戸山香澄は勇者である   作:悠@ゆー

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最後の日常回です。残り5話、最後まで楽しんで頂けたら幸いです。

ここまでやってこれたのは読んで下さる皆様のお陰なので、本当に感謝です。




感謝の気持ちをあなたに

 

 

勇者部部室--

 

パーティを終えた勇者部はパレードに変わる新たな催しを相談する為に部室へ集まっていた。

 

ゆり「パーティも滞りなく終わったし、第二部の相談をしていくよ。」

 

赤嶺「今度こそ、何でも手伝いますよ。お茶汲みでも裏方でも、何でも!」

 

つぐみ「確か第二部では、街の人達へ感謝の気持ちを伝えるんだったよね。」

 

美咲「前は楽団と一緒にパレードしたけど、今回は日程が合わなくて無理になっちゃったんだよね。」

 

千聖「商工会の人達に手伝っていただくのはどう?」

 

友希那「感謝を示したい私達が、街の人達の手を煩わせてパレードを見せるというのは趣旨が違うんじやないかしら。」

 

六花「そうですね…。若干恩着せがましい感じがします。」

 

薫「私達が校庭を周回して練り歩くのを、見に来てもらうというのはどうだろうか?」

 

小たえ「盆踊りですか!?」

 

 

--

 

 

その後も色々な意見が挙がるが、中々しっくりくる提案が見つからないまま時間だけが過ぎていく。そんな時、彩からこんな意見が出る。

 

彩「あの……お礼参りっていうのはどうかな?」

 

千聖「まさか……彩ちゃんからそんな言葉が。リサちゃんと長く居すぎたせいで、冥府魔道に……。」

 

リサ「ちょっと、それどういう意味!?」

 

彩「来てもらうんじゃなくて、私達が普段お世話になった人達へ出向くって感じで…。パレードも勿論良いけど、やっぱ私は、1人1人の目を見て、手を握って心からの感謝を伝えたいって思うんだ!」

 

ゆり・夏希・有咲「「「て、天使だ…。」」」

 

その意見に全員が感動して納得する。

 

蘭「………どうやら、私達は本来の目的を見失ってたみたいだね。」

 

中沙綾「そうだね…。"感謝したい"から、いつの間にか"楽しみたい"って気持ちになっちゃってた。」

 

リサ「彩のお陰で、基本に立ち返れたよ。」

 

彩「えへへ……。私は自分がやりたい事を言っただけだよ…。」

 

中たえ「それで、具体的にはどうする?」

 

あこ「う〜ん……今まであこ達が関わった人達の家に行って、ハムでも渡すとか。」

 

有咲「暮れの挨拶かよ!」

 

日菜「この人数で押しかけるのは迷惑じゃない?」

 

夏希「でも、ハムは良いと思います!ハムって美味しいし。」

 

高嶋「お礼にハムって贈って良いんだっけ?」

 

花音「悪くわないと思うけど…。」

 

美咲「多分予算オーバーかな。あこが言うハムって箱に入った太いヤツだよね。ああいうのって結構高いんだよ。」

 

ハムを贈る案は予算オーバーの為却下されてしまう。

 

香澄「だったらお花をプレゼントするのはどうかな?」

 

モカ「良いですなぁ。私も最近花を育てたばかりだし。」

 

紗夜「良い案ですね。花が嫌いな人はいませんし、私達にも合ってると思います。」

 

燐子「服装は…どうしましょうか…。」

 

千聖「パレードでは衣装を褒めて下さった人が沢山いたわね。みんな笑顔だったわ。」

 

薫「いつも私達のイベントではそうだったね。」

 

思い返してみれば、勇者部のイベントでは、ほぼ衣装を作ったり仮装したりしていた。

 

りみ「勇者部って言ったら仮装みたいな所ありますよね。」

 

有咲「じゃあ、何かの仮装をして花を渡す。これで決まりだな。」

 

概ねの趣旨が決まったところで、感謝祭の構想は衣装作りへと移っていく。

 

 

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美咲「さて、衣装となれば私の出番ですね。燐子さんもお願いします。」

 

燐子「頑張ります…。」

 

美咲「とは言え、今回はいつもとは勝手が違うので、基本案は皆さんが出してください。」

 

