が重い……それが其方達の力か…面白い。」

 

益子「はっ!この状況でまだそんな軽口が出るなんてな。」

 

エレン「随分と余裕なんですね…!」

 

攻撃を受け流すので精一杯のタギツヒメだったが顔色一つ変えずに余裕のある立ち回りで2人の攻撃を受け続けていた。

 

益子「ガードを上げろ、エレン!」

 

エレン「ふ……っ、はっ!!」

 

上から肩目掛けて御刀を振り下ろすがそれをタギツヒメは冷静に二刀をクロスさせ受け止めようとする。

 

エレン「その判断の良さが甘いデス。」

 

寸前で御刀を止め下からタギツヒメの腹部を蹴り上げる。意表を突く足技により持っていた刀を一本落としてしまう。

 

益子「貰った!」

 

ガードが空いた隙を突き袮々切丸の一振りがタギツヒメに迫る--

 

 

 

 

益子「なっ!?」

 

エレン「か、身体が動かないデス……!」

 

かに思えたが、タギツヒメの両の眼が赤く輝き2人の動きが止まってしまったのである。

 

可奈美「薫ちゃん!エレンちゃん!」

 

姫和「馬鹿な……タギツヒメにそんな力は無かった…。」

 

困惑する刀使達だが、今度は逆に勇者達にはこの状況が理解出来ていた。

 

高嶋「紗夜ちゃん……これって…。」

 

紗夜「はい…これは"凶攻型"が持っていた私達の動きを止める力です…。」

 

タギツヒメ「ほう……この様な力が備わるとは……さっきまでの威勢はどうした?」

 

益子「くっ……そ……!」

 

動けない益子とエレンを煽るかの様にタギツヒメは落とした一刀を拾い上げ、無防備な2人に刃を向ける。

 

タギツヒメ「少々物足りないが…準備運動にはなった。礼を言うぞ、見知らぬ剣士達よ。」

 

そう言い捨て、タギツヒメの刃が2人を切り裂き吹き飛ばされ、樹海の根に叩きつけられるのだった。

 

益子「かは………っ!」

 

エレン「きゃあぁぁぁぁっ!?」

 

写シを使っているにも関わらずそれを一撃で消し去る程のダメージを2人は受けてしまう。金剛身を使っていたお陰でエレンは益子程ダメージは受けていないが、それでもタギツヒメの攻撃は一瞬で2人が戦闘不能になるほどの威力だった。地に伏せ動けなくなった2人に見向きもせずタギツヒメは次の獲物を見定める。

 

タギツヒメ「次は誰が相手をしてくれる?それとも全員でかかってくるか?」

 

不敵に笑いタギツヒメは右手を掲げると彼方から夥しい数のバーテックスと荒魂が襲いかかってくる。

 

燐子「戸山さん…"ヤチホコ"の起動準備を…!"凶攻型"を媒介にしているなら多少なりとも効果はある筈です……!」

 

香澄「分かりました!」

 

沙耶香「2人はタギツヒメを…。」

 

舞衣「行ってください。」

 

可奈美「沙耶香ちゃん、舞衣ちゃん。」

 

舞衣「一度は分かり合えたんです。だから……。」

 

可奈美「………そうだね。行こう、姫和ちゃん。」

 

姫和「ああ。」

 

無数の荒魂を2人に任せ、可奈美と姫和はタギツヒメへと駆け出した。

 

タギツヒメ「向かってくるか……それも善哉。」

 

中沙綾「香澄、おたえ行って!」

 

香澄「分かった!」

 

中たえ「ここは任せたよ。」

 

紗夜「湊さんもです。ここは私達だけで十分ですから。」

 

高嶋「蘭ちゃんも!友希那ちゃんのサポートお願い!」

 

友希那「……頼んだわよ。行きましょう、美竹さん。」

 

蘭「1人で突っ走らないでくださいね。」

 

小たえ「夏希も根性根性!」

 

夏希「りょーかい!」

 

イヴ「白鷺、ほらよっ!」

 

動けない自分のかわりに銃剣を千聖へ投げ渡した。

 

千聖「…っと。行ってくるわ。」

 

対する勇者達も香澄達6人をタギツヒメの元へ向かわせ、残りの人数でバーテックスや進化型を相手取っていくのだった。

 

 

--

 

姫和「くっ…速い…っ!」

 

可奈美「前に戦った時より強い!」

 

さっきとは打って変わり、2人の刀使相手にまるで未来が見えているかの様に攻撃を躱し、一瞬の隙を突いて斬りかかる。一瞬の判断ミスが致命傷に繋がる一進一退の攻防が繰り広げられている最中、香澄達6人の勇者が合流する。

 

タギツヒメ「ほう……まだ楽しみ甲斐がある。」

 

姫和「何処を向いているっ!!」

 

香澄達に一時気を取られている隙に姫和が小烏丸で穿ちにかかるが、再び瞳が輝き姫和の動きが止まってしまう。

 

姫和「なっ……!?」

 

タギツヒメ「折角の楽しみを邪魔するな。」

 

無防備な姫和に斬りかかろうとするが、範囲外にいた可奈美が間に割って入りタギツヒメの攻撃を防いだ。

 