赤嶺「方向としては、人に笑顔になってもらえる格好だよね。」

 

紗夜「笑顔になってもらうのは、相手の方が何を望んでるかによりますね…。」

 

大方の予想通り、ここでも意見が纏まらずどんどん最初の趣旨とはかけ離れていってしまう。

 

薫「さっき、少し出ていたのだが…。先に行き先とメンバーを決めてみたらどうだろうか。」

 

蘭「そうですね。相手に合わせないといけないのに、それが誰だか分からないんだと、アイデア出せないですから。」

 

美咲「確かに……。ゆりさん、その辺りはどうなってるんですか?」

 

ゆり「お礼参りの案はさっき出たばっかりだから、まだ何も……。」

 

中沙綾「それなら、勇者部の住所録から、先に関係者を打ち出しましょう。」

 

りみ「それがあれば、少しは楽になるね。」

 

彩「香澄ちゃん、持っていく花は何が良いか、図鑑の中から選んでもらっても良いかな。」

 

香澄「そうですね!花言葉辞典も使って一緒に見ていこう!モカちゃんも!」

 

モカ「腕がなりますなぁ。」

 

こうし衣装作りの構想もまとまり、勇者部はお礼参りの準備を進めていくのだった。

 

 

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数日後、空き教室--

 

全員が総出で衣装作りを始めている。型通りに生地を切る人、ミシンで縫い合わせる人、細かいところを手縫いしたり、衣装につけるアクセサリーを作ったり。

 

六花「皆さんテキパキやられて上手なんですね。」

 

夏希「最初は全然でしたよ。でもやっていく内に自然と出来るようになってきました。」

 

燐子「大体イベントの時は衣装作りをしてますから……。」

 

りみ「やってる事の基本は同じだからね。」

 

六花「これじゃあ、私が手伝う隙間がありませんね…。」

 

六花があたふたとしている中、つぐみは持ち前の集中力で黙々と何かを作っていた。

 

つぐみ「…………………。」

 

中たえ「つぐみは1人で何作ってるんだろう。」

 

中沙綾「デザインから裁断、縫製も1人でやるなんて、かなり手慣れてる感じだよね。」

 

六花「つぐみさんはどの能力も頭一つ抜けているんです。たまにおっちょこちょいなだけで…。」

 

 

---

 

 

それからまた数日後、勇者部部室--

 

衣装作りも終わりが見え始めてきた頃、お礼参りの流れについて話し合う勇者部。結局、個別の訪問は厳しいとなった為、特定の会場で催し、そこへ街の人達に来てもらう事になった。

 

イヴ「これは……このリストですが、紗夜さんと高嶋さんの所だけハテナマークが付いてますね…。」

 

日菜「本当だ。よく見ると、香澄ちゃんと沙綾ちゃんの所にも付いてる。担当場所はもう決まった筈なのにね。」

 

紗夜「あ、あぁ……きっと消し忘れではないでしょうか。」

 

高嶋「色んな事考えてたから、いっぱい書き直してゴチャゴチャになっちゃったんだよね。」

 

蘭「私は行きたい所が2箇所あったけど、仕方なく片方はモカに行ってもらう事にしたよ。」

 

赤嶺「私はお姉様と一緒の所で大満足!」

 

場所分けやそこでやる事も各々決まり、後は当日を待つのみとなる。

 

千聖「当日は全力で楽しみ、街の皆さんにも楽しんでもらえるようにしましょう。」

 

 

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そしてやって来るお礼参り当日。お礼参り参りが行われる場所は全部で7箇所。4人1組と3人1組に分かれての恩返しが始まろうとしていた。

 

大赦--

 

ここでは友希那、リサ、たえ達の4人が弁慶と牛若丸を題材にした劇を披露している真っ最中。

 

中たえ(牛若丸)「千本目にして狙うた刀が貴様の不運。この牛若丸が、成敗してくれようぞ!」

 

小たえ(弁慶)「ははぁ〜……恐れ入りました…。」

 

友希那(源義経)「これが根性の別れ……。死の間際、きっと瞼に其方の舞が。耳には唄が浮かぼうぞ……。」

 

リサ(静御前)「嫌、嫌です……お傍を離れるのだけは!義経様!!」

 

勇者達の見事な演じっぷりに大赦の神官達は頭を下げ深く感謝の意を表していた。4人が感謝の気持ちを届ける相手は神官達。劇が終わると4人は用意した花を神官達へ配り、日頃の感謝を述べた。

 

友希那「本日は、日頃からお世話になっている大赦の皆様へ、勇者部より感謝の心を届けるわ。」

 

神官A「な、なんと勿体なき御言葉……神官一同、見に余る光栄に存じまする!」

 

神官B「初代勇者様の凛々しき鎧武者姿、誠に有り難く拝見させて頂きました!」

 

中たえ「はい、お花をどうぞ。」

 

神官C「た、たえ様からお花を……うぅ…グスッ……!」

 

リサ「どうやら、感謝の気持ちは十二分に伝わったようだね。」

 

神官達が歓喜し咽び泣いている中、1人のお婆ちゃんが友希那達の元へやって来た。

 

お婆ちゃん「あらあら……何やら賑わっていると思って来てみたら、こんなに可愛いお嬢ちゃん達がお花を配っていただなんてね。」

 

小たえ「どうぞ!荷物にならないように一輪挿しにしました。」

 

お婆ちゃん「綺麗なお花だねぇ…ありがとう。大切に飾っておくよ。」

 

中たえ「お婆ちゃん、家まで送って行きましょうか?」

 

お婆ちゃん「いいえ、良いんだよ。年寄りの相手なんかお嬢ちゃん達には退屈だもの。」

 

その言葉を聞いて何かを思いついたのか友希那は神官達に声をかける。

 

友希那「…………神官の皆さん。」

 

神官A「ははっ!」

 

友希那「お礼参りと言うのに、頼み事は心苦しいのだけれど、1つ私からの提案を聞いてくれないかしら?」

 

神官B「初代勇者様のお頼みとあれば、なんなりと。」

 

友希那「大赦の何処かを、お年寄りと市民の為に毎日解放してくれないかしら。身寄りのない人々や、友人の居ない子供達が、此処に来れば誰とでも語り合えるような……そんな場所を作って欲しい。」

 

リサ「ゆ、友希那……。」

 

神官C「な、何という……深い慈愛の御心。此度の御命令、しかと承りました!」

 

友希那「べ、別に命令という訳ではないのだけれど……。」

 

中たえ「うんうん。お茶やお菓子もあると良いよね。勿論無料で。」

 

神官達「「「ははぁーーーっ!!」」」

 

お婆ちゃん「まぁ……お嬢ちゃん達はまるで本物の勇者様みたいだねぇ……。」

 

中たえ・小たえ「「あははっ!!」」

 

友希那「未来も明るくなりそうね。」

 

中たえ「任せてよ、御先祖様。御先祖様達が未来に託し残してきた事を、私達がちゃんと繋いでいくから。人々は前を向いて歩いていけるって事を神様に見せてあげないと。」

 

友希那「そうね。繋がって人は強くなっていく………。私達はそう信じている…。」

 

 

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かめや--

 

此処は勇者部がいつもお世話になっているうどん屋のかめや。此処にお礼参りに来ているメンバーはゆり、りみ、蘭、美咲の4人。

 

ゆり「いつも美味しいうどんのみならず、蕎麦やラーメンまでもありがとうございます!」

 

りみ「勇者部一同より、日頃の感謝を込めてお花を贈らせて頂きます!」

 

店主「どうもありがとね。商売なのに、何だか悪いねぇ。」

 

蘭「また、本日はお店を使わせて下さるお礼に、私達が皆さんへ食事を作ります。」

 

美咲「プロの方には恐縮ですが、子供の手料理だと思って召し上がっていただけると幸いです。」

 

そう言ってゆり達は厨房を借りて料理を開始する。因みにりみはウェイターだ。

 

ゆり・蘭・美咲「「「はぁぁぁっ!!」」」

 

かめやの店員に料理を振る舞い出したその時、店の扉が勢いよく開き、ぞろぞろと割腹の良い大男達が店の中へ入ってきた。饂飩龍率いる大食い力士軍団である。

 

力士達「「「全部10杯ずつドスコーーイ!」」」

 

 

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数分後--

 

蘭「き、キツすぎる!作っても作っても追いつかないよ!?」

 

りみ「お、お姉ちゃん!どうしてこんなにお相撲さん達がいるのーーー!?」

 