可奈美「忘れちゃったの、タギツヒメ!怒りで御刀を振るっちゃいけない!斬り結びは楽しいものなんだよ!」

 

タギツヒメ「愉悦……ああ、我は愉悦に満ちているぞ……!獲物を斬り伏せるこの瞬間にな!」

 

可奈美との鍔迫り合いを力で捻じ伏せようとするタギツヒメ。その瞳は獲物を屠る猛獣のよう。

 

可奈美「うっ……。」

 

香澄「勇者パーンチ!!」

 

タギツヒメ「っ!?」

 

背後からの香澄の攻撃を察知し鍔迫り合いを止めタギツヒメは距離をとる。

 

可奈美「香澄ちゃん!」

 

友希那「私達も助太刀するわ。」

 

タギツヒメ「斬り甲斐がある獲物が増えたか…。何人増えようが同じ事。全員まとめて相手をしてやろう。」

 

刀を擦り合わせタギツヒメは跳躍。一瞬で香澄達の目の前へとやって来て刃を振り下ろす。

 

千聖「はぁっ!」

 

だが香澄達はそれを躱し、更に着地点を予測していた千聖は真横から腕を狙い斬り返しすも表面を覆っているノロにより剣撃が弾かれる。

 

千聖「硬いわね……。」

 

タギツヒメ「其方も二刀を扱うか。」

 

千聖「あら、私だけに気を取られてて良いのかしら?」

 

タギツヒメ「何?」

 

千聖がタギツヒメの視線から外れる。そして入れ替わるように夏希が双斧で攻撃した。

 

夏希「おらぁっ!」

 

タギツヒメ「ふむ…最初の剣士もそうだったが、刀が大きいだけに一撃が重い。幼き身体でそのような二振りを良く振り回す。」

 

夏希「三振りだっ!」

 

"鈴鹿御前"を憑依させる夏希。精霊憑依によって斧がもう一振り増え三刀流で応戦する。

 

タギツヒメ「精霊の力……中々のもの。だがまだ甘い!」

 

瞳が光り夏希の精霊憑依が解けてしまう。"凶攻型"が持つ精霊を封じる力だ。

 

タギツヒメ「吹き飛べ。」

 

夏希「うわっ!」

 

足蹴りが腹部に決まり吹き飛ばされる夏希。だが夏希は飛ばされながらも不敵な笑みを浮かべる。

 

夏希「それを待ってたよ!」

 

タギツヒメ「何?」

 

可奈美・姫和「「"迅移・三段速"!!」」

 

蹴りあげた直後で次の動作に移れない隙を突き、可奈美と姫和が迅移でタギツヒメへ一瞬で近付き体を御刀で切り裂いた。初めて被弾したタギツヒメは驚きを隠せない。

 

タギツヒメ「ぐ………っ。」

 

中たえ「"凶攻型"の力は分かってる。動きを止める力と精霊を封じる力は同時に使えないから。」

 

タギツヒメ「やるではないか。なら動きを止めるまでよ!」

 

香澄達の動きを止めようとタギツヒメが瞳を光らせようとしたその時だった。今度は背後から鞭が飛んできてタギツヒメを妨害したのである。

 

タギツヒメ「何!?」

 

蘭「甘いよ、その力は使わせない。"覚"の力であんたの考えは手に取るように分かるから。はぁっ!」

 

能力が届かないギリギリの距離から蘭が鞭を伸ばしてタギツヒメに力を使わせないように攻撃を仕掛ける。

 

タギツヒメ「僭越な手を……。」

 

蘭「あんたが人型で助かったよ。バーテックスよりは全然読みやすいからさ。」

 

動きを封じる力を使えば、蘭が精霊の力を用いてそれを使わせまいと妨害し、逆に精霊を封じる力を使えば可奈美達の攻撃を受けてしまう。

 

タギツヒメ「そうであれば、力で捻じ伏せるまでよ!」

 

香澄「そうはいかないよ。これで終わらせる!」

 

"ヤチホコ"の充填が完了したのだ。端末で"ヤチホコ"を起動させると樹海が温かな光に包み込まれ始めた。

 

可奈美「体がぽかぽかしてきた…。」

 

姫和「力が…戻っていく…。」

 

タギツヒメ「ぐっ……体が…っ!?」

 

動きが鈍るタギツヒメから黒い靄が上空へと昇っていく。"ノロ"が"ヤチホコ"によって浄化されているのだ。

 

夏希「これで形勢逆転だ!」

 

姫和「もう一度終わらせる。」

 

タギツヒメ「まだ……だ。まだだ!」

 

突如タギツヒメの体が青黒い炎に包まれ、上空へ消えた筈の"ノロ"が再びタギツヒメの元へと戻っていく。

 

タギツヒメ「我はタギツヒメ……我は人間への怒りを原動力とする禍神であるぞ!」

 

怒りを糧とし怒りによってその力を増すタギツヒメ。その怒りが"ヤチホコ"の聖なる力ですら振り切り、タギツヒメの姿を変化させるのだった。

 

 

--

 

 