ゆり「大食いライバルの饂飩龍を招待したら、相撲部屋全員で来ちゃったんだよーーー!」

 

美咲「ライバルに感謝して花束をあげるのは勇者っぽいですけど、少しは相手を考えてくださいよ!」

 

饂飩龍「食いっぷりもさることながら、牛込どんのうどん打ちは職人顔負けでごわす!」

 

店主「本当だよ。うどんもだけど、蕎麦もラーメンもみんな、上手だねぇ。」

 

3人は必死こいて料理を作るのだが、作った途端に料理は全てお腹を空かせた力士達の胃袋へと収まっていく。

 

りみ「持っていったそばから中身がなくなっていくよぉ!」

 

蘭「蕎麦だけに?」

 

美咲「あはは…もうダジャレでさえ笑けてくるよ…。」

 

りみ「こうやって楽しい事をやって疲れるのって良いね、お姉ちゃん。」

 

りみ「そうだね、りみ。こんな当たり前の日々がずっと続くように、私達の手で終わらせないとね。」

 

力士達「「「おかわり10杯ドスコーーイ!」」」

 

ゆり・りみ・蘭・美咲「「「ひえぇぇーーん!!」」」

 

かめやに嬉しい悲鳴がこだまするのだった。

 

 

---

 

 

海岸--

 

此処に来ているメンバーは小沙綾、夏希、薫に赤嶺の4人。花を配っていると、そこに以前夏希の夢を叶える為に結婚式を開いた際に手伝ってくれたカメラマンやブライダルコーディネーターがやって来る。

 

夏希「あの時は、結婚式の撮影なんて貴重な経験をさせて頂きありがとうございました!」

 

小沙綾「この花束は勇者部から、心ばかりの感謝の気持ちです。」

 

コーディネーター「いえいえ。あの写真のお陰で大人達の結婚の夢も膨らんだんですよ。私達こそ感謝です。」

 

カメラマン「ところで、今日もまた素敵な衣装ですね。どうしてそういった扮装を?」

 

薫「海に感謝する為の儚い衣装さ。」

 

赤嶺「今日は勇者部のメンバーが色んな人や場所に感謝をしに行く日なんですよ。」

 

カメラマン「自然にも人にも感謝を……ですか。良いですね。私達も見習います。」

 

コーディネーター「友達、恋人、夫婦。全ての繋がりにおいて感謝の気持ちは大切ですからね。」

 

夏希「私達も、皆さんとの繋がりに感謝してます!」

 

小沙綾「今後とも御指導御鞭撻宜しくお願いします。」

 

カメラマン「こちらこそ。また宜しくお願いしますね。」

 

赤嶺「繋がりかぁ………。私も持てたかなぁ。」

 

薫「勿論さ。繋がりは持とうとして持てるものじゃない。自然と一緒に過ごしていく中で、紡がれていくものさ。だろ?」

 

夏希「はい!もうとっくに私と赤嶺さんとの間には繋がりがしっかりと固く結ばれてますよ!」

 

小沙綾「だね!」

 

赤嶺は胸に手を当てる。

 

赤嶺「そっか………そうだね!私とお姉様との間には固くて太い赤い糸がガッチリと結ばれてますもんね!」

 

薫「あぁ………儚くね。」

 

小沙綾「何か間違ってないかな……。」

 

夏希「良いじゃん何だってさ。」

 

小沙綾・夏希・薫・赤嶺「「「あはははっ!!」」」

 

 

---

 

 

美竹農園--

 

この場所ではモカ、彩、つぐみの3人が畑を手伝ってくれる農家の方々や贔屓にしてくれる八百屋へ花を配っていた。

 

モカ「お世話になっておりますー。畑仕事を手伝って下さり、ありがとうございます。」

 

彩「今日は感謝の気持ちを届けにやって来ました!」

 

つぐみ「いつもお疲れ様です。お花をどうぞ!」

 

農家の人「へぇ…綺麗だねぇ!野菜の花しか見たことなかったけど、良いもんだ!」

 

モカ「今日は蘭が居なくてすみません…。」

 

八百屋「なぁに、宅配モカちゃんも立派なもんだよ!物事は何でも、最後の一押しがあってこそさ!それにしても、何で今日はそんなに可愛い格好をしているんだい?」

 

つぐみ「パイナップルってなんかカッコいいですよね?」

 

彩「この衣装は美味しい野菜を作る畑への感謝の表現なんです。あっ、私は苺がモチーフなんですよ!」

 

農家の人「畑への感謝かぁ。素敵な気持ちだよ!大地と人は持ちつ持たれつ。」

 

八百屋「人と人ともだよねぇ。勇者部さん、いつもありがとう!」

 

つぐみ「こちらこそ!」

 

彩「勇者がいるから巫女が頑張れる。逆も同じだよね。」

 

モカ「そうですね。それが頑張れる源ですから。」

 

 

--

 

 

畑でお礼参りをしている3人を有咲、燐子、千聖、花音が遠くから眺めていた。4人はお礼参りの会場である幼稚園へ行く途中に行列が出来ている事に気がつき、それを辿って来たのである。

 

燐子「青葉さん達の方では、農業関係者の方々が沢山集まっていますね……。」

 

花音「彩ちゃんも頑張ってるね。」

 

有咲「野菜をモチーフにするなんて2人が考えそうな事だよな。」

 

千聖「無理矢理な感じもするけど、畑で働く人達は喜んでるようで何よりね。私達も負けないように頑張りましょうか。」

 

花音「すっごいやる気だなぁ…。私なんか心配でお腹が痛くなってきたよ……。」

 

千聖「何がそんなに心配なの?」

 

花音「私には荷が重いと言うか……柄じゃないかも…。」

 

有咲「勇者部でもウケたんだから大丈夫だろ。」

 

花音「ふえぇ……。本番の相手は、勇者達より何倍もシビアだと思うよぉ〜。怒られるならまだしも、泣かれちゃったりしたらどうしよう、千聖ちゃん〜。」

 

千聖「そんな事、私に聞かれても分からないわ。どうしたら良いのかしら、有咲ちゃん。」

 

有咲「いやいや、私だって知らないぞ!」

 

3人の視線は自ずと燐子へと移っていく。

 

燐子「そんな時は…スキンシップです…。ギュっと抱きしめれば……万事解決ですよ…。」

 

有咲・千聖・花音「「「な、成る程…。」」」

 

 

---

 

 

勇者部部室--

 

一方その頃、部室では香澄、沙綾、高嶋、紗夜の4人が慌ただしく何かの作業をしているところだった。そんな最中、沙綾の端末にゆりから電話がかかってくる。

 

中沙綾「ゆり先輩…沙綾です。はい……ドレスショップと喫茶店は滞りなく…え!?お相撲さんが10人以上ですか!?」

 

香澄・高嶋「「お相撲さん!?」」

 

紗夜「は、話が見えません……。」

 

中沙綾「そ、そうですか……お疲れ様です…はい、失礼します。」

 

香澄「さ、さーや、ゆり先輩どうしたの!?」

 

中沙綾「そ、それが……前に大食い大会でゆりさんと最後まで争った饂飩龍が仲間達を引き連れてかめやに来てくれたみたいで……。」

 

高嶋「じゃあ、用意した材料、足りなかったね。蕎麦とラーメンを合わせても全然……。」

 

中沙綾「でも、それを理由に引き上げようとしたら、お店と相撲部屋の材料を全部提供されて…。」

 

紗夜「そ、それは……ご愁傷様ですね…。」

 

高嶋「ゆりさんも美咲ちゃんもギリギリまで他の人を手伝ってたのに、大変だぁ……。」

 

中沙綾「私達も、最後を有終の美で飾れるよう頑張らないと。」

 

香澄「そうだね!沢山話した、みんなの気持ちがこのイベントにはギュッと詰まってるんだもん!」

 

沙綾「いつもながら脱線して、中々纏まらなくて…それでも全員がちゃんと真剣に考えて……。必ず良い形に着地するのが私達、勇者部ですから。」

 

高嶋「ね、戸山ちゃん。私達、歳は取らないのに成長してる感じしない?」

 

香澄「する!不思議だなぁ。」

 

高嶋「私、思うんだ。人の心って、神様にも計れないとっても凄いものじゃないかって。だから、私達はどんどん強くなって、優しくなって………前よりもっともっと仲良くなった。」

 