一方で前線で戦っている沙綾達勇者と沙耶香、舞衣--

 

数で押されかけていた勇者と刀使も"ヤチホコ"が起動した事により形勢が逆転、後続も現れなくなりその数を徐々に減らしていく。

 

中沙綾「"ヤチホコ"が起動した!これでタギツヒメの力も封じれる筈ですよ。」

 

舞衣「………だと良いんですけど…。」

 

勝機を確信している勇者達に対して刀使の2人は浮かない顔をしていた。

 

燐子「何か…あるんですか…。」

 

沙耶香「普通の荒魂ならこれで一気に弱体化出来るかもしれないけど、タギツヒメは一筋縄じゃいかない…。」

 

中沙綾「え?」

 

益子「はぁ……あいつはただの荒魂じゃねえ……大荒魂だ。内包している"ノロ"の量が違う。用心した方がいい。」

 

回復した益子がそう話した途端、香澄や可奈美達がいる方角で爆発音が響く。

 

一同「「「っ!?」」」

 

紗夜「向こうで何かあったみたいですね。早く残りを殲滅させて合流しましょう!」

 

 

--

 

 

千聖「まだこれ程の力を残してたなんて…。」

 

姫和「これがタギツヒメの真の姿だ…。」

 

姿を現したタギツヒメ。目を引くのは解かれた髪に大きな赤黒い瞳が浮かび、その髪から大きな2本の黒い手が伸びている事だった。

 

蘭「マズい!」

 

"覚"で危険を察知したのかすぐ様タギツヒメ目掛け鞭を伸ばす蘭。しかしその攻撃を髪から伸びている手で防いでしまう。

 

友希那「美竹さん!うっ!」

 

可奈美「タギツヒメ!あっ!?」

 

友希那が蘭のフォローに入り、可奈美と姫和がタギツヒメへ駆け出した瞬間体が動かなくなってしまう。

 

蘭「……やってくれるじゃん。」

 

タギツヒメ「座興はこれにて終い……散れ。」

 

増えた手からどす黒い光球、そして御刀からは黒い光刃を動けない香澄達に向かって放ち大爆発が巻き起こる。

 

一同「「「きゃあぁぁぁぁぁっ!!!」」」

 

 

--

 

 

姫和「うぅ………。」

 

香澄「けほ……っ。」

 

"ヤチホコ"でも抑える事の出来ないタギツヒメの攻撃で倒れてしまう香澄達。タギツヒメは虫の息になっている8人にトドメを刺すべく追撃に迫ろうとしていた。

 

可奈美「ま……まだまだぁ!」

 

しかし、満身創痍になりながらも可奈美は立ち上がりタギツヒメの前に立ち塞がる。

 

タギツヒメ「ほう…まだ我に抗う力が残っているか。」

 

可奈美「言った筈だよ……斬り結びは楽しむ為のものだって…!心が躍るものなんだよ……そんな邪な力で刀を振るっちゃダメなんだ!そうでしょ、タギツヒメ…。」

 

タギツヒメ「心が……躍る………っ!?」

 

突如タギツヒメが膝を突き頭を抱えて呻き声をあげる。

 

友希那「何が起こってるというの…。」

 

タギツヒメ「な……何だ…!我の頭に流れ込んでくるこれは……!?」

 

突然の出来事に8人は唖然となってしまった。

 

タギツヒメ「ぐぅ……!あぁ……っ!」

 

 

--

 

 

タギツヒメ「面白い奴だ。お前は、我を楽しませる為に永遠に近い、この刹那の牢獄の中で、我と剣を合わせ続けるつもりか。」

 

?「違うよ、私の楽しみの為だよ!剣が教えてくれるんだ!タギツヒメの事!」

 

?「タギツヒメはこの斬り合いを楽しんでいると言うのか………?」

 

?「うん、同じだよ!御刀での斬り合いも、みんなとの立ち合いも……全部、剣を通しての会話なんだ!」

 

タギツヒメ「剣の会話……いいだろう。その剣の会話とやら、存分に楽しませて貰おう!」

 

 

--

 

 

タギツヒメ「ふ……ふふ……そうか。そうであったな"千鳥の刀を持つ娘"よ。」

 

可奈美・姫和「「っ!?」」

 

その一言で可奈美と姫和はタギツヒメに記憶が戻った事を察するのだった。

 

姫和「信じられない……。」

 

可奈美「戻ったんだ…。」

 

タギツヒメ「確かに記憶は流れ込んできた。だが、仮初の体故……自由は効かぬ。」

 

千聖「バーテックスを媒介としてるから中立神の意のままって事ね。」

 

可奈美「なら、戦って解放してあげるよタギツヒメ!だけど……今はこの斬り合いを楽しませてもらうよ!」

 

タギツヒメ「ああ……我もだ。さぁ、存分に会話とやらを楽しもうではないか!」

 

香澄「私達も行くよ、可奈美ちゃん!」

 

可奈美「うん!成せば大抵何とかなるもんね!」

 

友希那「ええ。」

 

タギツヒメを中立神の呪縛から解放するべく、8人は体に鞭打ち最後の戦いに臨む。

 

 

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