香澄「うん。ここで出会った仲間とも、街の人達とも!この繋がりは絶対に消える事の無い私達の大切な宝物になる!」

 

中沙綾「……………さっ、頑張って手も動かそう。熱い思いは全部、行動で示さないと。」

 

香澄「そうだね、さーや!しんみりしてる場合じゃないや!」

 

4人は再び忙しなく動き回りとある準備を始めるのだった。

 

 

---

 

 

幼稚園--

 

この幼稚園は以前に紗夜と花音、友希那の3人がクリスマス会の手伝いにやって来た場所。園児達は花音を見つけるや否や脱兎の如く駆け寄って来た。他にも園児達の家族もこの場所に沢山訪れている。

 

男の子「あーーー!かのんだぁーー!かのんが来たーーー!」

 

女の子「うわぁ……!お姫様達が来てくれたよーーー!」

 

先生「こちらがお礼に伺わないといけないのに、逆に感謝をして頂くなんて……感激です!」

 

千聖「小さな子供達と触れ合える機会は中々無いので、勇者部一同いつも楽しみにしているんですよ。」

 

花音「ふ、ふえぇ〜〜〜!?リンゴが欲しいって、私は白雪姫で魔女じゃないよぉ!?」

 

有咲「花音が揉みくちゃにされてるぞ!?」

 

先生「ふふっ、微笑ましいですね。あなた方は、本当に素敵な部活です。」

 

有咲「あっ……はい。勇者部は最高です!」

 

お母さん「以前にやった人形劇の続編、また見せて下さい!昼ドラよりも全然面白かったわ。」

 

お母さんが言っているのは、勇者部が二班に別れ、此処とは他の二ヶ所の幼稚園で行った人形劇の事。最後の方は滅茶苦茶になってしまったが、一部の層には大いにウケたと噂になっていたのである。

 

燐子「あの魔女と勇者の愛憎劇ですか…!解りました……相談してみます…。」

 

千聖「有咲ちゃん……あれは何の話かしら……。」

 

有咲「止めてくれ……私は何も聞かなかった…。」

 

花音は相変わらず園児達に囲まれていた。クリスマス会で手品と見せかけて変身した事が園児達の心を今でも鷲掴みにしていたからだ。

 

男の子「かのんーーーまた手品で変身しろよーー!変身してドラゴンと戦えーーー!」

 

花音「ダメダメダメ!お姫様はか弱いの!誰かに守ってもらわないとダメなんだよーー!」

 

女の子「りんこちゃーん、抱っこーー!」

 

燐子「はい……!うふふ……やっぱり小さい子は可愛いですね……。」

 

有咲「2人も楽しんでるし、やっぱりこの格好で正解だったな。」

 

千聖「ええ。こんな風に、大人とも子供とも絆を結べるなんて、訓練生時代には想像も出来なかったわ。未来の事なんて、解らないものなのね……。」

 

有咲「そうだな。でも、確かな事もあるぞ。」

 

千聖「何かしら?」

 

有咲「この先、何があったとしても勇者部は、私達は絶対に負けないって事だ!」

 

 

---

 

 

商店街--

 

六花「商店街の皆さん、花咲川中学勇者部が感謝とお花を届けに参りました!」

 

日菜「あははっ!お礼参りがちょっとしたパレードみたいになっちゃった!るんっ♪てするよ!」

 

あこ「気合を入れてありがとうーーー!」

 

イヴ「私も頑張ります!」

 

商店街にやってきたのはあこ、日菜、イヴ、六花の4人。既に他の場所で始まっていたお礼参りの噂を聞きつけて商店街には沢山の人達が集まっていた。

 

商工会員「いつもありがとな!俺達の方こそ、いつも助かってるよ!」

 

お菓子屋「お得意さんに感謝してもらえるなんて、商売人冥利につきるよ!」

 

六花「今後とも宜しくお願い致します。」

 

お肉屋「お礼も良いけど、パーっとやっちゃってよ!」

 

日菜「良いの!?それじゃあ……行くよ!」

 

イヴ「よっしゃあっ!祭りは勇者部の華だぜ!」

 

商店街中に軽快な音楽が鳴り響き、4人は踊り出し、街の人達もそれにつられて踊り出す。その踊りが更に通りかかった人達の目に留まり、踊りの輪は広がっていった。

 

あこ「感謝感激雨あられだよーーーっ!」

 

おじいちゃん「賑やかで嬉しいのぉ。こんなに笑ったのは久しぶりじゃて。」

 

日菜「どんな人達にも元気を与えるのが勇者部!今日は倒れるまで楽しんじゃうから!」

 

あこ「そうだね!しみじみするのも良いけど、やっぱりあこ達にはこんな風に笑って楽しむのが一番だよ!」

 

六花「この気持ちがある限り、私達は決して負けません!楽しむ心が私達の武器なんですから。」

 

 

---

 

 

夕方--

 

かめやでの予想外の出来事になんとか対応しきったゆり達4人はヘトヘトになりながら帰路についていた。

 

美咲「はぁ……はぁ…。疲れた…。楽しかったけど、限界………。」

 

蘭「みんな満腹になったのは良かったけど、もう腕がパンパン……。」

 

小たえ「あっ、ゆりさん達だ!」

 

そこへ大赦へ行っていたたえ達が合流する。

 

リサ「お疲れ様。みんなも今帰り?」

 

ゆり「そうだよ……。もう疲労困憊…全身が筋肉痛だよ……。」

 

友希那「どうしてそんな事に?」

 

経緯を伝えていると、今度は幼稚園へ行っていた有咲と畑に行っていた彩達も合流する。

 

有咲「お疲れ。私達も、今終わったところだ。」

 

花音「幼稚園は大成功でしたよ!」

 

彩「こんなに集まるなんて偶然だね!」

 

モカ「蘭、畑の人達とっても喜んでたよ。」

 

あこ・夏希「「おーーーい!」」

 

そして更に商店街担当のあこ達、海岸担当の夏希達も合流した。

 

ゆり「みんなそれぞれ、満足したような顔してるよ。疲れたけど、やって良かったっていう証拠だよね。」

 

赤嶺「あれ?戸山ちゃん達はまだ現場にいるの?」

 

りみ「もうとっくに終わったって聞いてたけど……。」

 

千聖「一足先に部室へ戻ってるんじゃないかしら?」

 

それぞれが担当していた箇所で起こった事を話しながら部室へと戻る最中、遠くから香澄がみんなを呼ぶ声が聞こえる。

 

香澄「おーーーーい、みんなーー!」

 

つぐみ「この声は、戸山ちゃん?」

 

その時だった。彼方から神輿に乗った4人が現れクラッカーを鳴らし始めたのである。

 

中沙綾・紗夜「「頑張った勇者部のみんなに………!」」

 

香澄・高嶋「「お疲れ様と感謝の花吹雪を!」」

 

そして頭上からは夕陽に照らされキラキラ輝く花吹雪が降り注がれる。

 

小沙綾・夏希・小たえ「「「わぁ………!」」」

 

蘭・彩・花音「「「綺麗………!」」」

 

薫「空から降り注ぐ、色とりどりの花びら………!私達の為に準備してくれたのかい?」

 

六花「これは………サプライズドッキリですね…。」

 

高嶋「すっごく頑張っているみんなを見てたら、どうしても何かしたくなったんだ!」

 

紗夜「街の皆様だけでなく、いつも共にいる皆さんにも、感謝の気持ちを伝えたかったので。」

 

ゆり「うぅ………香澄ちゃん達ったら……立派になっちゃって…。」

 

有咲「こりゃ……今日ばっかりは泣いても良いな…。」

 

香澄「ゆりせんぱーーーーい!おたえーーーー!美咲ちゃーーーーーん!!みんなみんなみーーーーんな!!」

 

香澄・中沙綾・高嶋・紗夜「「「「いつも本当にありがとう!!!」」」」

 

香澄達の心意気に感動してか、イヴが珍しく声を大きく叫ぶ。

 

イヴ「香澄さん達もーーーーー!」

 

千聖「あら?もう1人の方では無くて、イヴちゃんが声を上げるなんて…。」

 

友希那「みんな、今までありがとう。残りの時間も宜しくお願いするわ。」

 

人は繋がりがあって強くなれる。楽しい事や苦しい事だって共有出来る。改めて絆を再確認した勇者達。そして、間もなく彼女達に別れの時が訪れようとしていた--

 

 

 

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